惑星トル・ヴィルム調停戦:サイドストーリー・エレナ2/2
未知なる空間を進みそうな(例のBGM)です
■惑星トル・ヴィルム 赤道直下沖 を最大船速で航行中のスター・ブレイザー艦橋
現在、私……わたくし。元地球帝国海軍提督であり現銀河連邦統合軍外星系……えぇとアレクサンドリア派遣?管轄?本部?の第三艦隊司令エレナ・ローデンシア提督は今回こそ間に合った。地球人類の原種であり、銀河連邦人類の救世主である再生者である彼の崇高なる任務に。
「ワープアウト完了!目標東洋軌道エレベーターまで4万キロ!機関長!エンジンの調子は!」
「気にするな!新造戦艦のエンジンはヤワァじゃぁない!」
「慣熟訓練にはちょうどいいってところか!総員しっかり掴まってくれよ!」
最初はまず巨大棺遺跡機構での派遣!あの時は決起後の拘束で取り残されてアークⅠでなんとか駆けつけるも……あの恒星再生という奇跡の御業を目撃するだけに留まってしまった。あれほどの感動的で神々しい瞬間などそうは目にすることはないので、あれはあれでよかったのだが。
「ミカ、聞こえる?この船の戦闘班長はあなたなの。だからあなたが指揮を執るのはわかるでしょう。こういう状況でもね」
「で、でもアンジェラ先輩!以前の赤色連弾星系でもあんな……あんな速度で落ちてくる浮遊大陸要塞は出ませんでしたよぉ!しかも複数!5!?」
「教えたでしょ、そういう時は自動照準ではなく手動で撃ちなさい。この戦艦のエネルギー伝導速度ならあれぐらいなんでもないわ」
「1番5番砲塔は……こ、こちらでしょぉじゅん!て、てぇ!」
「……気の抜けた声で引き金を引かないで。プリム、技術班の仕上がりは」
「現在8割まで。ナディア班長より火器管制に回していいと出ています」
「こちらナディアだ、後は手計算でやる!そっちに集中してくれ、ミカエラ!来るぞ!」
そしてその次!海賊軍となってしまっていたフランソワーズの母上やおばあ……いえアメリア閣下とのところ。とにかく海軍秘密工廠基地から引っ張て来た次元潜航艇によりギルドの艦隊を攻撃した時。その後!小さな勝利ではあるがようやく胸を張ってお会いできると思えば……アレクサンドリアへの帰路の間。ちょっと手続きをしている間にギルドの幹部に彼は拘束され。艦艇内部で暴れられる!助けたのは執政官補であるし悉く魔が悪い!
「まったく部隊を離れたらすぐコレなんだから……ヴァルキリー・チーム!このまま上昇ブースターを装着して射出!爆装以上の危険は承知しているか!」
「アイ・アイ。リーダー・ネロのうるさいお話も久しい!やはりこうでないと!ヴィクトリー・ファイター隊が先に行くぞ!短距離ワープ開始!」
「だまらっしゃい!直掩はヴァーミリオンとワイヴァーンで対処!その後は退避、いいわね!復唱!」
極めつけは先日の惑星ネザリアでの一件!参謀本部からの承認もあって以前から秘密裏に新型戦艦がようやく艤装半分以外完成し!ここはこの段階でもさっそうと駆けつけるべきと!機械福音教団の惑星に乗り込んだ彼を華麗に救出しに行こうとしたら!向かった先では惑星はワープしている!しかもあの1000年前のダッサい工作艦が彼の乗艦になっている!
なぜこうも、こうも一番いいところを逃すのか。代々帝国宇宙海軍の提督を輩出し、艦隊司令勤務を追えれば参謀本部へと上がるのが約束されたローデンシア家次期当主の私が!なぜ!
「艦長!海兵隊のフランソワーズ艦のナイト・ソニアより入電!あちらはダミーだったと!」
「こちらソニア!奇妙な賊で手間取っていますがこちらに目標はなし!なんですかこの、品のない!」
「シルバー・サムライ!ギルドの戦士長の穴埋めにしては、シンシア!あのエモノの射程に入るな!」
「こちらスター・ブレイザー。何も問題はない、このまま最大船速で迎え!副砲は降下中の敵迎撃艦隊に合わせ!」
しかしそれも今回までの話。ちょうど、本当にちょうどいいタイミングだった。これこそ天の光たる宇宙超常存在の思し召しかもしれない。信じてはいなかったが、やはりいたのだ。再生者様がいるのだから、それは当然いたのだろう。であるからほぼ託宣といっていいのではないか?
彼の前に、ほかに手段がない現状で現れた惑星トル・ヴィルムへの調停の使節団派遣。それが1月前の話……あの後に臨時叙任式を行い即座に出発したことから始まる。私の輝かしい歴史の1ページが。
「えぇと……カタリナ副長さん。その、何?今は何をなさっているので?」
「そろそろ到達しますし作戦を説明しましょう。よろしいですね艦長」
「えぇカタリナ。確認もあります、是非ナンブ様にレクを」
惑星トル・ヴィルムは広大な自然惑星であるが原始的な惑星ではない。銀河連邦に加盟はしていないが、ザ・マスターを信仰する惑星国家のうちの1つ。かつてエルダー大戦の折に離反したのではとの伝承が残っているらしいが、護衛官長の話はそこまで。
銀河連邦から外れても敬虔な彼らは、黄金時代テクノロジーの恩寵を受けつつも生活していたが護衛官と種族政府の間での政争が長く続き……何度かの惑星国家内紛争の後に護衛官たち寺院職のものたちは捕縛。流罪……政府と結びついていたギルドへ捧げられることとなってしまった。
「い、いやそのそこまでは聞いてるんですよ彼から。エヴァンゲリウムに捕縛されたときに体内の爆弾が排除されて。この惑星に帰還した彼はそれを応用して囚われた人々を解放し……レジスタンスを結成した」
そう、これがただの内乱か権力闘争なら我々も……わたくしもアガらなかったでしょうが。なんとギルドと結びついていた政府はエルダー大戦時から残されている遺産を使って衛星軌道上を周回する浮遊要塞……及び惑星制圧兵器を建造していた!本稼働はまだとしても、出現し攻撃を始めたそれに手を撃てなくなったトル・ヴィルムの護衛官であり……彼と約束を結んだアルハ・サリムは古い通信網で救援を発信。たしかにこのルートでの連絡と到着なら……あの瞬間に出発を決めてギリギリ間に合うか、という事態だった。
「その建造されていた惑星制圧兵器を破壊しに行こう、このままではこの惑星も破壊されてしまうって話で」
「ナンブ様が快く承認していただいたことで間に合いそうですわ」
「私がすぐ行こうっていったけど、今レクしてるし……これ事後承認じゃ」
「その信頼に応えるには、軌道エレベーター上に接続したコントロール艦をわたくし達で完全に撃破しませんと。フランソワーズ艦……海兵隊の方は囮でしたようで」
「うん、それはわかったんだけど……もうすぐ軌道エレベーターに着くんですよね?」
「えぇ残り10万キロですから」
「副長!再生者さまの耐ショック体制は!機関長、もう少し出せますか!」
「こちらで押さえます、ガブリエラ!そのまま速度を上げるなら艦内連絡を!」
「アイ・アイ!最大船速継続!重力アンカー用意!海面スレスレでいくから干渉するのさ!」
とっ捕まえたこの惑星の政府要人からは、惑星制圧兵器は惑星表面を焼くようなものではなかった……と聞けたが。それは軌道エレベーターを通じて惑星内部への圧縮エネルギーと活性化を用いて内部から爆発させるもの。そのルートはこの惑星に2つ残る軌道エレベーターのどちらか。
それともどちらもあり得た。幸いなことにフランソワーズの方はダミー。わたくしたちが向かっている方こそ本物だった。なのでこうして破壊に向かっている。流石……わたくしたち、いえわたくしに全幅の信頼を寄せてくださっている!このようなこと、他の参謀や幕僚は絶対に付き合ってくれない!彼はこの間近で!死地に付き合ってくれているというのに!
「いえですから、その……減速して接弦して揚陸するのではないんですか?カタリナ副長」
「このまま最大船速で突っ込みます。重力アンカーを軌道エレベーターの軸に合わせ、そのまま上昇しコントロール艦を排除します」
「軌道エレベーターにぶつかる衝撃に耐えるためにこの……ベルトとアームの二重拘束を!?一応船外活動服着てるよね!?」
「迎撃に出てくる航空隊と陸戦兵器を迎撃するのですが、相当揺れるのが予想されます。至近距離での艦船との砲雷撃戦と航空戦に陸戦とになるので」
「すごいなぁ!?この時代の艦隊戦!?いつもこんな感じで!?」
「ローデンシア提督の艦船はいつもこんなんだから参謀から厄介がられているのよ!観測距離5万切るわよ!ガブリエラ!」
「アイ・リーダー!重力アンカー射出後、艦体を180-90度回頭!艦長!」
「総員横揺れと縦の耐衝撃体制!」
「聞いたことない指示が聞こえるぅ!」
「軌道エレベーターを軸に180度回頭してから上方に90度回頭、ということです」
「ドリフトしてから上昇するってことだよね!?本当にいつもこんなことしてるの!?」
「帝国宇宙海軍ですから」
「海賊じゃなくて!?」
「アンカー射出!上るぞ!上昇角45度から!」
カァンと艦体にも響く重力アンカーの射出音が響くと……これまた艦が横に軋む音が聞こえる。しかしこの程度でへし折れる新型戦艦ではない。スター・ブレイザーはこの程度で負けはしない!操舵手であるガブリエラ航海班長の気合の入った声と舵をめいっぱい引く姿が見えれば。そのまま艦は軌道エレベーターを軸に、螺旋を描くように昇り……艦首を垂直方向へ。
すなわち今軌道エレベーターと艦は平行になる!
「最大船速そのまま!このまま敵を迎撃しコントロール艦を抜く!」
「撃ち抜くんだよね!?主砲で!?」
「敵コントロール艦、エネルギー増大!砲口が開いています!」
「なんで!?」
「ナディア技術班長!」
「あぁ!今出来上がった!ハイパー・スペース・エネルギーの防御装置だ!」
「テストとか調整はしたんですよね!?さっき手計算って!」
「そんな暇はない!」
うっそだぁという彼の言葉の通り嘘みたいな状況だ。敵はこの段階で惑星制圧兵器の奥の手を使うつもり。わたくし達の強襲を受けて……焦ったのだ。つまり今が勝機、敵の焦り。引いたのならば……そこを押し込み、通す!
「本艦はこのまま敵コントロール艦にアテる!防御装置の起動はナディア技術班長に一任!ミカエラ!」
「起動しています!敵航空隊へ対空レーザー砲、副砲照準!プリム!」
最大船速で敵コントロール艦へ進む艦へ向けて敵の軍勢が十重二十重と波状攻撃を放ってくる。たかだか単艦にここまで怯えているのならば……もう勝ったも同然。敵の砲口が完全に開き、軌道エレベーターと接続し……エネルギーの充填が観測された。充填率によるが、効果があるような量になるには……このまま接触する時ギリギリ間に合うかだ。
「プリム!主砲1番から5番まで物理衝撃砲は敵浮遊大陸要塞へ、連続射撃を開始します!機動照準補助を!」
「敵コントロール艦は艦首で撃ち抜く!最大船速継続!航空隊は近寄るもの全てを背殲滅せよ!」
間に合う!エネルギー圧の臨界を確認した瞬間に、艦首がコントロール艦に衝突させられた!その影響でエネルギーは霧散どころか螺旋を描いて反放射され、周囲のギルド艦を薙ぎ払っていく。みたか!これが新型戦艦スター・ブレイザーの力!エヴァンゲリウムや宇宙の脅威と戦い、人々を守るための力!
見てくれましたか!
「……艦長、医療班を。その、彼が気を……」
「な、なぜ!?彼は!?彼に怪我が!?副長がいながら!?」
「私が押さえつけていたのもあるんですが、衝撃の際に頭が揺れたもので……抑えたら……胸部が」
「あ、あぁ~!?」
次から4章です。




