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オリジン・シード  作者: 草間
宇宙監獄要塞~スペース・マリーン3378~
43/55

エピローグ2

今回の後始末は大体ネロがやることになるわけでしてね

■惑星アレクサンドリア 首都 議事堂 臨時審査会


「そちの言い分もわかる。しかし現時点においてこの結果に対し法的に覆す程の事態ではない、というのが我々の見解になる」


「地球帝国より海賊軍となった元海兵隊の扱いはこちらに一任されているのはそなたも承知済だろう。いや正確には再生者(リ・マスター)殿にだが……そうですなお二方」


「私クラウディア及び同駐在官であるエルシーより皇帝陛下の承認は取れていることは執政官補にもお知らせした通り。何も問題はないと認識しています」


「貴殿の姉上……失礼、フィオナ・ウィンタース執政官は既に事務レベルの手続き段階にあると通達がありましたが、執政官補殿はこの決定に不服でしょうか」


 その通りで何も言うことはないはずでは、とクラウディアとその隣にいるエルシーと呼ばれた礼服の軍人はすました顔で平然と言い放つ。この審査会、銀河連邦議会の議員の中でも議長の信任篤い派閥の集まりと教導院の導師も集まった場でサングラスも外さずにだ。


 立場だけで言えば執政官補佐である私よりも当然1つ2つは控え目になるというのに……この態度。やはり地球帝国皇帝と宰相から直接使命されて派遣されているという強い自負と後ろ盾がふざけた態度を許しているのか。


 とにかくもって気に入らない女だ。


 宰相派なのか国防派閥なのか判断しにくいのもそれだ、クラウディアと歩調は合せ意思決定が繋がっているように見えたとしても。


「事務レベルの話は我々で解決できるものだ。当然こちらからも支持声明を添え法案の調整にはそう時間はかからん。惑星開拓機構も乗り出していることが問題ではあるが無視するわけにはいくまい」


「左様。それよりも直近の解決しがたい問題が出てきたほうが問題なのだ」


 その事務処理手続き法案調整の草案等を誰がやるのか、というのを些事のように言われるものだから腹がますます立つ。結局やるのは私や姉上……執政官を筆頭に官僚をとにかく集めて事態の収拾に乗り出さなければいけない。今回の件についても、軌道上に待機していたり侵入してくるあれらの対応の件についてという名目だったはずなのにそんなものはいいとばかりに開始早々に打ち切られてしまった。


「……ギルドの密輸部門幹部、デリガットが選ばれし長命種族(ハイ・エルダー)と名乗っていた件でしょうか」


「銀河創世神話の時代より後、かつて宇宙に散ったハイ・エルダーが再び現れたのが問題なのだ」


「プリム殿、お答えいただきたい。かつて宇宙超常存在(ザ・マスター)に選ばれた存在であるハイ・エルダーが再びこの宇宙に戻って来た……それはどういうことなのでしょうか」


「プロトコルを優先するためお答えしかねる、というのが現状での回答となります。しかしハイ・エルダーの再誕は予期されていたものでした」


「再来ではなく再誕と?ではデリガット・バフムはハイ・エルダーに昇華したわけではないというのがプリム殿の見解であると」


「私、我々はそう認識しています。あの存在と種族がまた選ばれるかはわかりませんが現時点で空位ではないことは確かです」


「うぅむこれは……リィン導師を呼ばねばなるまい」


「まさか背信者や異端者ではなくギルドの方から出てくるなど……」


「ネロ、ここは任せて。話が変わってきたようだから……ポートの方に呼び出しているんでしょう」


「それでは、後は姉上にお任せします」


 話題が国際司法事務やらの手続きではなく宇宙の神秘的なお話にお変わりなさったことで最初の議題は終わり。連邦議会のお偉い人らや教導院の導師達は何やら緊張感のある盛り上がりをしているものではあるが……執政官補が何か言える場所ではない。


 惑星アレクサンドリアの中でも執行手続き権なら上から数えた方が早いが、所詮は執政官の補佐官でしかない。宇宙神秘的な話で口を挟めることはない。


 後は執政官である姉に任せて退室してもよいとことだろう、もう正直手続き全て無視して横になりたいぐらい。退室間際に室内を見れば……ちらっと見えたクラウディアと彼女の上司にあたるだろうエルシー駐在武官の姿も見えなかった。あの連中も宇宙超神話だかに興味はないのは……異常事態が続くせいか、あいつらも正気の連中と思ってしまいたくなる。


■惑星アレクサンドリア 軌道上 宇宙航空管制ステーション ポート


「私が何で怒っているか、わかる?」


「わ、わか……ります……」


「じゃぁ言ってみて」


 開口一番カスみたいな言葉が出てしまったがこの程度で収めていることは感謝してほしい。


 アレクサンドリア軌道上にある宇宙港である航空ステーション。ここでは一応にしても民間用のポートとしても併設されており、地球人類文化保管機構でもある惑星国家アレクサンドリアに来る異星人観光客で騒がしい場所なのだが……


 今は私と、再生者しかいない上に異様に静まり返っている。再生者、男、ナンブ、バカ、アホ、ガキ。子供みたいなことを放言するこの男のせいで今なにがどうなっているかわかってるのかお前は、と聞けばわかっていると答えるもので……自分の口で言ってみろと返したら。


「このような状況になっているからです……」


「そうね、そうよな。見てわかってくれたのなら理解が早くてうれしいわ、うれしくないけど」


 ちらっとナンブがクリア・ウィンドウの壁から外を確認するように目を動かしたのだ。そう何も何がこうなっているのか、というのはポートの静謐さの話ではない。それを()()()()()()()()()が大挙している外だ。


 治安の悪くガラの悪い装飾を付けた、海賊軍の艦船が1つ2つどころではなく駐留しているのだ。数だけ言えば大艦隊と言えるほどに。そのため今アレクサンドリアはポートを閉鎖。民間の航空機の出入りを完全にシャットアウトしている。


 危険だから。


 これは今だけではなく、今も続いている異常事態で既に管制は我々が帰還してからずーっと働きづめ。ようやくある程度の落ち着きが見えて武装解除への誘導が進み始めている頃合いなのだ。


「アンタがねぇ!アメリアの海賊軍まるまる引き入れたから!()()()()()()()って恩赦を求めてアメリア以外のところの海兵隊くずれまで寄って集まってきてんのよ!軌道上に!人類文化保管機構惑星国家の!衛星軌道上に!大艦隊になるぐらい!わかってんの!」


「し、しかしねぇ……あそこで彼女らごと排除とか私には……」


「そのふざけた物言いをやめなさい!排除しないと()()()()()()()()()()()()()海賊軍ごとやれつったんんでしょ!再生者っていう宇宙救世主様が許したらみんな同じことを求めてくるのよ!それがこの結果!観光収益減少どろこじゃないわ!行政手続きパンクしてるし武装解除の手続きまでさせられているのよ!わかってんの!?」


「わかっていますが、しかしぃ……」


「キィィイィーッ!本当に!本当これさえなければ今ごろはスムーズに再編新規招集の手続きが出来たというのに!」


「ど・う・し・て!ここぞという時にいらんことするのアンタは!」


 気が立ちに立って、ポートの床に正座しているナンブを掴んで立たせて揺さぶるがまったく堪えていないものでふざけているのか、とまた一段にキレてしまいそうだったが……これ以上イラだっても仕方がない。仕方がないと椅子に座らせて自分を落ち着かせる。落ち着かせた!


「……言ってみて」


「な、何を?」


「アメリア達を囲った理由を。法的根拠とかナシよ、そういうことを聞いているんじゃないから。適当に誤魔化したら今度はセイバーじゃなくこっちで殴るわよ」


 法的根拠だの司法だのは権力構造で調()()が出来るものだ。ある程度はその立場を用いることで権力の行使を円滑にすることが可能ではあるが、それは特例のようなものでしかない。何度も使えば自ら貶めるものとなり、特例が特例ではなくなる。


 海賊行為にまで堕ちていたアメリア達を囲うのはどういう理由で、理屈でやると決めたのか。その場の勢いか、武装集団を確保したい()()()か、それとも()()か。はたまた何も考えていない、頼まれたらやるだけのやつなのか。


 何度か何を言おうおかと迷っているのか、目と顔が泳いだこいつは椅子から立ち上がると……ポートの巨大なクリア・スクリーンへ歩いて行った。外の光景が一望できる軌道ポートの窓辺へ歩いていく。


「……いるいらないで、人を選んでいいとは思えないよ」


「それだけ?」


「それは都合じゃないか……だから私は、受け入れられない。そういうのは……ごめん、あまり正確な言葉にできない」


 あまりの()()()に、とっさに出た子供の言い訳を聞かされているようで溜息が出るところだが堪えた。


 しかし考えればこいつはヴォイド将軍、あのメンタル調整機能のあるパワー・アーマーを装着している時の言動で。拡張されてはいるものの、そういう幼稚な()()()()()とかいうものが根底にあって動いていたのだ。


 それが普段抑圧されているものか、ナンブという人間自身の根底にあるものかは判断が難しい。宇宙要塞での活動監視中に纏めた報告書には、そう記したのは自分であるのだから思い出せる。コイツはこの時代においても、そういうことに()()を感じる人間なのだと。他人のために悲しみ怒り立ち上がる。自分の力が及ばなくても義憤で立つようなヤツ。ガキみたいな倫理観だ。


 あのアンジェラが気に入るのがよくわかったわ。私が気に入らないのもよくわかった。


「……わかったわ」


「わかったの?これで?」


「えぇ、よくわかったわ。これからもこうしたことが続いて()()()()()()()()()()が」


「お手数をおかけします……」


「ハァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」


 このポートのエリアを埋め尽くせそうな溜息が出た。


 とりあえず今日からでも、元海兵隊員の受け入れ手続きの最終決定やら何やらの司法と行政手続きを手伝わせないといけない。せめて自分のやることに見合うだけの力をコイツにはつけてもらわないと困るのだ。


 自分が何をしたのか、何をしたいのか。するにしても何が必要なのか、どの程度必要なのか理解してくれないと。何が足りないのかもわからなければ、私たちとしても手伝うことも難しい。


 何もわからない救世主様に救われる方も、たまったものじゃないでしょ?姉さん。

2章の纏まりはここでおしまい。あと小さい話が続きます。

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