13話 宇宙超獣バファムト
■惑星ヤマト04 首都ニュー・カピラ執政府 キャッスル 地下研究所
「デカいな……いやデッカ!でっかいな!?デカすぎるだろ……デカいにも程がある!」
彼女がいつか……夢の世界では、私より少し背の低いもののだ。現実ではもっと大きいと言っていた言葉が想起されて、つい口に出てしまった。これはちょっと想定外だったな……レーツェンが4~5mあったのも驚きだけど。
こっちはその10……11倍?ぐらいの55mはある?やっぱり?まぁその、なんとなくそうではないかと思っていたが実際見せられるとびっくりするな。
この子、自分では一切名乗らなかったし。夢の中では宇宙怪獣?らしいチビっことか怪獣をあの子と呼んでいたもので。大体カナタの妹なら髪の毛の色は黒であるはず、カナタの話と何かズレは感じていたんだが。
「お前は我々エルダーと、人ども……この宇宙にいるもの全ての不倶戴天の敵を助けに来たと」
「先に言った通り。助けてほしいと言われたから……来るさ」
「それにあれだ、私はあなたから助けを求められた覚えはないな。言葉と文化や風習の違いだったら……無教養で申し訳ない。なにせ21世紀の人間で34世紀流のマナーは知らなくて」
宇宙を共に支配しようみたいなことを言われたが、それは救世主だかに向ける言葉ではないだろう。もっとも一個人としても……そこに興味はない。もちろん宇宙は広大、そういう挨拶や救難コードがあるのなら別だが。
そのお答えが不満足なのか……その姿に似合わない、枯れた笑い声が響いた。これ以上その話をするのはもうやめるか、という諦めにも思えるトーンの下がり方で。それは次に出た言葉からもわかる通り。そらを切り替える一息の後に、こちらを見て構えた。何の構えかは、わからないが……これからコトを始めるつもりであるというぐらいに。
「地球帝国の生体サイボーグ技術、そして宇宙怪獣の生体組織にヤガールの聖鉄の技術。それらを組み合わせた最強の宇宙怪獣、宇宙超獣の力で……」
「貴様ら全てを虚無の底へ沈めてくれる!」
その瞬間まで……なぜ、見えなかったのか。
バファムトが立っている場所、そこにはプリズムの反射にも映し出されなかった漆黒の闇が広がっていた。いたのだが……そこからまるで、黒い油膜を引き剥がしながら出てくるものがいた!
55mの白銀青の宇宙怪獣の対面に、現れた……漆黒の怪獣。
そこへバファムトが吸い込まれていくのだ!あれは……そうか、地球帝国の生体サイボーグ技術というのならアンジェラやミカエラと同じ。巨大な体と融合する力!
赤いプラズマを纏ったエネルギーラインが走り、雷光が周囲に暴れて破壊していく!この惑星で見たことがない、そのシルエット形状は他の宇宙怪獣よりも突起や武装のような外殻装甲で非情に攻撃的。
隙のない完璧な形状のようには見えないが、バファムトが自身と同化させるために作った決め手の宇宙怪獣……いや、宇宙超獣!その瞳に光が宿ると、目覚めの咆哮が空間を揺らし!この地下研究所の重厚な壁を崩す!
私は間一髪のところで、巫女の彼女に助けられた。私の前に夢でみる巫女の姿で現れ、バリアーを展開している!咆哮と共に出て来たビームだかレーザーだかが天井を割いて、地上まで貫通しているというのに防いでいる!どちらもなんて出力だ!
「お逃げください、あなたの仲間が必ずやバファムトを討ってくれます。あなたはその間に……」
「いや、君を置いていくわけには。あの体を引っ張っていくのは大変だろうけど」
「そんなことを言っている場合ではないのです!」
確かにやばいかな、そうかもな?と思っていると……夢幻の仮初の姿であろうに、憔悴しているように見えた。まさかバリアーを張るのが最後の力だったのか?流石にそれは、いや……困る。本当に困るぞ?助けに来たというのに助けられているし、何よりだ。
「あれは生み出してはいけないものだったのです。私と同じく……この宇宙を破壊するために作られたもの。倒す方法など限られている……ですから」
「ごめん、ちょっといい?本当に大変な状況なのはわかっているんだけど、聞いておかないといけないことがね……1つあって」
今、腕を振りかぶっているんですよ!あれが!?と驚いている彼女と私の間では……時間がゆっくり流れていた。おそらくこのギリギリまで私の意識とを繋いでいるためちょっと、ゆっくりに感じられているのだろう。この危険性……見たら誰でもわかる。
だがここで逃げて、彼女との話を最後にするわけにはいかない。
なんでって、それはだ。
「そろそろ名前を教えていただきたいのですが……」
「ま、まだありませんが」
「じゃぁ後で決める方向で!もう呼びにくいったらありゃしない!」
この土壇場で何を言っているのか、という困った顔の彼女へ指さし確認。本当に頼んだからね、わかっているんですかと念を押した。いや本当に、名前も知らない相手を助けに来たが。名前も知らないままお別れだけは絶対にしたくない。
なので左手に巻かれたスマートウォッチを掲げて叫ぶ。呼んだらどこへでも来てくれる、もう一人の私を。
「アース・ゼノン!」
空間を割いて、エネルギーによる銀の螺旋を描いて……巨大なドリル戦艦が出現した!宇宙超獣バファムトの腹部を、下から思いっきり突き上げる形で!私はそこに飛び乗り、再び操縦席に向かうのだった!
■惑星ヤマト04 首都ニュー・カピラ執政府
「ナンブ!ちょっと!ちょっとアンタ!なんでやるなっつったことをやってるのよ!あとそれは何!?そのデカイのは!サイボーグ宇宙怪獣なの!?」
「ごめん!本当に危険な状況で!あれは宇宙超獣!サイボーグ宇宙怪獣を超えた怪獣!バファムトが合体しているから……宇宙超獣バファムト!」
「うわぁあぁぁ!また変なのが出ているぅううう!宇宙超獣ってなんですか!」
「あれが……バファムトと……御子様の、マシーン……いや、その、素敵な御姿で」
「いいぞ再生者、その名前はいい!我が名は宇宙超獣バファムト!この宇宙を虚空の底に沈めるものだ!ハーッハッハッハ!」
混迷を極める状況、首都決戦。
アース・ゼノンのドリル戦艦形態でテンプル・キャッスル近くの地面を破壊しながら……宇宙超獣バファムトを押し上げて出た!
その私を待っていたのはサイボーグ宇宙怪獣の爆発四散した姿。6体全て破壊された後に、ようやっとに休憩していたカナタとミカエラの前に出てきてしまった。ソニア達は地下の異変を感じ取り、うまく退避してフリゲート艦に回収されたようだが。
アース・ゼノンをバトル・フォーメーションでヒトガタ戦士?に変形させた私は、倒れかけてはいたが……立ち上がったタイタン姿のミカエラとカナタと共にバファムトへ向かい戦う意志を示す。
「宇宙の崩壊はさせない!パルスレーザー砲、発射!」
「また知らない話を!えぇいこの!3人で掛かります!」
「む、むぅ!えぇ?それは……では我らは側面より……」
宇宙崩壊などさせない、そんなことを……!とディスプレイ近くのスイッチを押して攻撃兵装を選択。操縦桿の引き金を引いて頭部パルスレーザー砲を発射!青白い速射レーザー砲が短い間隔で宇宙超獣バファムトへ叩きつけられる!けん制としても十分使えるのは復活後に検証している!
側面からはミカエラとカナタのタイタンが……液体超合金ブレードとソードをダブルで振り回し、切りかかる!
しかしその……カナタが振る横円弧のブレード、ミカエラが振る縦半月のソードの軌跡は……あっけなくバファムトに止められてしまった!しかもアース・ゼノンのパルスレーザー砲も全く通用しない!機械福音天使の巨大人型兵器に通用した威力だぞ!?まさかバリアーか特殊装甲で霧散しているのか……いや、いや!?
「なんだ!?出力が上がっていない!」
「体が……重い!ミカエラ、そなたは!?」
「私は大丈夫ですが、稼働限界が近いんです!お二人ともどうしたんですか?!」
ディスプレイに表示されている、危険信号!
それはエンジン出力が全く上がっていないことを示しているのだ。それどころか……どんどんエネルギー充填率が下がっている!最大出力の半分も出ていない!その上で20%を……切っていく!
「今頃気づいたようだな!この宇宙超獣はザ・マスターの力、宇宙の聖なるエネルギー……マスター・パワーを集中させ吸収できるのだよ!他の何よりも、優先してな!権限が違う!ただ貪るだけの宇宙怪獣とはわけが違う!資格があろうとも自在に使えない再生者ともだ!」
これが隠し玉!バファムトが持っていた最終手段か!ヤガールの対策にもなるし、何より……アンジェラの言っていたように。そのエネルギー……マスター・パワーで動くゼノ・テックの主機。それを搭載するアース・ゼノンには天敵もいいところだ!
同じくゼノ・テック対策でその関係の動力を積んでいたがためだろう。カナタの乗っていたブルータル・ナイトは地に膝を付き。ついたところをバファムトに蹴り上げられて飛ばされ。シールドを構えて打ち合おうとしていたミカエラは、単純にパワーの違いか……いや、彼女曰く稼働限界のせいか。連続した殴打で盾が下がったところを狙われ、強靭な尾で弾き飛ばされてしまった。
そして私と……私の乗るアース・ゼノンともなれば。
「目障りな鉄くずめ!お前などもういらん!この鉄の皮を剝いで八つ裂きにしてくれる!」
普段は守ってくれるだろうバリアーや、装甲へのエネルギー伝導が出せなくなってしまっている影響か。バファムトの体当たりからの踏みつけ、至近距離のプラズマ照射に……黒いエネルギー?球体?の連続射出の洗礼をモロに受けてしまった!
操縦席のある艦橋に火花が舞っていく!絶体絶命の危機……なのか!?これは!?
「負ける……負けてしまうのか!?地球防衛軍の……最終防衛艦アース・ゼノンが!?わたしの……もう一人の私が!」
「アーッハッハ!錯乱しているな!この、ここで!決着の場で、引いてしまったようだな!気が!」
既に回転しなくなった、艦首だった……胸部のドリルを掴んだ宇宙超獣バファムト。そのまま力任せに放り投げ、私とアース・ゼノンを……半壊している執政府キャッスルに落とした。ショック・アブソーバーが十分に機能していないのか、伝わってくる直接的な衝撃の力で……執政府が完全に崩壊したことがわかる!
そして外の様子という現在の情報を得られる状況でもなく、艦内のパワーが落ちてしまっているが……それでもわかる。敗北の色が濃厚なのが。既についてる明かりはディスプレイのみとなってしまった。他には連続して、たまに散る火花!
「アンジェラの言う通り、アース・ゼノンを呼ばずに待っていればよかったのか……?しかし……!」
「待ってはいたのだから、十分よ。ダメと言っても呼ぶのはわかっていたわ。それでもその時に必要だったから呼んだのでしょう?」
「アンジェラ、いけるよ!要望の通り全てを満たしている!ぞんぶんにみせてやりな!」
聞き覚えのある声がスマートウォッチから入って来た。アンジェラと、アンジェラのタイタンの整備班長だったはず。
そして音声と同時に出ている位置情報は、この艦の真上。いや……倒れているアース・ゼノンの顔の上だ!いつのまにかアンジェラがここまで!?私の意志と連動するように、残り少ないパワーで艦の外部カメラがとらえた姿を映してくる。シルバーのバトル・アーマー・スーツに……彼女のパーソナル・カラーの赤いパターン・サイン。
「コール!コードA・A!」
彼女の呼びかけと共に落ちて来たのは、銀色の巨人。アンジェラのもう一つの体、ブルータル・ナイトではない。アーマーを着用した姿を拡大したようなものが、降りて来た。ただ1つ違うのは、背中に特殊な推進バインダーを複数備えた……翼を持つという特徴。そこへアンジェラは飛び、叫ぶ!
「フュージョン!」
55mの巨体の瞳に光が宿り、立ち上がった!私とバファムトの間に割り込むように!
「お供1号か!2度目の生機融合とは……もう限界だろうにな!ちょうどいい、その生意気なツラを先に砕いてやろうじゃないか!」
「それを聞いたのはこれで2度目よ。やってみなさい!」




