14話 VS宇宙超獣バファムト
■惑星ヤマト04 首都ニュー・カピラ執政府付近
「ははは!特別だと勘違いしている程度にはあるな!中身を引きずり出して、どうしてやろうか!」
「私が証明してあげるわ。あなたも特別ではないと!」
バファムトがほざけ!と叫び黒いエネルギー球体をアンジェラに打ち込んでいくが……アンジェラは軽妙に側転で躱し。駆け出し、蹴りを叩きこんでから反転して着地している。なんて身軽なんだ!アンジェラの本当の力はこのような動きで……特に地上戦ではこんな軽快に飛んだり跳ねたりできるというのか!
ミカエラやカナタはちょっと動きが重力に負けている具合の重さを感じたが……アンジェラはそれがない。宇宙艦艇の上でスペース・八艘飛びをやってしまいそうな身のこなし!
「ナンブ様、聞こえていますか。こちらから直接干渉は出来ませんが指示に従って再起動してください」
「プリム!?いやでも再起動しても動力がバファムトに奪われてしまっては」
「補機、副動力は通常動力です。出力の程度は違いますが、今戦っているアンジェラと同じレーザー核融合炉ですから干渉は受けません」
サブエンジンがレーザー核融合炉!?そんな話聞いたっけ?!武器とか装甲の話とかは聞いていた気がするけど全く覚えがない!
しかし知らないからと……ぼんやりしているわけにもいかない。プリムの音声指示に従ってパネル近辺にあるスイッチを下げてオフにし。サブエンジン回りの設定に切り替える操作を始めるが……その間にも、アンジェラとバファムトの接戦が続いている!そうだ……アースゼノンの補機がアンジェラのと同じく、レーザー核融合炉とは?
「くくっ!骨とう品を乗せて私への勝機とするつもりか!侮られたものだな!宇宙超獣を!」
「侮っているのはそっちではなくて?」
尾を振り、横に薙ぐバファムトを飛びかわし……そのまま宇宙超獣の胴をめがけて肘を打ちこむ。鎧の上からであり破壊するほどではないにしろ、その衝撃でバファムトがよろめいている!パワー負けをしていないのか!?動力の問題さえなければ打倒せるのか、宇宙超獣を!
「今も尚研究を続けていた技術と知恵の結晶よ!負けはしないわ!」
「負けないだけだろうが!いや……本当にそうと言えるのかお供その1!」
確かに今のアンジェラは徒手空拳で戦っている。
武器はカラテだ!と言えば格好はつくが……それで鎧で武装している宇宙超獣のバファムトに勝てるのかは……疑問が出てしまうのは無理もないはずだ。決め手のないままであれば、だらだらと戦いが続いてしまい……活動限界とやらでアンジェラのほうが自動的に負けてしまう。先のサイボーグ宇宙怪獣との戦いもそうなるかもしれなかった。
「先輩、これを!」
それでも勝つためのピースはあるはずだ。ミカエラが最後の力か、渾身の力で放り投げた……巨大人型兵器用の剣の柄。決め手になるだろう液体超合金のソードを受け取り、刀身を展開して振りかぶるものの。
「弾かれている……!?あの鎧か!」
「ただの実験用装備ではない!マスター・パワーの伝導率の高い聖鉄ではあるがな!」
「なら切れそうなものを……!」
「甘い甘い!言っただろう実験用装備ではないと!そのお粗末な品とこの鎧の完成率は違う!お供1号!お前の体は技術と知恵の結晶と言ったな!だがそれは違ったようだ!」
「この鎧こそ結晶!操術のボディと伝導率の鎧!エネルギー兵器もマスター・パワーも通じん!生半可な物理兵器も貫くことは出来ん!」
「真の完成となったのだ!そのなまくらで切れるようなものではないわ!」
好き放題言ってくれる!アンジェラが決め手になりそうなものを手にしているのに、決めることが出来ないなんて!無線越しに言葉は聞こえないが、この短時間で既に息が上がっているのか……吐息が聞こえてくる。披露の吐息が。バファムトが言う様に2度目の融合で本当の本当の限界なのかもしれない。
アース・ゼノン内部へ貫通したプラズマ放射でショートしてしまい、剥がれてつり下がっていた基盤を引っこ抜いて……予備の基盤に差し替えが終わったところで。プリムから声がかかって来た。
「解析が完了しました。バファムトの鎧に対抗できる手段があります」
「スター・ブレイザーを!?確かに艦砲射撃での実体砲弾なら……」
「それでは距離があり避けられてしまいます。近づくこともできません。ナンブ様、腕部の破砕榴弾兵装を使ってください」
こ、これか!たしか帝国海軍の秘密工廠アヴァロンで説明を受けたやつ!同行していたネロは私がこの武器の名前を呼んだ時に……滅茶苦茶嫌な顔をしていたが。その嫌さは性能とか性質の話ではないはずだ。操縦席に戻り、少ない明るさとなってしまった十字照準線、電影クロスゲージを超獣バファムトの鎧部分に合わせていく。
アンジェラが刀身を振り、なんとか生身の部分の……宇宙超獣のボディを狙っているが。鎧の隙間を狙おうとすれば、そこが狙いだと分かるためか。バファムトの尾や腕が肩がアンジェラにブチ当てられてしまうカウンターを食らっていた。
だが……その当たった瞬間。アンジェラとバファムトとの距離が空いたその時だ……照準のピントが合う瞬間になった!
今がその時だ、と兵装の名前を叫び……引き金を引く!
「スパイラル・グレネードランチャー、発射!」
アース・ゼノンの両腕下部に装填されている破砕榴弾が、バファムトの鎧の両肩に向けて発射される!完全に不意打ちであり、一切プラズマとか熱エネルギー的なそういうものが使われていない物理破壊兵器。バファムトは躱せず、直撃すればそのままその両肩の鎧を穿いたのだ!
そこが崩壊点になり、漆黒と赤黒い鎧が崩壊していく。
「バカな、そんなもので私の鎧が砕かれた!?」
「……3度目はないわ」
そしてその隙を見逃すアンジェラではない。アンジェラはバファムトへ向けて……ソードを肩口から真横に切り込む。力いっぱい振り抜く勢いで、半ばまで押し込み。頭の下に刀身が食い込んだあたりでさらに踏ん張り、力を込めて……引き切った。
「宇宙崩壊が……父母の宇宙が、私が……あり得ない!ハイ・エルダーである私が」
「終わりよ!ここで!」
完全に胴と肩から上が切断され、上部が滑り落ちた後に。バファムトが操っていた……吸収していただろうエネルギーが周囲に放射し暴れ……大爆発を起こした!
「やったー!先輩かっこいー!」
「勝ったのか……あれに、人間の技術で……」
アンジェラが宇宙超獣を爆発四散させた後、本当に助かったと思ったものだが……それでもまだやることが残っていた。宇宙超獣が消えたおかげか、エネルギー喪失の危険性が無くなったもので……プリムがすっと私の真横に現れたのだ。
もう終わったと思っていたのに?だが……彼女曰くまだ終わっておらず。ある場所に向かえと促してきた。私も伝えられたその場所で何がどうなるか、予想がついてしまったものでアースゼノンの格納庫に急ぎ走り。モト用バイクで飛び出した!
■惑星ヤマト04 首都ニュー・カピラ執政府 キャッスル 地下研究所
「代えのボディとはならんが、これを使えば……あの骨とう品を、生意気なお供を完全に破壊出来る」
「いいや……そうはならない、バファムト」
照明も半分ほど落ちてしまって、今や照らすものが白銀青の宇宙怪獣の側にしかない……それでも彼女が反射するプリズムの光で明るいバファムトの地下研究所。宇宙超獣へのアース・ゼノンの突撃で作られた穴をバイクで駆け抜け、彼女の前の足場に飛び降りた!予想された通り……バファムトは白銀青の宇宙怪獣の彼女の体と融合し再起を図ろうとしているところだった。
「用意のいいことだ。使徒、貴様の図り事だな。私の力を奪おうと……!」
「いや……私は彼女を助けに来た。あなたを止めることも、だが」
見るからに疲弊し、ボロボロとなっているバファムトの姿。ヒトの姿ではあるが……宇宙超獣の体が爆発四散した際に緊急脱出していたのだろう。見るからに何も持ってはいない様子ではあるが……その瞳には敵意と闘志が未だに燃え盛っていた。その怒りと憎しみを感じられる気迫、危険は承知なものの私は一歩ずつバファムトに歩いていく。彼女を止めるために。
「調子に乗るな!あの鉄くず同様、貴様もこの手で叩きのめしてやる!私はハイ・エルダーだ!父母から選ばれた……エルダーなのだよ!お前がどうにかできるものではない!」
「いいえ、出来ます。あなたを滅ぼすことは出来ずとも……止めること、封じることは出来るのです」
「失敗作め!何の根拠があって……何?何をしている再生者!お前は自分が何をしているのかわかっているのか!?」
バファムトが今この場所で……何が起きているか。私が何をしているかを見て理解したのか。正気を疑うような顔でこちらを見て、怒りの言葉を飛ばす。先ほどまでこの場所には光とプリズムが混ざり合い、わかりにくい部分があった。それでも目立つ赤錆色の金属柱があったのだ。白銀青の宇宙怪獣の羽根を標本のようにピン止めしているそれらが……今はない。
今あるのは、そこから外れ落ちた1対の聖鉄の金属柱。それらは宙に浮き、白銀青の宇宙怪獣へマスター・パワーを注ぐ媒介になっていた。赤錆て力を封じる楔になっていたものが、今や彼女へ力を与えるものに……いや、本来誰かに力を与える性質に戻っていた。
「ユー……ハブ!ザ……パワァー!」
「やめろーっ!」
私の承認を得てか、それとも彼女の体自体がぞんぶんに受け入れられる器なのか。膨大な量の力が虚空を通じて注がれて……この空間に満ちていく。白銀青の宇宙怪獣は……瞬く間に体を癒し、枯れていた羽根が神秘の色に輝いていく。そして……この空間は、彼女の領域と化したのか。
あの星夢の世界へと移り変わっていく。
「そうか……私を虚空へ送るのか!この宇宙を破壊せずに!だがそれは……それでは私は!虚空の狭間で!永遠に!」
「御子様……いえ、ナンブ・ケンゴ。あなたにお任せます」
バファムトの超至近距離、ワンインチにも満たない距離に滑り込んだ私は彼女の腹部に拳を当てる。強く当てるのではなく、そっと添えて。殴るのではなく……その体を押すために添える。するとマスター・パワーが注がれるゲートがこの領域の空にも開いて口を開けていく。ただエネルギーを出すためのではなく……どこか、虚無と虚空の狭間へ繋がる門が開いたのだ。
「バファムト……今しばらくは、虚空の狭間で!」
「いやだ!狭間になど私は……永遠に至ることのない狭間など!」
そのまま拳を押し込み、バファムトを空に打ち上げると……彼女はその穴に吸い込まれて消えてしまった。それと同時に、白銀青の宇宙怪獣もプリズムの光をまき散らしながら穴へ飛び立ち……消えていった。残るのは聖鉄に戻った巨大な鉄柱が2つ……落ちて巨大な音を立てた。
また、もう1つ残ったものは。白と青の薄いスミレ色の髪を持つ……巫女の彼女。宇宙怪獣の中身として新たに肉体を得た彼女が、私の前に立っていた。私はやり遂げたことを伝えるために、彼女へ向けてサムズアップ。十分な働きが出来たかな?と思っていたのだが。
「それで、それをどうするつもりなの」
アンジェラが、困惑しているミカエラを連れてこの場所に降りて来ていた。両者ともタイタンから出てすぐなのだろう。重装備のコンバット・アーマー装備であり、ここへ降りるためのラペリング降下用の器具を片手にしていたのだ。他に来れる人はいなかったのだろう……いや、しかし疲労困憊だろうになぜ態々来たのか?
ライトをつけた拳銃を……こちらに向けるために。




