18話 デカい墓地に眠っているもの、起きたもの
話は少し、遡る。
■惑星ネザリア 北方 封鎖区域 基地 内部 上層
「本当に一人で大丈夫なのかい?あんまり大丈夫そうには見えないが」
「大丈夫。操縦方法には自信がある!アームで卵は掴めないが、それでも防御はできる」
「片腕のパワー・ローダーで何が出来るかはわかないが……」
そう、格納庫で放置されていたパワー・ローダー。片腕しかないが……それでもスターターに点火させれば十分動く。貨物運搬用で、全長2m50cmほどしかないがそれでも機械福音教団の騎士とタッパは近い。大きさ、スケールが近ければ簡単に組み伏せられることもないはず。特にこの基地の通路であるならば、ギリッギリの高さ。ならば狭い中で相手の行動を封じることもできる。
タッパとパワーが制限されている中なら、リィンやソニア達が外で暴れている間の時間稼ぎぐらいは自分で出来る。自分を守るという時間稼ぎを……だ。いつまでという制限は地球帝国軍の救援艦艇が来るまで。どの程度の速度かはわからないが超空間跳躍航法が一般的な今ではそんな半日待たされるということもないとのこと。
「まぁその、検討を祈るよ。私にはやることがある」
「最悪これでお別れだろうから……その、何か言わないといけないと思うんだけど浮かばなくて」
「いいんだ。彼らのために祈ってくれただけで十分」
基地防衛の作戦はこうだ!
というほど複雑怪奇、奇想天外摩訶不思議な奇術めいた天才的な戦術があるわけではない。
なにせモノが限られている上に人員が限られている、しかもここは相手の完全なテリトリーと言える惑星で……絶対的な数で包囲されるのは明白。
ならもう救援に来る船舶に頼り、それまでの時間を稼ぐ。リィン導師の立案である、し彼女曰く救援に来る艦船はもしかしたら特別なものでなんとかなるかもと言っていた。もしかしたらなんとかなる、程度の可能性の話をしている時点でだいぶよくはないんだろうがそれ以外にどうしようもない。
そんなわけでオフェンシブ……攻撃力に特化。とにかくリィン導師とソニアに暴れてもらって、その穴埋めやら私を遠巻きに護衛することをギルドの戦士に任せ。簡易的な人員防衛網を張り時間を稼ぐというものだった。ものだったので私は私一人でなんとか時間まで持ちこたえる必要がある。
とかく基地の搬入通路を移動していけば、騎士団の彼女らに遭遇しても……すぐにどうこうされることはないだろう。パワー・ローダーの操縦席からロボット・アンドロイドの彼に手を振り別れて通路に進む。広くはなく、配管やスクラップが置かれたこの通路なら戦いにくいはず!
そう思っていたのだが!
■メチャクチャになった通路
「うおぉああ!?アームが!アームがオシャカになった!」
「ずいぶんと余裕がある!次は足を折れ!」
「ぐぅぅ!剣を取れ騎士!剣で来ないか!」
「あなたは何を見ていたのですか!剣は武器の1つに過ぎませんから!」
リィン導師の作戦は最低限の妥当なところだったのだろう。何も間違っていないはずだ、それしかないから。ただ私の目論見は……そもそも戦いの素人。考えの甘さを突かれるように……機械騎士の彼女らは剣を納刀し、徒手空拳で襲い掛かって来たのだ!しかも壁をぶち抜いて乱入してくる!
その結果どうなったかと言うと、荷物運搬用のパワー・ローダーでは挙動の旋回能力などあってないもの。カクカクしているところ……ぬるりと、すぐそこまで潜り込んでくる機械天使の甲冑騎士である彼女らがアームを掴んで捻り折ってきたのだ!脇に挟んで……彼女が体を捩じるだけでテコの原理の如く、関節でヘシ折れてすっかり腕なしのパワー・ローダーとなってしまう。こうなっては荷物の運搬も出来ない、文字通りのスクラップ同然!
「ぐぉぉぉぉ!脱出!脱出!あぁ!シートベルトが外れない!」
「ベルトを締めろ!そのままシートごと拘束しろ!そうすれば動けなくなる!」
その上で抵抗できないように、さらにパワー・ローダーの足をもへし折って転がされてしまう!脱出しようとシートベルトを外そうとするも、転がされたパニックでうまく外すことができず。車から脱出する時もこうなってしまうのか、と悠長に思ってしまったのがいけない。そうこうしているとシートごと引っぺがされて拘束されてしまった!?
「再生者確保、このままシートを背負子にして連れて行く。あまり暴れないでください、頭をぶつけますよ」
「うおぁあお!離せ~!やめろ~!ぶっとばすぞぉーーッ!」
「余裕がある、あともうひとふた巻きして差し上げよう」
「ギャアッ!きつい!ムグーッ!」
エヴァンゲリウムの女騎士に、シートごと拘束用バンドで締め付けられた私は……そのままバックパック、背嚢か背負子のように背負われてしまった。騒いだら騒いだで口まで覆う様にバンドを巻かれてしまうが……息苦しくないのが特殊素材すぎる。質感がゴムっぽいのに息が出来るとはこれまた如何に。
「よし、このまま地上にお連れする。マシウス様がお待ちだ……服装の選定がまだ?また作り始めたのか?このままでは明日に……」
「総員何かを掴め!崩落するぞ!床が……この炸薬量、まさか誰が……!」
「ムググーッ!?ムグッ!?」
なってしまうぞ、という言葉が私の背中側……背負っている彼女から聞こえたその時。振動が、床を揺らす。伝わって広がって……さらに、何度も広がっているのが彼女越しにも伝わってくる!何が起きている、どういうことだと伝えるように伝えられず。何をと聞こうとしたときに、私はふっと……重力を感じない瞬間。そこから一気に引きずりこまれる落下感が体を伝わってくる!
「ゼノ・テックの埋葬用炸薬シークエンスを起動させた!」
■ 基地 格納庫 戦艦 甲板
「ムグッ!?ムググッ!?」
「君は一体なぜ!?こんなところに……しかし、すまない!巻き込んでしまったようだ……」
落下の衝撃が連続したことで、背負子が外されてしまったのか。私は地面?を見て転がっているわけだが……その上から聞き覚えのある声が聞こえて。背負子を立てて、私の姿を確認した彼は拘束を解いてくれた。ロボットのアンドロイドの彼だが……ここはなぜ、どこで……何をしていたのか?
「ここでやることだったんですか。でもここは危ないから早くどこかへ退避しないと」
「いや、埋葬シークエンスが失敗した。なぜかはわからないが……こうなっては直接爆破するしかない。予備の炸薬を外周に配置して改めて破壊するしかない」
「破壊って何を、ここにはスクラップしかないじゃないですか。早く逃げましょう!あぁ……それと彼女らは、どこへ?!このままだと彼女らも生き埋めになってしまう!」
「落ち着け、落ち着け、落ち着き給え。私も落ち着く……とりあえず自分の身は安全である、ということを理解してくれ」
とかくパニックになってしまい。先ほどまで私を拘束していエヴァンゲリウムの騎士の姿も探してしまう。このような衝撃の連続の落下、彼女らは無事かもしれないが無事ではないかもしれない。私を庇って、助けて潰れてしまったのなら……それはとてもつらい。だから無事を確認したかったが、とかく落ち着けと言われてしまった。冷静になれる状況じゃないが……ロボットのアンドロイドの彼のお陰で、少し落ち着けたと思いたい。
「このゼノ・テックは目覚めさせてはいけないんだ。あまりに強力すぎる、形態が武器であるのもよくない。このような混沌とした状況で、目覚めさせるよりは眠らせたほうが……」
「この?このとは……どれを?」
「今我がいる、この場所だよ。ここは幻の発掘戦艦の甲板だ。第一次地球防衛戦の時に生まれたゼノ・テック。最終決戦兵器の戦艦……本来この宇宙にあるべきではない、エイリアン・モンスターとの戦いを目的に生まれたもの」
「な、なんでそんなヤバそうなものがここに!?」
「わからない!とにかくわからない、だが君とエヴァンゲリウムと状況が合わさって何が起きるかわからない!だからこそこのままこの惑星のコア付近までに封印できればと思ったが……」
もう出てくる単語とか、話がとにかくデカくてヤバそうなものしか聞こえてこない。彼の話を聞く限り、確かにこれは……ちょっと家に帰るだけに使うにあまりに強大すぎる!これは起こさないほうがいい、起こしてはいけない気もしてしまうのだ。彼がここまで焦るのも……納得するしかない。
「なら私はここから早く離れたほうがいいな、確かオフロード・バイクみたいなのがあったはずだから……それを借りていくよ。あなたも、今度こそご無事に!あとできれば助けられる彼女らを助けてください!」
「あ、あぁ……私も出来るならそうするが、君は」
どうやって降りるんだ、ここから
そんな声を甲板の上の手すりから聞いてしまった時。別の音が聞こえる、足音……ちょっと歪になってしまったが金属音に近い足音。フルメイルを装着した騎士の足音。それはもうここでは当然彼女らしかいない。
「無事だったんですか!よかった!」
「何がよかったですか、呑気な!大体そこの貴様!やはりお前はあの時に破壊しておくべきだった!明け渡せとはいわない!だが余計なことを……これは我々を埋葬すると見られてもおかしくないのだぞ!敵意はあるのか、ないのかハッキリしろ!」
「あるさ……!私は人間のためにあるからな!君らごと葬れればと考えてのことさ!」
「なんだとぉ!言ったなァ貴様ァ!終末は許されたというのに捨てるか!」
なんの、何を言い争っているんだ?彼と彼女は?だがあまりに剣呑な雰囲気に引いてしまう。彼らの間に何があったかはわからないが……それでも、彼女が腰の剣を抜いたことで一気に場の空気が膨張してしまう。怒りという感情の爆発!それを武器を持たぬ彼に向けるのは……あまりに危ない、破壊と死が来ることなど明白。加減されているが身をもって知っている私はそれがすぐにわかり、止めなければならないと思った。
「やめるんだ!彼は武装していない!」
思って、手を前に出した時。
この場に……甲板に音が広がる。金属のものが真横に回転するような、機械の駆動音とスレる音。その音と共に、彼女は何かに弾かれるように……甲板から落ちて行ってしまった。落下を確認しようとするも、目の前に横倒しになっている……回転してきたソレで進路が塞がれてしまった。
巨大な金属の筒、砲身。戦艦の砲身だ。
そう、それがなぜか動き。旋回して砲身で彼女を甲板から弾き出したのだ。
「バカな!?メインエンジンに火は入っていない!なぜ動く!」
「あの男の確保はどうなっている!」
「確保しました!しかし、崩落が!強度計算を超えて……」
「何を言っている!チャンネルを切り替えろ!」
「エステル様!あれは……あれが動いています!」
「幻の発掘戦艦が!第一世代のゼノ・テック……地球防衛軍の戦艦が動いています!」
ちょっとカクヨムの分に追いついてしまったので。今週は土日までお待ちをになるかもしれません。
あとツイッターでカクヨムの方を告知しますね…諸々状況が変わってしまったので




