銀河連邦統合軍:サイドストーリー・エレナ1/2
■惑星アレクサンドリア 官邸 第三執務室
「……これって国連軍って認識でいいのかなぁ?多国籍軍っていうよりそっちのほうがソレっぽそうだけど」
「旧地球時代……21世紀ので例えるのでしたら、そうですね。国連憲章が定めるところが妥当でしょう」
地球帝国から派遣されている駐在武官であるクラウディアからのお返事はそう。ははぁ?と額面では理解したが……いまいちよくわからないなぁとぎぃぎぃ事務椅子を揺らしてしまう。惑星ネザリアの一件から一週間ほど、この執務室にいるのも慣れて来たもので……ここにいる事務メンツとの”どの程度トークのレベルを下げてよいか”もわかってきた。特にクラウディアは地球帝国から来ているもので、21世紀時代の公的な話や概念が伝わりやすくて認識のすり合わせが楽。
さてその一週間で何があったかと言えば、大きな政治的決め事だ。
実際には政治用外装……というか化粧とか仮面とかぁ装飾すごい衣装を着せられた姿で。教導院のマスター・ヤェド達に連れられ、連邦議会に呼ばれた席で座っていただけなのではあるがビックリするほど情勢が動いていたのだ。
植民惑星開拓機構からの要請で惑星再生事業が大幅に早まったこと。ことこの惑星が再生される……これ自体は喜ばしいことだった。
惑星再生事業については、ネロ曰くの星の数ほどある惑星の再生が目標……ではあるが実態としては違う部分があった。まず惑星を失ってしまったものの、政治的文化的に残る種族が存在する惑星を優先するのだ。簡単にかつ規模を小さく例えるなら故郷と家を失った人を優先で家を建てる……ようなもので。晴れてまず第一歩として惑星ファーン・マウと呼ばれる銀河連邦勢力圏でも辺境の惑星の再生を実行した。
プロセスとしては宇宙超常存在が私に遺したハイパーな管理AIであるプリム曰く。近辺の恒星内部にあったザ・マスターの遺跡機構から遺された情報で再生するとのことで……私は承認したに過ぎないんだが。これで2回目としても凄まじいビジュアルの光景を見届けることになった。多分何度見ても慣れないだろう。
そして問題はその後。今後の事業計画がスムーズに決まって次はどの星系の文化圏……とか加盟しつつも惑星を失った非惑星保有国家の惑星だのと決まっていったのだが。植民惑星開拓機構のヴァンレイ総裁から、ある要請が出たのだ。
「再生者がこうして存在し惑星を再生させているのに、その最中に無視できない脅威が存在する」
と。こうして惑星も再生されていく……明確な銀河連邦の、復興再生へ続く未来へのビジョンが見えて来たところに脅威がある。機械福音教団や未だに解決できない宇宙怪獣の脅威。それらの脅威に対して現在のような各惑星国家の自衛能力と地球帝国に協力要請という場当たり的な対処ではなく、包括的に対応できる軍事的組織を作るべきではないかと。
「こっちが本題なのよ。いけしゃあしゃあと……よく言うわ。もとより宇宙怪獣退治は地球帝国へ全面的に丸投げしてたくせに。散発的な宇宙怪獣なら今のままでいいが、組織だって奪いに来るエヴァンゲリウムは怖いんですって!」
ネロが大層に憤怒の形相をされていたので覚えている。金属タンブラーが紙コップの如くひしゃげていたし。
さておいて議会を構成する各惑星国家代表や派へのロビー活動も既に終わっていたのだろう。全会一致で決まってしまい。その責任者、総司令官だか司令長官が再生者である私になってしまったのだ。私の理解が追い付かないまま。そんなもんでクラウディアに聞いていたわけではあるが。
「ううん、私の記憶の中でも国連軍が組織されたことはなかったんだよなぁ。それっぽい名前はあったけど軍事制裁ではなく平和維持活動とかだし。多国籍軍の方はあったけど」
「急造ではありますが、元からあった参謀本部からの移管でもあるので我々からするとやりやすいですね。より明確な目的意識と代表がいる組織になるのですから」
「元からっていうと地球帝国海軍や海兵隊の関係する命令系統で……?」
「命令系統も何も、ほぼ地球帝国の軍人で構成されていますよ。予定されている統合軍第三艦隊の司令は地球帝国から出向しているジョエル・バルテルミー参謀下ですし」
何をおっしゃっているのやら、とクラウディアの反対側。一時の事務に来ているはずだった海兵隊副司令のエメラダはすっかり定位置となっているデスクであきれた声を出していた。出していたが……あぁ、と気づいて書類を整えて顔をこちらに向けてくれた。私の知らない情報との齟齬があるようだ。
「どこの惑星国家も自衛能力、固有の軍隊は保有していますが供出……協力するほどの余裕はないんです。地球帝国ぐらいですよ、余っているのは」
「人余りって言葉は適切じゃない状況だよね……」
「おまけに開拓機構の連中が主導。元より信頼度なんてあったもんじゃない。今回再生したファーン・マウへの再開発支援の独占よ。機械も何もかも出してローン組ませる連中に誰が協力したいっていうの」
またまたキレているのは……第三執務室のドアを粗暴に開けて来たネロ。一応なんかその……あなたが用意してくれた政治家の要人のための部屋の扉なんですが。もう少し丁寧に開けてくださいませんか?続けて入って来たアンジェラも開いた扉を足で止めてから入ってくるし。工場の事務所じゃないんですよ。丁寧に音が出ないように閉めてくれたソニアが一番大人に見える。なんか片側の扉で見えない位置に目を向けてのだが、何かいるのかな?怖いが。
「現状では今までの通り地球帝国の戦力がメインよ。それでもあなたが活動していけば、少しは変わるかもしれない。この職務についていることに意義があるかどうかはあなたの意志次第……それは忘れないで」
「その仕事のさっそくよ。まったく聞いたこともない辺境惑星からの協力支援、しかも宇宙怪獣でもエヴァンゲリウムでもない。平和調停活動、紛争調停ですって」
「それを、私に?」
「そうよ。有名人は辛いわねぇ~聞いたこともない惑星の、聞いたこともないオカタからなんて。今朝ここ、再生者様直宛てに届いたって。ずいぶん遠回しだから一週間前に出たものね」
色々政治的に大きな動きがあった直後?よくわからない時期だが火急的速やかに解決したい要件じゃないのだろうか。それはすぐにでも開けた方がいい、とネロに伝えると面倒臭そうに傷ついた機械を出し始める。おそらくこの時代のメッセージ・レターなのだろうが……送り主を読み上げたネロの言葉でまず驚いてしまった。
「惑星トル・ヴィルムのアルハ・サリム護衛官ですって。誰?」
「トル・ヴィルム……トル・ヴィルムって!」
「え、えぇ。まさかあのギルドの戦士長の惑星のようですが……まさか、送り主は」
「なんの話よ?再生するわ」
私とソニアにある心当たりで顔を見合わせた後。何かわかっていないネロがその記録機械を再生すると……ホログラフィックで出て来た姿はあのギルドの戦士長。彼からの救援のメッセージ、惑星トル・ヴィルムで起きている紛争の調停をして欲しいという依頼だった。これにはネロもアンジェラもびっくりしているようだった。そりゃそうだ、なんかギルドのバーサーカーか蛮族戦士だと思っていた相手が……なんかちゃんとした立場の人間で、その人から公的にメッセージが来たのだから!
「いますぐ行こう!彼が助けを求めているなんてよっぽどのことだって!」
「いや気持ちはわかるわよ、私も驚いているし。でもまだ結成してすぐの軍隊ですぐ派遣できる艦隊なんて」
「話は聞かせてもらいましたわ!」
ネロがまぁ待て準備がすぐ出来るわけないとのそりゃそうか、という言葉を返してくれた瞬間。扉が吹っ飛ばされて誰かが姿を現した。一応防衛用の強度もあるはずの、要人設備用の扉が吹っ飛ばされてクラウディアとエメラダのデスクにぶち当たって……さらに跳ねた。突然のこと、デスクも防衛強度があるため破壊されることはなかったが……何者かの襲撃かと構えた防衛本能。クラウディアとエメラダが構えた相手は……以前あったことのある人物。
たしか帝国海軍のエレナ・ローデンシア提督。こうして立つとわかるがネロやアンジェラよりもデカい。ヒグマのような体格だが、すらっとしている上にまぁお胸も腰もエベレストな具合でしょうが。ヒグマのようなパワーが印象として入ってくる上に、誰かと確認した周囲の人らは反応する言葉を失っていた。
その彼女は、場の空気を察したのか……まず吹っ飛ばした両扉を戻して、一度外に出てからゆっくり優雅に入って来た。急ぎでは……あるんだよね?
「おほん。話は聞かせてもらいました」
「何突っ立ってるかと思えば扉を破壊しに来たのかしら、帝国海軍提督様は」
「いえ執政官補。紹介が遅れましたが……バルテルミー参謀が派遣する第三艦隊の司令官が、彼女です。ただ着任は正式な辞令後のはずなのですが……」
「えぇ~体のいい厄介払いじゃない。クーデター騒ぎからまだ日が経ってないのに?」
「そこ!聞こえるように言わない!」
承知しているクラウディアのご紹介はさておいて、ネロからすごい物騒なことが聞こえる。聞こえるが何もない、何でもないと咳払いする彼女の揺れる胸元……より複合重奏を揺らすロングヘアーが気になる。34世紀見る身長2越えヒグマみたいな女性が揺らすロール髪のボリュームですよ。
「第三艦隊司令エレナ・ローデンシア、只今着任しました。すぐにでも惑星トル・ヴィルムへ出発できます」
「提督様?こちらとしてはまず着任の挨拶どころか着任の書類辞令をいただかないと困るのですが?」
「そんなものは後でなんとでもなりましょう。ナンブ様、そこに助けを求める者がいるのです。今すぐ向かいましょう」
「あっはい。そうだよ、行かないと、そうだね!?」
「あんたねぇ!ちょっとクラウディア、参謀本部に連絡!参謀を出させて!」
「いえその……それが、バルテルミー参謀はそちらに全て一任するとだけ」
「こちらアレクサンドリア第三執務室。ロメオ作戦分遣隊のアンジェラよ、第三艦隊旗艦の戦闘班長ミカを出して。そうミカエラ、アンジェラからの呼び出しと言えばわかるわ。何ガブリエラもいるの?そう、そうよ。いいから出しなさい」
「アンジェラ!指揮系統をまたがない!第三艦隊に妹分がいるからって直で連絡しない!」
何か状況に飲まれている気がするが、今すぐ行かないと間に合わないかもしれない。そんな焦りからついよく考えずに行こうぜと言ってしまったが。もう行くの決定だよって具合に決まりつつある周囲の反応にネロはお怒りになっている。なんだかわからない……が、アンジェラを見て相当なにか粗相をしているのはわかる。
私のデスクに尻を乗せて座り……白固定電話掴んで話しているアンジェラの話し方は明らかに組織としてマトモな話の通し方ではないでしょうし。
「執政官補、すぐに出せる者を招集します。陸戦が必要でしょうから」
「エメラダ!あなたも、あなたはさぁ!アメリアが行くって言わなければいいわよ!もう!」
何かを諦めたネロがアンジェラから受話器をかっさらってまた話を続ける横でローデンシア提督が我真意を得たりを腰に手を当てて……お胸を張り、こちらへ堂々と向く。向いて宣言する、これから行く先へと我々を届ける船の名前を。
「銀河連邦統合軍、第三艦隊旗艦!スター・ブレイザー!並びに艦長エレナ・ローデンシア、銀河の再生者のために只今着任!」
すごいな、34世紀の軍隊の司令官職って自分が着任といえば着任になるんだ……これ私が承認するんだよね?一任されているし。そっかぁ。
怖いですね、ヒグマ




