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オリジン・シード  作者: 草間
コスモ・レコンキスタ~宇宙回帰運動~
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3話 少女が見た流星

■ 旧連邦開拓惑星ネザリア 軌道上 難民船


「うおおおおおおおお!主ィイイイイイイイ!」


「落ち着きなさいソニア。叫びすぎると他の人が起きてしまいますよ。あとなんですかその呼び方は、彼の何ですかあなたは」


「しかしリィン!今!今まさにあそこで!船が落ちているんですよ!」


「ですから落ち着きなさい」


  難民船に偽装している機械福音教団(エヴァンゲリウム)の輸送船。その内壁を叩いても状況が打開するわけでもなく。何かうつ手立てがあるわけでもなく、ただ人間への心理的安堵のために置かれた窓としてあるモニターに映し出されている……難民船の1つを見送るしかできない!船体が折れたまま大気圏に突入していくのは我が主、宇宙超常存在(ザ・マスター)の後継者でありこの宇宙を再生する者(リ・マスター)であり救世主。その彼があの中にいる!犬と一緒に!燃えて落ちていくあの船に!だ!


 それを見ていくしかできない私の歯がゆさなど同じ教導院の騎士であり師であるリィンが一番わかっているだろうに落ち着けと言うのだ。これのどこに落ち着いていられる要素があるのか?とにかく状況を打開する一歩の前に他の難民を意識誘導で眠らせたが何も策が浮かばない、どうすればいい?もしかしたらもう手遅れなのかもしれない。


「こうなったらこの船を乗っ取ってそのまま軌道を合わせれば今からでも間に合うはず」


「ですから落ち着きなさいソニア。こうなっても問題ないと判断したので別れて行動したのではありませんか」


 はぁ、とため息をつき……そのまま、外を見ながらでいいから話を聞きなさいと注意する声は落ち着き切っている。いつものように、今起きている状況が何事でもないように。救世主が今燃えているか蒸し焼きになっているかもしれないのだが?


「彼に説明したように……今の銀河連邦人類では持て余す大いなる力であり我々が宇宙の聖なる力》と呼ぶもの、ザ・マスターはそれを自在に扱うことができました。それにより銀河連邦の前身である文明の連合体は生まれ、ザ・マスターが去った後はそれを求めて歴史を軽んじる者たちが掌中に収めようと暗躍しているのが今の宇宙」


「今ここで教導院の歴史と教義の授業をしている場合ですか!?」


「聞きなさい。力を行使できるというのは後継者である再生者、彼もまた同じ。ただ教導院の人間がそれらを借りることのできるちょっとした才覚とは違うものです。ですが彼は今、自在に扱える技能はなくとも資格がある特殊な状態。そう見られていましたが、ヴォイド将軍とやらの状況を考えれば窮地で発揮できると考えられるのは当然」


 彼が宇宙の監獄要塞で見せた力。パワー・アーマーに搭載されている機能……兵士が実戦に出るにあたり恐怖心を和らげるため薬学や医学的に行われる神経鎮静化作用。それを応用したちょっとした意識誘導であり自己暗示効果。それにより彼は自分の体を大きくするパワー・アーマーで訓練もなしに自由に動き回り、セイバーを難なく振るってギルドの戦士たちと戦っていた。聖なる力を使い超能力的に操っていたのも報告にあるのは見たが……あれはパワー・アーマーのそういう機能があってこそではないか?


「一度行使したことが大事なのです。まだ理解は出来ていないでしょうが体が覚えている状態。それにあのショック・セイバーとやらも特別な武器です。遺跡で制作されたゼノ・テックに近い武器……ただの鎮圧用非殺傷武器、鈍器として使うだけなら誰でも使えますが力を使う資格である者が持てば……それを力を呼び込む鍵として次元を開きこのような窮地ですら難なく乗りこなせるでしょう」


「それは……そうですが、そこまで説明したので?」


「してませんねぇ。したら頭で考えそうですし」


「うおおおおおおおお!主ィイイイ!」


「ですから落ち着きなさい、落ち着いて、よく見るのです……あの軌道を」


  モニター近くを叩き、もっと近くを映すように操作できないかと叩いている私の方をリィンが掴む。両肩を掴み……私の肩から覗くように出してきた彼女の顔。その瞳は見開かれて……鏡のように彼女が見ているものを映す。青い、青白い何か軌道を描くものを。


 私はそこでようやく彼女が何を見ているか、何を見て落ち着いているかを知ることができた。私もモニター・ウィンドウ超しではなく意識を集中し……船の壁を通して覗き見る。


  そこにはギルドの船が刺さって折れた難民船の船体……そこから伸びる青白い帯。聖なる力が白い帯のように船体を包み、軌道を描き惑星に降下していく姿が見える。まるで青白く輝き煌めく流星のように。その鋭くも太く描く軌道が宇宙の闇をも切り裂いているように見え……その切れ目からオーロラが惑星に放たれているような超常現象が騎士の瞳である我々の目に映し出されていた。


「これは想像以上でした。教団もこれを観測しているはず……降りてからが大変ですよ、ですから落ち着いてくださいソニア。備えるのです」


「はい……」


 宇宙のどこか別の次元から聖なる力が彼を守っている。守られている。彼こそ選ばれし救世主であるので何も心配する必要はない……奇跡の証。そんな覆しようのないヴィジョンが見えたことで冷静になれた。なれたが私はこのスケールの大きさを前にどうしても興奮してしまう。聖なる救世主、彼こそ私が仕えるべき存在なのである確信が強固になったのだから。


■惑星ネザリア 西方領域 森林管理区 


「おばあ様、みて、すごい光が」


「今聞こえている事件のことに違いないでしょうに。今日はもう外に出てはいけないよ」


「光の帯が見えるわ!」


「こんなところでオーロラが?おかしいねぇ……悪いことが起きなければいいけど」


 昨晩のちょっとした会話で私たちは就寝に入った。


 祖母と二人ぐらしが始まってまだ日は浅いがそれでも安心して暮らせる時間が多くなったのは……我々にとっては良いことだった。明日を不安になることもなく日々をゆっくりと過ごせるのはとても喜ばしいこと。


 そんな平穏な時間を切り裂く事件が起きたとしても、我々は天使様達や騎士様達に守られているから不安に思うこともない。テレビから聞こえてくるニュースに悪い人らがこちらに逃げて来た人達の船を襲って、それが落ちてきていると聞こえていても。きっとどうにかなる、と思えたし騎士団が外には出ないようにとオフレを出しているのならば……それさえ守っていれば安全だという信頼があった。それがこの惑星に降りてきた平穏への信頼。


 しかしそれでも予期せぬことは、おきた。


 夜を切り裂くような流星と、それに続く虹の光帯(オーロラ)が伸びる瞬間を見た時から何か煌めくような、素敵なことが起きてしまうんじゃないか?という期待感。


 それは今……あの流星とオーロラの翌日にやってきた。


「おばあ様!犬が!犬がいるわ!人を乗せて!」


「まさか!なんて怪我!これはひどい、騎士団に知らせないと!お湯を!お湯を用意しないと!」


 傷だらけ、アザだらけの男の人が大きな犬に背負われてやってきたのだ。この《《惑星にいないはずの男の人》》が、傷だらけで。犬に運ばれてやってきた。もしかしたら流星に乗ってやってきたのかもしれない、そんな彼。


 平穏な時間にちょっと何かをくれそうな星の光の人が我が家にやってきた。

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