20話 バトル・フォーメーション
なんかかけているので本日もです。
■惑星ネザリア 北方 封鎖区域 基地
教導院の騎士である私とリィン、そして機械福音教団の騎士……エステルたちとで立ち合いをしていたこの場所。惑星ネザリアの北方封鎖区域にあるゼノ・テックの秘密研究基地の地上部分。我々は先ほどの剣と剣の戦いを一時中断し……揃いも揃ってソラを見上げていた。先ほど、どこもかしこも繋がるように広げられた無線の音声から聞こえて来た声と地鳴りを受けてから、だ。
「だっ……なんですかあれは!」
「おやめなさいソニア!言いたいことはわかりますが口に出しては」
「しかしリィン!あれが……あれが救世主である再生者の彼の、彼の!?」
「騒ぐな!お前らが手放しであの男を好きにさせていたせいだろうが!あの……あの、ゼノ・テックの戦艦を目覚めさせたのも!」
ゼノ・テックの戦艦。地球防衛軍の第一世代ゼノ・テックにより生まれた防衛艦。現在から考えれば小さいサイズの駆逐艦にも満たないもの。一般的な戦闘用宇宙艦艇であり砲塔を持ち、艦橋もあり……いかにも艦船らしきシルエット。だがその特徴的な…特徴的な、艦首にある巨大なドリルと船体の両サイド(両舷)にあるブレード?ノコギリ?1000年前の戦艦とはいえ、そのあまりにも無骨な工業工作艦すぎるシルエットは……
「ダサい!」
「ですから、おやめなさい!」
「あれのどこが救世主の箱舟なんですか?!人類を導くべき真の箱舟、名前だけではなく本物のアークがあれ!?」
「あなたの拡大解釈はわかりませんが、言いたいことはわかります。しかし今は戦いの最中!落ち着きなさい!」
「どいつもこいつも……!お前らの相手は、終わりだ。ネフィリムⅢを呼ぶ!あれを黙らせる必要がある」
「お待ちなさい!彼の相手なら勝てるとでも!」
「勝つしかないだろう!あんなものが動いたらもうどうなるかわからん!」
そう叫んだエステルは……リィンの円弧と突きが異様に速く、鋭く伸びる斬撃をネフィリムⅠと呼ぶ拡張武装の鎧で受けた後。脱出し、そのまま天へ飛んで行ってしまった。他のエヴァンゲリウムの騎士も同じように消えてしまう。また、それと入れ替わるように基地の地下から搬入用エレベーターで出てきた輸送機が顔を出す。輸送機と共に出てきたのは、あの墓守のアシスタント・ロボット。
「きみたち!無事だったか、彼の声は聞こえていただろう!ここから離れるぞ!」
「離れる、といってもどこへ。彼があそこで戦うのに……いえ、彼がアレで戦うのならこの惑星のどこへいても同じでは」
「そうはならないのだろう、教導院の騎士。彼の声、目……意志がそうはならないと伝えている気はしないか」
「わからんことだらけだ。頭がおかしくなる……輸送機に全員乗せろ、とにかくここを離れるべきだ。この規模では俺たちが邪魔になる」
「この規模、規模ってまさか。オカシラまずいですよ……こんな輸送機じゃ」
黙れ、もう始まってしまった。信じるしかないだろう、と戦士長がわめく。何を信じるというんですか。あのヘンテコで珍妙な骨董船をみて。何よりもあのダサい古鉄色の船に何を見ろというのか。彼はあれで何をしようというのか。今衛星軌道上から……降りてきた、ネフィリムⅢと呼ぶもの。銀河連邦の……地球帝国が運用する対宇宙怪獣用の人型機動兵器タイタンと同じようなそれとに囲まれてる、この今に。現にネフィリムⅢが四方向から抑えにかかり、完全に捕まっているではないか。あれでは身動きなど出来ない!今度の、本物と思えたアークが彼の棺になってしまう!
「なんとしてでも引きずりおろせ!バカものが!素人が操艦など出来るはずもない、暴発したらこの北方が吹っ飛ぶのだぞ!無知でいいことと、よくないこともわからんのか!」
「し、しかしマシウス様!エステル様、これは、変です!これは……!」
「明瞭に話せ!どうした、手が必要ではあるまい。そのまま地に押し込み自沈させるぞ!」
「ビクともしません!動かないんです!抑え込めない!しかしどこかに飛ぶ気配もないのに!」
「だが動かなければどうということはない。追加の艦艇を派遣する、艦艇ごと重力アンカーでこの地に抑えるか軌道上に飛ばすか対応をとればいい」
「無駄だ!」
全長55mほどになった騎士たちの驚愕の声。そしてエステルとマシウスの間にも広がる動揺の声。なに、という声に重なるのと同じ。彼の声が……55mクラスの、巨大な騎士団に負けない声が響く。
「マシウス!エステル!君たちならすぐわかるはずだろう!今の君たちの体、宇宙怪獣と戦うためのものならば」
「地球で、地球と地球の人々を守るために!宇宙怪獣と戦っていたこの船がどう戦うか!想像がつくはずだ!」
「いや、まさか!いや……えぇ!?リィン、リィン!?知っていたんですかアレがどういうものか!」
「そこまで詳しくは……ただ、姿が2つあると」
「お前たち何をしている!早く輸送機に乗りこめ!」
あの戦士長の声に返事をすることもできない。私の……自分が彼の声から至った推測を否定したい声と、マシウス達も同じくそんなまさかという声が重なった時。リィンの答えが重なり
「アース・ゼノン、バトル・フォーメーション!」
戦艦から伸びた腕が、抑えにかかっていたネフィリムⅢの足を払ったのだ。腕が、伸びて。そして艦橋の後ろのあたりが捻って回り。足となって立ち上がり……全長55mの人型になったのだ。胸にドリルのある……ロボットに?なぜ?
「これが私だ!マシウス、私はあなたを選ばない!誰かを選ばない!全ての命のために私が戦う!うおおお!マスター・パワーッ!」
「戦い方も知らない素人が、そんなものを使って!」
「戦い方なら知っている!こう戦うものだということを!」
そうして55mの胸ドリル巨人は戦い始めた。動揺しているだろう騎士らがなんとか体制を立て直し……剣を構えて振り降ろすも屈んだドリルロボの両腕のブレードが阻む。そして体を腰からの力のある跳ね上がりで上げると徒手空拳……殴りあて始めたのだ。
それが恐ろしいことに……元々のパワーもあるのか、丈夫さもあるのか完全に押し勝っている。包囲した騎士らを弾き飛ばし……新たに表れたエステルに向けて駆け出していく。他の騎士よりも……より重装に、華美さのある鎧のネフィリムⅢへ向けて。
我々は、今ここにいる私たちとギルドの生き残りに……墓守ロボットはそれを呆然と見ているしかない。この巨人たちの奇怪で野蛮な戦いの光景を理解できずに見上げているしかできない。
「これは……何が起きているんだ、教導院の。アイツは何をしている?」
「宇宙創世の時代にあっただろう、機械天使とザ・マスターとの戦いの再演です」
「ぜったいに違う!適当なことを言わないでください!」
「頭部メーザー砲でけん制する!」
「そんなものが通用するか!シールドを受けろ!」
こんな、こんな戦い……夢見ていた神話の時代の戦いじゃない!
かーがやけー




