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コミュ障(筋肉)魔女は、シナリオ王子から逃げられない  作者: なかな


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最終手段!


「叔父、上……?」


 ラウル殿下が目を見開き、現れたゼイン殿下を見下ろしている。


「ご苦労だったな魔女よ。よく我が甥を守ってくれた」


 ゼイン殿下はそう言い、優雅な微笑みを浮かべた。


「叔父上、そろそろその男の腕から降りてはいかがですか?もの凄く格好悪いです」


 ラウル殿下はサラッと酷い事を言う。

 確かに自力で階段を上らないのはどうかと思ったけど。


「こ、これはだな、この男のトレーニングに必要だと思ったから体を貸してやっただけだっ」


 ゼイン殿下を抱えている男の瞳から光が消えた。うん、間違いない。この男性は今、ゼイン殿下にドン引きしている。


 屈強な男の胸を軽く叩き解放を促したゼイン殿下は、よろめきつつ階段に足を付いた。長身のゼイン殿下は普通に立てば見栄えする。


「ラウル、お前はいつも俺をそうやって小馬鹿にして心の奥底で笑っているんだろう。だがな、それも今日で終いだ。お前はその魔女のせいで、全てを失うことになるんだ」


 ゼイン殿下はそう不穏な事を言い、暗い光を目に宿しニタリと笑った。


「その魔女が、大人しくこのゴロつきどもにやられてしまえば、お前の命を奪うことは無かったものを……。目障りなその薄い紫の瞳を傷つけ、そのよく回る邪魔な頭を打ちつけ壊すだけで済んだのに」


 は?何?何言ってるのこの殿下?

 まるで、ラウル殿下を痛めつけたいみたいな……。


「恨むなら、その魔女を恨むんだな。その魔女が、この男達を使い物にならなくしたんだ。こうなってしまったらもう……ラウル、お前にはその、むこうの塀から飛び降りてもらう」


 ゼイン殿下は階段を上りながら星見台の方を指差し、そうハッキリと告げた。


 ーー飛び降りるって?!正気なの?!


「ここに上る前に、お前の護衛達とは話を付けてきた。

 私こと王弟はその魔女が、ラウル王子暗殺の為に差し向けられた『刺客』だという情報を掴んだんだ。

 可愛い甥であるラウルを守る為、私は直ぐに動かせる腕利きの者たちと共に塔に上がったんだ。

 魔女を説得し拘束すると、そう告げてきた」


 私が?ラウル殿下を襲う刺客?!


「もし魔女が説得に応じなければ確実に取り押さえる事が出来るよう、この塔の階段の途中に騎士を20名配備している。もちろん、私の離宮の騎士達だ」


「私が……叔父上の思う通りになるとでも……思われます、か?」


 ラウル殿下はいつもの王子然としていない、不敵な笑みを浮かべた。


 ”チッ” ゼイン殿下は下卑た音を口元から響かせると、狭い階段を無理に押し通っていく。


 ゼイン殿下に押し出されるように、皆が星見台に出た。

 ベルトで足を縛られ動けない男は、私が肩に担いで連れていく。


「ここで起こった事は、ラウルさえいなければ私が正義だ。魔女が後から何を言おうと、皆、王弟である私の言う事を信じる」


 権力を持つ者が腐ると真実も覆るのか?

 体に緊張と震えの両方が湧き起こる。


「さぁ、ラウル。選ばせてやろう。

 お前は魔女に襲われ、逃げている最中に塔から落っこちた。

 その筋書きが1つ。

 お前は自分でそこから飛び降り命を経つんだ。

 もしそれが出来ないのなら、私が階段で待機している多くの騎士を呼び寄せ、その魔女を傷付ける。

 お前は愛する者を目の前で傷つけられた挙句、騎士達にそこから落とされるんだ。

 まぁ、落ちた理由は……、愛する者に裏切られ失意のうちに自ら飛び降りた、とでもしておくか?

 まぁ、魔女に傷が付かないのは初めの方だが、王族殺しは大罪だからな。後でどうなる事やら。

 ハハッ、さぁラウル、どちらを選ぶ?」



 どっちにしろ私は大罪人になってるから!?

 そもそもラウル殿下に選ばせる必要ってある?!


「どっちにしろ、私がこの塔から落ちた理由をリーネに被せるつもりだろ?罪人としてリーネを捉えてどうするつもりだ?ここからリーネも一緒に落として、口を塞げば良いだけだろう?」


 確かに真実を知る私が居ない方が、ゼイン殿下には好都合じゃない?

 後でゼイン殿下が有る事無い事、でっち上げれば良いだけだ。


「ハッハッハッ、お前が知ったことではないわ。ちょっと毛色の変わったおもちゃが欲しかっただけだ。綺麗な顔してその姿。なかなか良いものだからな」


 この筋肉マッチョな姿が良いなんて、ストライクゾーンが広すぎじゃない?この殿下。

 私は魔女を人扱いしないような奴の所に行くのは絶対に嫌だ。


「そうか、やっぱり覚悟が決まったよ。

 一応、叔父上だしね。少しは遠慮していたんだ‥。

 リーネに目を付けたのは流石だけど、それが決定的にアウトだったよ、叔父上。

 最後に少しだけ、リーネと話しをしたい。

 甥の最後の願いだ、聞いてくれるよね?」


「そうか、覚悟が決まったと言うんだな?

 お前の頭脳あってしても、この状況は詰みだと、そう思うんだな?

 ハッハッハッ!これは愉快だっ!良いだろう、最後に遺言でも愛の言葉でも、何でも囁いてこいっ」

 

 えええーーーーっ???

 ラウル殿下?本気ですか?

 この状況なら私、ひと暴れ出来ます、けど??


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