6話 エルダー・ヤガール
■惑星ヤマト04 東方大陸 山岳地帯 旧都市の街道 朝
「この星はエルダー大戦に敗れたヤガールの隠れ里だったのです」
朝となったものでカナタを先頭に廃墟の都市を出て街道を歩いて移動しながら、この惑星の話を聞いていく。夜が明けたもので周囲は明るく……山岳の標高もあってか坂を上っていけば昇っていくほど見える光景も広がっていく。石灯篭が並ぶ街道を歩いて……いや石灯篭ってこんな街道に等間隔で並んでいるものだったか?ちなみにデカいクノイチの方々は一旦都市内部で休んでもらうことになった。まだダルさが抜けないようで。
さておいてマイルストーンのように石灯篭が並ぶ街道を歩きながら周囲の光景を見渡せば。
滅んだ都市部というが、都市部というには防衛設備がそこかしこにあるのも珍妙な雰囲気だ。ヨーロッパで見る山岳の城塞都市というには過剰にも思える。東アジアの古~中世から残る都市は城壁都市が多く21世紀でも名残があるのだが……それとはちょっと赴きが違う。石造りの塔は対空砲であるし、どうみても現代以上のテックが基盤にある。
「そのヤガールの術に目を付けたのが銀河連邦加盟時代の地球帝国。1000年ほど前の時でした。銀河連邦は宇宙怪獣殲滅のため、ヤガールと手を結んでこの惑星を専門の研究惑星にしたのです」
「それは禁忌の始まりでした。元々あった銀河連邦の……帝国の方針が混ざり合った結果、ここは歪な惑星となってしまいました」
「それと帝国の方針と関係……帝国の方針とは?」
「御子様はご存じない……帝国の方針といいますか、産業同盟のといいますか」
「私が説明するわ。そのまま歩いて」
カナタの声と重なり続くように……巫女の彼女の声が聞こえてくる。はるか1000年前の話。アンリが言っていたように地球帰還を妨げる恐怖の象徴、宇宙怪獣。その殲滅のためどんな手段でも構わなかったのか。それともヤガールにより意識を誘導されたのだろうか?とにかくそれはわからないが、今わかりそうな疑問点である帝国の方針とはなんぞやと聞いて見たらカナタは言い淀み。代わりにアンジェラが答えると、私の横について歩調を合わせる。
「地球帝国は何が何でもあいつらに勝てる存在を欲していたの、戦力を。でも銀河連邦がいくら勢力圏を広げても、常に戦争しているわけではない。戦う相手が宇宙怪獣ほど強いかと言われればそうでもなかった。似たようなのはいても」
「ですから、彼らは考えたのです。兵士を常に生み出し、常に戦わせ続ければよいと」
「だから産業同盟惑星は保有する惑星で装備の実験を実戦で行うことにした。常に兵士を生産し、装備させ、目標となるものを作り出し戦闘を行わせる。その目標もまた兵器として実験と改修とを繰り返していく。私たちと同じ……安く作れるようになった結果」
「この惑星に入植させた遺伝子は、御子様が見た通り。見た覚えのある地球の種の方々。彼らを作り、常に戦わせる。戦闘術を極めた戦士とその装備を生み出すための惑星」
恐ろしい話をアンジェラと巫女の彼女から聞きながら……この山岳地帯のようやっと頂きになりそうなあたりに到達すると。眼下に見えてくるのは廃墟の都市と……ネロが無言で出してきた双眼鏡を持って、覗いてみれば。それが届く範囲の都市群はすべて廃墟であり、また……巨大な何かが倒れている光景が見えて来た。
どこもかしこも戦場であり、あの民家でさえも戦場のための施設でしかなかったというのか。そこで説明は終わり、と言う具合でアンジェラは言葉をやめて。カナタもそれで説明は十分だろうと話が戻っていく。ヤガールと帝国の協定。
私からすればこんな恐ろしい話は全然説明は十分ではないのだが、ここで話を止めてもよくはないので。飲み込めずとも飲み込むしかなかったもので黙ってしまったが。
「宇宙怪獣を倒すのならば、宇宙怪獣と同じものを作る。それは公的に海軍の標的にされたのは機械的なものでしたが……この惑星ではヤガールがいる。生態的な人造宇宙怪獣の計画が進み、生まれ、操れぬものは戦闘試験用の標的となりました。」
「あそこで倒れている子たちが、それなのです。見えますか、あの姿を」
「ですが操ることが難しく。そこで機械化させるサイボーグ技術、帝国の人類遺伝子改造技術にも目を付けたのです。生体サイボーグ化と、機械サイボーグ化をと。ですが根はゼノ・テック。難航してはいたのですが……」
「協力者が現れたのです」
「協力者が現れたって?」
「え、えぇ。やはりハルカと繋がっておられるか、御子様は!それが何者かを我が師、ヤガールに問いただしましょう!接触していたのは師だけなのです!」
そこがヤガールの寺院、あそこにいるのです。とカナタが指さした先は……うっすら雪が積もる、ちょっと下った先にある平原だった。ここからでも寺院と呼ばれる建物のシルエットは見えないが……この東方地域には、視界を遮る何かがあるのだろうか。双眼鏡からでも観測はできなかった。
■ ヤガールの寺院
一目見てわかる!すごい風情のある寺院だ!
すごい伝統を感じる……趣きのある寺院だが、その門と壁が高い!見上げたところ、一番低いところでもアンジェラの2倍。4m以上はあるから……平安京の朱雀門や羅生門(能の題材で鬼が出てくる方)の倍はある。この門の前ではなく、門を通る者こそ鬼ではないでしょうか?と言う具合。その門の前に立ったのがカナタ、師匠であるエルダー・ヤガールを呼ぶらしいが。
「師よ!開けてください!カナタです、戻りました!師よ!エルダー・ヤガール!」
「伏せて!」
えっとアンジェラを見た瞬間。私は襟を掴まれて地面に引き倒されていた。いきなり何か、と思えばすごい衝撃音が鳴ってくる!衝撃音というか、砲撃の着弾音みたいなもの!その前に少し風を切る音がしなかっただろうか?何が落ちて来たのかと振り返ると……金属の棒、赤錆色の太い棒が2本。地面に突き刺さっていた!何!?あれ10フィート以上はあるよね?!アンジェラは既に重機関銃を構えているし、ソニアはセイバーを抜き放っている!ネロは……だいぶ距離を取り始めているな?判断が早い!
「カナタァよぉ……何をした?何をしに戻って来たァ……」
門を通るものこそ鬼。
自分の所感でしかないが……その言葉を撤回しなければならない。門の上から顔を出してきたモノノケみたいなのがいるから!
黒いヴェールで覆われた頭、しかし粘着質に歪み光る双眸の光!それが門の上から顔を出してこちらを覗いてた。覗いていたが、私と目と目があった途端に……崩れかかった門の瓦を破壊して、飛び上り。降りて、我々の前に現れた。着地の衝撃音もすごい!どんな重さをしていたらこんな音が出るんだ!?
「おぉ~?何かと思えば地球人の男ではないか!よいぞ、よいものを持ってきたではないか!コブつきではあるがな!」
全長はどの程度かわからない。何でわからないって全身真っ黒の衣装で、顔もヴェールで隠しているから。でも体長と言っていいのかわからないが……頭から、しっぽ?尻尾のように揺れる赤錆色の鎖の束から考えると……4~5mぐらいあるのか?それが粘着質な瞳を揺らしながら……私とアンジェラたちの周りをまわり始める。まるで蛇がエモノを締め上げる時のように。
「種の純度が良さそうな男ではないか!ハルカから子を産ませるがよいが、よいよいカナタお前からでよい!なんなら私から試してもよい!そうだあの術方があれば私でもまだまだ構わぬ、使えるぞ!」
「おばあさまは正気を失っているのです。その心を虚空に引かれ、歪めてしまった。その歪さが今やこの世を歪めてしまおうとしている。ですから、今ここで御子様のお力で正さねばならないのです」
ヤガールを挟んで反対側に見えた巫女の彼女が、手に持つ錫杖を地に打つと。それに連なるように私が登山杖代わりにしていた錫杖も鳴る。錫杖の頭についてる金属のリングがいくつか共鳴するように揺れて、鳴り合った。その鳴ったところで……エルダー・ヤガールと呼ばれた異常にデカい老婆はピタッと止まってしまった。我々の周りを旋回するのをやめて……ゆっくりと体を低く、下ろし。しかし視線はずっと私を見据えたままで。
「……違う。これは違う!何を連れて来たカナタ!なぜコレから父と母の匂いがする!なんだこれは!カナァタァ!」
「こちらの方は御子様です!あなたが申していた!宇宙超常存在の、後継者!再生者様です!」
「ありえない!ありえない、ありえない!それはいない!いないのだ!なぜそんなものを連れて来た……地球人めぇ!こんなものを作りおって私を謀るかァ!」
激高したヤガールは怒りに任せてそり体を立てて、その手元へ赤錆色の金属棒を2本を引き寄せた!あれもヤガールのものだったのか!10フィート以上の聖鉄だかの金属棒!?
「カナタ、正気を失っていると言っていたけどコレは流石にドが過ぎているんじゃないかしら」
「いやこれ正気を失っているというより……その……?」
「ですから御子様のお力が必要なのです!」
「御子などと呼ぶなぁ地球人めぇ!お前たち地球人がぁなぜ選ばれし者だとォ」
その瞬間、ヤガールは持っていた金属棒を振り回し地を抉り!礫を周囲に散らし始めたのだ!正気を失った老婆の癇癪にしては殺人的なパワーがふりまかれている!あれ当たったらタダじゃすまないんじゃないのか!?
「御子様!さぁ、私たちと同じく師を清めていただければ!」
「その前に死んじゃうよ!」
「全員最大火力で攻撃!決め手はナンブに任せる!私たちは距離を保って気をそらして!相手はエルダー、一瞬たりとも気を抜かないで!」
あの4~5mあって軽快に飛んでは跳ねて!10フィート以上の金属棒振り回して!打撃で石の散弾をぶちかますような暴力の嵐を私が止められるわけないって!
シグルイ無料ありましたね。私は1回読めばいいかなと思ってますが1回読んだらもう十分でしょうで…




