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蛇の家電製品はレベルアップする

 不思議空間の中。何も出来ないヨルンです。

 満足行くまでエンドロール作成をしてましたが。

 途中から目的が分からなくなったので別な方向から模索しましょう。



 何もなければ辺りは真っ暗。

 魔力による光源でも照らされる事は無し。

 爆風や熱線より発生する認識できる色も何かがおかしい。

 そもそもに自分自身を視認可能。

 ただ単に自分以外に何も無い。それだけの空間である。

 他にあると言えば。魔力的な何かを感じられる程度。



 『波動砲』をぶっぱなし。

 『色彩魔法飴』にて連続爆破してみたり。

 『魔法弾』を最大限に貯めて撃ち放った所で

 大半が自分に返ってくるだけで終わった。

 魔法力を吸収できる体質のお陰で被害は無し。

 効果も無し。疲労感も無し。時間だけが過ぎていく。



 一体この空間は何なのだろう?



 脳内イメージではブラウン管ディスプレイに移るだけの存在のような…

 変な物の中から抜け出せぬようなイメージである。

 そんな空間にひしめく魔力を吸収しているお陰か体調だけはすこぶる良い。

 むしろレベルアップまでしてるんじゃないか?

 というぐらいに調子は向上し続ける。

 過剰に回復を与え続ける事により逆の効果となる…心配はなさそうだが。

 念の為、増えに増える魔力を体外へ無駄に浪費するべく奮闘中。



 問題は自力で抜け出す事が出来ない状態である…



 端っこに行けばループして何のとっかかりも得られないまま過ごす事。

 どのぐらい経っただろう?

 これも何かしらのスキルの効果なのだろうか。

 暇になると落下するのも飽きたので今度は無限に上昇してみるも意味は無し。

 逆KGB現象である。エキサイトしすぎたバイクのあの現象でもある。


 こんな状況も魔力的な影響を受けているのであれば…

 そう思い立つ事も何度目か。


 ふと思い立ち『ラプラス感応』のスキルを強くイメージし深く瞑想する。

 このスキルをメインで意識した事が無かったもので失念していた。


 思いつく漫画的な閉鎖空間のイメージが先行しすぎて

 吸収したり破壊してしまえ~的な行為しか思いつかなかったのだよ。

 今に思えば魔力関連のユニークスキルなので期待は大きい筈なのにね。


 意識した結果。早速、眠りとも似た感覚を覚える。

 そして暫く後に目を覚ます。

 何も変わらないが普通に眠るのとはまた違った感覚を覚えた。


 続けて『ラプラス感応』を感じつつ深く…深く内面に感応する。

 意識が離れる。やはり眠りとはまた違った状態となっている。


 明晰夢とも似た感じだ。

 夢を夢と認識した時。その夢の中でなんでも出来るアレですな。


 そういえばネーサンの『ラプラス演算』とやらは

 未来を計算して予測とか言ってたっけ。知覚速度も上昇したとか。


 自分のこの『ラプラス感応』の正確な能力とはなんだろう。

 とりあえず魔力が伸びたのは確定。

 それに関係するイメージで言えば。


 ふむ…むむむ。

 イメージを深めれば脳内で明確な3Dイメージを組み立てて

 触感まで再現する事が出来るではないか。 


 文字や図形は簡単だ。

 魔物や人物像も覚えているものであれば最新PCのような明晰具合で再現可能。

 『視覚的呪術』にも影響していそうだ。

 このスキルを応用すればもしや…簡易に願望を満たせるやも。

 だがそれはこの場を抜け出してからだ。


 折角の明晰夢。しかも自由自在に操作可能。

 思うがままに挑戦あるのみ。


 まずはこの何もない空間を装飾してみよう。

 このループ空間に森林フィールドを作成。


 ほんの数舜前まで、何もなかった場所が

 瞬き一つの間にこの空間は見覚えのある森へと変貌した。


 質感有り。触感有り。そのまんまに草木に木々に生い茂る。これは楽しい。


 生物は作れるか?

 出来そうな気はするが、中々上手くはいかない。


 ならばスキルを使用してなんとかならないだろうか。

 ゴーレム作成なるスキルをネーサンは持ってたが自分は持ってない。

 魔力でどうこうする物ならすぐにでも覚えられそうなものなのだが。


 『生命の根源』は持っているが対象物が無いな。

 元より何もない空間なんだもの。


 ふむ…守護者の代わりの話し相手を作る構想は失敗か。


 ちょっとした神様気分にはなれんかったね。

 しかし…どうにかこの明晰夢状態で何か出来んものか。


 生物を作る願望が沸々と沸いてくる。

 生命への冒涜。禁忌だとかなんとか。

 そもそもに自分を止める者など誰もいない。

 ユグドラシル系の魔物はある程度魔物を自在に作れるらしいし。

 自我が無いとまでも何かを作る事はできないものか?

 可能であれば話し相手が欲しい。何か出来る事はないか考える。


 ふと…ループ空間の全体像を見渡せないものかと移動した所。

 あっさりと…今までの苦労はなんだったのか。


 実にあっさりとループを抜けた。


 部屋だった。

 広めの部屋だった。

 見渡せば何もない。部屋だった。

 建物の中だろうか。壁だけで他には何もない。


 一つだけあった。

 おかしな球体だった。

 蛇の魔物である『ユグドラシル・ティア』の姿があった。

 球体の中に居座る。とぐろを巻いて動かぬソレは。

 多分自分だろう。明晰夢の状態となった今だからこそ抜けられた?


 それとも願望を夢とした。単なる妄想なのかもしれない。



 …

 ……

 ………

 結果。何も出来なかった。

 夢から覚めれば再びループ空間の中にて何も出来ない時へ戻る。



 ふむ。『ラプラス感応』にてこの幽体離脱?

 それとも明晰夢状態となれば外には出られる?

 どちらにしても範囲を調べよう。どの程度外まで行ける?


 人間が部屋の外にいる。

 何も考えずの行い。咄嗟の事で姿が見られた。

 筈だったのだが。気付かれてはいなかった。

 見えてない? 感じられてない? 認識されてない?


 他の人間の視界にも入るが特に何も変わらず。

 触ってみるもすり抜ける。

 まるで幽霊にでもなった気分だ。


 これ以上。深入りはしないようにしよう。

 とりあえず観察だ。知識に無い人間達を夢に見る…ありえるか?

 普通に有り得るな。勝手に妄想してどうにでもなった覚えはある。

 故に今は観察だ。現実か夢かを判断せねばならん。


 服装は肌の露出が少なく。

 温かそうだ。結構厚めに着ているようだが。

 誰もかれもが、厚着だ。

 

 そういえばネーサンが言ってたな。

 聖都は雪国だとか。

 今の自分の判断材料は乏しいが。

 状況を察するにその聖都グレイシア内部と予想してしまう。


 ふむふむ。女神様は近くに居るのかね?


 そう思い辺りをスニークミッション!

 MP具合は全然心配ないようだ。

 減っていたとしても回復量が大幅に上回っているようだし。

 イレイサーのあの時の感じとはまた状況が違うようだ。


 やはり…単なる明晰夢。

 それを感覚として感じ取っているだけなのかもしれない。

 視界と呼べる範囲にも黒い闇が見え始めてきた。

 どうやら限界地点のようだ。意識が引っ張られ。そして覚醒する。


 ループ空間へ戻る。


 ふむむ。あれから何度か繰り返してみたが。

 大して距離を離れられずに戻される。


 何か良い手はないものか。

 折角の抜け道が見えたと思ったのだが

 『ラプラス感応』には分からぬ事が…謎が多すぎるのですよ。


 理解を深める必要がありそうだ。

 時間の使い道はコレしか思いつかないのだ。


 最終手段はあるものの。

 使ってしまえば真のバッドエンドになる可能性が高い。

 出来る事がなくなればその選択を選ぶだろうけれど。

 今は調べる事がある。その選択はまだ先の話だ。



 という訳で。さらなる深みへ。『ラプラス感応』!



 ………

 ………

 ………



 気が付けば、そこは森の中だった。

 見覚えのある森の中だった。

 いつものデータ3をロードした蛇の魔物として生れ落ちたあの時の光景だった。



 あれ、ロードしたっけ?

 しかしロードを発動したら守護者がいないままの世界になる恐れがある。

 そう思い、ロードを思い留まっていたのだが。


 …そうそう。そうだった。


 大樹がないな。

 データ3のロード直後にはあの大樹がある筈だ。


 となるとコレは…『ラプラス感応』による明晰夢か?

 その可能性が濃厚だが、予想とはまた違った効果になっておる。


 何か…役に立ちそうな効果があれば良いのだが。


 そう考えていると、視界の先にはリトルスネークがいる。

 なんとなく、ソレが自分自身であると理解が出来た。


 今の自分は幽体のような存在。


 その目の前の蛇の魔物。

 リトルスネークは、まさに生れ落ちたその瞬間だったのだろう。

 あの時の自分の様に、体も動かせずウネウネ蠢いているだけの蛇のような何か。


 理解も出来ずに、ただただ戸惑い現状を理解しようと必死に頭を働かせている所だ。


 そうそう、この時。

 頭上で何かが高速で駆け抜けていったんだっけ。


 思い出しているとそれはランクDの魔物。『バインドホーク』であった。

 今になって見てみれば大した事のない魔物であるが。


 麻痺毒持ちの鳥が上空より襲い来るとなれば脅威なんだろうね。普通は。


 ともあれ運が良くリトルスネークは見つからずにやり過ごせたようだ。

 尤も食われた所で呪いの効果で相手側が死ぬだけなのだが。


 そしてリトルスネークは移動を始めた。

 蛇としての動きはまだまだであるな。

 傍からみれば…ありゃあカモだ。妙に真っ直ぐ動こうとして遅くなっておる。

 鈍くさい蛇どころか。出来そこないの蛇としか感じられない。


 

 蛇行運動で進むのが一番楽なのだが。

 無理にアコーディオン運動しようとするものだから体力を無駄に消費している。

 どろどろした地形とかならそれで良いのだが今は…と言っても仕方ないな。

 最初の頃の直進運動しようと四苦八苦していた時よりは幾分かマシだが。

 おっと横ばい運動始めたぞ?

 あの動きは足場が不安定な場所でなら進みやすいのだけど。

 今のこのちょっと凸凹してる程度の草地や土壌であるならやはり一番は…


 蛇行運動が最高である。一番動きやすくて尚且つ早い!

 ちなみに蛇行運動とは筋肉の収縮を主に利用して、うねうねと動くのだが。

 蛇の動きで一番良く見る系の動きなのではないか?


 他の動き方も別に悪くはないのだが。

 例えば直進運動での移動方法は獲物に気づかれずゆっくり動く忍び足。

 アコーディオン運動は細かい動きをしたい場合に移動する系の動きで。

 横ばい運動となると。砂地とか高低差が多い場面での移動が便利とか。


 つまり。人間で言う所の走ったり歩いたり段差上ったりな使い分けですな。

 そう考えると、目の前のリトルスネークは

 色んな動き方を生まれたての状態で何が出来るか確認しているという訳か。

 我ながらに流石は自分としか言いようがない。


 そんなこんなで水飲みの生活。他には何も食わずで3日ぐらい経ったではないか。

 良く生き延びたものよ。直進運動でひっそりと生き抜いているみたいだが。

 そろそろ移動も落ち着いてきて現状もあらかた理解した模様。


 おっと、目の前でアートウルフが高速で駆け抜けていったな。

 …いや、あれは普通のアートウルフではないな。上位種の『ルーンウルフ』だ。


 この世界の魔物の進化形態は分かりやすい。

 魔法寄りに進化するか。物理寄りに進化するか。

 もしくは状態異常と生命力に特化した特殊な種類が幾つかある程度だ。


 例えば今の高速で通り過ぎていったあの狼の魔物。

 魔法系であるな。狼の癖に元素魔法を操りつつ頭も良い。

 ちなみに聖都の優先的に討伐される対象の一つだ。


 ランクCの魔物なのよね。

 ランクがC以上。尚且つ魔法寄りの魔物は狩り尽くされる対象。

 物理寄りは若干甘め。脳筋タイプは扱いやすいから?


 とりあえずそんな方針が聖都の意向。

 怠れば魔王と呼ばれる程の強さになり得る能力を持ちやすいとか。

 その中でもスネークリングという魔物はさらに特別。

 ユグドラシル種になる可能性が高い為に高い賞金までかけられてるとか。

 尤も、そのユグドラシル種の枠も自分が成り代わったが故に

 それを理由として狩るのはもう無意味となったのだけれど。


 …あのルーンウルフも森の中で生き抜いて相応の強さを得たのだろうに。

 その存在が認知されれば人間側に狩られるのか。


 しみじみと助けてやりたい思いが沸いてくるが。

 今の自分には何も出来ん。しかも今は過去の出来事を夢に見ているだけである。

 ふぅむ、そうこうしている間にリトルスネークが食事をしておる。


 ………あれ?

 何かがおかしい。


 木の実を食べて、栄養補給をしておる。

 蛇って肉食なんじゃなかったっけね。雑食だっけ?


 まあ…元人間には関係ないか。蛇というより魔物だし。

 問題は消化能力があるかないか…であるが。

 実際に肉以外も口にしてたから何も問題がないのは分かっている。

 もしもその木の実に毒性があったら、どうなるか知らんけど。

 多分苦しんで死ぬか腹下すぐらいで済むか。今は大丈夫みたいだけどね。

 


 しかし…過去の出来事とは違うとはどういうことか?

 思えば、守護者との会話を一切しておらん。


 とりあえず元気にはなったようで再び移動を開始している。

 その後も慎重に散策していたようだが。

 ふと…怯えた様子で物陰に隠れる事になった蛇の視線の先には。


 先ほどのルーンウルフだ。

 …察知されておる。



 詰んだな。



 戦力の差は圧倒的である。

 逃げる事は見つかった時点で適わん。


 今の今まで自分が生き抜いて知った事の一つとして。

 リトルスネークは魔物にとっての、ご馳走の一つと認識している。

 魔力が多く含まれ、自然と沸いてくる魔物であり。


 味は悪くない。経験値が豊富。尚且つ弱い。


 であるのなら。見つけておいて逃す訳が無い。

 意識を向ければ必死に木に登り逃げる蛇がいた。


 多少考えるそぶりを見せたルーンウルフだがすぐさま行動に出る。

 ちょっとした風を元素魔法によって発生させると蛇はあっさり落下する。

 落下地点はルーンウルフの大きく開けた口の中だった。



 ぐちゃり。



 あっさりと噛み千切られた蛇はもう動かない。

 そのまま殆ど丸呑みと近い状態で体内に招き入れられた蛇は死んだのだ。

 暫く待つものの、何の変化もおこらない。


 リトルスネークであった自分に似た何かは他の魔物に食われて死んだのだ。



 ………

 ………

 ………



 覚醒した意識の中で再認識する。

 あれ? 過去の出来事じゃなかったの?


 何のスキルも持たず。

 普通のリトルスネークとして生れ落ちた場合の自分の末路。 

 そんなイメージで考えるのならば納得が行く。


 相変わらずループ空間の中で無限に上昇をしながら考える。

 この『ラプラス感応』他にも使い道があるんじゃないか?


 条件付けたシミュレーションを行う行為にもうひと手間。

 何かをプラスすれば面白い事が出来そうだ。


 そして当初の目的を忘れ、楽しみを覚えた蛇の魔物は

 気の向くままに逸れた方向へ思考を向けるのだった。



   *   *   *

PCと化した蛇のヨルン。

これで永遠に引きこもる事が可能となった。

バッドエンドからノーマルエンドぐらいになったかな。

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