↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミュ障(筋肉)魔女は、シナリオ王子から逃げられない  作者: なかな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/34

心の筋肉


 いつものラウル殿下の護衛の仕事を終え、雨上がりの空を眺める。


 街で貸部屋を探し始めたものの、夏前の雨の時期と重なってしまい、思うように街歩き出来ない日が続いてしまった。

 夕方になっても今頃の空は明るいから、街に少し出るくらいは良いだろう。


 ◇


 夕方の街は、帰宅前に買い物をする人達で賑わっていた。

 日が暮れると飲み屋以外は閉まってしまうから、慌ただしく買い物をする人達が、小走りに私の横を通り過ぎて行く。


 少し前までは、見知った町に行くだけで心が折れていたのに……。

 今は人の生活が垣間見れるような、こんな温度を感じる人の動きに目を奪われる。


 店先でスープを売っているのか、鍋を手にした人がいる。店の人が大鍋の蓋を取ると、立ち上る湯気が辺りに漂った。


 思わず大きく息を吸い込んでしまう。


 (ベーコン?かな?)


 匂いから食材の見当を付ける自分に苦笑する。

 今までの私なら街では下を向き、息を詰めて歩いていたのにな。

 それなのに今は、スープの匂いを胸いっぱい吸い込んでいる。



 *



 少し前の自分を不思議に思う。

 人の視線も向けられる言葉も、自分を責めているように感じて、いつも苦しかった。

 人の仕草も、言葉を選ぶ姿も、全てが自分を受け入れないサインに見えた。


 なんて勘違いばかりをしていたのだろう。

 思い込みが自分を苦しめていると、この王都で暮らす中で気づき始めた。


 魔女だと知られたって、それが例え筋肉マッチョだったとしても、仲良くしてくれる人はいるのに。



「本当に強くなるっていうのは、心にも筋肉が付くことさ……」



 おばあちゃんの言葉は、本当に訳が分からない。

 ずっと、ずっとそう思っていたけれど、生活を大きく変えた今の私は、ようやくそれが分かり始めた。


 私は王都に出てから、知らず知らずに心の筋トレをしていたのかな?

 いや、ラウル殿下を森で助けた時から、心の筋肉を使っていた??


 今なら少し分かるよ、おばあちゃん。


 だから、「分かったよ!これなんだね!おばあちゃんっ!」って本当はおばあちゃんに伝えたい。


 そのおばあちゃんは、もういないけど。



 すっと、目の前にラウル殿下の顔が浮かぶ。

 あの薄紫の瞳を見るとおばあちゃんを思い出しちゃうんだよね。

 

 よしっ、今度ラウル殿下の瞳に密かに報告してみよう。

 

 「分かったよ!おばあちゃん。心に筋肉って本当に付くんだね」って。


 口には出さずに心の中で言うだけなら、きっとラウル殿下にも変には思われない、よね??

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。