17話 ネフィリム
一応エステル視点です。
ネフィリムとは拡張武装である。
機械福音教団の騎士に許されたものであり、その行動において対応レベルを判断。定められた等級により、必要な武装を運用するというものだ。例えば現在私が装着しているネフィリムⅠは巨大原生生物相手、および銀河連邦人類の強化装甲外骨格を相手に用いられる等級。都市部での機動制圧戦にちょうどいい。
私に立ち向かってきたあの男の体格と比べると、今度は2倍以上……あの男の知る基準で言えば全高3m50cmほどになる。この姿で立ち会えば今度こそ一ひねり、どころか一つまみですむようなサイズ差とはなるが。ネフィリムⅠをあの男相手に用いるようなものはそもそもの用途が違い、そうした相手を痛めつけるだけ……己の手で確保しよう等という誤った運用というものは必ず作戦行動自体に支障をきたす。
本来の使い方というのは、重装甲に高機動と高推力という飛ぶ戦車の運用だ。こうして輸送機から降下後に目標へ向けて……減速なしで突入するような、機動強襲戦法など。通達してやった時間よりも、すこし速くなったが。
「何を考えている!エステル、その地点にその速度で向かうなど!」
「不意打ちにならない範囲です、連中も完全に防御陣形を取れるなどとは思っていません」
「エステル!先行し過ぎだ!威嚇用の艦砲の着弾と同時になるぞ!」
「マシウス様、お許しを。大気が震えているのです」
「お前は今、どうかしているぞ!」
■惑星ネザリア 北方 封鎖区域 基地外周
「エステル様、ギルドの戦士はどうしますか」
「適当に痛めつけてやれ。ただし殺すな、刺激したくはない」
「再生者を……ですか」
「そうだ。ここに眠るモノを考えれば、な。ネフィリムⅢを使う事態は避けたい」
部下が掴んだギルドの戦士、辺境惑星国家トル・ヴィルムの戦士をお仲間の元に放り投げたことで了解とみる。部下らもこちらの意図を組んだとなれば後は作戦行動の規範が構築されるというのも早い。各々の解釈で独自に動き、この基地の制圧のかかる。
惑星ネザリアに植民政府が作り出した、北方の封鎖空域。その中心点にあるゼノ・テックの研究基地であり我々が廃棄所としたエリア。ここでは何が起こるかわからない。例えば先のエルダー、教導院の騎士であり魔女のリィン・グラハムが用いたような宇宙の聖なるエネルギーを使いサージ現状を起こし広域ジャミングをかけらる可能性もある。各々が独自に動くことを前提に何をしてはいけないか、何を目的とするかを決めなければならない。
隔壁ごと貫いてギルドの戦士の武器を破壊し、適当に叩いて追い返す。
今回必要なのはナンブ……宇宙超常存在の後継者、再生者であるあの男の確保だ。
ではそれ以外の者はどうとしてもいいのか。そうではないのが、煩わしくもある。あの男は自分が傷つくことよりも他者が傷つくことを厭う。故に彼以外のもを皆全て断つということは絶対に避けねばならない。でなければある程度の交渉の後に協力を得られない……いや、絶対的な断絶となる可能性もある。それが故に無傷とは言わないが、適当に叩いて追い返すようなことを部下ともども繰り返し……あの男を探してる。
それは我々が出来る技術と力を持っているからであり……また、それだけは避けたい理由がある。
あの男がその先に、この我々に向けてゼノ・テックを……この基地に眠るアレを用いる事態だけは避けたい。この惑星にある戦力でアレを……起動し、十分に動くようになってしまったあれを止めるのはまず難しい。つまりネフィリムⅠより巨大なネフィリムⅢの編隊で相手をしなければならない、ということだ。55m級となった我々の暴力行使、そうなればこの北方の極点付近は滅茶苦茶になってしまう……など容易くわかる。
それがマシウス様が出した予想であり、私も概ね同意した。
ただし例外はある。加減など出来ない相手が出た場合だ。
それは教導院の騎士2人。
しかも先に遭遇したときよりも、マナをより強力に放ち、乗り、使いこなす今までにない脅威となっていた時には……我々は全力以上をもって相手をしなければならない。でなければ押しのけて再生者を確保するどころか、この惑星の戦力をすべて消耗しきってしまうかもしれないからだ。いや……相対した今は直感というものでわかる。必ずそうなると!
「なんなのだその力は!貴様ら……あの男に何をさせた!人が使っていい力ではない!」
あの魔女と、銀の騎士……リィンとソニアは異常な強さを見せていた。
いや、速いだけならいい。速さだけであれば……力だけであればどうやっても御すことができる。出力と機動能力の修正でことたりるものだ。だが今我々が包囲している……いや、いたヒトはなんだ?マナのブレードを構えて順次タイミングをずらして突撃した騎士3人が一瞬でバラバラにされてしまう。最初の騎士のブレードが跳ね上げられたと思ったらソニアとやらは貫き手、セイバーですらない……素手で騎士のエネルギーラインの隙間をブチ抜いて盾に。そのまま次の騎士へと投げて当てて、投げて……最後の騎士が突入のタイミングを誤ったことを悟る前に首を刎ねていた。
今私が相対しているリィンも同じく。この基地の壁を崩し、強襲の形で四方向から攻撃を仕掛けたものの……自分以外の3者は突入した段階で胸を貫かれていた。いる場所が分かっていた、そのような次元の話ではない。胸に穴が開いた騎士が3名突入していた結果だけが残る。あの異名の通り、まさしく光の茨に貫かれていくように、3人の胸には光の茨が伸びて巻き付いていた。
私は運がよく……いや指揮の都合で矢面に立っていたが故。胸の前に剣を構えていたこともあり、貫かれることはなかったが……ブレードの半分が折れてしまう。それでもマナの凝縮と展開で戦闘の継続が可能なのは、そういう戦いの土台になっていることを示すものだが。
おまけにあの男のペットだか保護者のような犬でさえ巨大化し、騎士の鎧をかみ砕くような凶悪な原生生物の猛獣のように襲い掛かってきている。たしかにあのサイズのものと戦うための等級がネフィリムⅠではあるが、その想定を上回る膂力があの獣には備わっていた。地球帝国の標準的な軍用犬が、とは。ありえない……悪夢のような現実がここにある。
だがそのようなあり得ないことも、あの男……再生者がいるというのならばありえることになる。ないものをあるようにする宇宙超常存在の後継者、この場所でなくとも……どの場所でもあの男を野放しにするのは危険すぎる。やはり我々が確保しなければならない。
エルダーの女にどう唆されたかはわからないが、人は人のままであるべきだなのだ。これは明らかに人の範疇を超えている。今の人類が持つ飽くなき望みの果てに得たものを見ているようで恐ろしくなる。だからこそマシウス様らとあの男で囲えばこのような結末を迎えなくて済む!
「あの男の確保はどうなっている!」
「確保しました!しかし、崩落が!強度計算を超えて……」
「何を言っている!チャンネルを切り替えろ!」
「エステル様!あれは……あれが動いています!」
我々は部隊をいくつかに分けた。私直属の騎士で固めた部隊は教導院の騎士連中を当てにするために。残りはあの男を確保するために。だがこの時点で気付くべきだったのだ。騎士が2人、あの軍用犬もここにいる状態であの男には護衛がいない。つまり窮地に陥るなど誰もが予想できる……その危機感を用いて、あの男にゼノ・テックを起動させようとしていたとは!
「やってくれたな……あの男を野放しにして、危機感を煽り……あの幻の発掘戦艦を起動させるなど!」
「起動したのか!エステル!聞こえるのか!聞こえているなら退避しろ!あれが起動したとなれば……その場所はただではすまない!」
そのマシウス様の言葉が聞こえた途端。騎士と犬の動きが止まった。いや……止めたというべきか。こちらに向くはずの視線が一度、いや二度……犬も合わせて見合わせた。まるで聞いていない話が……予定にないことが起きていることを確認しあう様に。それか……いや、ないとは思いたいが……あの男の存在をすっかり忘れているの今思い出したかのよう。
「お前らなんの考えもなくあの男を放置したのか!」
何を考えているんだお前らは、と口から出てしまった次の瞬間。
ゼノ・テック対策に対爆処理をしているはずの堅牢な基地が揺れ始めた……爆音と、衝撃音と共に。
あ、そういえばですがカクヨムで書いてた(書き易いから)んですが
明日でストック切れそうなので今週は土日まで空いてしまいますね、申し訳ない




