王家の人【3】
◇
「私がこの真面目過ぎる男の父親だ。国王と言えば分かり良いか?」
思っていたのとは大分違う、肩の力が抜けた男性が現れた。
高圧的な雰囲気はないけれど、じっとりとした存在感が半端ない。
頭の回転も何だか早そう。
私、上手くお話しできる出来る?のか?!
手汗を握りながら頑張って国王様を見つめると、その紫の瞳は濃く、揺るがない王家の血の重みを感じる。
(さっきの嫌味っぽい叔父上様も濃い紫色の瞳だったのに、なんか違うよね……)
髪色はラウル殿下と同じ色彩の金色で、同じく少しウェーブしている。
やっぱりこの髪色って綺麗だな。
「こいつは真面目くさっているからな。
頭が良いのは頼りになるが、己の人生は棒に振りそうな哀れな男だ。
どうだろう?魔女の力でどうにかならんだろうか?」
あれ?私ってラウル殿下の護衛だって伝わって無いの?
というか、魔女の力ってそんな便利な物じゃないし。
引かれた椅子にゆったりと腰掛ける国王陛下の横には、静かに微笑んでいる女性がいる。
「まぁ、随分と可愛らしい方なのね……。
私はラウルの母親でアメリと言うわ。
そうそう。急に連れて来られて大変だったんじゃないかしら?
ラウルのどんな策に嵌められたのか……今度ゆっくり教えてもらいたいわ。
悪い子じゃないの。ただ、計画的過ぎるっていうか、相手に選ばせるふりして誘導するっていうの?
そういう事する子だから……。
ちゃんと納得した上で魔女ちゃんには、ここに居てもらいたいなって思ってるのよ」
ラウル殿下によく似たお顔でふんわり微笑む王妃様は、そこにいるだけで華のある美しい人だ。例え、今聞いた話の内容がとんでもなかったとしても、王妃様がまとう柔らかな空気感は変わらない。
「ひっ!」
ちらりと横目でラウル殿下を見ると、いつものキラキラが消え、色彩までも色褪せている。
こんなに影の薄い殿下は見たことがない。
何か、心を打ち砕かれるような事があったのだろうか?!
「ほらっ、戻って来てください殿下っ!いつものあれ、キラキラした奴まとってくださいよっ。意識戻してっ!!」
私が不敬にもラウル殿下の肩を揺すると、ハッとしたように目が見開き、殿下はいつもの色彩を取り戻した。
「あぁ、僕は悪夢を見ていた。策が露見し、怒ったリーネが居なくなってしまう世界線に、僕は居た」
ラウル殿下はまだおかしなままだが、色彩とキラキラ立ち上っている何かも戻ったから、とりあえず大丈夫だろう。
「おやおや」
「あらまあ」
息子が生気を失い消えかかっていたのに、この両親は何故か楽しげだ。
「まぁ、息子をよろしく頼む」
「こんな子だけど、頼りにはなるのよ。安心してっ」
2人それぞれの言葉を吐き「あとは若い2人で……」と言い残しサンルームを出て行ってしまった。
「ラウル殿下?……大丈夫でしょうか?」
伺うように声をかけてみる。
「あぁ……。
流石に、最初からあのテンションで来るとは思わなくて……。
あの2人に謁見のときのような顔を作られたら、そっちの方が後々大変だったんだけど。
だから、これで良かったんだ。
僕はただ……最悪の状況を思い描いて違う世界線を彷徨い、絶望してしまっただけだ……」
うん、まだ訳わかんないな。
しばらくそっとしておこう。




