11話 ブルータル・ナイト
■惑星ヤマト04 東方大陸 山岳地帯 ヤガールの寺院 観測中
「押している!流石アンジェラだ!」
旧都市を背に戦いを始めたサイボーグ宇宙怪獣とアンジェラのタイタン、ブルータル・ナイト。初動はアンジェラの突撃の勢いに任せて縺れ込んだまま、廃都市での白兵戦に移り変わっていた!
サイボーグ宇宙怪獣のソリッドでシャープ……しかし肉の盛り上がりを持つ強靭なボディ。それに向けてアンジェラは、自らの第二の肉体となる巨人と完全に一体化している軽妙な動き。左腕に備え付けられた軽量な盾を当て、右手は拳として打ち出して叩きのめしている。赤白くも銀色に鈍く光るサイボーグ宇宙怪獣を、銀青の巨人が制している姿。双眼鏡を覗くことで映しだされる彼女の姿は勇ましく。そして勝利を確信するのに十分な勢いだった。以前みた宇宙空間での追撃戦よりも、ずっと有利に見える!
彼女の輝かしい戦歴のものか、二つ名が勝利の女神と言うのも納得だ。
「これはよくありませんね、ヤガールもそう思いませんか」
「むむぅ……これは。バファムトめ、とんでもないものを」
「チッまずいわね、解析は進んでいるのプリム」
「既に生体制御ユニットの位置は出ています。しかしそこに至る手段を構築中。武装の中にロック中のものが一件ありますが、これは?説明を求めますクレア少佐」
えぇ?何がまずいのかと隣を見ると……ネロは私から双眼鏡を取り上げ、筒の部分の何らかを弄ってから再びこちらに寄越してくる。その間にちらっとみた3人……ソニアと、レーツェンとカナタは目を細めてアンジェラの様子を見ているようで。すごい視力だ、と見続けていたらネロから「とっとと見ろ」と顔に圧しけられてしまった。目に痕が出来そう!
「いい?専用の調整をしていないといえど、アンジェラはザ・マスターが生み出した超AIのプリムと同乗して融合しているの。新型にね。その状態で、決め手にかけている。いえ決め手どころか切り込みが入れられない」
双眼鏡、調整をしていないのに自然に焦点が移動してみたい場所が合っていく。オートフォーカスにしては、焦点が私の意図していないところで合っていく。これはネロのヘルメット・バイザーと同期させているのか!?彼女が動かした視線を追って、かつ彼女の参照しているデータも流れてくる。膨大なデータで私にはわからないものの、とんでもないものと戦っているようだ。
「あのサイボーグ宇宙怪獣には力が十分に満ちているのです、余分な放出も出力もなく。いえ少しはムラがありますが内部のもの。簡単に言えば外側に刃物を入れる隙がない。デリガット・バフム……いえ、エルダー・バファムト。あそこまで言えるほどはある、なんてものを」
だからソードもあったはずなのにしまって、拳と盾で戦っているというのか!決め手に欠ける、傷をつけられるかわからない。だから白兵戦の……肉弾戦の打撃で仕留めようとしていると考えていいはずだ。しかしそれは人間相手のもので……いや、生体制御ユニットは巫女のはず。脳を揺さぶるように、制御の生体ユニットを揺らせば行動を大幅に弱めることができるはず!
「それは相手が正気とか狂気とか、意識がある場合に限られてくるわ。元からおかしいのに生体制御ユニット止めた程度じゃ止まるはずもなし。クレア少佐、ロックのかかった武装というのは何?時間がないから答えて」
「いえ、その、あるにはあるのだけれどこれは特別な許可が……」
「アレクサンドリア執政官補ネロ・ウィンタースが」
「出します、出しますから一々言わないでください!使用の許可は出しました!物理ロックですので強制解除してください!システム上そうしているだけです!」
「もうしているわ!よくもまぁこんなものを」
アンジェラは把握済み?どこのを?と探すとまた焦点が移動し……アンジェラの、タイタンの腰にマウントされている棒状のものを中心に映しだす。形状からみてただの棒というより刀の柄のようなものもあり。であればまさか……セイバー?デカいセイバーが特別な装備なのか?
アンジェラはそれを固定していた器具を拳で破壊し、握りしめて構えた!
「いえ、あれは……あれは何!?液体金属を!?刀身に?!何の金属!?」
「あれは……ヤガールが聖鉄と呼ぶものを産業同盟が製造しようとしていた時に出た不純物が……ザ・マスターの力を散らす性質を持っていることが判明して」
「な、なにを!?与えたものからあんなものを鍛造していたのか地球人は!その質は父母への背信にあたるぞ!」
「あっきれた!それで名目上押収してゼノテック対策に作らせたね!液体金属化ってことは傾向性よりも……いやでも、いける!それなら!」
ネロの視点に合わせる様に動く焦点。そこでは刀身が伸びきった巨大な刀をアンジェラが振り、サイボーグ宇宙怪獣の機械と生体の部分にあっただろう境界を切り裂いていた!火花散る切断面!すごい、切断できないものを出来ている!内部のエネルギーを散らして脆くしているとかなのか!?
1箇所切り裂けば後は早く、残りの3か所も切断し……最後に横一線。サイボーグ宇宙怪獣の頭部のあたりを切断すると、そのまま頭をもぎ取り。生体制御ユニットが失われたことで大爆発する巨体を背に刀を下ろした。
「うおぉっ!やったー!アンジェラの勝利だ!」
■惑星ヤマト04 東方大陸 山岳地帯 ヤガールの寺院中庭
「生体制御ユニットがカナタの妹ではなかったことで、確定したことがあるわ」
「バファムトの話はブラフで、やはり首都にいたまま拘束されていると」
「それはないわね。捜査局で見なかったの?あの手合いはブラフを出すまでもないといった自信で満ちている、堂々としたものよ」
「左様、あれらは複数用意できる状態であり。全てに巫女を埋め込んでいる……操術に長けたハルカは首都にいる可能性は高くはあるが」
ネロと降りて来たクレア少佐、そしてレーツェンが状況の整理を行っている一方でアンジェラはタイタンに膝を着かせて降着し休息を取っていた。タイタン搭乗後のせいか、極度の疲労状態に陥っているようで。生理機能として生体サイボーグがなぜそうなるかは私は知らされていないが……とかく消耗しきった彼女は、アーマーを下ろし、スーツの上半分だけを脱いでインナーウェア姿を晒していた。
「あのブレードの予備は?1本だけあるってもんじゃないでしょ」
「試作のソードがもう1つ。ですがタイタンがありません」
「ブルータルはカナタが登場して、残り1本はミカエラに使わせるわ」
「確かに武士であるカナタなら巨人と融合しても十分に振るえようが、そなたは」
三人の見解と今後の対応のための話に、水を頭から被ったアンジェラが意見を述べる。いやこの場で作戦の指針や戦術の決定が出来るのは彼女なので決定事項なのだろうが。
そのR分遣隊のリーダーであり戦術班長たるアンジェラは……カナタが汲んだ井戸の水を、ソニアがアンジェラへと頭から流すというインターハイ前でハードな練習中の高校バスケ部みたいになっていた。
朽ちかけたテーブルに手をついて体を預けている姿勢のアンジェラ。彼女の茶の髪と豊かな胸部が重力を感じさせる降り方をしているが、憔悴した顔を見るとセクシーさを感じるものなどなく。アンジェラは二つ名の通りいつも勝てるとされている……らしいが、本当にいつでも勝てるようなもののか?と思ってしまう。あの時と同じく、ギリギリのところを無理しているのではと。
そんな私の視線に彼女は、視線を一度合わせると目で伝えて来たことがある。今の彼女に私ができることはただ一つと言う具合に。その視線のさらに先にあるのは……朝餉の残りの白米のオヒツ!私は急いでオヒツに残った白米を握り、握ってはアンジェラに出す!冷却が終わり終わったのか、オニギリを飲むように口へとねじ込んでいく。形状的にバナナみたく長く丸めたほうがよかったのか?
「スター・ブレイザーが到着するわ。作戦会議の後に……いえ、首都へ向けて出撃した後に伝える。それでいい?」
「ねぇやっぱりアース・ゼノンを今からでも呼んだ方がいいんじゃ」
「それについても後。アンジェラから説明させるから、今はアンジェラへの補給!」
レーツェンが中庭にある枯れた竹?っぽい植物から何枚か葉を用意してくれたもので、それを皿とか携帯用の包みにしてとにかく白米を握っていく。2つ作っては1つ消えているスピードだが……なんとか1つ包みが出来た時。この惑星の大気という空間を割いて出現した戦艦がある。銀河連邦統合軍所属、スター・ブレイザーだ。全長が2kmほどある巨大戦闘艦が!少し離れた位置に停泊しているクレア少佐フリゲートへ、接近しすぎない程度に、だ!すごい操船技術。
「タイタンの貸し出し、搭乗者変更が2回。非正規の押収品である特殊装備の使用……何もかも問題しかありませんが、もう……どうしたらいいか」
「そのうち慣れるわ。これが終わったら前例が出来て、アルテミス艦隊から駐在の辞令が下りてくるんじゃないかしらね」
「こらそこ、アンジェラ!海軍捜査局の人間を異常事態に慣れさないで!分別!」




