↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コミュ障(筋肉)魔女は、シナリオ王子から逃げられない  作者: なかな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/34

襲撃!


 あと少しで天辺というところで、今まで静かだった階段下から物音が聞こえた。


 複数人の足音と金属同士がぶつかり合う、耳に響く衝撃音。


「襲撃、襲撃だーっ!!」


 下から呼びかけられた声と物音に、思わずラウル殿下と目を合わせた。

 綺麗な薄紫の瞳が驚いたように開かれ、頬の筋肉がピクリと緊張気味に動く。


「あれは、剣を交えた音か……、不味いな」


 殿下が呟くように言うのが聞こえた。


 確かに今の私たちは丸腰も同然で、階段下を敵に突破されようものなら一溜まりもない。


「ラウル殿下!お早く上へ!ここは私が守ります、誰1人とも通しませんっ!」

 

 私は自分の口がスラスラと動く事を不思議に思いながら、これから迫り来る状況に備えた。


「リーネ!決して無理はするな!いざとなれば私も戦うっ、2人で迎え打とう!」


 ラウル殿下は何を言うのか?!


 2人で迎え打つなんて無理でしよ??殿下は森でマンイーターから逃げることさえ出来なかったのに。

 そもそも私は貴方の護衛だ!

 

「殿下は黙って私に守られてくださいっ!! 

 簡単には負けませんっ!

 私の筋肉は、そんじょそこらの筋肉じゃないんでっ!!」


「くっ、致し方ない……リーネ!任せたぞ!」


「はいっ!」



 ◇



 階段を小走りに上がってくる靴音が聞こえる。

 敵はおそらく4~5人。塔の下に護衛の騎士様達も居たのに、皆やられてしまったのだろうか?


「くっそーっ、まだ着かねぇーーっ」


 階段下からボヤく声が聞こえる。

 そう、そうやって段差を上がってゴリゴリに体力を削られたら良いのよ……。


 振り返るとラウル殿下は最上段で、私の姿をじっと見下ろしている。


 さっき「私も戦える!」とか言っちゃってたけど……。もしかして、本当に殿下も戦うつもり?


「くっそ!もう少しだっ!」


 声が直ぐ近くから聞こえている、私も態勢を整えないと……、急がなくっちゃ!!


 私は深く息を吸い込むと、静かに呪文を唱え、全身の筋力を強化した。



 ◇



 私は仁王立ちになって、見下ろしながら敵を待ち構える。


(来たっ!)


 左に緩くカーブした階段の先から、厳ついハゲ頭の男が現れた。

剃った頭に刺青を入れ、見るからにお近づきには成り辛い風体をしている。


(頭ノーガードじゃない?!そんな頭で戦闘しようとするのが悪いのよっ)


 私は足を振り上げ、無防備に頭皮を晒す男の頭に向かって踵を落とした。

 もちろんその後に、後ろへ蹴り倒すことも忘れない。


「ぐわっ!」


 汚い飛沫を撒き散らしながら男が螺旋階段を転げ落ちていく。

 その後方から短刀を持って現れた男も巻き込まれ、一緒に階段を転げ落ちていった。 


(あちゃーっ、あれじゃ刺し傷出来ちゃうかもね‥。怪我してたら、もう上って来なくてよいからねー)


 なむなむと、彼らが戦意を無くすようにと願う。


 転がり落ちて行く男2人の姿が見えなくなると、突然、小柄な男が飛び出してきた。

 俊敏な動きで壁を蹴り、階段の段差も気にせず踏み越えてくる。

 あの動きなら、転げ落ちていく男どもを避けて上がってくるのも容易だろう。

 

「クズがっ」


 男は階段下を振り返り、ウンザリした顔で捨てゼリフを吐いた。

 先に転げ落ちていった男達は仲間じゃないの??


 私を見据える小柄な男の目は、甘さも怯えもない、野性の狼のようだ。


(うわーっ、こういう目を久々に見たっ。ミンカッセの森にいた狼は餌付けしたら懐いてくれたけど……。

 あ、でもこのオジサン狼、今、ニヤッて笑ったでしょ?私、なめられて、る? 

 自分より強い相手が分からないなんて……まだまだだね)


 私の筋肉マッチョな体は長いスカートとショールに隠され、周りからは殆ど見えていない。

 首はちょっと太くなっているけど顔立ちは特に変わらない。


(油断してると、こっちから行っちゃうからねー、覚悟っ!)


 身軽な敵はちょこまかと動くので、この狭い階段通路からは出したくない。


 おばあちゃんとの特訓を思い出して!そう、こういう時の先読み能力っ!


 狭い場所では、動ける場所に限りがある。だから、どこへ動くのか?その直前の動作をよく見て、次の動きを予測する!


 自分の筋肉を自在に操れるから、相手の筋肉の動きも敏感に読み取れる。


 筋肉魔女の術の極意は、筋肉の働きへの理解。

 筋肉への解像度を、高めることっーー。


 男が眼球を動かし、私の肩の向こうを見据えた。

 服に隠れてはいるが、太もも後ろ側のハムストリングスと、膝下のヒラメ筋に力を込める瞬間を見逃さない。

 同時に右の上腕二頭筋も使うつもりだっ!


 来るっ!


 男は膝を軽く屈めて跳躍の体制をとりながら、その右腕を私のお腹に沈めようとしている。


 私に一発喰らわせ、直ぐに横を駆け抜けて星見台に躍り出るつもりなのだろう。


「させるかっ!」


 私は脇に逃げ男の腕を避けると同時に掴み、後方へと捻り上げた。


「うわぁぁぁっっっ」


 ごちゃごちゃ動く奴は、捕らえて動きを封じてやるーっ!


 メキメキメキッッッ、ゴリゴリゴリッッッ


 (あ、ちょっとやっちゃったかも‥)


「お前っ、やりやがったなぁっ」


 どうしよう?怖いから口も閉じちゃいたいんだけど、顔にパンチしとく?

 拘束している相手でも、やっぱり話しかけられると怯えてキョドってしまう。


「あ、あの。静かにしてくれないと、もっと酷くします、よ」


「うわぁぁぁぁっっ」


 また腕に力が入ってしまった。いけない、いけない。


「足、縛らせてもらいますね」


 男のスラックスのウエストベルトを抜いて両足首を縛り上げる。

 後は身に付けている武器を奪えば、大したことは出来ないだろう。


 私が階段の途中で男を拘束し、身に付けている武器を探っていると後ろから視線を感じた。

 殿下だ。ラウル殿下が上から私をガン見している。

 息を呑むような真剣な目付きで、私の手元に見入ってしまっている。

 やはりまだ、危機感を感じているのだろうか?


「殿下!奥に入っていて下さいっ。まだ階下から音がするので危険ですっ!」


「あぁ、そうだね……。リーネの戦う姿が見たくてずっとここに居たけれど……。それはズルいだろ?」


「は?」


「ふぁっ!……僕の言うことは聞かないでくれ!」


「はぁ??」


 ラウル殿下と私の間に微妙な空気が流れる。何故か頬を染め、口元を片手で隠しヨコを向く殿下に掛ける言葉が見つからない。





「ハッハッハッーー。魔女よ、なかなかやるではないか?」


 静寂を打ち破り、高笑いと共に声が聞こえる。コツン、コツンと階段下から聞こえてくる靴音。


「ここまでやるとは思わなかった、ブラボーだ」


 パチパチと手のひらを打ち合わせる音と共に現れたのは、屈強な男にお姫様抱っこされたゼイン殿下。


 ラウル殿下の叔父上だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。