17話 デカいものに挟まれているわけで
■宇宙要塞 Eポート
「こうしてお会いするのはもうないかと考えていましたが、わからないものですね」
「そういうこともある、そうなる時がある……とは考えていたが妙なものだとしか言いようはないな」
「確認となりますが司令達は我々と同行していただくことになります。よろしいでしょうか」
「よろしいも何も、自分の身でハッキリ理解したな。今までのようにはいかない……動き出している、時代の中でね。今までのようにはいかない。大きな渦を生み出すものが生まれてしまった」
「悪い方に考えているわけじゃない。それでもいいと、まぁ、思っているのは私らだけじゃないだろう」
Eポートにはアメリア以下海賊軍の主要メンバーが揃っていたことからの判断だろう。帝国海軍からの援軍という艦隊の旗艦が乗り入れてきたのが今だ。無論乗り入れるまでギルドの強襲艦艇や航空機の残骸があるもので掃除する必要があり……他の場所からかき集めただろうパワーローダーやら、パワーアーマーを装着した兵士が片付けを行っていたのだが。
そうして迎え入れた海軍の提督、こちらに来る前に今回来るにあたりの話をしていた提督とその副官らしき女性がアメリアやエメラダとまず面会をしていた。金髪の髪も長ければ体格も負けないローデンシア、エレナ・ローデンシア提督と……今回は副官の場所にいるモノクルが特徴的なカタリナ氏。
先の戦いではアークⅡの艦長であったと思うが、この場所で提督に同伴するということは彼女はクラウディアと同じように地球帝国軍の方の……それなりの地位の方なのだろう。艦長というトップとして単独でいるより誰かの随伴でいる方が、より知的なインテリジェンス・オーラを感じてしまうのはモノクルというアイテムからつなげる自分の貧相なイメージによるものである。申し訳ない。
「血圧血流共に正常値に戻っています。起き上がれますか?護衛はここまでになりますから」
「大丈夫、なんとか立てる……ちょ、ちょっとポリ、押して……そうお腹の方」
「しっかりしてくれよ、私たち下っ端は今はここまでなんだから。ちゃんと立ってもらわないと」
酸欠のような具合で意識を失ったもので、衛生兵であるシンシア伍長に酸素吸入やらで看病をされていた後に立ち上がろうとするも微妙に力が足りない。気が抜けたのだろうか、そこで先ほどからぐいぐい押してくる軍用犬のポリに介助を頼んだ。もちろんポリだけではなく、後ろにいるシンシアも立たせてくれたわけだが。だがようようふらふら、という体で立ち上がった私は目の前に出てきた影に……首根っこをむんずと掴まれて吊り上げられてしまった。
「ご心配なく、この後は我々が護衛しますから。ねぇ再生者様、お立ちになられないならそれらしく介助しますからしますから、どうぞごゆっくり」
「まぁ……こうはなっていますが、ご安心を。こちらは管制、一応ではありますが引継ぎのご挨拶に。そちらの軍用犬もこちらへ?」
「お願いします。バイタルデータの提出は、不要と、なるほど」
「あぁはいはい。そうなるね、それじゃ後はよろしく。再生者様……次お会いする時は墓場以外で頼むよ」
「えぇ……何を物騒な、そんなわけ……」
「そ、う、させないことに、した、んでしょうが」
そんな物騒なことに続くわけないだろう、と口から出たのを真上からの言葉が遮る。ネロが私を吊り上げ、その整った美しい笑顔を真横につけると……今にもギギィと歯を引きならしそうな口を見せて言い置いた言葉。彼女の口に今放り込めば、飴玉どころか防弾アクリル板もかみ砕きそうな力の入りようの表情筋の震えが見えた。
「再生者様、確保した、海賊軍の親玉の連行のご協力、感謝しますぅ~わ~」
「……詳しくは私が船内でお話ししますから、大人しくついてきてください。軍用犬もですよ」
えぇ、とも……はいとも言えないまま、私はネロに引きずられてクラウディアとも伴って移動していく。させられていく。ネロの言い様だと本来彼女ら海賊軍と同行しないといけないはずなのに、アメリアとエメラダの海賊軍司令とエレナやカタリナの間を通ってとにかく先にと連れ出されてしまった。首輪でもつけられている……いや子供につける安全紐で引っ張られている気分だった。
■ 臨時派遣艦隊 旗艦 巡洋艦アークⅠ 士官食堂
「えぇ、海賊軍……元海兵隊?アメリアさん達の逮捕……確保となると、銀河連邦の本部とか警察とか地球帝国の方面に行くわけじゃないの?」
「行ったら極刑、まぁ海賊っぽい言い方だと縛り首は免れないねぇ」
「連行されるのはギルドの連中ですよ。今隔離しているデリガットやその私兵、ドロイドの方は解析に回していますが」
「……もしやこうした計画として立案されずに進めてたんですか?今からアレクサンドリアの方面に向かうのはそのためだと思っていたのですが」
「そうしたのよ!私が!クラウディアがそうさせたかったんでしょうが!」
「エレナ提督ともですが、フランソワーズ提督からの要請もあったんですよ」
「あのねぇ、アレクサンドリアの執政官補の私を飛び越して何を話しているの!軍人が、惑星国家アレクサンドリアに対する立派な干渉よ!執政官を通しているのかと聞いている!」
「そこは再生者様がおられますのので、通していただかないと」
「キィ~~~~~~~~~~~~!!それもこれもアンタが余計なことをしたから~!」
士官食堂が臨時の確保場になった、というのは雑ではあるが。一応将軍以上の階級の人間を連行しているというもので、営倉ではなく立派な場所でと集められたものの集まってちょっとお茶の話でこの後どうなるんです?と聞いたらこうなっている。
こうなっている、というのはまたしてもネロに吊り上げられてぶんぶん揺さぶられていることだ。誰か止めてほしいものだが、今のネロを止める気迫がある人間はいないよう。皆一様に気が抜けて緩んだ雰囲気でコーヒーや紅茶を嗜んでいる。チョコの香りがする焼き菓子もだ!私も食べたいのだが今口にしたら散らばりそう……揺さぶられて。
「だいったいねぇ!アンタ何を見てきたって言うのよ!ちゃんと要塞内部と海賊を見たの!?見てこれを選んだの!?えぇ!?自認極刑縛り首の連中を!」
「ネロ執政官補、そのあたりで……到着した連邦警察の聴取も近いですし」
アメリアらはこのまま銀河連邦の警察機構に引き渡したり公の司法機関に任せると相当に危ないことになるのはわかりきったことらしい。
というので、特殊な事例になるだろうが私……というか宇宙超常存在の後継者である再生者を挟む形である程度の酌量する余地を作れるのだとクラウディアは解説してくれる。今度は縦上下に揺さぶられている隣で。
司法機関ではなく宗教的な……宗教的な?シンボルの保護下の救済がとかどうとか聞こえてきたが全然頭に入ってこない。頭が揺さぶられているから。公な判断であったり実務的な話ではアメリアらが時期を見定めて武装解除と遺跡というザ・マスターに関するものを返上したという体裁が取られる。
そうすることで先例が出来て銀河連邦からすれば今後そうした不法占領への投降や放棄に関する勧告をやりやすくするためともらしいのだが。
「執政官補そのあたりで、そろそろ連邦警察のオフィサーへ挨拶しに行かないといけませんから」
「じゃれつくのもその程度にしておかないと、再生者様の外聞が悪くなるんだからさ。大人しくお仕事をお頼みするよ、執政官補殿。ここでの代表は貴官なんだろうからお姉さまよりお出来になるところを見せてもらわないと」
「司令、そのあたりにしておかないと今後の待遇で揉めますよ。フランソワーズが手を回したとはいえアレクサンドリアは帝国外として独立を」
「キィ~~~~~~~~~!海賊軍!覚えておきなさいよ!」
ようやっと離されてネロからクラウディアにパスされた時。クラウディア曰く銀河連邦警察の警察官が、到着したものだから挨拶に来るだろうからお開きに……という頃合い。突如聞こえたのはその警察官がやってきた足音や声ではなく。
床と壁を伝ってきた爆発と衝撃音、士官食堂でも鳴り響く警報音だった。




