王城でお仕事【2】
ラウル殿下が私の手をとって城内を歩いたせいで、あの後、ちょっとした騒ぎが起こっていたらしい。
手を引かれていた時どこからか「キャーッ」って歓喜の声っぽい叫びが聞こえてきたのはその為?か?
ラウル殿下って、あれだけの美貌の持ち主なのに恋人も婚約者も居ないそうだから、周りの人は噂話で盛り上がっちゃうのだろうな。
同僚の騎士様がコソッと教えてくれたんだけど、今は皆が「あのローブの中の人は誰?」って気にしているんだっ……。
仕事人間で浮いた話もなかったラウル殿下が手を繋いで歩く人。
実は婚約者じゃないか?とささやかれているらしい。
え?ちょっと待って?
殿下の婚約者が騎士服を着てる訳ない、よね?
どうしてそういう事になるんだろう?
確か「ラウル殿下は脳内に完璧な恋人がいるから現実は無理」って、そんな風に言われてるのを盗み聞いてしまったことがあるのに。
殿下は脳内に恋人がいる設定なのに、リアルで婚約者のいる設定まで足されちゃってる?
おまけにその婚約者に騎士服を着せ、連れ歩いてるって話になるんだよ?
若干、変人扱いだよね。
皆、勝手な事ばかり言ってるよ、ラウル殿下がちょっと気の毒。
◇
おかしな噂話のせいで、最近、仕事中に視線をめちゃくちゃ感じる。
基本、ラウル殿下の側に控えているだけだから、部屋の移動や会議中の時くらいなんだけど、どうにも落ち着かない。
人目を避けて暮らしたいのに王城にまで来て、人からめっちゃ見られている今ってなんだろう??
一体どこで間違った?
やっぱり、あの書類にサインをしたことか?
あ、もしかして殿下をマンイーターから助けた、こと?
でもやっぱり、あの時助けなかったら、ラウル殿下には元気に笑っている今は無かったはずなんだ。
うん、あの時の私は頑張った。で、後悔はない。
こんな今になっちゃったけど、やっぱり仕方が無いだけで、後悔はないんだ。
(はぁーーーーーーっ)
でもひとつ、どでかいため息だけは吐いておきたい。
◇
ーー「ため息吐くなら木でもぶっ倒して、森に道でも作ってなっ!」
あぁ、久しぶりにおばあちゃんの言葉を思い出した。
そうだった……。ため息吐いちゃうと道を作らされたっけ。
カザロフの街とは反対側に作った馬車も通れる道は、今回、迎えの馬車が来た時に役だった。
おばあちゃんに言われてやった事が役立ったな。
ありがとう、おばあちゃん‥。
そういえば、ラウル殿下に手を繋がれている時、市場でおばあちゃんに手を引かれたことを思い出したんだった。
人が沢山いる場所が苦手で下ばかり見て歩いている私の手を、しっかり握りしめて歩いてくれたおばあちゃん。
ラウル殿下も、おばあちゃんみたいにしっかり手を握っていてくれた。
‥‥おばあちゃんみたいにゴツゴツしていない、柔らかくて大きな手、だったな。




