4話 目覚める魂
宇宙の忍者と侍
宇宙の僧兵
■惑星ヤマト04 東方大陸 山岳地帯 旧都市
カナタを追って?空へ飛び出して……気が付いたら腹部どころか顔で感じたのは石特有の冷たさと硬さ。
目を開くと見えた石畳とそれらの間に生えている草の香り……が土のにおいも鼻に押し込んでくる。ここはド田舎なのかなと思ったら腹を支点に転がされ、空を仰ぐ。焼けるような日の光が夜に代わろうと漂っているのも、東方の世界では日が沈みかけていることを伝えてくれた。空の上だと気づかなかったようだが、今このあたりでは日が沈みかけているらしい。
「聞こえている!?位置情報は追っているから、その場を動かないで!」
「バイタルデータも追っているから問題ないという意味よ。車両の修理状況は?」
「プリムの手伝いがあるからすぐよ。とにかく動かないで、連中が何者かもわかってないのに!いい?アンタが一番重要なんだからそれをわかって!」
そうはいっても私を転がした相手……スペース・ニンジャたちは私のことなど一切興味がないようで。転がしたまま、4人でカナタを連行しようとしているではないか。重々しい鎖で繋いで、だ。あんな重そうな鎖で繋いで?彼女をどうするつもりなのだろうか。この惑星での彼女も、彼女の事情もわからないまま……このような物々しいやり方で連れ去られてしまう。
絶対によくないことが彼女の身に待っているはずだ。ならば止めないといけない。だが立てるのか?ずいぶん高いところから落ちてしまったようだが……近くにセイバーも見当たらないのに、立って何かできるのか?
「えぇ、できますとも。御子様ならできます。さぁ心を静めて……頭、瞳、喉、胸、お腹へ順番に力を入れてください。そうすれば自ずと立てます」
朧気な視界と、意識の中で。
目の前で私の顔を……しゃがんで微笑んでいたのは、巫女の彼女。
なぜか今はハッキリ見えるが……彼女の髪のスミレ色は白と青の混ざりあう淡い光の色。その色が私の瞳にも宿る気がする。そんなぼぉっとした私の顔を……彼女は笑顔で見つめて、促してくれる。今が立つときであり、力の操法を現世で発っしてみる時であると。
だからまずは心を静めて力を体に通してみるのだと。そうすれば……自然と立ち上がることなど、出来るから。
「な、なぜ立つのです!?お逃げください御子様!御子様!いくらあなたでもこの、これらの者には!正気を失っているのです!私と同じく!」
「さぁよくみてください。彼女らを……荒れ狂う魂が見えませんか」
たしかに見える。彼女らは……私がスペース・ニンジャと恐れて、びっくりしてしまった彼女らだが。よく見てみると彼女らの体には……内側から淀みのようなものが渦を巻いて出てくるのが見えた。それがヒトの形になって今この世に出てきているようにだ。
何かおかしなものを感じたのか、いや自分が見られているのに気づいたのか。4人のうち1人が鎖を……槍で地に留めて、私の方に歩み寄ってくる。興味が湧いたのか私を試してやろうかという心を隠しもしない。手に何も持たず、私に歩み寄り、私に向けて拳で空を小さく切るように出してくる。だが……
「みえやすいでしょう?御子様にはあの者が何をしようとしているか、何をこれからするか……その瞳で見えるはずです。黒い淀みの影に合わせてください」
彼女の言葉を実践するように、その切るように短く振られた拳を……私も右手で払い。そのまま引いて戻し、また彼女の腹を短く打つ。するとスペース・ニンジャは大きく体制を崩し、よろけるもまた拳を繰り出してくるが……見えていた私は、左の手でそれを打つ。するとスペース・ニンジャは何が起きているのか、わからないのか。その黒い魂も淀みが振れて泡立っていく。
恐れが出始めた彼女は……私から距離を取るように離れて、背負っていた刀を抜き放つ。刃を返さない、殺傷力のある切断する鋭さを……沈みかけている日の光で見せつけながら。
「まて!その方は御子様だ!本物の!御子様も何を、逃げてくだされば私一人!」
「それは嫌なのですよね」
「うん、嫌だ」
「では戦わなければ。あの者の手には刃もあり、恐ろしいものです。ですがあなた自身にも強力な力がある、そうですよね。ではそれを心で操るため、心を通しやすいものを手に持たななければ」
すると巫女の彼女が……その手に持っていた錫杖を振れば、似たような大きさの棒が都市の瓦礫から飛び出てくる。赤黒い、赤銅色のその棒は私の手に収まった途端にサビが剥がれるように色を変えて青白い銀色のものに変わった。
「エルダー・ヤガール、かつてハイ・エルダー時代に作られた聖鉄の錫杖です。ここで朽ちていたものがありましたので、是非お使いください」
「そんな……聖杖が色を、何が起きて……お前たち!今すぐ……ぐぅ!」
カナタの言葉を遮るように三方より鎖が引かれたのと同じく。私と向かい合うスペース・ニンジャは刀を手にこちらへ駆け出す。先ほどより速く動き、こちらを確実に仕留めようとする動きで……姿を消した。しかしそれも、私と巫女の彼女の目では簡単に捉えられてしまう。なぜなら確実に仕留めようとする意志がこちらにずっと向いているからだ。
なので背後からこちらへ、刃を振るスペースニンジャへ。錫杖を私の体の前で……対象になるように持ち。自分を中心にして円を描くように体を捻れば、すぐに彼女を打つことができた。刀を取り落としたニンジャへ向けて、振り返るように逆へ捻って二度目の円の打ちを加える。
「彼女はもう十分でしょう。後は残るお三方へ」
背後にいる忍者の彼女へ、振り返りその姿を確認すると悶え苦しみ……膝をつく。私は巫女の彼女のいう通りに……打った忍者はもういいのだとわかったもので、カナタを捕らえている3人のニンジャへ向き錫杖を構える。その途端に膝から崩れて落ちたニンジャが……爆発した!
爆発した!?えっ殺すようなことになってしまったの!?何かしくじった?!
「落ち着いてください御子様。そうではありません。彼女の中にある歪んだ力と、あなたの力が反発しあい……いえ、あなたの力で押し出された結果です。そこのカナタ様が正気に戻ったのと同じ」
どういうことなのか、と聞けばすぐに答えてくれた。危ない、爆音と光で滅茶苦茶焦ってしまった。
どうやらシルバー・サムライのカナタが今ちゃんと話せるようになったのは。瞳を向けると硬くも静かで穏やかな心のように見えるのは。惑星ネザリアでハイ・エルダー?使命?のような簡略な式を行ったソニアにも、今の私と近い力の性質が伝わっていたから。惑星トル・ヴィルムでソニアと戦ったため祓うことが出来たと。
「さぁ心を落ち着かせてください。残る3人も巫女様の手で正気に戻してあげてください。彼女達は今おばあ様の影響で虚空よりの力を歪められて流し込まれているのです」
これは事態が変わってきたと、カナタを捕らえていた3人が彼女を離し。三方から私を包囲するように……各々武器を構えて距離を測ってくるが。距離など関係ない、それは巫女の彼女から教わったことの中にある。だから私は両手で持った錫杖をゆっくりと振り、周囲の風を切るように動かしていく。三方どこからへも打てるように。
忍者の彼女らはわからないだろうが、打ち合えば打ち合うほど不利になる。そう判断できる時間もなかったのか、それとも巫女の彼女が言う様に判断できるような状態ではない……正気ではないのか。戦い慣れていないはずの私が3人を打ち据えるのにそう時間は必要はなく。すっかり日が落ちた廃都市の闇の中に……爆発が3つ連続して生まれ、周囲を照らした。
「なんという凄まじい力と技……!だが、だが……御子様は先から誰と話しているのだ!?」




