16話 デカいもので当たって
■要塞内部 Eポート
「うおおおお!無理ぃぃぃ!!!」
「バカじゃないの!本当にそんな骨とう品で何とかなると思ってたの!」
「そこで右上のレバーを引いてください!ギア比の切り替えを!右奥側です!そちらではありません!引いて、横へスライド!」
「いや違うわ、それでどうにかする作戦も立ててなかったの!?バカ!」
これならできる!と意気揚々とパワー・ローダーをクラウディアの通信のみテクニカルサポートセンターで操縦し運び、乗り込んだはいいものの。いざいざと立ち向かった先でブチあたって来たのはデリガットのペットである巨大モンスターたち。
予定ではモンスターたちから見て横っ腹から乗り付ける具合になったもので、完全に奇襲になったと思っていたのだが……見通しが甘すぎた。
「パ、パワーで押し負けそう!本当にギア比の調整で何とかなるの!?」
「なりますから落ち着いて左のペダルを踏みこみつつ、右のレバーを引いてください!今度は座席の右隣から出ている方です!」
「海軍が揚陸するまでまだ時間があるんだからもう少し持たせて!踏ん張ることぐらいできるでしょ!」
「これ半クラ入れるやつじゃないよね!?うわあ!装甲板が飛ぶぅうう!」
見通しが甘かったせいで直面する危機インシデントが2つ発生。デカい危機だ。
1つは巨大貨物運搬用なので回転灯が輝く。警告用にこれでもかと音を出して輝く。それはパワー・ローダーだけではなくエレベーターもであり、出てくることがもうバレバレだった。そのため出てきた瞬間に光る!鳴る!と海兵隊より注意を引いてしまうパワー・ローダーに向けて巨大モンスターが群がってくる。大、中、小とだ!
「ひぃぃいい!!フレームが、フレームがゆがむ!軋む音がする、離れてくれぇええええ!!」
「座席の操作アーム・ガイドをもっと突き出してください!距離を取って!」
「誰でもいい、現場にいる適当な人員!とっととそいつに取りついて!!」
「火炎放射器がないなら電気銃ぐらいないの、パワー・ローダーだよ!?このボタンとかで!!発射!」
「それは前方ライトのスイッチです!指示以外でスイッチを押さないでください!」
「運搬用重機に火炎放射器とかテイザーなんてついているわけないでしょうが!!」
「うわぁあヘッドセットのコードが切れた!!!」
2つめ、極めつけはデリガットのペット……巨大モンスターだ。巨大モンスターといえどペットなら愛玩動物、なら無線通信で入ってきたドラゴンという呼称もただの生物学上の分類と思うだろう。コモド・ドラゴンとかあのあたりの。でももうちょっと愛らしいと思うじゃないか。
しかし実際Eポートで目にしたのはそんな噛んだら傷口が化膿するので危険な大型爬虫類、というサイズではなかった。本当に絵本とかファンタジー小説に出てくる巨大ドラゴンのサイズ、コモド・ドラゴンではなく……いうなればコスモ・ドラゴンが待ち受けていた。
その上かっこいいドラゴンフェイスとうより腫瘍まみれみたいなグロテスク・ドラゴンフェイスが今、操縦席近辺に張り付けた装甲板(引っかけた運搬トラックのドア)を嚙みちぎって放り投げているのが中から見えた。その後にも続いて、視界装甲ともにクリアになってしまった操縦席に向けてドラゴンフェイスが突っ込んでくるが……スペース軍用犬のポリが果敢に嚙みついてくれているおかげて私はドラゴンのおやつにならないで済んでいる。
だがそれもいつ限界が来るかわからない、大人しくしろとばかりに他のけむくじゃらモンスターまでこちらに飛び掛かってきている。いけると思っていたモンスターVSパワーローダーは無残なスクラップとオヤツを生み出すだけの結果になってしまうのではないか、という恐ろしい結末が頭によぎっちゃう!デリガットはなんでこんなものをペット呼ばわりし、コレクションしていたんだか!趣味が悪すぎる!
オープンカーばりに視界が空いた操縦席に向かって毛むくじゃらのモンスターが飛び込んでくるのが見え、ポリが迎撃してくれたものの……その突撃が波状攻撃のように別方向からの乗り付けを許す段階になってしまった瞬間。
真上から乾いた音が連続して聞こえた!
「ちょっと再生者様ぁ、やるっつってたプランはどうしたわけでしょうかね!内部の敵は遺跡の制御でなんとかなるって話だったんじゃないんですかい!」
「いやそれがなんともかんともで、外はなんとかなってるんだけど!」
「軍曹、これを!こちらもこれでなんとかできますから!」
「あいよ!登ってくるのはこっちでなんとかできる!ちょいと失礼!」
ジャネット軍曹がとび乗って来て、拳銃を発砲して毛むくじゃらモンスターを迎撃してくれたのだ!ただ一時しのぎなもので弾切れになってしまったか。使えないと判断した拳銃を放りなげたら続いて登ってきたシンシア伍長から手斧を受け取って振り降ろす。シンシア伍長は何をと見れば機関銃を抱えて登ってきて、上方から下方に向けて掃射を始めたのだ。おそらく登ってくる毛むくじゃらを寄せ付けないためだろうが……と視界を下げていたところ、ジャネット軍曹の足が私の右前方にあるレバーを押しこんだ。
するとパワーローダーのアームが前方へ押し出され、コスモ・ドラゴンの顎下にある喉の部分を押し込む。ドスの聞いた汚く潰れた声がクラクションよろしく鳴り響く!
「まったく無茶なことを!注意を引いてくれたおかげで立て直せたけどさ!」
「他は司令達で押し戻せています、ドラゴンへの対処はこちらで!よろしいですね管制の!」
「はいはいお好きなように!ルート指示でエアロックに向けて突っ込めば排除になるかしらね!」
「宇宙を飛ぶドラゴンといえど外の艦艇や航空隊なら対処できます、そのまま進んでください!」
「そんなに簡単に言うけど押し出せるほどの出力をぉ出せるの!?」
子供相撲大会で力士と遊ぶ子供より無様にコスモ・ドラゴンと取っ組み合いをしている姿となり、押し負けそうになってたもので……そんな言葉が出てしまうが。乗り付けてきた彼女らはそんな腰の引けた言葉ではなく。力強く私の手の上だったり足の上から足やら何やらを乗せて力をこめて叫ぶ。
「繊細な運搬作業じゃないんだから、押し込む気力と勢い!」
「失礼!このまま前進!レフトアームを腹に当てます!」
シンシア伍長が踵を操縦席に突っ込み、左方のレバーを踏み押し込むとレフトアームが連動し動き、ドラゴンの腹を殴る。首を掴まれ腹を殴られたドラゴンは傷こそつかないものの、腐敗したブタの腹からビニール袋を搾りだすような鳴き声を上げてよろけた!このまま押し込むというジャネット軍曹の声が聞こえたと同時に、私の手の上に置かれた彼女の足が横に引かれて押し込まれる。若干痛いヨ!
「エアロックにぶち込むよ!シンシアはぶち込む前に脱出させるように!」
「了解、レバー固定!ポリ、彼を引き上げて!」
シンシアの言葉に私が反応する前に、ポリが私を操縦席から引き抜く。シートベルトもサイズが全然合わないもので、ほぼ引っかけるだけの安全性ゼロの装着方法なので……確かにエアロックが開けば私もそのまま吸い込まれてしまうかもしれない。これは当然だろうが、先ほどから扱いが荒い!ポリに襟首を引き抜かれてそのままパワーローダーから引きずり降ろされているもんだから、そう思ってしまう!思うがそれどころではないだろう!
「エアロック解放!解放するぞ!!アーマー着用者もそれ以外も固定!シールド解放中、吸い込まれるな!」
「ポリ!そこの艦船固定用アームの付け根の窪みに押し込んで!」
「ぐえぇぇ」
どこに引きずり込まれるかと思ったら、ポートに設置されている艦船や航空機固定用のアームの根本。稼働していないから空いているスペースに体を押し込まれた。ポリは私をかばう様に吸い出されないように強く伸し掛かり押さえてくれたのだが……エアロックで吸い出される空気ともあるのだろう、どんどん息苦しくてくらくらしてくる。
「ドラゴン排出!管制、帝国海軍へ目標へ射撃の要請を!」
「やっているわ!アークⅢの航空隊が対処する……撃墜を確認!ただ完全撃破ではない?もう少し観察して!調査を派遣するまで触らないで!」
「司令、鎮圧は!」
「完了したところだ!全ポート確保の連絡も入っている!」
空きスペースの中から歓声と勝鬨を上げる声が聞こえてきた。聞こえてきたのだが息苦しさからどんどん意識が遠くなっているのだが中々ポリが離してくれない。いや、ようやくどいてくれたがスペースから引き揚げるためにまたしても襟首を噛んで引っ張ってくれたがためにきゅっとしまってしまう。しまった。ものでそのまますぅと視界と意識がブラックアウトして……しまった。
「ポリ!締めすぎです!あぁそのまま引き上げて!落とさないで!違うその落とすではなく!」
「まったく!これから海軍の連中を呼び入れなきゃならないのに、何をなさってるんだかさ!」




