デカい女性ばかりの海兵隊の話
2章おまけの話はだいたいここまでです。
カクヨムの方が合間の話を差し込むのが楽、というか入れ替えが出来るので楽なんですよね
■ 監獄要塞 こと 秘密海兵隊基地 練兵場
「そりゃあ……考えすぎじゃないのかい?はいあと20回」
「言葉にするのは難しいですね。法令的な話ではありませんから……曲げますよ」
ぐえぇぎいぃと練兵場の人工芝にカエルがつぶれるような声が鳴る。私は今シンシア伍長により足を曲げては回される柔軟とストレッチに関節の動きをスムーズにさせる整体処置を受けていた。ジャネット軍曹は新規加入者の中で比較的若い連中の指導も平行している。要するに仕事の合間に私の体力づくりを手伝ってもらっているのだ。
ここは秘密基地だ……いや秘密基地といってもどこかに潜んでいるわけではない。宇宙監獄要塞の、外付けにあった外殻やらを解体し再構築された軍事拠点。ヴォイド将軍がやっていたものを引き続き解体再構築、今では立派な軍事拠点の本部基地となっていた。
「我々を助けること、とギルドの連中を排除したことは好悪という些細なお気持ちの違いでいしかないんじゃないか。まぁわからないでもないけどね……ほらそこ遅れている!よそ見をするな!」
「権力者のお気持ち次第で生殺与奪が決まることに嫌悪感がある、ということですよね。そのままキープですよ、やめというまで」
本来であれば、求められることとしては……そういうことではないのか?同じ地球人類種族だけではなく銀河に住む人類としてギルドの海賊兵もまた説得するような悪の道?から足を洗うようにすることこそ宇宙の救世主の求められていることではないのだろうか。もっと突き詰めるとデリガットのペットと呼ばれるドラゴンだって戦うような生物だったのだろうか?この宇宙にいる生命のはずだ。
「やりたいなら止めはしませんけどね。そこらへんは銀河連邦警察やらの司法の判断でしょうし……コラッ!列を乱すな!見世物だが見世物じゃないぞ!」
「あのデリガットのペット、ですが恐らく改造生物の類ですよ。我々は見たことありません」
「か、改造生物!?ぐぇっ」
V字にもならない、背中を少し浮かして足を上げる腹筋運動。その最中に聞こえた改造生物!というとんでもない単語を聞いて驚き。シンシアの方へ顔を向けたときに体をつい捻ってしまった。胸の下あたりの筋肉が悲鳴を上げて、私も悲鳴を上げてしまう。シンシアはあーあという顔で腹部当たりの整体な施術を始めてくれる。痛いが。
「ご存じでしょうが我々のような生体サイボーグ、生産後に遺伝子改造を受けたような処置ですね。海兵隊は職務上原生生物の相手をすることが多いのですが、提供および採取したデータにはありません」
もちろんそれは先のドラゴン以外に出た遺体の検分もあっての結果だろう。デリガットが名乗っていた身分だか単語のハイ・エルダーというものであるから所業については一時的な秘匿がされ公開はされていないとのことらしい。この基地が今も尚秘匿されているのはそういうことも繋がっているのかもしれない。明かしてはいけないものが明かされたようなものだろう。
「だから考えなくていい、ということじゃなくてまぁ……なんだ、我々では答えられない話なんですよ。それは再生者様に見つけてもらうかもしれない。いいか悪いか何をするかはね。我々は兵隊なので命令されればどうだってついていきますよ」
「またそんなことを。ただ我々では出せない答えはなのは確かです。ですからあなたが見つけてもらうしかない……プレッシャーをかけるようで申し訳ありませんがそこは頼みますよ。我々の存在にも関わってくることなんですから」
シンシアのいうことは確かだ。ちゃんとしたお題目や名目を……議会や教導院にネロ達が考えてくれたとしても、自分で出せなければ自分の中で通せなくなる。それは自分を誤魔化すだけではなく彼女達と彼女達を世から誤魔化すことになる。ちょっとした哀れみとか、同族のよしみとか……そういうものではないとしなければいけない話の規模になっているのだから。
私はそれを見つけ、貫き通せるような存在にならなければいけない。彼女達の命をもう預かっているのだから。何かちょっと、もう少しで出せそうな気はしているのだけれども。
「そ、それにしてもみんな積極的に訓練しているけどトラブルとか起きてない?ほらこういう急遽人が集まってくると質が下がるとか不和が生じるとかあるらしいじゃないか」
「それは……まぁ、小さいイザコザはあるけどまぁ……ないんじゃないかね」
「ないでしょうね……ないと思いますよ」
腹筋の整体処置から姿勢を変えて、腹斜筋を刺激するサイドプランクに姿勢を変えたところであった。ジャネットもシンシアもなにか非常に歯切れの悪い物言いで言葉に詰まっている様子だった。どういうことなの?という顔で彼女らを見ていると二人は顔を見合わせて口を開く。
「いやまぁ……あんなものを見せられたらねぇ」
「逆らう気はなくしますよ、どこの連中でも」
えぇ、何それと聞けば答えてくれたのは先日のこと……その場所に私もいたが。
庇護や特赦を求めて投降してきた元海賊軍、というより元帝国軍宇宙海兵隊達の武装解除に立ち会ったときのことだ。
旧式艦艇の改造艦といえど、治安が悪く改造された艦艇たち。要塞に運ばれたそれらが、その治安の悪い部分が犬のトリミングのようにバッサリ処理されてつんつるてんにされていく姿をまず見せられたのだ。そしてプラモデルのパーツのように……板切れを取り外すような速度で装甲が剝がされたり……フレーム結合部が切除されたり内部のケーブル類や機材までも綺麗に剝がされて、最後は動力炉だけにされてどこかに運ばれていく。
これが並列して同時進行で作業されていくのだ、オートメーションで。
1日に数艇な規模というか、その日にやってきた艦艇はすべて丸裸にされて再利用再構築されて新造する艦艇として再生産されていく姿を見せられた。艦艇ってこんなに簡単に解体できるのか?とクラウディアに聞けば解体業者の職がなくなるので、政府機関から要請のあった軍事艦艇以外では絶対引き受けないでくれと念を押されてしまった。
「お前たちなんてどうにでもできる、俺は再生者様だぞオラオラ忘れるなよっての見せられたらこうもなりますよ」
「あそこにいる連中も来たばかりですけどね、こっちに近寄ろうとしませんよ。怖いんですよあなたが」
えぇとしか言いようがない。私からしたら私よりも厚みのあり筋骨隆々でもある彼女らのほうがずっと強いように思えるのだが。彼女らからしたらうでもないらしい。よくわからんのが頭やっているというのなら恐怖するのも当然なのだろうか。
「それにヴォイド将軍の話もまだ消えたわけじゃぁないからね」
「だいぶ話が広がっていたようですから。しばらくは……誤魔化せないと思うのでそのあたりも。ある程度したらそんなものいたかな程度にできるんでしょうが」
その上でついこの間まで監獄要塞を中心に自衛だか警察だかわからん活動を無茶苦茶やっていたことが相当広まっているようで。尾ひれがついているのかもしれないが、そうした強硬的な態度をとる存在がもっと強い力を見せている。言葉にはしないが恐怖の抑圧を強いているように感じているのではないだろうか?それは困るんだけどイメージ的な問題で。
「あれが嫌なら、まぁほら……あぁいう装備は使わないようになってもらわないと。ほら立った!」
「軍曹相手なら好きに打ち込んでいいですから、教官ですよ今も」
ヴォイド将軍、あのパワー・アーマーを装着するとそういう機能があるのか暴力への忌避感がなくなるのだ。
暴力を行使することに、快楽を感じはしないが嫌がらない。それが普通と感じてすぐに力を振るえる。それがたまらなく恐ろしい。非致死性のショック・セイバーであったからよかったものの……そうでなかったらどうだったか。考えるだけでもおそろしいのだ。簡単に命を奪うような、壊すような人間に自分からなってしまうのだけは避けたい。あれは将軍と言ってはいるが軍人とも違う何か別のだ。あえていうなら悪の組織の幹部だ。デビル将軍とかデス将軍とかそういう類のものだろう。
だからこそ、急場ではそれに頼らず自分の意思で力を振るえるように体と意識を使えなくてはならない。彼女らのためにも……答えを導くためにしては小さいものだが、それまでに間違った対応をして取り返しのつかない事態にしないためにも。
「ハァ!」
そうして一歩踏み込出して、ジャネットの胸を借りるように格闘の教練へ挑む。私は腰を落とし……さらに踏み込んで握った拳を打ち出す!胸に当たると気まずので彼女の腕辺りをめがけて!
「アァ~!?」
しかし簡単に手を払われて、そのままひっくり返すように宙を回されて弄ばれてしまった。人工芝なので痛すぎはしないが、中々にきつい。
「まだまだ、胃の中のもの出し切ってもやるよ!動けなくなっても動かしてやるから気にせず向かってきな!」
胃の中にあるおやつの……生活班長であり調理担当のトモエが作ってくれたショートブレッドが液体として出てくることはなかったが。その後も関節をキメられたり打撃の姿勢が悪いと膝を叩かれたりわき腹叩かれたり、とにかく打撃と平手の痛みが続くのが終わったのは夕食前。
両腕の痛みから自分で食事するものがツライもので、ドロイドに介助してもらうほどの……怪我人に片足突っ込んだ状態で束の間の時を過ごすことになった。




