10、1年A組 混沌の夕食会
「三崎達さぁ、正直足手まといだから下りてくんね?」
三崎達、というとユニークスキルのない人のことだろうから当然俺も入っているだろう。
「な、ふ……藤沢、何言い出すんだよ。どういうことだよ」
一人の男子が食事の手を止めて疑問を発する。
今話題に上がっていた、三崎信介君だ。
「いや、考えたら分かるだろ普通。足手まといが俺らの訓練に参加しても邪魔なだけっつーことだよ。オラ、はっきり言ってやったんだから納得しろや」
いつにもまして乱暴な……というか、明らかに演技くさい言葉遣いだ。
「お前は……俺だけじゃなく、芦原と先生にも同じこと言ってんだぞ。わかってんのか……?」
「あァ? テメー脳みそあんのか? 俺はさぁ、『お前ら』っつったよな。最初から三人に向けて言ってんだよ」
「いや、でも……そんなこと皆納得するわけ……」
「はーい、俺さんせーい!」
「俺もー。強いみんなで団結して強くなった方がいいと思いまーす」
「ちょっと待て、さっきから聞いていれば何だ? 先生も仲間はずれにしろと? ふざけるのも大概にしないか!」
「そうよ! 大変なときなのにいきなり何言い出すの!?」
「でも効率を考えると……あの、仲間はずれとかじゃなくて少しだけ……」
「今そんなこと言ってる場合じゃ……」
「僕は全員一緒の方が……」
クラスが混乱状態になってゆく。
騒ぎの発端である藤沢君はそれを見てニヤニヤ笑うだけだ。
この状況が狙いだったのかな?
話の主導権を握るために、打ち合わせまでして?
一体なにが目的なんだろうね。
「はーい! 静かにーー! んで注目ー! そこで俺から提案がありまーす!」
その言葉で一旦喧騒は収まり、皆が藤沢君の方を向く。
彼は意を得た様子で話しはじめた。
「三崎達をテストすればいいんじゃねーのー?」
「テスト……かい?」
「そう、テストだよ。日本でもよくやっただろ? 確かめるんだよ! 三崎達が俺達の訓練についてこれるかどうか!」
「どうやってだい?」
質問を受けた藤沢君はさらに顔を黒い笑みで染める。
「簡単だぁ。実力試験だよ! 明日、三人の代表が俺に一発でも攻撃を入れられたら合格にしてやんよ!」
ふむ……自信ありげ。
まだ自分の力がどの程度のものか確認してないだろうときからそんな発言をするなんて。
「そんな、勝手に決めていいことじゃ………」
「いい加減にしてよ!!!!!」
「な…急にどうしたんだよ宮森」
「何でみんなそんな言い争いばかりするの? おかしいよね、さっき全員で力を合わせて……頑張ろうって言ったばっかりだよね!!」
「落ち着くんだ天奈。今は」
「明君も黙ってて! 私はみんなが他人を貶め合うクラスなんて嫌だ! 一人一人が高め合って、励まし合う、そうやって魔王を倒して地球に帰るんじゃなかったの!? 私があのとき感じた希望は、その場しのぎのただの虚勢だったの!? そんなの認めない、認めたくない! だから、こんな醜い八つ当たりやめようよ! 意見をぶつけ合うなら、ちゃんと相手の目を見てこころで聞いてあげてからにしてよ!」
一気にまくし立てた宮森さんは、そのままテーブルに手をついて泣き出してしまった。
ギスギスとした雰囲気は消え去り、本来笑顔と会話が飛び交うはずの食堂には、ただただ暗い空気が充満した。
藤沢君に冷たい視線が向けられる。
「じ、じゃあ……それなら三崎達も訓練参加ってことで……」
最初に騒ぎを起こしてしまった者としての責任を感じたのか、藤沢君はバツの悪そうに言った。
尤も、最後らへんはほぼ聴こえなかったけど。
それをきっかけに重い話を締めくくろうとした、その時だった。
「いいでしょう! その決闘、ヘキサール王国は正式に承認します!」
王女様は、なにやら乗り気のようだ。




