表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/40

認めざるを得ない事実

 王立研究所の廊下は静まり返っていた。

 外の喧騒とは切り離されたように、音が吸い込まれていく。

 規則的に響く足音の中を、ルーファスは迷いなく進んでいく。

 視線は正面に向けたまま、周囲の気配だけを拾っていた。


 資料室の扉を開けると、かすかに埃の匂いが漂う。

 棚に並ぶ記録は整然としている。

 乱れはない。

 だからこそ——

 違和感が浮き上がる。


 ルーファスは一冊を手に取る。

 植物関連の研究記録。

 年代順に並んでいるはずのそれに、空白がある。

 途中だけが、不自然に抜け落ちている。

 削り取られたような空白。

 前後は揃っているのに、その部分だけがない。

 ページをめくる。

 関連する記録も、同じように欠けていた。

 断続的に、消されている。

 痕跡は残っていない。

 だが——

 意図的だ。


 そのまま研究棟の奥へ向かう。

 許可が必要な区画。

 だが、足取りは変わらない。

 入口脇に置かれた出入り記録に、視線を落とす。

 名前と時刻が並ぶ中、同じ名前が何度も現れていた。

 間隔は不規則。

 だが、夜間の記録が目立つ。

 通常の時間外。

 しかも、その頻度は明らかに多い。


 別の部屋へ入る。

 薬品の管理記録が置かれている場所だ。

 棚に並ぶ瓶に乱れはない。

 だが——

 帳簿と照らし合わせる。

 差が出る。

 特定の薬品だけが、継続的に消費されている。

 植物処理用。

 だが、その量は通常を大きく超えている。

 ルーファスは視線を落とす。

 時間。

 量。

 頻度。

 それぞれを重ねる。

 ばらばらだったものが、ひとつの流れに繋がる。

 ルーファスは静かに帳簿を閉じた。


「……失礼します」

 声がかかる。

 振り返ると、小姓が立っていた。

 王宮付きの者だ。

「先日の件で、ご報告がありまして」

 ルーファスは何も言わず、視線だけを向ける。

「王妃の部屋にあったポプリですが……」

 小姓は一度言葉を選ぶ。

「使用が始まったのは、数ヶ月前からとのことです」

 ルーファスはわずかに目を細める。

「誰の指示だ」

「……レオン様です」

「香りが良いと、勧められたと」


 沈黙が落ちる。

 すべてが繋がる。

 研究記録の欠落。

 夜間の出入り。

 薬品の異常な消費。

 そして——王妃の部屋。

 偶然ではない。


「……感謝する。下がっていい」

 それだけを言う。

 小姓は頭を下げ、静かに部屋を出ていった。


 再び、静寂が戻る。

 ルーファスは目を閉じる。

「……やはり、そうだったか」

 小さく息を吐く。

「……だが、なぜだ」


 しばらくして、ルーファスは目を開く。

 迷いはなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ