7話 デカい昼飯だがキャンプどころかフェスかな?
BBQグリルでおにぎりの燻製は驚きましたね……
■森林保護区 休憩所 外 食事スペース
独身男性はある程度の年齢から……それとも独立した意識が望む憧れからか精神がおかしくなるかで、熱心に始めるものがいくつかある。
食事のカテゴリーならカレーのスパイスからの調合であったり、炒飯の作り方であったり……煮豚、豚の塊肉の調理であったり。私はそのどれらもやることはなかったが、憧れで一度やりたかったことはある。BBQとかあの世界……肉の塊を低温調理で焼いていくあのスタイルである。
「もういいの?あまり残らないと思ってたけど……夕食に回す?」
「いえ十分で……水をば……」
「ポリはまぁよく食べるねぇもっとお食べ」
私は今、そんな具合で森林保護区域にある休憩所で昼飯のBBQをいただいているんだが……軽いレジャーぐらいの気持ちでいたら様子がおかしい。これが歓迎会かぁと思っていたが様子がおかしい……少女と老婆、ポリはなんということもなく肉を食っているのがまずおかしい。
まずアメリカンなBBQはいくつか地方色があるものではあるが、長時間の低温調理で肉を柔らかく煮込むような方式がメインだろう。その中での調味料や部位が違うというのは覚えている。これは家庭の範囲のも、またファストフード店でも同じだったはずだ。
それがどうだろう、今見せられているのは4トン・トラックの荷台ほど焼き機に収められている……何か、その…何?って具合に焼かれていた巨大生物の肉。
角?や毛?や皮を剝がされて、内臓を取られているもので外見が分からないので……牛とか豚に近い草食動物のようなものだと推測することしかできない。いやここまでサイズが巨大だと草食恐竜のサイズ》なものでもう食欲より驚愕の方が勝る。それを老婆が取り分けてくれるわけだが……BBQダディならぶBBQおばあちゃん。肉を取ったり抑えるために持っているはずのフォークは、食事用フォークのサイズというより牧草用フォーク……ほぼ槍のようなサイズであるし。この老婆は肉体派の魔女なんでしょうか?
それでブッ刺して調理台に乗せているし、明日以降の分と思われる丸鶏ならぬ丸恐竜を刺して吊るしている……サタンの儀式にしかみえない。毎日が謝肉祭かな?おぉ神は寝ているのですか。いや創世者はどこかに行ってたんだ。
そしてそれを焼き機から取り出したら、少女が手斧みたいな肉切り包丁で切り分けていく。背丈は私とほぼ同じではあるが10代であり体格のいい長身の彼女が持つと、特撮ヒーローの強化フォームでパワーを高める時の斧モードみたいな姿なもので……その肉を断つ音と重量感がすごい。いや……切り分けている肉の重量からすれば妥当ではあるのだが。
私が啞然としている一方で、同じゲストのポリは遠慮なく肉を食っている。スライスされた肉を食っている、のではなく草食恐竜サイズの抉り取った肩バラあたりを豪快に齧りついている。1kgのブロックを……いくつか、を。すごいね、もうここの生活に慣れているんじゃないか?私そんなに食べれないが……昼飯なので200gで十分です。
「まぁほら、その……ポリはずいぶん働いてくれましたし、ね」
「そうね!本当に!優秀なイヌだね、えらいよぉ」
「観測と撮影も何もかも順調だったしね、ポリのおかげだよ。うちにもいればねぇ……」
彼女らの観測の仕事というものには非常に相性がよかったらしく、昼休憩に入る前の軽いミーティングではポリの成果がこと大きく取り上げられていた。投影式のディスプレイに映し出された巨大な原生生物、植物近隣に生息する虫類や菌類。それらを易々と見つけ、彼女らに観測促す。そして採取されたデータを老婆と少女らが軽く教えてくれながらの時間だった。
それらのデータは都市部に送られ集積されていく。この惑星自体の観測業務を小家族らの単位で行っているとも伝えてくれた。彼女らが集めた情報で惑星の自然環境利用や保全の計画を立てているので重要な仕事である、とも。
休憩小屋には衛星アンテナなんてないし、ケーブルらしいケーブルもないような施設なのに高速データ通信が行われている。この昼食の調理も提供前まではオートでされているらしいようなテクノロジー具合のようだが、人を用いて結構にアナログな方法を取っているのはこれまた如何に。ドローンとか機械人間?アンドロイドではだめですか。
「墜落現場のあたりはもう整理が済んでいるから、そのあたりの影響範囲の観測も今日は予定に入ってるからね。長くならないとは思うけれど……あんまり食べていないアナタは少し包んでおいき。きっとお腹がすくわ」
「はぁ、それはどうも……?いやもうお腹いっぱいなんですが」
「ならポリが食べてくれるよね」
ハッフッ!という調子のいい言葉が聞こえたところで、彼女らより早い食後の一服は終わり。なんとか胃に集まりすぎる血流を解くように伸びをして……その日の昼食は終わったわけだが。
■森林保護区域 湖畔 宇宙船 墜落現場
「これはすごい、もう残骸も何もないじゃないか」
「燃料等の汚染除去はまだ続くみたいだけれど、それでもいつかは再生するのよ。その最初の方を私たちが記録するの」
「ここの記録は私たちがやっておくから、ポリと食後の散歩しておいで」
あぁはい、どうもお気遣い……と言う前に、合わせてかポリがスタスタと歩いてしまった。私は追いかけるように早歩きで向かわなければならなかったので食休みの軽い運動以上になってしまったのだが……しかし、ポリがここで急ぐように彼女らから離れた理由があったのだ。
「こ、ここはまさか……墜落現場の中心……!」
艦艇のパーツが落ちたような、墜落痕がいくつか。隕石が落ちたにしては穏やかな跡地であるが……マシウスが見せたデータにあった余波。影響図からみてもここで間違いがない。ここは森林区域にある湖畔なのだが、減速したとしても……大気圏から突入した痕跡で地面を一方方向から抉った痕跡がある。
つまり私はここに落ちて、ポリに引っ張ってこられて彼女らに預けられたのだろうが。微妙に何か引きずられた痕があるし。今わざわざポリがここに連れて来たのは一体どういう理由だろうか。例えばここほれワンワンのようにポリが動いてくれれば、何か探るべきもの……いや、墜落してから彼女らのところに到達する間に何かポリが隠していたとなりそうだが。
いや、いやいや。つまりポリは隠していないし、探れない。
だが私に探れというものがあるということではないか?ポリは賢い、というか人以上に知能や知性がある……雰囲気がある。多分間違っていない。そんなポリが連れて来たのなら……動物的なもの、人間の知覚で捉えろというものではないはず。
ならリィン導師やソニアのいうような、何かこう……力?宇宙の神秘的な力がということではないだろうか?といってもそういうの探る練習を二人としたわけでもなし。とりあえず真面目にそういう雰囲気》でポーズでも取るべきだろうか。
「ムムム……!」
2世的超能力少年なポーズ、目を閉じ両手を広げて探るようなポーズを取ってみると……不思議なことに何かが見えた。目を閉じているはずなのに……湖の底のあたりから2つ。きらめいて見えるものが、見えて……こちらに向かってきた!
「えっセイバー!?これを!?」
反射的にそれらを掴むと……落下の衝撃で失くしたと思っていた荷物、そのうちで最も重要だろうと思われるショック・セイバーが2本。探って念じたら私の手に飛んできた。すごい、いやそう作られているのならそうだが。これって呼んだら飛んで来るものなの!?
「隠しててくれたのか、それとも落ちたのを覚えておいてくれたのか……ありがとう、ポリ。ポリがいれば大丈夫だと思ってたけど……やっぱり手元にあると違うな」
2本のセイバーを懐……というよりズボンのベルト・ループに引っかけて吊るした後に、屈んでポリを撫でる。もしかして彼女らに協力的だったのはこの時間を作り出すためだったのだろうか?う~ん賢い。賢いがお礼とばかりに懐にある昼飯の残りを咥えて持って行くじゃないか。いいんだがせめて頼んでからとってくれないか?
「何かあったのー?」
「いや、何も……ポリがお腹がすいたって!残りをね!ふふっ!」
「あぁ!それじゃ戻りましょうか、もう大体終わったから明日にしましょ」
はぁいと答えてその日の……日中の行動が終わり。我々は休憩所を経由して彼女らの住居、ホームステイ先に戻ったのだが……その日の夕食が終わった頃合い。老婆が見ていたテレビの情報からの話。彼女らからすると食後の休みの時の雑談程度の話が……私にとって衝撃的な内容であり、春のレクリエーション・ハイキングな気分を吹き飛ばすものだった。
「か、海賊ギルドの兵隊が……処刑!?」
報道で知らされたのは、墜落を生き延びたものの騎士に捕らえたギルドの兵隊の生き残り……彼らに実刑を執行するというものだった。




