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オリジン・シード  作者: 草間
イースター・エッグ~VSメカ宇宙怪獣~
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8話 レーツェン・ヤガール

■ ヤガールの寺院 荒れた道場


「全て相違ありませぬ。再生者様のご判断で、如何様にもなさっていただければ」


 道場?らしい広く高い板張りの床に4~5mありそうなレーツェンが伏せて……とにかく伏せて伏せて私に頭を下げている。どうしたもんか、と考えている私にネロはお前の裁量で決めるしかないんだから早くしろ話が進まないと目で刺してくる状況なのだが。


 大爆発した……させてしまったエルダー・ヤガール。彼女?をそのままというわけにはいかず、みんなで鎖とか持てるところを持って寺院の中に引き入れた。外の囲い、高い塀は爆発で一部吹っ飛んでいたため入れるのは楽ちんだったが、倒れた巨大な老婆を安静にする場所が見当たらず。教導院では修練やってそうな中庭に寝かすのも、なのでカナタの覚えのある道場に引っ張ってきたのだ。


 そこでは過去に修練していたカナタ自身もびっくりするほど荒廃している有様。木造家屋とか手入れしていないと痛むのは早い、と聞くが……この2mありそうなカナタや4~5mあるエルダー・ヤガールのような人間が体を動かすだろう巨大な道場はひどく痛んでいた。自然的な老朽化と何か物理的な衝撃がいくつも起きていたからのような……そんな荒れ具合。


 なのでエルダー・ヤガールを寝かせて適当に木片を取り除き、掃き掃除と汲んできた水で雑巾掛けを始めていたところで……彼女?が目を覚ました。最初は意識が朧気で大丈夫なのか、と思っていたが。これまでの経緯をカナタが話して説明しある程度のことを我々が把握していることを知ると……だ。板の間に綺麗に両ひざをついて伏して頭を下げてこの発言。


 私の前で全部やったことであるとまず認めた。


 何をやったかって、地球帝国と組んで宇宙怪獣の蘇生とサイボーグ化や製造とか戦力化を目論んでいたということだが。これらに対して私が判断するの!?いやでも私以外誰が判断するかっていうと困る話ではある。


 地球帝国と密約していた話でもあるし、どちらも知らないと言うだろうが銀河連邦の一部……も話を通しているだろう。それを司法の場で、というのも裁くことが出来るのかというのがある。なのでその銀河連邦社会という公的な部分に委ねるとなれば特に何か変わるわけでもないだろう。むしろ肯定されてしまうかもしれない。宇宙怪獣相手、ちょっとそのあたりが疑わしい部分のある銀河の情勢があるもので。


 そして彼女?を私ではないものに委ねるということはだ。


 このエルダー・ヤガールが(内心の真偽がさておいて)悪いと思い伏せて()()頭を下げているのに「知りません、関わりません」と言ってしまうものであるから……それは、かなり嫌だった。再生者という立場がいつのまにか与えられたもので、私個人にその資格があるのか……というのはさておき見放し見捨てるようなことだけはしたくない。なので返事はただ1つ。


「あなたのことに対して私が知らないことが多すぎるので、今ここで何かを判断することは出来かねます。ですがあなたの身は私が預かります。これまでのことも、これからのことも()()()()()()()……よろしいですね」


「……ははぁ、ありがたき」


 もう司法がどうこうできないエルダーの話ならこうするしかないもので。教導院に任せるのも違うし、そういうことはリィン導師にメチャクチャ怒られそうな気もするので……彼女、エルダー・ヤガールの件は私が預かるのが一番だろうと。流石にここでよく知りもしない相手に「潔く腹を切れ」とか「追って沙汰が来るだろう神妙にいたせ」とか言うわけにもいかない。


 と、したエルダー・ヤガールだが。彼女は伏せているし、そもそも真っ黒の服装で顔もヴェールで隠されているもので何を考えているか、彼女にとってこれでよかったのかもわからない。これでよかったのか、とネロ達を見ると知らんって顔だしカナタは頭を下げたもので……よかった?でいいのかなと思っているあたりで私の腹が鳴ってしまった。


 東方の、朝の静寂(しじま)に、腹の音


 いえね、早朝にお粥の残りとかだったから……シマらない有様になってしまった。腹の音が鳴りやんでくれたが、今度はエルダー・ヤガールがヒビ割れた床板を軋ませるような……歪な音を響かせて。ゆっくりと立ち上がると私を見下ろして口を開く。心なしか目に()()があるような?気がするが?怖くは……ないな?


「では、今のお話の前に朝餉にしましょう。カナタ、水を汲んできなさい」


「は、はい!すぐに、人数分の支度を!」


■ヤガールの寺院 道場で 遅い朝飯 


「この惑星の執政として生まれる姉妹には、ヤガールの術を代々教える習わしがあるのです。宇宙の聖なる力の操法の巫女と、操法より武に比を置かれた者。幼い頃より才によってそれぞれの道に分かれて教育を受けます。私はハルカよりも武術の方が才があったので」


「産業同盟下の植民政府基本方針を宇宙怪獣専門に特化させるとそうなるか。なら巫術とやらに優れた方が執政官になるというのは、人造宇宙怪獣の頭目するため」


「左様。代々そのように受け継がせ、帝国のものと相応しい成果を求めて続けてはいたが……さぁさ御子様、ごはんを重くしておきましたのでごゆりと。おかわりもありますので」


「わぁ白米!白米と肉に漬物だぁ~汁物もある!」


 こんな廃墟ソノモノの寺院に食料はあるのだろうか?と思ってたら全然そんなことはなく。備蓄されていた白米らしきものを主食とし、厚切りで朝採れの獣肉、保存を目的とした赤いカプサイシンっぽい成分がメインの香辛料みたいなので塩漬けした葉物野菜!汁物は乾物でダシを取ったやつ!根菜を薄く切り、また他の葉物をも添えた立派な膳が出て来たのだ!うまそー!いい匂い!


 道場の上座?に座っているのはエルダー・ヤガール……レーツェン・ヤガール。


 彼女の隣……というかその上座を薦められた私は、彼女の隣で箸を持ちいただきますの挨拶を済ませてからメシをかきこみ始めた。アンジェラとカナタ筆頭に他の人らは各々膳を並べて、ポリは中庭で新鮮な獣肉を貪っている。元気だ。プリムは私の隣に浮いているが、レーツェンを挟んでのもの。だいぶ警戒感のある距離感が余所余所しい。


「巫女であるハルカ、武士である私もエルダーとは行かずともある程度の到達点には至れたのです。機械式で再現した宇宙怪獣モデルも。しかし生体の、宇宙怪獣を再生することが難航しました。生態が未だに不明なあれらを完全に解析と制御することは……」


「あれで分かっていることはただ1つ。我ら父母たる宇宙超常存在(ザ・マスター)と同じ力を糧にしているということ。然るに力の操法に比重を置いた巫女、そして巫女と共に戦う武士を生み出せればと密約を結びました。1000年ほど前の……そう、そのぐらいの時の話です。肉と漬物おかわりは如何ですか」


「いただきます、あとお茶も」


 みんな箸が進んでいないのはどういうことやら。茹でこぼし脂を落とした肉の具合もいいが、発酵が進んで酸味の強い漬物と合わさるとこれがまた絶品で。葉物と根菜と共に齧り、汁物も吸いながら米を入れる。ううん、このローカルな食事の味と具合がシティボーイの胃に染みわたる。実家の味だぜ、そうそうこれこれ。米がないと始まらない。この米も硬めに炊かれているいい具合。そういう品種なのかもしれないが。


「ですから我々のような到達点でも操れる生体を作る必要があった、その技術を持っているものを師は呼び寄せた。それは一体誰なのです?」


「それよ、それ。大なり小なり現在の銀河連邦の……地球帝国の生物工学は、かつて地球人類が受けたゼノ・テックでの遺伝子改造が行われた時代に追いつきつつある。それ以上のものってどこからの技術供与なの。一番できそうなのはそこで話聞いてるんだか聞いてないんだか、とにかく食事に夢中なやつぐらいじゃない」


 失礼な聞いてますよ、と箸をカチカチして応えた。行儀が悪いと指さしのダメ出しを受けたがネロさん、聞いてる上で専門外だから口を挟まないんですよ。だから黙って食事を口にしているだけじゃないか……話の腰を折らないためにもね。お米もう一杯お変わりしようかな、と薬草茶を啜る。そろそろ本題に入りそうだしはてさて。


「それは……この宇宙でも他にはおらん。この宇宙で生まれしもの。その体を弄れる()()を与えられた一族……エルダー」


「エルダー・バファムト。今は海賊ギルドに潜んでいる、デリガット・バフムと呼ばれていたはず」


 その名前を聞いて私は思いっきり茶を噴き出してしまった。ここまで驚くとは思っていなかったのか、レーツェンの大きな体がビクリと揺れる!揺れたため、お茶のお変わりを注ごうとしていた彼女の急須?が揺れて私のデニムズボンにひっかかる!


「デ、デリガット・バフム!あれ……あれ?!彼女?が?!あっちゃっちゃ!」 


「はわわ!水、水を!これカナタ!水を!まだ早い、今から干せば昼には」


「これでデニムの代えは最後ですが、中で乾燥させますか?」

 

 カナタがおっとり刀で水瓶から水を取りに行く様子を背に、レーツェンにより私は転がされてデニムズボンを剥がされてしあった。デカイくのいちに4方から剥がしにかかられた時は抵抗できたのに、今回は全くできなかった。すぐさまプリムにより渡された最後のデニムの代えで凌ぐが、なんとも間抜けなことで朝の時間が終わってしまった。


「アンジェラ、クレア少佐の返答は?」


「少佐は話そのものに否定的よ。連絡の取れたスター・ブレイザーは向かっているようだけど、私のタイタンの準備が終わっていない。間に合うかどうかね」


「我々でどこまで対処できるか、となりますか。エルダー大戦とまでは行きませんが……よくない気配がします」


 既にアンジェラ達はこの事態への対策に入っているのに、だ!

伝統的な漬け方、おいしいんですよね


みなさんも10月ぐらいにどうぞ。

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