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コミュ障(筋肉)魔女は、シナリオ王子から逃げられない  作者: なかな


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王城!


 王都までの道中、馬車の中のラウル殿下は「キラキラ王子8割」「挙動不審キャラ2割」くらいの出現率だった。


 私がキラキラ王子のマシンガントークに疲れた頃に、キョドキョドした王子が現れるというパターン化まで見えてきていた。


 こうして別人格があるかのように振る舞うのは、何か理由があるのだろうか?やはり王族ともなるとプライベートを晒したり、本音で物を言わない、とか?

 だとしたら今のラウル殿下以外に、本当の姿も存在するわけで……。


 そう思い、殿下を伺うようにチラ見すると、長く馬車に揺られて眠くでもなったのか、先程まで挙動のおかしかった殿下は黙って目を瞑っていた。


 長い金色のまつ毛が白い肌に落ち、優美なラインを描く細い鼻梁はその先にある唇へと目線を誘導する。


(きれい……)


 「薄い紫の瞳と目が合うと魂が抜けてしまうっ」と思い直ぐに目を逸らしていたから、殿下のご尊顔をじっくり拝見するのは、実はこれが始めてかもしれない。

 うっすらと開いた形のよい唇からは "スーッ スーッ" と寝息が聞こえてくる。


(完全に寝てるなこりゃ……)


 なんやかんやと殿下もお疲れだったらしい。


 もしラウル殿下が本当の性格を隠していたとしても、おそらく暴君という訳ではないだろう。

 多少、強引な所はあるけれど……、私の王都行きの準備も充分過ぎるくらいに手厚かったし。


 こんな知り合ってばかりの魔女を前にして寝落ちしているのも、ガードが緩すぎて笑ってしまう。

 おおらか、なのか?いや、ただの天然の方だな。



 スヤスヤと寝息を立てる殿下を眺めていると、何故か薄紫色の瞳が見たくなってくる。その閉じた瞼の奥にある薄紫の色を、いつかじっくりと見られる時が来るのだろうか?

 

(駄目だな。そんなの見たら吸い込まれるか爆発するって……)


 自分で想像しておいて、直ぐにその思いは却下だ。


 殿下の瞳をじっと見るなんて、コミュ障の私にはハードルが高すぎるから。


 

 ◇



 王都に着いた頃には、すっかり日が落ちていた。

 大通りを走り抜ける馬車からは街明かりが見え、人々の歩く道にも街灯が灯っているのが見える。


 夜なので行き交う人々は少ないが、さすが王都は夜にも出歩ける街なのだと感心してしまう。


 夜に輝くものといえば、星と月明かり、そして「野生動物の目」だけのミンカッセの森とは大違いだ。



「リーネ。ようやくリバエッジ城に到着だ」


 少し眠って体力を回復できたのか、ラウル殿下は薄暗い馬車の中でもキラキラの輝きを放っている。

 私は緊張して眠るどころではなかったから、今キラキラモードの殿下に長話されるのはちょっとゴメンだ。


 門が開け放たれ、その向こうに伸びる細い道へと馬車が進められる。


 しばらく進んだ後に馬車はゆっくりと止まり、外から扉がノックされた。

 

 ラウル殿下は開かれたドアから軽やかに外へと降り立つと、続いて降りようとしていた私に手を差し伸べた。


(えっ?これって手を取れと?)


 何故、護衛としてやって来たのに主の手を借りて馬車から降りねばならぬのか??

 伺うように前を見やると、薄紫色の瞳が何かを期待するように私を見つめていた。


 あぁーーっ、トラップだったか……。

 殿下と目が合っちゃったよっ!

 

 ラウル殿下はきっと天然で自覚がないから、その瞳の威力を知らないんだ。

 きっと今まで、数々の負傷者を出してきたに違いないのに。


 ここまで無事に旅をしてきたのに、最後の最後で負傷かぁ……。


 これ以上、心揺さぶられてなるものかと、私はギュッと目をつむり、殿下の長い指を手探りで掴んで急ぎ馬車を降りた。


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