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蛇と王と魔物と魔人

 これが人間の王。

 なんとも威厳たっぷりであった。

 結構なお年をしているものの。

 筋骨隆々にて大柄な体つき、尚且つ鋭い眼光に覇気もある。

 軽い気持ちでやって来ていただけに、身震いする所であったのは内緒。

 こんな感情『隠蔽』スキルで隠したい。


 いやぁ、帰りたい。ノリと勢いだけで来て良い場所じゃあ無かったね。

 そんな後悔をするも、来てしまったものは仕方ない。

 何も自分に恐れる要素は無いのだ。


 そういう訳で、人生初であり、蛇生初の一国を治める王様との面談である。

 しかし…沈黙が長い。何やら考え込んでいるのだろう。



 こういう時間は長く感じるものだ。

 ものの数十秒でも時間の流れがゆっくりと。

 それでいて永遠に続いてしまうんじゃないかと不安にもなる。

 だが、そんな仮初の永遠は国王の口から洩れる溜息で掻き消される事になり。

 ついに国王が口を開く。



「余が国王である****だ。

 楽にしてよい。話はそこの****より聞かせて貰った。

 魔物でありながら人間の言葉を理解し。文字での対話とはな。

 にわかに信じがたい事だが。こうして姿を見れば納得だ。

 一つ、その文字とやらを見せて貰えんか?」

 何やら思う所があるようで重く口を開く国王。

 そりゃあ魔物である自分の姿を前にすれば言葉に詰まるような事もあるだろう。

 相変わらずに人物名であろう部分は理解できずにいる。

 何度か聞いていれば理解出来るようになるだろう。

 覚える気が残っていればだが。



(我をこの場に招き入れて頂いた事 感謝します

 文字とは我が『呪術』によるもの これでよろしいか?)

 雰囲気に押され、ここでビビッていては先には進まない。

 少々歪な文字と一瞬なってしまったが、一瞬だ。ほんの一瞬。

 うわぁ、すんごい緊張する。このドキドキ感がたまんねぇ…

 内心かなり焦ってはいるが、無表情を貫き通さねば。



「ほお、これがそうか。『呪術』とは面白いものよ。

 余が目で確認出来たのだ。信じよう。感謝するぞ。

 して今のこの国の現状は理解しておるな?」



(城下町の様子はこの目で そしてこれから発生する事象についても)



「ならば話は早い 我が国の兵力は約8千であったが。

 今や戦えるものは千にも満たぬ。

 民間の死者も正確な数は図れぬが相当な数になると予想される

 詳しい話が聞きたければ軍師である、そこの男に聞くが良い。

 余も戦うつもりではあったが、民を纏めない事には動くわけにもいかぬ。」



(詳しい情勢は後に聞く 先ずは単刀直入に)

(我をどうみる? お主らが言う魔物なのだぞ?)



「対話さえ出来れば魔物との交流も等と夢を見ていた時期があったのだが

 この襲撃で諦めていた所で、

 今この目の前に対話を試みようとする魔物が現れたのも事実

 余は信じてみようと思う。

 だが、状況が悪すぎた。遅すぎたのかもしれんな」



(この国が終わってしまう 等と言うのではあるまいな?)



「言うてくれるな、勝つことは出来る。勝つことはな。

 夜分にやってくるであろう奇襲を予見した事についても。我が軍師と同意見。

 兵数に置いても五分。下がっていた士気も今は回復しておる。

 民間人の避難もあらかた完了したおかげ所なのでな。お主達のお陰だ」



(ならば我にも 助力する意思がある 申し出を受けるか?)



「して。見返りは何を求める?」



(ふむ 考えてなかったが そうじゃの)

(首謀者の魔人とやらの処遇を 任せて貰いたい)

(この場に やってくるまでに 働いてしまった)

(食料の略奪行為を不問として欲しい)

(あとは 城内の個人的な散策)

(それと なんか書物が欲しい)

 そこまで言って、場が凍りついたかもしれない雰囲気を味わった。

 見返りをなんて聞かれるものだから、ついつい、何も考えず。

 この発言の緩みようであった。

 後悔するも、開き直るしかないと思い。ヒューヒュー咳払い。


(我 魔物だし そのぐらいしか 思いつかん)



 ブッ………と誰かが吹き出した声がした。

 国王も顔を下げて無表情なのが見て取れる。

 ああ、なんだ。やっぱり自分にゃ向かないわこーいうの。

 明らかに緊張の糸が解けて持ち直すのに時間が掛かるパターンだわな。



「よい…助力を受けよう。

 申し出も全部受けるが。

 詳しい話は後にしよう。

 話に聞いていた、お主の仲間もこの目で見てみたい。

 皆、少し席を外すぞ。軍師も付いてくるのだ。」


 しかしそこは、流石は国王。

 咳払いと共に立ち上がると話題を変えて軌道修正に入る。

 有能ですなぁ、実力で伸し上がって来た系王様の風格バッチリですわぁ。

 でもその、顔の緩みは誤魔化せませんぜ、旦那。


 ともあれ深く突っ込むのは墓穴を掘るだけ。

 文字を浮かばせるのも実は手間の掛かるもの。

 人間でも会話をせずに筆談だけで全て済ませると手間であろう?

 と考えれば、空中に文字を浮かび上がらせる系魔法を

 その程度の手間で使える今の自分って凄いかもしれん。

 自画自賛も忘れない。後で守護者に褒めてもらおう。



 ―――確認 良い子でちゅね 後で褒めてあげまちゅ



 ………今はやめて今は!

 ………守護者様?妨害工作に入ってるでしょう?

 ………絶対、自我が芽生えてるでしょう?



 ―――確認

 そのようです

 ご主人様の反応を見るのが楽しいと感じているのかもしれません



 はい、前から感じておりました。

 でも、今はやめてくださいおねがいします。



 ―――確認 なんでもしますが ありませんよ?



 ほい、そういうネタも拾えるぐらいには成長したのですね、分かります。

 今度じっくりお話しましょう。でも今は、まだその時ではないのだよ。



 なんて一人芝居をしている内に国王と軍師で話が纏まったようだ。


 国王に軍師とやらだけで付いてくるようだ。

 団長さんはといえば、何かを伝えるように目配せしてくるが。

 多分、悪い方向には向かってないから後は任せる的な意味だろう。

 うむうむ、多分。敵視はされてない筈だ。


 道中軽く話しながら、どのぐらいの数が居るのか?

 とか、話は通じるのか? 安全でしょうな? なんて聞かれるので。


(大丈夫だ 問題無い)


 と、答えておいた。

 それ以上、お二人からの追求はされなかったものの。



 ―――確認 守護者は言っている 彼等が死ぬ時であると



 なんて言うのだから守護者の学習能力の高さに驚かされるばかりだ。

 お陰で守護者の言う通りの状況になってしまうのではないかと

 内心での焦りようは相当なものだった。 

 まあ、気持ちは切り替えておかんとね。

 ここまで来たのだから変なミスで台無しにはしたくはない。


(大した数ではないがな 我の言う事であれば 律儀に従う良い奴等じゃ)

 そういう訳で城の外にやってきたのだったが。

 蛇の姿に下り階段はキツイ、何段か踏み外したぞ…

 流石に国王と軍師と何も言わなかったが視線が痛い。



(ほれ 皆よ 整列するのじゃ こっちじゃぞ~)

 そんな自分の呼びかけに合わせ、瞬く間に集まっていく蛇達。

 うむうむ。誰一匹として欠けてはおらぬな。



「ほう、聞くのと見るのとでは違うな。

 こうも統率がとれているとなると、魔物の認識を改めねばならんな。」


 等と関心の様子を示している国王と軍師ではあるが。

 別に訓練してる訳でも、なんでもないんだけどねぇ。


 予想外の出来事さえ起こらなければ良いのだが。

 特に『アサシンヴァイパー』さんが目をギラギラさせて

 人間を見ているのがなんとも怖い。

 その身体能力を知ってるが故に

 野生で生き抜いていたと思われる本能が目覚めたとしたら。

 今の自分で止める手段は…殺しあう事しか見つからない。

 少なくても今は問題を起こしてくれるなよ?

 そんな意味を込めて『アサシンヴァイパー』×2を見つめ返す。


 それに気付いたのか目を逸らす2匹の様子は不自然だった。

 暴れ足りないのだろうか。なあに、すぐに戦えるさ。

 それまでそこ等の魔物相手に準備運動でもしていってね。

 と視線を逸らしたその瞬間だった。


 ………背筋が凍ったという表現が正しく使える状況


 一瞬だった。

 先程の2匹が自分を囲むような位置を取ったのだ。

 後方へ音も立てずに、まるで忍者とか、影とでも呼べそうな。

 忠実な僕であるならば、頼もしい限りなのだが。

 未だに分けも分からぬ状況にては恐怖の感情が先行する。


 自分が驚いたのと同時に、国王と軍師も今ので警戒してしまったようだ。

 ヤバイヤバイ、自分がなんとかせねば。こんなの想定の範疇である!


(可愛い奴よのう 我の姿が見えぬ事で こやつ等も心配しておったようじゃ)


 うんうん。よしよし。撫でこ撫でこ。心配してたんだよね。そうだよね?

 人間が自分の傍にいるから殺すべ…って訳じゃないですよね?

 許しませんよ、お二人方、とじっくり睨みを利かせておく。

 何やら2匹の表情が緩んだ気がした。

 国王も冷や汗を隠しきれてはいない程度で済んでは居るものの。

 軍師側の様子は今にも卒倒しそうな。目に見えて青ざめている様子が伺える。

 しかしそんな様子でも必死に声を絞り出すその様子は流石である。


「では、名前が無いのでしたな。蛇殿?」

 と、ここで軍師が話をかけてきた。

 国王は『アサシンヴァイパー』に興味深々のようである。

 おとなしい彼等を間近で見られて言葉を失っているらしい。

 さらにはコミュニケーションを図ろうと

 恐る恐る手を差し伸べているではないか。

 流石は王様だ。しかも蛇側もちゃんと触手で握手しておる。


(うむ 今は分かるように 呼べば良い)

 軍師も軍師で、興味はあるらしく仲間への視線には熱いものを感じられた。

 意外と印象は悪くはなかったようだ。

 見た目的には『ヴァイパー』系が目立つ布陣であったため

 見栄えはまあ。悪くはないとは個人的に思っている。



「襲撃まで、時間が残っているとは言えません。

 此方側の策は全てお見せする事は出来ませんが。

 同士討ちをしない程度には構成しなおす必要がありますので」

 そして観察も程ほどに、時間が無いのは事実である。

 策がどうとか言われたが、これもまあ、予想通り。

 敵側かもしれない魔物相手に策を全部バラすのなんてあり得ないよね。

 自分もそう思う。問題の無い範囲を見極めるのもまた手腕の見せ所。

 今ココでこうして話せるだけで、

 奇跡に近いものを感じているのだから高望みはすまい。


 此方側としても精々、遊撃程度に出しておくなり。

 魔物の利点を生かして奇襲攻撃するなり出来るし。

 そもそも、協力せずに帰るなり、敵側に協力するなりと考えもあった。

 それが無かったのは、魔法使いのおっちゃんと

 騎士団長さんのお陰なんだよね。

 特に騎士団長さんには初めて会っただけだというのに

 あの堂々とした振る舞いは心に響いたものがある。

 ともあれ、今は人間側に自分は味方する。出来る事をしよう。


(なあに その点については 其方側が良ければであるが 策はある)

 内心では魔王側サイドってのも面白そうじゃないかい?

 なんて思う所もあるけれど。

 今はこの軍師さんと色々策を練って楽しみたいね。

 こーんな機会は滅多にないしー。



「ではその辺の詳しい話は城内にて。」

 まあ軍師さんとしては、

 蛇達がうようよと居る中で囲まれながら話すのも気が気でないだろうし。

 素直にしたがっておこう。王様も王様で後は軍師殿に任せ。

 礼を済ませると、歩みは重く。城内へ帰っていった。


 そんな様子を見届けて、此方も移動を開始したい頃合だけど。



(構わぬが この2匹も 一緒で良いかな?)

 でも、『アサシンヴァイパー』×2は連れてくよん。

 この子達、寂しがりやっぽいし。

 個人的に蛇の騎士っぽくて格好良いという理由もある。

 まあ、一番の理由は、手元に置いておかないと怖い。

 であるのだが、色んな意味で。



「…では それで構いません が、なるべく。その、、、目立たぬように。」

 歯切れが悪く。相変わらずに青ざめてはいる軍師さん。

 武力的には申し分なかったようだ。

 生理的嫌悪感とやらもあるかもしれないが。

 思い当たる理由が幾つもある中で。

 多分これだろうと思う理由を一つ挙げてみる。



(理由は察する 兵の中に『アサシンヴァイパー』による被害はあるのか?)

(とだけ聞いておく)



「隠さずに答えますが、

 一個体に対して少なくても100以上の兵が失われております」


 へぇ、そんなに強いのねぇ。という感想しか湧かない所が、なんともである。

 人間側には大した感情を抱けない感性になってるよ。

 前世では冒険者100PT抜きを達成した覚えがあるが。

 お国の騎士様相手に100人抜きも相当強くないかい?

 なんて思うも、そんな奴等と同じ種族が2体。それを引き連れてるであろう自分が居るともなれば。

 この国の残存兵力が1000らしいし、外に居る蛇と合わせりゃ、五分五分となりそうじゃないかい。

 まあ単純な足し算引き算であればだけどね。

 ともあれ、そんな奴等が我が者顔で城内を闊歩してたらどうなるだろう。

 ちょっと興味はあるが。なるべく穏便に済ませるにはと。



(ならば他の兵達の目につかぬよう 対処しよう)

 


「助かります。それでは此方へ。我等が作戦を会議する部屋であれば。

 資料も含め詳しい話が出来るかと」



(では行くとしよう)



 という訳で『アサシンヴァイパー』には彼等本来の能力と

『呪術』にて隠れながら移動して貰う事にする。

 兵士の気を逸らしさえすれば、後はどうにでもなる。

 敵軍の兵士とやらは最初から1000人らしいし。

 相手側の奇襲というのも分かっているだけに脅威でもない。


 まあ、問題は自分に知識が無い事。

 兵の質とか、魔法がどの程度の物になるかとか。

 戦略戦術でどの程度ひっくり返されるとか色々あるよね。


 我ながら軽い気持ちで、戦争参加しちゃったなーと思いつつも。

 兵数が1000ねぇ。

 ファンタジーの世界の戦争っていえば。

 万単位でのぶつかり合い的なイメージがあったし。

 その数の兵達を百程度の兵力でひっくり返したり?


 そもそも策略でどうにかなるもんなのかねぇ。

 魔法一つで大量殺戮みたいなイメージもあるし。

 少し物足りなくもある。


 とはいえ、別に自分って策士とか、そんな器じゃないのよね。

 思いつく策といっても、敵の頭に単騎特攻。

 討ち取ったり~的な図しか思いつかない。

 魔法についても、基礎を学んだ自分にとっては

 どの程度が現実的かもある程度理解しているつもりだ。

 むかーしむかしの子供な蛇の頃とは大分変わったもんだ。

 今度、また時を遡って戻れば、魔法を覚えて最初からだもん。

 それもまた…楽しそうだ。うむ、その時が来るのを楽しみに待っていよう。



「あのー。蛇殿~?」


 ふと気付けば目の前の軍師が困った顔をしていた。

 ああ、ついつい、ぼーっと考え事をしていた。

 

(すまないな 『呪術』に集中しすぎていたようだ)



 ついつい言い訳してしまったが、成果もある訳で

 報告しておかないと蛇王としての威厳がまた失われてしまう。

 ただ成り行きでそれっぽく演技していたんだけど、失敗も多かったからねぇ。

 軍師さんは、結構怯えてる節があるし。

 そんな失敗見せて正解だったかもしれないけれど。

 ともあれ『呪術』にて得られる情報は大雑把な物で、

『元素魔法』と合わせて『生命探知』と名付けた魔法を使用し。

 どうにか目当ての情報を搾り出す事に成功…

 と呼べるぐらいにまでは行けたかな。



「私も正確な情報を探ってはいますが。

 現時点での情報以上は見つからないもので。

 蛇殿は何か。気になる情報を得られたのでしょうか?」


(勿論だ どうやら魔人とやらであろう存在を確認できたぞ)

(今まで確認出来た中でも 別格な大きさの魔力を持つ者が)

(約1000の軍を率いているようだ)


「………それはもう。信じてよろしいので? もう信じてますけれど」


(魔人かどうかは分からぬが

 強力な魔力を感じる故に 我でも勝てるかどうか分からん)


「………そりゃもう魔人ですって。ランクにしてBですよ。

 私が感知出来ないんですもの。呪術を妨害する能力を相手は持っている筈です

 それに私の見立てですが、蛇殿もBランクとして見ていますし」


(ちなみに そのランクとやらの基準はなんなのじゃ?)


「えーと、簡単にですが。

 Fランクでいえば、我々人間がどうにかまともに相手に出来るレベルですね

 Eランクになれば戦闘訓練を積んだ者達がなんとか相手が可能といった所です。

 Dランク。その道で生き抜いてきた人間が

 複数人のPTを組んでどうにか出来るランクです。

 Cランクともなると…我々人間側でいうちょっとした災害レベルです。

 Bランク…では。そうですね。一国が簡単に滅ぶ可能性が出てきます。

 なんというか。。。これ以上の説明は。」

 かなり有益な情報を得られた。

 これが本当ならランクと人間の関係が分かりやすくなったと思う。

 一つの指標として、今後の情報と照らし合わせ、後でじっくり纏めてみよう。

 Aランクにての説明が無かったのは…

 Bランク時点でそんな情報が出れば納得である。

 深くは追求しないでおこう。


(成る程 我は『スネークリング』とやらに分類されてはいたが)

(ランクとしてはC+だったのでは?)

 そこで気になる疑問の一つを、なんとなーくにぶつけてみる。

 守護者情報によると『スネークリング』の種族はC+であった。


「私としても。魔物の知識を主として研究していますので。

 気を悪くしないでください。蛇殿は…その。。。

『スネークリング』としては異端すぎます。

 対話はなさるし、『呪術』が使えます。

 そして何よりその翼は………ええと。すいません!」


 なんとも歯切れの悪く、はっきりとしない答えが返ってくる。

 それもこれも交流浅く、物理的な立場で畏怖を与えてしまっている

 自分が悪いのかもしれないので。

 我慢しよう、『スネークリング』が温厚な種族でよかった。



(良い 聞こう 我は気になる)



「すいません。その、それ以上の事が分からず憶測にしかすぎませので

 これ以上は私自身の問題もありまして、申し訳なく思います。

 ただ一つだけ………」

 ふむ、憶測だけか。

 それでも自分にとっては指標の一つとなるので歓迎なのだけど。

 話したくないのなら仕方ない。

 時間もおしてるので長話な雑談も出来ないからね。

 一つだけ、何か話してくれるみたいだし、それに期待とだけ。



「『ユグドラシル・ティア』…ランクAとされた魔物の翼と似ているのです。」


 はい、さらっと爆弾発言されました。

 驚きです、今私の背にには翼が存在します。

 特性スキル『蛇王の象徴』とやらです。

 灯台下暗し、ただの空飛べる羽だと思って、

 詳しく解析や鑑定スキルを試した事はありませんでした。

 いやぁ、無知って怖いね。


 ランクAですよランクA、国家滅ぼす問題に指定されるBより上ですよ。

 まあ情報これだけしか今持ってないんで、なんともですけどね。

 それより詳しく聞きたい!プリーズプリーズ!と急く気持ちもあるが。

 先ずは落ち着くべきだろう。



(つまり 我は 純粋な『スネークリング』とは違う種であると)

(もっと詳しい話を 聞きたい所ではあるが)



「はい、確証は持てませんが。通常の種とは違った面がありまして。

 詳しいお話は、また後ほど。そろそろ兵の配備をしなくては。

 間に合わなくなる恐れがあります」


 むぅ、思えばもうそんな時間に。

 お楽しみは後に取っておく、今は優先事項があるだけだ。



(うむ 分かっておる そちら側の兵は 城壁内の所定の位置に)


「蛇殿の仲間は、本当に城壁の外で良いので?」


(構わぬ 元より魔物故 敵の油断を誘える可能性が高い)


「それでは、その配備でお願いします。

 最悪の想定もしましたが。その場合、我々に成す術は残されていません」


(無論 理解している 相手が魔人とやらなら だな?)


「ではお互いに。最善を尽くしましょう」


(尽くせなかったら せめて苦しませずに丸呑みじゃぞ 安心せい)


「………!!!」


(なあに 魔物なりの 冗談じゃ 冗談)


 は…ははは。そうですよね。冗談ですよね。

 なんて言葉を聞きながら自分は残してきた蛇達に作戦の概要を説明したのだった。

 でも、理解してるかな。こいつ等?

 ちょっと不安が残るが。

 殆ど自分しか戦力に考えてない作戦だし、大丈夫だろう。

 最後に一言、通じるか分からないが『視覚的呪術』も使い。

 声にも出して一括!


(とりあえず 死ぬな! 生きろ! 別に決死隊じゃないからなー!)

(後でまた 美味いもん 食いにいくぞー!)


 とだけ言っておいた。


 フシャー!フシャー!キシャー!キシャー!

 ドワッシャー!ブワッシャー!

 クルクルクルルルルルゥー!トルゥーー!


 帰ってくる鳴き声は、気合の入りようが違ったので。

 やっぱり最初の説明は理解してなかったようである。


 だけど、そんなお前等好きだぜ。

 短い付き合いだったけど、うんうん。

 死亡フラグは立てれば立てるほど逆の効果を発揮するからね。

 みんなには生き延びて貰いたい。

 それが例え、ロードした瞬間に失われる関係だとしてもだ。



 そして、戦慄の夜がやってきた。

 戦いの火蓋が切って落とされる、その瞬間までの静寂は。

 見張り台に立っていた兵士の一人が発した声で打ち破られた。



    *   *   *



「来たぞぉー!!! 南側からの襲撃だ!!!」

「凄い速度だ! 弓兵! 魔法兵! 戦闘準備!」

「なんだー!あの光は!」


 ズガーン!フゥワァー!!グワー!!!


 おーおー、始まった始まった。

 案の定、相手は魔法使ってるらしいね。

 堅牢な城壁に見えていたソレも、巨大な光を纏う火の属性を含んだ

『魔力弾』にて一角を吹き飛ばされた。


 うーん、魔法凄まじい。

 というか今みたいな威力の『魔力弾』を打たれ続けるだけで

 兵士さん全滅しそうだ。なんて思った矢先であった。

 『魔法防壁』の展開で城を中心にドーム状の魔法の膜が辺りを覆った。

 さっきの『魔力弾』を防ぐには一瞬遅かったようだが。

 展開までに要する時間と、防壁の持続時間を考えれば仕方ないか。


 初手は相手の姿を確認後、この『魔法防壁』を展開する手はずであった。

 無論、つい先程の『魔力弾』のような攻撃を防ぐ為であったが。

 あの『魔力弾』の速度は尋常じゃなかった。


 光った瞬間命中していた。そんなレベル。

 放ったのは魔人とやらであろう。

 あんなもの、ひょいひょい1000連発で飛んできたら

 それだけで戦争終わりである。


 ふぅ…お茶を啜りの休憩時間も終わりですな。


 では我が忠実な蛇ちゃん達。各自散会。

 あとは個人個人で隠れててね。


『アサシンヴァイパー』ちゃんはなるべく気付かれずに暗殺よろしく。

『ベノムパイソン』たんはいっぱい食べてて良いよ。

『エビルパイソン』さんは…えっと。でっかいから気をつけてね!

 他の子達は、なるべく複数行動だよ。いいね?



 程なく、市街戦となるだろう。

 自分は自分で全てを見渡せる場所で高見の見物といこうかね。

 まずは相手がどんなものかを見極めないといかんから。


 さてさて。今宵の見世物は楽しませてくれるかな~?




 敵さんの状態はと、早速ながらに。

 市街地全てが囲まれた。密度は低いものの。

 4~6人組みでの行動をしておるようだ。


 ほっほう、早速『アサシンヴァイパー』が背後から一人二人。

 残り2人を『スケイルシュート』で打ち抜いたわぁ。

 お見事見事、流石よのぅ。


 ふぅむ、向こうではお食事中の『エビルパイソン』の傍へ。

 無防備に近寄った者が呑みこまれおったわ。

 慌てふためく奴等も毒霧のお陰で苦しんで逝きおったわ。

 毒ってあんなに強力なんだ。悪の道へ進む時に使ってみよう。

 しかしあ奴も、相当に大食らいよのぅ。敵さん全部食べおった…


 あちらでは『リトルスネーク』組が様子を伺っておるようじゃ。

 手出しはせずにスルーかと思いきや。

 『エルダースネーク』組との連携で同時に仕留めおった。

 やりおるわ、敵さんの兵士も装備を見る限り、結構質は高そうなのじゃがのう?


 その証拠に、国側の兵士達は苦戦しておった。

 開けられた穴からへの進入者と五分の戦いを繰り広げている。

 むしろ押されているのであろう。

 城壁に穴を開けられる事、自体は想定していたものの。

 こんなに初期の段階で打ち破られる事は考えていなかった。


 やっぱり初手は大事だねぇ。

 自分もこの国の『魔法防壁』について

 見よう見まねではあるが。『元素魔法』の応用とだけあり。

 ここをこうしてこうやって。ココを始点に流れを作りと。はい出来上がり。



―――確認 通常スキル『魔法障壁』を取得



 おー、出来た出来た。通常スキルなので早速使用。

 おっと、視界の色が変わったぞー。

 元素っぽい色で防壁の膜を通してフィルターかかってるみたいなものか。

 でもなんで、この国の防壁は無色なんだろね。



―――確認

 『魔法防壁』の純度によるものと思われます

 色が濃いと効果も高く 視認されやすくなります



 へぇ、そうなると自分の方が強力な訳だ。

 効果範囲が自分だけのと、

 国全部を覆いつくす防壁を比べればどっちが強いとは言い難いが。

 戦力の一つにはなりそうだね、有効に活用するとしよう。


 さて、国側の方は流石に、立て直しを始めてるし。

 自分は自分で、全容把握とお仕事のタイミングを逃さないように意識を集中。

 集中集中集中~



・『危険感知』にて極大魔法の詠唱を確認



 はいはい、極大まっぽー…ぇ?

 視線を本能向くまま危険の元へ。

 そこには異質なオーラを放つ人型の、人型のアレが魔人?


 そのまーんま人間じゃん。

 皮膚の色がちょっと褐色肌なぐらいな。

 それでいて、ちょっぴりイケメンな顔付き。

 髪型がツンツンしてるから、魔人戦士とでも呼んでおこうかな。


 いやぁ、ありゃ強いわ。

 『極大魔法』とやらを一人で詠唱してるんだもの。

 さっきの『魔法弾』とやらも彼の仕業ね。自分の中で確定。


 でもその『極大魔法』とやらも時間がかかるらしくて。

 その魔人戦士を護るように人影が円陣を組んで周りを見張っている。

 自分の標的はアイツ等という事で間違いなさそうだ。


 さーて、どうしよーかなー。


 出来る事なら、格好良く。

 それでいて威厳たっぷりに登場したい。

 まーだ魔人さんの魔法が発動するには時間が掛かりそうなので、

 自分はゆっくりとその時の為にプランを考える事にしたのだ。


 それにしても、魔人の率いる兵種だが。

 どれもこいつも人間に見える。

 しかも良く見れば軽装で。表情は必死だね。

 ありゃあ、脅されてるのか。はたまた魔人が怖いのか。

 自分兵士にならなくて良かったわー。


 しかし、こうして観察するに。

 まるで戦術ゲームの駒みたいなもんよねぇ。

 当事者にはたまったもんじゃないだろうけど。

 こんな世界ならやらねばやられる…全滅待ったなしだもんね。


 人間 兵力 930

 魔人 兵力 860


 みたいな。今の所、数だけなら国側が有利。

 意外と我が蛇の軍が頑張ってるからね。

 もう100名ぐらいヤッちゃったんじゃないだろうか。


 今の所。我が蛇の軍には損害無し。

 相手さん気付いてないし。不意打ちで、しかもバレてないんだもん。

 内部の異常には、そのうち気付くだろうから過信はしないが。


 城内に入られてる気配は未だに無い。

『魔法防壁』も持続時間としては十分なのだが。

 魔人が詠唱している『極大魔法』に対抗できるかどうかは。無理だろうね。

 まず、魔法力の桁が違うというかなんというか。


 その魔力の差を例えるなら、

 子供用マグカップ一杯の水vs学校のプールの水レベルぐらい違うのよね。


 それに魔人側の魔法力は、留まる所を知らない。

 妨害したら爆発するかな?楽しそうじゃない?しちゃう?



 ………ああ、なんというか。

 『スネークリング』の特性が垣間見えた気がする。



 確かに楽しそうなんだけどね。

 バレバレの魔法を戦場にて悠長に、

 あんなに時間をかけて溜めてる所で突っついてみるのとか。


 ともあれ、その威力に自信はあるのだろう。

 であるのなら、気持ち良く放たせてあげるのが世の情け。

 じっくり観察してみるも、真似できない程ではない。

 それでは『スネークリング』3分間『極大魔法』メイキングのお時間です。


 1.まず、魔法力を額の中心に集中させます。

 2.程よく魔力を高め、洩れない程度に固めたら、

      触手を使用し魔力の上積みをしていきます。

 3.こねこね練りまわし。とろみが出てきた所で

      『元素魔法』にてスパイスをひとつまみ。

 4.『呪術』を使用し禁呪の準備。

      感知されると台無しになるので結界を忘れずに。

 5.結果。3分間も掛からず5秒で出来ました。


 いやぁ、『極大魔法』の作成は大変でしたね。

 規模が違うので相手さんが弱いという訳ではないというのは、

 規模が違うので仕方ないと名誉の為に付け加えておいて。



 ―――確認 『極大魔法』を解放しました



 守護者ちゃん、ご苦労様。

 そんで、相手さんどのぐらいかかりそう?



 ―――確認 充填率100%を突破している模様



 ふーん、発射可能な訳ね。

 120%ぐらい溜めて発動させる気なのかな。

 属性的には、火で間違い無さそうだ。


 ミニチュア版極大魔法で、ちょっとした前準備。

 ふんふん、なるほど。出来そうだ。

 これがこうしてこうなって。となるとアレも出来る筈。



 失敗したら、みんなゴメンね。

 成功したら、みーんな褒めてー♪

 後でみんなで宴会しよなー。



 配置について~覚悟完了。いつでもどこでもどーんとこーい!

 あ、念のためセーブね守護者くん。ヨロシク。



 ―――確認 データ1にセーブ 検討を祈ります



   *   *   *

王様は普通に人間のようです。

変に叩くと猛反撃で確実に殺されるような一撃を放ってくる強さは持ってません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 最初魔力弾だったものが、途中から魔法弾になってます。障壁を魔法障壁とするなら、最初から魔法弾にしては?
2020/03/15 14:04 退会済み
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