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オリジン・シード  作者: 草間
コスモ・レコンキスタ~宇宙回帰運動~
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エピローグ3

3章ヒロインのソニアの話で今回は終わりです。

■銀河連邦首都惑星フィナメス 銀河教導院 中央大聖堂 評議会


「以上が私からの報告です。みなさまのご意見を伺いたく」


「伺いたくも何もあるまいマスター・リィン。彼の人格を考えればあなたがこれから指導にあたるべきではないか」


「1000年前のゼノ・テックの処遇についてはどうとでもなる。これからの機械福音教団(エヴァンゲリウム)からとの戦いを考えれば、聖なる力の扱いをエルダーであるあなたが彼へ行うべきだろう。師弟を増やすことになろうがソニア、君は正式にナイトへ昇格させ任務を続行すればいい」


「いえ、ソニアの位はこのまま。彼も同じくでよいでしょう。ソニア達といさせたほうがよろしいかと」


 リィンのその言葉で評議会の面々はしぃんと静まり返ってしまった。私の昇格の件もどうでもいいような雰囲気であるし、そもそも私自身もどうでもいいと思ってしまっているのが不思議だ。この”人に意見を求めておいて、出てくるだろう意見と違うことを言い始める”リィンのところから早く出たかった、と思いはや10年ほど経ってしまったというのに。マファー導師始め面々も”また始まった”とうんざりしてしまっているようだが、自分のことよりも……もっと気になってしまうことがある。


「マスター・リィン。彼が操れるゼノ・テックのテクノロジーがどうこうではない。エヴァンゲリウムは惑星をワープさせることができる。テクノロジーのことを言っているのではないのは、承知でしょう」


 女性評議員であり私からみて姉弟子であるマスター・スクァイア……辺境惑星の出ではあるが銀河連邦でも政治的に優れた彼女から出た言葉は事実の再確認。表層的な事象の報告から察せられる状況を……今一度、ここにいる全員と共有しようという働き。


 惑星ネザリアをワープさせた。それはテクノロジーや物理現象によっての可否について話しているのではない。惑星ネザリアは人や生物が居住している植民惑星だ。それを無計画に外殻で覆ってワープさせ……そこに住む人間が生活していけるかといえば、できない。一時凌ぎであれば可能かもしれない。たとえばギルドの再来や銀河連邦の軍隊……地球帝国海軍の艦隊から逃げるためだけでしかなければ。


 だがあのマシウスの思考や挙動からすれば、それはありえない。そもそも逃げる必要がないからだ。あれだけの戦力があったのだ。だからこそ……そのような浅はかな軽挙妄動でワープを行って見せたのではない。


 あれは私たち銀河連邦と教導院へのメッセージなのだ。惑星をワープさせ、恒星のある星系へと飛ぶことができる。あるいは恒星を既に生み出せる技術も力もある。そして……そこから人の住むに理想の星系を生み出すこともできると。銀河連邦を勢力圏の惑星を使って。私たち銀河連邦人類の過ちを正すために征服することを決めたのだと。


「我々の側にいる彼が再生者なら、エヴァンゲリウムは再構築者(リ・ストラクチャー)と言えばよいのでしょうか。いずれ銀河は彼らに全て奪われるかもしれない」


盤上遊戯(ボード・ゲーム)ではないのですから、そう簡単にころころ世の盤面は変わりませんよ」


「マスター・リィン……わかりました、マスター・イェラ、エーテリアス殿。この件はグランドマスターに」


「その必要はない。先ほどの連邦議会で惑星開拓機構から惑星再生事業に関する緊急議会招集の動議があった。再生者殿への参加願いも添えてだ」


「マスター・ヤェド!」


 評議会の席にすっと降りて来たのは銀河教導院の最高指導者であり、グランドマスターであるマスター・ヤェド。小柄であり……やせ細った老体ではあるものの最高の導師の実力と称号を持つ者。そしてリィンとは違う種族のエルダーでもある彼が現れたのだ。協議の必要はこれ以上はないと報せるために。


「困ったものですね、彼らも。盤上遊戯の旗色が悪くなったと思い勝手に転がり始めていく」


「状況が日ごと変わり続けている。その中心には彼がいるのは皆も知っての通り。それでもリィン、そなたは彼をこのままにしろと」


「彼は只のヒトですよ、我々があれしろこれしろと言うものではありません」


「マスター・リィン。もうすこし言葉を選んでください」


「失礼。彼は()()()()()()ただの人間です。誰かと笑い喜び、誰かの悲しみで泣いて……怒る。そんな人間を自分達の都合のよい主に仕立てる。それこそ背信者や異端者どころではないのでは?大きな過ちとなりますよ」


 その言葉で、またさらに静まり返り。マスター・ヤェドを見る評議員もいるぐらいだ。私たちは罪深いことをしようとしている、との言葉で。その彼らの視線を受けたマスター・ヤェドは制し……たった一言でこの協議を終わらせた。


「再生者殿の支援についてはマスター・リィンとソニアに一任する」


■フィナメス 銀河教導院 中庭


 協議が打ち切られた後。マスター・リィンはマスター・ヤェドと話があるということで残り。私は彼女の薦めのまま……彼に会いに中庭に来ていた。彼は今回の報告の後にここで時間を潰しているから会ってくればいいと。会って何を話せばいいのか……あって何を言えばいいのか。中庭に向かう廊下を歩く中でずっと考えていた。


 彼は私の思っていたような存在ではなかった。


 この宇宙に住む人々の創世者である宇宙超常存在(ザ・マスター)の後継者。選ばれたという彼はどれだけ素晴らしい存在なのか……そんな彼がこの宇宙に蘇る時、それをずっとずっと願っていた。宇宙の虚無と闇の中から生まれた私を照らしてくれるのは、この銀河で唯一の光である彼しかいないと……ずっと。


 しかし彼は、違った。


 彼はもちろん輝いていた。宇宙のどこからでも見えそうな、青く白く聖なる光を放ち……あの惑星ネザリアに降り立った時。私の瞳に焼き付いたあの姿は何にも代えがたい美しさではあったが……それは天に輝く一等星ではなかったのだ。


 悪であるギルドの戦士ですら慈しみ。罪深い植民惑星政府の者たちの死すら悲しむ。


 己の身を焼いて流れる輝き……流星の輝き。


中庭に着いた時に……その彼はなんとも言えない顔で、あの犬の撫でていた。撫でていたといよりも鬱陶しいと嫌がる犬にウザ絡みしているようで。


「……ご気分がすぐれませんか」


「ソニア、もう終わったの」


 えぇと答えると彼は立ち上がり。立ち上がったことで犬は逃げるように中庭を歩いていく。あぁと逃がしてしまった彼は手持無沙汰になって……何か話題を、と考えたようだが。私の聞いたことを思い出してか……なんとも言えない口元をした後に答え始めてくれた。


「マシウスにあぁは言ったものの……本当によかったのかなって」


「あなたの決断は、よくなかったと」


「いや……違う、そうじゃなくて……違わないか」


 今、苦しんでいる人がいる。


 それを助けられる力があるというのに、助けられなかった。本当はマシウスと共に解決しに行く方がよかったのではないかとも思ってしまうと……辛く悲しみに満ちた顔で伝えてくる。言葉にするのも辛いような内容だと、その顔と瞳でも。


 なぜならそれは、間違っているともわかっているから苦しみ悲しんでいる。


 彼が言ったように、マシウスのやり方では誰を助けるか選べば誰かを助けないことになる。命を全て助けたいと願うのならば、選ぶべきではない。選びたくないからマシウスに立ち向かってしまった。自分の願い同士が争い苦しんでいる。生命についてあまりにも純粋に考えすぎていて、自分の考えていることが毒になってしまっているのだ。


「再生者……いえ、我が主(マイ・ロード)。聞いてください。まずあなたにしか助けられないものがあるのです。私を含め、アンジェラやネロ……海兵隊も、ギルドの戦士たちもそうだったではありませんか!」


 自分でもうまく言葉が出ないが、きっとこれはそういうことだ。全てが全て大きすぎるのだ。リィンのいうように彼がただの人間だとしたら……いや、彼は只の人間。その彼にはあまりに大きすぎる使命と、使命から生まれた願い。それを私たちは求めているが……それをうまく、私も彼も受け入れられないのかもしれない。


「あなただけが助けられるものを、助けてください。我々だって何も助けられないわけではありません。我々で全てをすべて助けられるようになるのです!」


 私は彼の肩を掴んでいた。私たちが助ける、救いたいと思うのは……自分や周辺の人間だけではない。彼のこともそうであるはずだ。いきなり目覚めて救世主とされた彼の……彼という、流星のように輝いてしまっている彼を助けたいと。このまま、ただ願いを込めて祈っているだけでは……燃え尽きてどこかへ消えてしまいそうな彼。宇宙をただ流れる美しい光にしてはいけない。


「私たちが……いえ、私があなたを守ります。騎士として、再生者(リ・マスター)ではなくあなたを」


「あなたの持っていたタブレットにあった絵物語のように!あなたをお守りします!」


 自分でも勢いに任せてしまったが、私の心から淀みない言葉が出た。そうだ、称号がなんだ。使命がなんだ、願いが何か。彼の心をも守る騎士に……なる。それこそが銀河も、私も救う……いや、彼を守れる唯一の騎士ということではないだろうか。


 この宣誓は誰にも何にも……たとえザ・マスターにも捧げない。彼だけに捧げる……この言葉。彼がこの言葉を受けてくれることで私は本当の主を持つ騎士へと進むことができる。


 そう期待を込めて彼を見たが、彼から言葉は返ってこなかった。来ないどころか瞳がどこか力なく、体もなんだか力がない。どういうことか、まさか肩を掴む手に力を込めすぎてしまったのか……と、安否確認で少々揺らしたら彼からお言葉が返って来た。


「タブレット、返して……」


「あっはい……後でお返しします」


 静かになった中庭に、気の抜けた犬のあくびが染みわたった。


 それで私の誓いは、受け取ってもらえたんですか!?我が主よ!


第三章 コスモ・レコンキスタおわり


 合間のサイドストーリーを挟み


第四章 イースター・エッグへ続く






この後は合間にサイドな話をいくつか挟みますが、3章はこれで終わりです。


もしここまで見て「まぁいいんじゃないか?」「ランキングにデカ女タグの作品を載せてもいいだろ」と思っていただけましたら

ブクマと評価をお願いします。


いえなんと、なんですがブクマ1件2件でかなり上がるんですよね、びっくりしちゃう。ジャンルのせいでしょうか?

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