ステータスのみでは測れぬモノ
―――確認 一部スキル修復完了 生きてますか?
うん。生きてる。
―――確認
『眷属化』『生命の源』を再取得。
『首狩り』『空間歪曲』『憑依』『透明化』イレイサー時に取得
おっとそういえば進化してたんだっけ?
初めての進化先故に…慣れる必要があるが。
スキルの取得は問題無く行われていたようです。
ティアちゃん姿で過ごしてたから眷属化と子供作りが復旧かな?
昨日は色々あったから殆ど覚えてないや。
そういえばネーサンは?
―――確認 冒険者達と話し合っているようです
へえ、ちゃんとやってるのね。
自分も参加した方がいいかな。
ネーサン一人だと心配だし。
というか…もしかして自分、すっごい寝坊した?
―――確認 今はお昼時です マイマスターは重役出勤
おうふ…まあ昨日は色々凄かったし
ネーサンが特に…
―――確認 昨晩もお楽しみでしたね
毎晩お楽しみ…みたいに言わないで下さい。
誤解されてしまいます!
…というか、気のせいかもしれないけれど。
誰かの視線を感じてた気がする…
―――確認
冒険者。主に女性陣が様子を伺っていたようです
守護者が見張っていましたが特に邪魔をする気配なし
マスターと同じく睡眠不足となったようで未だに眠っているようです
あ、これもしかして勘違いされてるパターン?
―――確認
マスターがずーっと喘いでいましたからね。
リムちゃんはホクホク顔で上機嫌な様子。
心のスクリーンショットに収めておきました。
後で確認させてね。
とりあえず、今するべき事は。
―――確認
リムちゃんより伝言
起きたら自分の所に来るように
寄り道したら解剖するよ♪
はい、分かりました従います。
というか守護者ずるい、リムちゃん呼ばわり。
―――確認
守護者の特権です。
マスターにしか分かりませんし。
それよりも、起きたのが察知されてますよ?
えっ…マジっですか?
急がねば、解剖されとうないです。
スキル発動!『空間歪曲』!なんとなく出来そうな気がする!
えーと、ココをこうして。向こうの空間とひっつけて。
イメージとしては本のページともう一つのページをくっつける。
さらに、密着したページに自分が移動し何事もなかったかのように戻す。
そんな感じに空間の歪曲を収めることの、この間僅か1秒以内。
目の前には見知った顔が勢ぞろい。
冒険者の驚き様は凄かったが。
ネーサンだけは平然と椅子に座りなさいと促してきた。
(みなさーん。オハヨウゴザイマス!)
「さて、ティアちゃんも来た事だし。お話の続きしましょうか」
「おう、俺達としては貰うもん貰って帰れればそれでいい」
「自分達の未熟さを実感させて貰ったよ」
「生きて帰れるだけ有難いさ…」
(んで、途中から来たんで分からないけど。お土産とかの話してたん?)
「そうよ、ローヤルゼリー欲しいみたいだし。
ティアちゃんの朝ご飯から引いて彼等にあげたところ」
(なんだってー! ボクの朝ご飯!?)
「別に良いじゃない。昨日あんなに食べたんだし。
お酒もいっぱいのんだでしょ?」
(そ…そりゃあ我ながらに食べ過ぎた飲み過ぎたと思いましたけど!)
「今後暫く高級品は無し。生活レベル落として過ごして貰うわ」
(は…はいぃ。分かりました)
「素直で宜しい。という訳でアンタ達。
一応それなりに話も聞いてくれたし、私も楽しめたから気分が良いわ。
でも帰るにしても他の子達が起きてからじゃないとね。
今のうちに欲しいもの…他にある?」
「そうだな。欲しい物…というか折角なんでな。そこのティアちゃんだっけ」
(んっ…ボクの事?)
「そうそう。オマエの事だ」
(うん。何かようかい?)
「アレだ。もう一戦やらないか?今度はサシだ」
(んんっ…? もっかい戦えって? 別に良いけど。ネーサンは?)
「別に、ティアちゃんが良いなら構わないんじゃない?」
(それなら、やっても良いけど。アサシンヴァイパーで良いの?)
「おう、ソイツで丁度良い」
(それじゃ、表で早速やる?)
「話が早いな。こっちとしても気になる所があってな。
一発やった方が早いんだ」
(ほーい、朝の運動~。魔物式~♪)
そんな流れで戦う事となってしまいました。
ディッグという男。もしや戦闘狂?
そう思ったがどうやら他に理由がある様子。
考えても分からないのでとりあえずは相手をしてあげましょう。
自分としても昨日の惨敗っぷりは心に響くものがある。
相手としても手加減を感じとり、
納得がいってない所があったのかもしれない。
となれば本気で相手をしてやるべきか。
愛があれば戦闘行為すらも癒しと感じる自分なので何も問題はない。
純粋なる比べ愛なのだ。人間側にもそういう類の感情が備わっているようなので、
あながちこの世界の交流としては間違ってはなさそうです。
であるのならば、対峙し変身…アサシンヴァイパー!と致しましょう。
一瞬の光に包まれ、気分は変身ヒーロー。
もしくは魔法少女? それとも宇宙的ななんとか刑事?
この世界だと、どんな例えが良いだろう。
そもそも変身する系の魔物や人間はいるのだろうか。
便利スキルの存在がある以上、可能性は否定できん。
ともあれ、目の前に対峙するディッグとやらは自信満々である。
しかも…素手である。魔物に…素手とな?
確かに…ディッグとやらの攻撃力には凄まじいモノがあったが。
面と向かって、1対1で…素手とはナメられたものだ。
―――確認 データ1にセーブしました
よし、セーブ完了。流石にあの態度は気に食わん!
今度は一発ぶち殺してくれようぞ!
それが自分にとっての癒しとなるだろう!
どてっぱらに風穴穿ち…内臓ぶちまけ頭部をかち割り脳髄撒き散らして…
その後にロードしてやんわりホールドしてくれよう。
魔物的な感性が少し戻ったが、これが今の自分にとっての癒しの一つ!
殺意をこの身に宿し…いざ、ユクゾ!
ドカッ
ゴスッ
ベチッ
ガンガンッ
ベッチーンッ
あら?
特別な描写も必要ないぐらいに一方的です。
ボッコボコなんですが自分?
真正面からぶん殴られる。痛い!
避ける! と思えば先読みされ拳が飛んでくる。
間合いを離し触手を振りぬく! それを掴まれ投げ飛ばされる。
何これ?
やっぱり自分って弱いの?
相手が強すぎるだけなの?
いや…能力値的には勝ってる筈なんだが。
経験の差? 技量の差? 平和ボケしたヨルンの所為?
委縮してる訳でも無し。手加減してる訳でも無し。
「おい、昨日のアレはどうした?」
(んあ…? アレ? いてて…ちょっと待ってよ)
「手加減してんじゃねーぞ?昨日の剣術もどきだよ」
(ああ…アレ? 素手の相手にやるのもなんだかなって思って)
「別に構わねーよ。ソレ見せろ」
(分かったよ。おー…やってやるさ)
むぅ、どうやら自分が思っていた以上に相手の方が格上だったようだ。
アサシンヴァイパーで負けるとは全く思わなかった。
身体能力で大幅に上回っている筈なのに、まだまだ未熟な自分よのぅ。
納得はいかないが致し方なし。リクエスト通りに蛇王流剣術といこうか。
触手を正眼に構え、その後に硬質化。
こうなればちゃーんと切れるし、切れ味も抜群。
包丁替わりにだって使えるし、刃こぼれだってしたとしても修復可能。
そもそも本気で振れば岩だろうが両断出来る触手なのだ。
そんなモノを。素手の相手に。どうなっても…知らんぞ。
では今一度…気合を入れ直して~イザ、ユクゾ!
…ビシィッ
…ゴンッ
…パシィッ
…ズンッ
…チュインッ
…バキィッ
ハイ?
続けて4度目の突きを心臓目掛け突き出した所で。
逆に胴体、蛇の心臓部分へ強撃を受け。
自分側が間合いを離し、逃げの手を選んでしまう事態となってしまった。
何? なんなの?
こいつ化物? いや、化物側はこっちなんだけども。
内心での焦りようは相当なモノに膨れ上がってしまった。
「やっぱりなぁ…魔王さんの言う通り」
(うー…むむむぅ…何と言っても怒らないから。はっきりと)
「弱い」
(はい、分かってましたよ。付け焼刃ですものね)
「といっても俺からみりゃの話だ。
付け焼刃かどうかは別の話だ…今度はソイツとやってみな?」
(ん? 剣士さん? 今度はそっちと相手すれば良いの?)
「おうよ。やってみな」
という訳で第二ラウンドはディッグさんのお仲間のようです。
剣士だけあって、その構えは様になっております。
今の自分はガラスのように繊細な心へヒビが入っている状態ですが。
ここで逃げる訳にはいくまい…
自分の心は割れても不屈のゲル状物質で即座に復旧可能なのだ。
対峙するは長身のちょっぴりイケメン剣士。
どこぞのシミュレーションRPGなら敵として出ても説得可能っぽい顔立ち。
間違いなく仲間顔だ。そうでなくても一貫した信念を持ってそうな男だ。
ついでに武器も東洋風、必殺確率が高そうな剣でも持っていそうだ。
「手加減は要りません。私を殺して下さっても結構」
(あっ…お願いします。自分も死ぬ気で掛からせて頂きます)
そんな関係の無い事を考えつつ対峙していたらお声が掛かる。
不意を突かれ思わず考えなしに返事をしてしまい、
お互いに一礼の後に構えなおす事になった。
剣は正眼に構え、目の前に剣をおき。
両者共に出方を伺う形となっている。
手元の動き、足捌き。
ん…良く見ようとしたが、足元は袴のようなもので隠されている。
なるほど服装でその部位を隠す事により意図を見破られ難くしている訳か。
手元にも紐を巻き付けているようでなんとも。
視認するだけで惑わすような印象を少しだけ受ける。
ふむ、ともあれ雑念は捨てよう。
同じ剣同士なのだ、此方は触手だけども。
先ほどのような失態は…見せられん。
そうして対峙する事、数十秒。
体感でその数十倍も経っている感覚を覚えている。
一挙一動見逃さず、エセ達人の境地に達した気分であるが。
気を抜けば一瞬で切り伏せられる。
あくまで脳内イメージであるが。
やられる妄想であれば幾らでも沸いて出る。
この辺が自分が弱いと一蹴された理由の一つだろう。
さあて、考えていても仕方ない。
動きが欲しい。自分の集中力が何時まで続くかも分からない。
まあ…攻めるとしたら。魔物である自分から。だよね。
辛抱堪らんのだから致し方なし! やはり魔物はこうでなくてはならん!
体を弛緩させ、一瞬の踏み込みの後にまずは突く!
剣士はその動きを見切っていたようで
体を横に最小限のズラしで避ける事に成功していた。
対して自分は突き出した剣を魔物として作られている
馬鹿げた筋力により強引に横薙ぎへと転ずる。
剣士はゆるりと体を半回転。
その後に蛇の頭部へと流れるような動きで剣を突き放つ。
対して自分も蛇であり、柔軟さならば人間には負けぬ自信がある。
どんなに無理な体勢でも、体の移動には余裕があるものだ。
ひらりと身をかわし、何の気無しに続く剣撃を受け流し。
視認出来ぬ位置から繰り出される剣も問題無く対処出来た。
しかしそれは相手も同じ事。
此方の触手も一切通る気配が無い。
裏をかいて意識の外より打ち込むか。
それとも知覚を超えた速度と威力を繰り出すか。
思考の合間にも剣の舞が繰り広げられ。
殺陣の間合いで金属音とも似た音が響き続ける。
くるりと1回~2回~3回と高速回転。
方向感覚は一切失わないので何回転しようが問題無い。
続く剣撃、鈍い金属音が何度も響く。
背面側でも想像通りの位置へ剣音は続き、再び向き直る。
触手に関節等存在しないが故に、
ありとあらゆる体勢からの攻撃で裏をかけないかと模索したが。
その全てはいなされた…
お~、おー。やるではないか、剣士さん?
しかしながら、相手側の剣筋も見切りやすい事この上ない。
対して自分の触手剣も攻めきれず。
均衡は依然として続いていた。
この状態を打ち破るにはどうすればいい?
剣技で圧倒。力任せにゴリ押し。
剣士として考えれば前者を選ぶだろう。
だが、自分は魔物である。
後者を選びたい、強引に押し切りたい。
そうした所を相手に打ち破って貰いたい…
おっと…またまたこれは、負けに向かいたい思考。
勝つには…完全に勝利する為には。
技量においては今の所は同等、認めよう。
しかし敗北感を与えるには技で制圧する以外にあるまい。
相手が何故、自分の剣筋を見切れるのかは分からないが。
何か理由がある筈だ。
自分の癖?
それともスキル?
見た所、確かにスキルとして見切りがあった覚えはあるが。
自分もその見切りとしてのスキルは持っている。
故に、ココまで勝負が長引いている。と考えるのが自然か。
しかしこの辺のスキルは所謂身体能力の向上らしいが。
体感では知識の積み重ね、その延長上のようなモノだ。
言うなれば。現代社会における。資格を取得しているようなものです。
今の自分は『見切り』4級です!
もしくは『見切り』4段なんですよー。
そんな感じで目に見えたスキルで分かりやすくなってると考えれば良い。
能力補正は後から付いてくる。持ってない奴よりは確実に強い筈なのだが?
そう考えるとディッグとやらのあの馬鹿げた強さはなんだったのか?
疑問は深まるばかり。思考が逸れたがお互いに見合ったまま時が過ぎている。
この間、思考の時間は僅か0.5秒。
達人との戦いであったらなら自分の首は跳んでいる。
脳裏にふと、過去にこのアサシンヴァイパーの姿で出会った事のある、
どうしても勝つことの出来なかったあの男の姿が過ぎり、
失礼ながらも目の前の剣士と重ねてしまう。
うむ、目の前のこの剣士には負ける気がしない。
落ち着いた所でそろそろ、意を決して次なる手を打つ頃合いだろう。
体を下し…最大限の弛緩。脱力。全ての意識を来るべき速度の制御に備え。
数瞬後に間合いが無かったものとなる。
互いに密着し、自らの肩で体当たりを受けた剣士は大地より足が浮き。
次なる剣撃は全て、速度も力も伴わない行動となる。
剣だけかと思ったかい?
地に足を付かぬ剣等、この体の前には無意味。
相手にとっては詰んだであろうこの状況。
次なる一撃は。
『首狩り』発動!
容赦なく。無慈悲に。くれてやろう。
初の犠牲者は。剣士君…キミだよ?
ザッ―――
でもこの行動って、もしかしてゴリ押し?
自分なりに考えた技の一つだったのだが。
どうにも技量とは呼べそうもない結果になってしまった気がする。
嗚呼…赤い花が咲いたよ。キレーダナー。。。フッシャー!
* * *
いちげきひっさつ!
首が跳ね飛ばされた!
致命傷を受けた!
ゲームでは確率で死亡とかよくありますな。
逆に死んだだろコレっていう攻撃で死ななかったり考えると面白いものです。




