2話 シルバー・サムライ捜査網
フリゲートって艦なのでフリゲート艦って変なんだよなぁって岡部いさく氏が呟いてましたね。
この作品はアレ準拠なのでフリゲートは500mぐらいです。
■惑星ヤマト04 軌道上 フリゲート艦 取調室
我々こと私に着いてきてくれる……もとい先導してくれるロメオ分遣隊が惑星ヤマト04で合流したのは地球帝国海軍の犯罪捜査局に所属するフリゲート艦。この惑星を封鎖している艦隊に一時合流している中で惑星内航行に一番都合のいい艦だったそうだが。ネロ執政官補様と艦長のクレア少佐は……その、なんだかあんまり円滑にトークをしているようには思えない。指令もあったでしょうし協力体制となっているのではないのですか?
「参謀本部から提供された情報を整理したものがこれねぇ?」
「詳細はそこにある通り。経緯が分からないとのことであなた方が派遣されたんでしょう?」
「現管理政府のホウジョウ家の長女。執政は次女で将軍がこのシルバー・サムライ。それがなんでギルドの戦士やってんのかって捜査するのは本来あなた方のさらに上の方の仕事ではないんでしょうかねぇ~」
「まぁまぁまぁ……どうも只ならぬ事情があるようですし」
そもそも地球帝国の参謀本部から出された情報がこんだけって何だよとか。何で知らないんだよお前の管理下の話だろでネロ執政官補様は大変お怒りで。アンリから聞かされた時はマジで何でわからないの……とドン引いたわけだが。当然事務方であり政府方のネロ執政官補様は気に入らない。
「我々も要請があったから今回の件に協力しているまで。仰る通り本来産業同盟のセキ・インダストリ管理惑星統括方面の権限の下に行われるはずですから」
「だからそのさらに上の参謀本部がなんで知らないかって聞いてるのよ!」
「まぁまぁ……だからこうしてご本人に聞こうってわけで。行先もまだ決まっていないし我々も聞かねばならない立場なのだから……」
「うるっさいわね!言っておくだけ言っておくのよ、こういう時は!大体なによそのふざけた言動と格好は!アンタ一応公人なのわかってんの!?」
「イッチョウラでしてよ」
取調室は下手人シルバー・サムライと我々を安全に隔てるために、滅茶苦茶ブ厚い透明ガラスか樹脂の壁がある。そういう場合って本来反射せず透過率100ぐらいのすごいやつなんだろうが、シルバー・サムライは類まれなるパワーとソニアやリィンみたいな術を使うもんで……我々の姿がうっすら反射するような厚さになってしまうのだ。
そこに映し出される女性陣の姿よ。
シルバー・サムライ以外はみんな所属している組織の制服を着用している。ロメオ分遣隊という特殊な立場でもアンジェラとネロは海軍系列の制服である。もちろんネロ執政官補殿のほうが政治将校であるためか肩の紐とかがある。一方ソニアは教導院の僧衣であるし、クレア少佐は捜査局という性質上飾り気はないが……キッチリした制服の胸元に輝くバッジに腕章。犯罪捜査局を現すものである。
彼女もまた地球帝国の人間らしくタッパもデカければ胸もデカい。金のショートめのボブカットではあるが、近い身長のネロと並ぶと……ちょっと目元があどけない?いや物言いに棘はあるが顔と雰囲気が洗練されていない気がするな?垢抜けないっていうか。
そんな華やかな一同に対して、私の格好。オレンジのジャケット!ジーパン!黒のブーツ!極めつけにはカメラマンか釣りやってる人か……オジーチャンが着けてるようなベスト!蛍光テープつき!ポリと一緒にいたら山の猟師に間違われそうな姿。
アンジェラ曰くどこにいても目立つようにコーデしてくれたらしいが、女性陣には大層不評。透明板を挟んで向いに……拘束されているシルバー・サムライことカナタ・ホウジョウ氏も顔を顰めている。
猟師の私と違ってその姿は、まさしく囚われの女武者。黒く長い長髪に丸めだがシャープな顔立ち。しかも出るところ出ているし背も高く、すらりとしている。ただし今は重要参考人として両手両足を重々しい電子錠と物理拘束の鎖で縛られている。厳重すぎる、猛獣じゃないかもう。
そんな猛獣みたいな彼女は、我々のやり取りを見てか。先ほどまで顰めていた眉を怒らせ、恩讐マシマシみたいな口を開いて開口一番
「何も語ることはない。殺せばいい!お前らにできることなど何もない!」
「こ、こいつソニアと海兵隊に負けたくせに!」
「包囲しながらでしたので、かなりギリギリでしたよ。ただ……あの時は今よりも強い圧を感じていましたが。それを感じません。リィンからは自分で探るように言われましたが……中々」
「教導院の騎士が今更だ。そこの男といいな、本当にお前は再生者なのか?それが?今更をしにきた?今更だ」
「いやぁどうなんでしょうね、本物かはちょっと私にも」
「本物ですから私がついているのですが?」
「ここはフリゲート内部で、外部のクレア少佐も聞いているんだからもう少しマトモな返答を考えて」
「そうは言っても自分が本物か偽物か、なんてわかりようがなくない?」
大体経緯といえば私の方が不可解なんだよな、と。プリムが保証人?として証明はしてくれてはいるが……自認がこうであるもので断言できるものがないのだ。カナタはそれみたことかと鼻を鳴らして吐き出すように言葉を続けていくが……そりゃそうだという内容で。
「恒星の再生も海兵隊の件もだ。ただ帝国と連邦にとって都合がいい虚構を作り出したに過ぎん。それが今更なんだ?好き放題させて都合が悪くなったから、こんな虚構を送り込んで正すような物言いは!お前らが今更何が出来るというのか!」
これには、このお怒りの言葉には……何を持ってもダメではないか?という空気で押されてしまって。皆何とも言えず押し黙ってしまったが。ただアンジェラだけは違い、一歩前に出て……分厚い透明板に手を当てて口を開いた。
「何か勘違いしているようだからハッキリ言っておくけど」
「地球帝国海軍の英雄様、勝利の女神がなんだ。その男がお前の主に決まったのか。人造人間の宿命だな」
「私たちではどうにもならない時だから彼が目覚めたの」
「……話すことは、何もない」
何か思うところがあったのか。すべてに噛みつくような圧はなくなったが。それでも何かを打ち明けてくれることもなく。さてどうしたものかと困ってしまった。今この……我々が衛星軌道上にいる、眼下の惑星ヤマト04で何か起きているのは確かで。それが宇宙怪獣に関わるものだったりゼノ・テックが関わることはわかっているのだが……どこから何をすればいいやら。
いや、そうだ私は聞いたはずだ。ここで何が起きているか?何が発端かを。
「なら……まずはエルダー・ヤガールに会いに行こう。今回の一件は彼女が発端らしい。参謀本部からの情報にはないけど、そこを探すことから始めないか」
と。自分の知っている情報を口にしたところ。今度はみんな黙って私を見てくる。ポリは私に撫でられているままではあるが。みんな……アンジェラを筆頭にクレア少佐までだ。そのクレア少佐がまず、捜査局の人間らしく聞いてくれた。その情報はどこから?と。だから私は正直に答えたのさ。
「夢の中で、巫女の子が教えてくれたんだけど……エルダー・ヤガールのおばあ様?が何か始めたことで大変なことになってるって」
私の正直な答えに……クレア少佐とネロの取調室を満たすようなデカい溜息が聞こえた。アンジェラは顔をうつむけて片手で目を覆い、側頭部を揉んでいるようにも見える。ソニアに至ってはこちらの顔の前にまで来て……両手で顔を掴み、私の目を見て具合を確かめ。プリムと共に精密検査をするのかスキャニングまで始めている。大げさすぎないか。
「アンジェラ、あんたが遠足気分で新しいお洋服をプレゼントするからよ。快眠なのは結構だけどね。夢占いの結果で行先選ばれたら堪ったもんじゃないのよ」
「そうね、悪かったわ。船外活動服を持ってくる」
えぇみんな何その反応は。こういうのは特殊な……シチュエーションで起こる事態なのではないのですか?そういう色々なものが関わっているから、不思議なパワーでこういう情報が伝えれてきているのではと。弁明しようにもアンジェラはもう出るつもりだし、クレア少佐もお開きの雰囲気で退室しようとしている時だった。
「な、なぜ私の師の名前をお前が……いや《《あなた》》が知っている!」
透明板越しに聞こえて来たカナタの声で……皆の動きが、また止まった。えっと振り返ったソニアが、私の顔を持ったままだったからグイと捻ってしまっている。ぐえっ。そしてまた、ソニアは私を見るために顔の向きと手元を戻し、手を戻したので私の顔の向きも直った。肩の凝りをとってくれているのかな?
「ヤガール!まさか……ダーク・エルダーの、ヤガールがこの星に!ナンブ様!大変ですよ、ダーク・エルダーがまだ健在なんです!」
「教導院の!ダーク・エルダーなどと貴様らの言いそうな……いや、いや!そうではない!夢見の操法を受けられるということは……あなたが!あなたが本物だったのか!本物の……御子様!」
「……誰かわかるように喋ってください」
「それには同感……コーヒーもらうわ」
もう一度、ソニアにカナタがクレアとネロに説明しようと体を傾けた時。両手で掴まれている私の頭も同時に傾いてしまい。傾いた先に見えたところで……巫女の彼女が、こちらを見て微笑んでいた。
賑やかなのですね、と。そう賑やかなんだよ。私たちは。




