魔物視点であれば観光日和
さてさて。お待たせみんな。
方針が決まったぞー。
観光だー!散策だー!人間の町がどんなものか見て回るぞー!
人間の町には食べ物を扱う場所がある筈だー。
(我に続くのじゃー旨い物を探しに行こうぞ!)
フシャー!ヒャー!クシャー!ヒョー!
ルォー!グオー!ゴアー!フゴー!
キキキッ!シュッ!クケー!ロー!
予想通り、みんな腹を減らしていたようだ。
今までとの気合の入れようが全然違った。
ちょっとした略奪行為だが致し方なし。
魔法使いのおっちゃんは裏切れないし。
かといってこの数を放置していては人間達を襲いかねんし。
(おっと皆さんココは肉屋のようです。放っておくと腐るので頂きましょう。)
(さてさて、果物が転がっています)
(傷が付いて勿体無いので頂いてしまいましょう)
(おっとこれは? 海産物ですよ)
(血塗れだから今の内に食べちゃいましょう)
(おお、これはタマゴだね。こんなに荒らされて…全部頂いてしまいなさい!)
(こっちには…香辛料?
それに干し肉。うむぅ。保存が効くものは残しておいてあげなさい)
土地勘は無いけど運良くあれこれ見つかるものだ。
交易盛んな町なのかと思いつつ。第2の防壁が存在するのを確認し。
熱源感知にて観察すれば、中には無数の人影が。
どうやら、騎士と呼ばれる系。お国を守るお仕事をしている人間達のようだ。
事を構えるにはイカんと思い方向転換。みんなー戻るぞー。回れ右~♪
ちょっと進んだら待機しててね。食べたばっかりでお腹一杯でしょ?
そして自分はみんなと逆へ進む~
この選択は吉とでるのか凶となるかはお楽しみ。
(どれどれ 出てきて良いぞ お三方)
『視覚的呪術』にて交渉開始のお時間です。
(我の目は ごまかせんぞ 人間よ)
そうしてやって来るは、最初に出会った3人組みよりも屈強な騎士が一人。
女性であろうナイスなスタイルの軽装騎士が二人。
うーん、こいつぁ、デカイ。
何がって?どっちもである。
体格がすんごい騎士様に。
はち切れんばかりのふくらみを持つ軽装の女騎士。
これはもう、戦闘になったら体ごとぶつかっていくしかあるまい。
なんて観察していれば、ごっつい騎士様が話をかけてくる。
「貴様が魔物の親玉か?」
よしよし、問答無用で襲ってくるような感じではなさそうだ。
やはり、言葉が通じるというのは大きいねぇ。
(いや 襲ってる魔物とは また別件 先程の蛇達の 統率者といった所だ)
威圧するも考えたが、相手は騎士様。
さっきの3人組みとは思考もプライドもまったく違うだろう。
「それなら!」
「貴様を倒せば!」
そして後ろの二人は喧嘩腰。
そんなに喧嘩っ早いと可愛い顔が台無しだぞぉ。
なんて言いたいトコロだけど蛇に言われても嬉しくあるまいて。
「待て。お前等。情報が得たい」
「………」
「………」
お~、クールだねぇ。
後ろの二人も従順ですなぁ、好きですよ。そういう関係。
(我も 情報が欲しくてな 人を呼びつけておいて
尚且つ操ろうとする輩が居るようで 少し懲らしめてやろうと思うてな)
「………?」
「こいつ一体何を言って?」
「訳がわかりませんよ騎士長」
そりゃそうだ、自分も黒幕なんて知らないもん。
相手からしたら自分が一番黒幕に見えちゃいそうだもん
(まあ 無理もない 我 魔物だし)
「ぬぅ、状況が掴めんな。敵意は無いようだが。」
「侮ってはなりません!」
「そうです。ランクCの魔物ですら引き連れていた魔物ですよ?」
「そもそもなんです?この文字」
「私達より綺麗な字ですよ!」
そうそう、あんなに大群引き連れてるんだもん
でも、話をする為に遠ざけたのよ?分かる?
しかし…結構真面目で考えているかと思ったけれど。
意外と後ろの二人馬鹿かもしれない。
「うむ、私も分からんが。対話は出来るようだ」
「もう少しで場内に入れると思ったのに」
「あの蛇達。道を塞いでいますよ…」
おいおい、やっぱりあの後ろの二人。
団長の話聞いてあげなよ。団長さん一人なら可能性はあるかもしれないのに。
きゃーきゃーわーわー何事かと言い争いをはじめる女騎士二人。
団長さんも困っておられる。
(あーあー、お話良いか?
我 魔物だし 怒ると 君達の事 たーべーちゃーうーぞー♪)
「………うーむ、すまん」
「団長!どうします!やる気ですよ!」
「イヤですよ!私!蛇嫌いなんです!」
むぅ、面と向かって嫌いなんて言わなくても。
ちょっと不味ったかな、冗談なんて通じないのについつい。
おいしそうなカラダしてるからなんて言い訳でも考えとく?
でもどっちにしろ捕食的な意味で捉えられるよね。我、蛇だし。
(で 戦況どうなよの? 悪いの? 負けちゃうの?)
「いや、調子が狂う。そもそもお前達はなんなんだ?
襲ってくる訳でもなし。他の魔物をその、なんだ、食ってるし。
なんだかんだいって、街中の人間を城壁内に連れてくのに一役かってたりもするんだが」
「あれですよ。頭悪いんですよ」
「うわぁ、今も魔物同士で食い合ってますよアレ!」
見れば背後ではちょっとした戦闘が始まっている。
Fランクモンスター程度なら我が軍の勝利に揺ぎ無し。
勝手に近場で自由行動なんて言ったからあんな状況になったんだね。
多分人間も襲うだろうから、そのうちどかしておこう。
(言っただろう 情報が欲しいって 今の所は敵意ないよ)
「魔人だ 我が国だけでなく 全世界の国へ戦線布告し 魔物を呼びつけているようだ
背後には 魔王である*****が関係しているようだが。その辺は推測だな」
「団長?それって話ちゃ…」
「その情報って。民間には…」
うむうむ。後ろの二人が馬鹿を演じている訳でなければ。
嘘ではないようだが。
ここまで馬鹿だと逆に疑ってしまう。
あの二人…底が見えない。
(なるほど 魔王に魔人と 民間人はそれを知らぬ訳だ)
ともあれ信じよう、魔王や魔人とやらが存在し、こうして実際襲ってる訳だ。
「別に魔物であれば知っている情報であろう?何を確認する必要がある」
「まあ、魔物相手なら大丈夫よね。」
「他に誰も聞いてないわよね?」
…もはや何も言うまい。後ろでコソコソ話しているのがバレバレである。
…むしろコソコソ話してるのを聞こえないと思ってるのなら。
…いや、むしろギリギリ聞こえるように話しているのか。
…だとすれば策士だ。だけどこの程度の情報で騙しあいなんて存在しない筈。
…つまり、ただの馬鹿だ。そう結論付けよう。
(察するに他の魔物達は別に 魔王とか魔人とか関係なくただ暴れに来ただけ)
(魔物達 馬鹿だから 魔法で暴れる矛先をココに向けられているだけ)
「ほう、そういう考え方をするか。確かに言われてみれば。成るほどな。
統率者の頭を叩くという方法は間違いかもしれん」
「団長、何言ってるんですか。」
「魔物のいう事ですよ?」
「だが、お前等?魔物が話をしている所を見た事あるか?」
「いえ、全然。」
「何気にあいつ、魔物は馬鹿だからとか言ってますし」
(まあ 我は特別 でも頭を叩く方法は間違ってはないかもしれんぞ?)
「ふむ、どういう事だ?」
(統率者の頭を叩き 魔法での操作を解く そうすれば呼ばれた魔物は森に帰っていく)
「成るほど、そう来たか。となると、どちらにしろ作戦に変更はないか。
しかしここまで話しておいてなんだが、お前。本当に魔物なのか?」
(魔物とは呼ばれている ついでに種族も『スネークリング』
となっておる。ちょっと特殊じゃがのう)
「………『スネークリング』だと?」
「知っているの団長?」
「私知ってるわよ。」
「絶滅したと聞いていたが。この目で見るのは初めてだ」
「へぇ、知らなくても不思議じゃなかったわ」
「全然勉強してなかったのね****」
へいへいそうですかー………!?
って、さらっと絶滅種だとか言われたんですけど。
最近の情報で一番驚いた言葉である。
(ふむ 我にも予想外 個人的に 気になるな)
「話に聞いていただけだ。森は未開の地。
その種が生き残っていても不思議ではないだろう
少なくても世に出回っていた『スネークリング』という種が、
根絶されたという話を聞いていただけだ」
(そうか 魔物を相手にする 人間にしては 気が回る奴だ)
「元より、対話が出来る相手として私は君を認識している
種族は違えど友好的に出来る相手なら私は無闇に虐げたりはしない」
………目から鱗である。
………蛇ながらにウルッと来た一言だ。
………これでは不味い。続けて対話だ。
(感謝する そして聞くが 貴殿は何を目的として 行動しているのだ?)
「無論。この国を護るため。どこぞに居るであろう首謀者を討ち取る事だ」
「その為に我等は行く!」
「本当に違うのよね蛇さん?」
(ならば我も助力しよう元より我もその首謀者が気に入らなかったのだからな)
「それは助かるが。信じてよいのだな?」
「…信じるんですか。団長?」
「…怖いですよ。流石に」
「だが信じる他あるまい。我等にあの数の魔物を相手に出来るか?」
そう団長が指す先には。まあ当然の如く。ランクC+が2体のCが3体。
続いて数だけなら100を超えるFランクだけでなくEとDも数も多い。
意外ではあるがCランクともなると。お国の騎士達も手を焼く存在のようだ。
「まあ、敵には回したくないですが」
「蛇はやっぱり苦手なんです…」
後ろ二人の子は本当に読めないな。
勇敢な女騎士かと思ったら。
少し話せばヘタレた騎士にイメージが固まってきたよ。
(だが当面は 防衛に徹した方が良さそうだぞ? 騎士達よ)
ふと『危険感知』に反応があったので調べていた所であった。
強い魔法の力を感じ。予感が確信に変わる瞬間。
『呪術』により。
魂の波動を感じる事が出来るようになっていた自分は状況を整理する。
「それはどういう事かな?」
(たった今 我の『呪術』にて 魔物とは違う 軍勢を確認した
我は森の中で生きてきた知識しか無くてな その軍勢が何かの知識はない
だがそれ等の軍の数は 少なくても 千は超えるようだぞ?)
そこまでに多くない知識を絞った結果。
数のみの把握で正確な情報は得られない。
だがそれだけでも十分過ぎる程の結果は得られたであろう。
とはいえ、知識がないにしても。ココは国である。城も存在し。
さらには城内には兵士達も相当数残っているであろう。
自分以外の者が、さらに正確な情報を知っているかもしれないし。
こんな大規模な戦争行為に自分が加担するまでも無いような気もするが。
まあ、乗りかかった船である。手助けが出来るのであればそれを成し。
ただの捨て駒になる程度の役割ならば切り捨てるまで。
「それは本当か?…本当であれば。もしかするとその中に首謀者の魔人が…」
「いや、私達全然分かりませんし」
「数が千とか私達だけでは無理ですよ」
(可能性はある 魔物達もさらに活性化しておる)
(我も仲間もそれ等を感じておるようじゃ)
「一度城に戻り対策を練ろう」
「住民の避難は城壁の中まで、済ませていますし」
「後は私達だけの筈です!」
(この地に到達するまで あの速度であれば)
(半日はかかるな 夜中に奇襲をかけるつもりであろう)
「その『呪術』でそこまで分かるのか?」
(魔法に詳しいものが 人間の中に居るであれば)
(さらに詳しい事が分かる かもしれんぞ?)
(我では 人数も 時間も 勘でしかない)
(呪術とその勘で言えるのが 相当な数の人型が)
(夜中にやってくるだろう だけだ)
「君はどうする? なんなら我等と一緒に城壁内へ」
「え、本気ですか団長?」
「絶対混乱しますって」
(申し出は嬉しいが 我もその連れと 同意見だ)
「確かにそれはそうだが…何分、話が飛びすぎて判断が付かんのだ。
ならばいっそ、勢いに任せようかと思ってな」
「団長…何を言っても無駄なのは分かってますけど」
「今日ばかりは。国の命運を左右する事態になりかねませんよ?」
(それならば我だけ内部に同行しよう 他の蛇達はその辺の民家に隠れさせる)
「ふむ、それなら大分マシになるな。私と一緒であれば君…
そうだ、なんと呼べば良いのだ?私は*****と言う」
「もう駄目だ。決定事項になってる…」
「うー…まあ一匹だけなら。」
相変わらずに名前が分からん………が、幸い分かりやすい特徴もある。
名前だけは心のメモに残し、団長さんと呼ぶとしよう
(我の名前は無い 仲間からは 蛇王と呼ばれている程度じゃな)
そういえば、名乗る事等、考えた事もなかった。
とりあえず蛇王とは言ったものの。
必要なかった、といえば必要なかったし。
今後も必要になるものとは思わなかったのだが。
改めて思う、自分で名乗る?誰かに付けてもらう?守護者どう思う?
―――確認
魔物においての名前とは『名前付きの魔物』ネームドモンスター
として扱われ。通常、同種の魔物より強力な個体となります
名乗る為には、大量の魔力。もしくは魔法アイテムが必要です。
現時点では名乗る事は不可能。特にアナタの場合には。
んん…? つまり。今は名前が付けられないと。
しかも、特にアナタの場合とはこれいかに。
もしかして、他の魔物と比べ
必要な魔力やら何やらが多く必要なの?自分?
―――確認 その認識で間違いありません
うーむ、なんとも不便であるな。
呼び名ぐらい、別に勝手につけても問題無いと思うんだが。
まあ、名前が無いなら今は別に良いか。
「名が無いのは不便だが。仕方ない。王と呼ぶには語弊が出るかもしれぬから。
蛇殿と今の所、そう呼ばせて頂く。ご容赦願いたい」
(構わぬ 分かれば問題無い それで 正面から入って良いのか?)
「どうせバレるからな、魔物の探知する結界も城内には敷いてあるのでね。
原理は分からんが、蛇殿がいう『呪術』にも長けた者が城内に居るので、
魔法関連についてはそちらに任せるつもりだ。
だが、くれぐれも私から離れないようにしてくれ。
敵とみなされる可能性もあるし。一緒に居ても警戒される可能性が高い。
だがその辺はどうにかしてみせるから。交渉の一切は私に任せてくれ」
「あの私達は、先に」
「一足先に中へ、ええと。成り行きを伝えに言って参ります」
やる事はやるし、団長とやらも信頼されてるようだ。
女騎士二人は蛇の軍勢を引かせるなり、素早く城壁内へ入っていった。
(手間をかける 正直驚いているぞ)
(しかし時間がある訳でもなし 急がせて貰うとしようか)
「急ぎはするが、城内までは歩を合わせてくれ。
無策という訳ではないから、順次説明していく」
(了解した 我としては ド派手に立ち回って)
(何も問題の無い状況を作って貰えれば 頭を討ち取る策はある)
「ほ…本当か!? 何もかも信じてしまっているが。
私もやれるだけの事はするつもりだ」
(期待はするな 魔物的な 解決法しか我は知らぬ)
「理解した。蛇王と呼ばれるだけの自信があると言う事か」
(ところで そろそろ誰かが此方に気付いたようだが)
「うむ、ではここからは此方の仕事だ。話を合わせてくれ」
(了解した)
こうして、すんなりとは行かないまでも、団長とやらの権限と話術により。
自分は念願の城の内部を見ることが出来たのだ。
うーん、やっぱり実物は違うねぇ。
まるで都会にやっていた田舎者のように自分は周囲の様子を見渡してた。
* * *
初めての観光。
蛇の魔物を引率し先生気分。
ちなみに街並みは火の手があがり人間側の死者も多数という大参事。
主人公の視点外では色々あったようです。




