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オリジン・シード  作者: 草間
コスモ・レコンキスタ~宇宙回帰運動~
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13話 主よ、どこへ向かおうというのですか

■惑星ネザリア 北方 封鎖区域 境界最近燐 収容所


 夜。ギルド兵の生き残りらが寝静まった後。わが主はひたすら穴を掘り、そこに白骨遺体を埋める作業を続けていた。


 白骨遺体とは、植民政府の人間らのものだ。


 事前情報を照らし合わせれば、であるがここの人間たちは辺境への植民から開拓まである程度進むと何らかの判断で放棄をした。惑星開拓機構が出した報告書にはそうあるし、それから既に100年ほど経過しているのに機械福音教団エヴァンゲリウムの活動が観測されたもので……リィンとで調査に来たのだ。その結果報告は虚偽である確信を……私たちは確かにした。


 地球帝国と銀河連邦、いや惑星開拓機構とどこまで癒着しているのかは不明であるが虚偽の報告をしたことで放棄地と化した惑星ネザリアで何かやっていたことは確かだ。それが何をしていたかは、具体的にはまだわからないが……何を使っていたかどう扱っていたかはエヴァンゲリウムの対応で見て取れる。


 そのままやり返された植民政府の連中は、北方で厳重に封鎖された区域の……この収容所としか言いようがない場所に連れて来られ結果白骨の遺体になった。


 ギルドの連中やましてや私もそのような連中にどうこうするのは……触れるのは控えたいもので。一晩休んだ後は我が主が見た、という極点付近に空いたエリアに向かうために休むべきだとしたのだが。わが主はそんな時間を惜しんで、遺体を埋葬している。私が手伝おうとしたら断られ、またポリという犬でさえも近寄ることを拒まれて。リィン導師も私に手伝うなというもので……こうして夜中にこっそり遠巻きに彼を見ている。


 ただひたすらに穴を掘って、一体ずつ白骨を埋葬している彼を。リィンもまた同じくだ。どちらかというと私の監視に近いような雰囲気があるのは……気のせいではないはずだ。現に戦士長が彼の前に現れた今、セイバーを取ろうとした手を止められてしまったことで確信となる。


「再生者、その連中をなぜ埋めてやる。そいつらが()()だからか?」


 わが主に向かって何をしているのだ、という問い。甚だ無礼である上に、是非を問うものではあるまいに……この体格がいいだけの蛮族は何を問うているのか。だがそんな矮小な問いも彼に聞けば、彼からの答えなどすぐ出てくるはず。


「……すまない、うまい言葉が見当たらない」


「俺たちを()()()と思っているのも、それと同じなのかと聞いている」


「……それは、そうだと思う」


「ふさけるな!何様だお前は!そうやって創世主の使い気取りか!なんでもお前のいいようになるとでも思っているのか!」


 激高した猿がわが主を掴み、揺さぶるように持ち上げる。その怒りを向けるべき相手に向けているように。それよりも早く、私は完全に斬るつもりでセイバーを抜こうと力を込めたがこれもリィンに止められてしまった。なぜ止めるのか!?このままでは捻り殺されることはなくとも……


「お前たちからすれば、この連中も俺たちも同じ程度だと思っているんだろう!お前に何がわかる!この連中も!俺たちも!」


「わからない……」


「そうだろうとも!わかってたまるか!」


「わからないんだ……」


「どうしてこんなことを……できるんだ……」


 夜の闇に消えてしまいそうな、か細い声ではあるが聞こえる。力のない声が聞こえたことで気が削がれたのか、戦士長は揺さぶるのをやめた。それでもまだ強い敵意のようなもを感じたもので今すぐにでも駆けつけて、あの蛮族の腕と首を切り落としてやりたかったが体が動かない。


 リィンに止められているからではなく……私自身もなぜか、動けずにいた。わが主からの言葉を待ってしまった。彼が何を言っているのかが、わからない。許すも許さないもエヴァンゲリウムではなくアナタが決めることではないのか?その基準が確かにアナタにはあるはずなのに。あなたにはその資格があるというのに、なぜ?


「ここまで、ここまでするようなことなのか!?ここまでされるようなことをしていたとしても……してもだよ!ここまでやっていいはずは、ないだろう!」


「こんなことが、どこでも起きているのか!?これが……普通なのか!?答えてくれ!」


 そう、だからこそアナタが目覚めた。この宇宙を()()ために。今アナタが埋葬していたような連中もアナタを掴んでいるモノも……全ての悪しきものを裁き、この宇宙に平穏と安寧を再生するために。福音を与えるのはエヴァンゲリウムではなくアナタなのだ。そこのものもアナタが裁く相手でしかないのに、何を言っている。それではまるで……


 戦士長は答えなかった。答えずに、彼を下ろして……彼が持っていた粗末な穴掘りの道具を持って……穴掘りを始めた。穴を掘り、白骨を埋葬する作業を彼に代わってやり始めたのだ。なぜ?


「わ、私がやらないと」


「寝ろ。明日はまだ長い、お前が寝ていると困る」


「しかし」


「寝ろ。お前より早く終わる」


 私が困惑している間にも彼とのあの戦士長の間には奇妙な空気と時間が流れていく。どういうことかと聞く相手のはずであるリィンは……首を横に振り、私は彼女と共にこの場を離れることになった。なぜ?あのまま放置しておいていいと?だが私にもわからない。あのままあの場にて……何を見て、何を聞いて、何を問えばいいのか。何を得ればいいのかがわからなかった。私には彼の考えがわからない。


 宇宙の再生のために現れた彼は、全てが全て正しいのではないのか?その御心は何もかもが……我々が依るべき星ではないのか?その答えがすぐ出そうであり、出てしまっても今……受け入れられないのではないかと思ってしまったから……私はリィンと共にこの場から離れるしかなかった。


 我が主の御心次第の宇宙、御心……その意志さえ輝く星のように確かであれば。どこへ行こうというのも確かではないのか?それともどこに行くのかもわからないのか……私は今、それを聞くことが出来ない。この宇宙に唯一輝く星であるはずの彼から、言葉を受けるのを恐れてしまった。


 またあの闇に戻るのが怖くて。

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