15話 デカいものにはデカいものでアタレ
対等とはすなわちスケールを合わせることで、それは重要なんですよ
■ 宇宙要塞 中央部 遺跡中枢 管制制御室
「すごい……!あぁも一方的に艦隊を!」
「えぇ、ギルド相手には少々過ぎた力ではありますが火急に必要な要件と判断しましあもので」
遺跡中央部に制作された管理制御のための中枢エリア。そこで投影されたスクリーン映像には大多数の治安の悪い艦船で編隊された大艦隊、ギルドの大艦隊がいたはずだが巨大な艦船は軒並み腹に大穴を開けて、内側からも爆炎をまき散らし蛇行していくかそのまま爆散している姿が見えた。
中には制御を失い他の小型艦艇ごと巻き込んで爆散していくのもある。
「それで?クラウディア、外はいいとして中はどうするのよ。このまま陸戦隊乗り込ませるにはまだ荒れているのはわかっているわよね」
「ですからその方法をご相談されてはと」
「なんで私が……私とあなたはここで管制を継続して、外の優勢を継続させたまま内部制圧に入るタイミングを見るんじゃないの」
制作されたときに作られたか、異様にゴテついて勘違いしたジャパニーズ・エド装飾が施された管制制御装置についたネロは…・…そのまま装飾を破壊し始める。大型ライフルのストックで邪魔だ鬱陶しいとばかりに。ある程度おおざっぱに破壊し終えると、腕に装着されている装甲の部分で砕いてから払う徹底具合。
「それにね、私らだって2人だしプリムがいたとしてもドロイドの実働運用数は限られている。ここに捕縛しているデリガットとドロイドの監視もあるんだから手は貸せないわよ。やるなら1人と1匹でやるか、海兵隊ごとやって。その方が後の仕事は減るわ」
「まだそんなことを……どういう方針か、どうされるかはもうご理解されているでしょう、ですから執政官補の助力を」
「第4波のワープアウトを感知、いい?どこまでギルドの艦隊が派遣されてくるかは不明、余裕がないの。防衛機構との連動処理はさておいても気を抜けない、あなたこそわかっているの?こいつだってただ捕まっているようには見えない、し、ね!」
「やめなさい無礼者!乱暴な……腕や足を破壊するぐらいで私がお前たち如き肉人形に屈するとでも!」
「やかましいギルドの小間使い風情が!!!」
デリガットは先ほどから何か不気味な程におとなしく、かといって側にいる翻訳ドロイドだかはうるさく……その度にネロが叩いてどこかしらを破壊している。中枢らしいところには傷つけていないのだろうが。この時代にドロイドに対する権利とかそういうものはないのだろうか?流石に人型の何かが壊されるのは痛ましく見えるもので、そこそこのところでやめてほしいのだが。
「申し訳ありません、ネロ執政官補はあの調子なのであまり協力的ではありません。私も協力したいところですが、次元潜航戦隊のサポートを行わねばならず……」
「い、いや十分だよ。あれだけのことをやってくれているわけだし。えぇと……そうだな、プリムもここの補助を頼みたい。ネロとクラウディアを手伝って要塞外の対処を中心に」
「よろしいのですか?遺跡の管理AIと私とで並列処理すれば確かに楽になりますが、同伴することもできます」
それで十分だと……プリムにはあくまで彼女らの補助を任せるしかない。戦いのプロでもないもので戦術とか戦略を立てることがとにかく出来ないのならプロの言うことから考えるしかない。クラウディアが若干お手上げ感もあり、ネロも最適な方法とするなら……要するに海賊軍、アメリアやエメラダたちごと要塞内部を滅茶苦茶にする方法が楽だと言っている。それ以上はわからんと。
管制室で状況判断のために映し出される内部の、最後に残るポート……アメリア達が持ちこたえているところの映像が入ってくる。何か大きなものと戦っているのはわかるが、彼女らの装備では戦う状況が厳しいことを映像と音声とで伝えてきている。身の丈以上の、巨大な生物と戦うための装備はあると聞いていたが……それをここまで運ぶことが出来ないようだ。それがため不利な状況をずっと押し付けられているとクラウディアが補足してくれた。
よってデリガットらの一派をここまで通してしまったのだと。
「何か届ける方法は、遺跡と要塞とで繋いである部分で装備を送るとか」
「間に海賊軍の艦艇やギルドの突撃艇が挟まってしまっているもので、現状を無理に変えようとすると内部で艦艇の融合炉等が爆発して悪い影響を招く可能性が」
「ぬぅ……!どうしたら、あのパワー・アーマーは……いや……」
「サイズ的に対応できるかはわからないけど、またあれを装着する勇気があればなんとでもなるでしょうねぇ」
「執政官補!」
「事実でしょ……こちら要塞管制、アークⅢの航空隊へ。敵空母出現、対処にあたるように。3機編成で囲みに来ている 繰り返す」
あれを着て……また戦う。確かに出来そうな気はするが……ネロの口から出た勇気という言葉のニュアンスは小馬鹿にしたような音。敢えて言うならば、そんなふざけたことを続けたとしていい結果はないだろうというもの。
当然だ。戦うだけならまだしも、ここという土壇場で意識が怪しくなるものを装着して間違えないことなどできるのだろうか?
間違えたくないこと、それは海賊軍……元海兵隊の彼女らの安否のことだ。言われてここまで来たがクラウディアやプリムの、ネロの話からしても宇宙要塞と遺跡のリソース配分を考えたとて対処できるかどうかも怪しい段階になってきている。
敵ギルド艦隊の司令塔たる艦船達は破壊出来ているが、それでも増援は止まらず防衛機構の網の間を縫ってギルドの兵隊が侵入してくるもので……ドロイド軍や各ポートの兵士らが行ったり来たりでとにかく逼迫している。
勝つためには最後のポート、アメリアらがいるEポートを制圧しアメリアらに防衛の指揮を執ってもらうのが一番と考えられる。しかし何をどういう手段でアメリアのところへ助けを出せばいいのかが……わからない!何かいい具体案がありそうなのだが……先ほどのようにピンと来る冴えが徐々に失われてくる感じがしてきて、焦りに焦ってしまう。今頭上に輝く情報スフィアに放り込まれた時にはもっとわかった気になれたのに!
「ウゥ~オオーッ!」
「お、おっ!?ポリ、どうしたの!?そ、そうだな……ごめん、ポリも立派な戦力だし……行くか、行くしかないか、ポリ!」
「フッ!」
頼ってくれてうれしいぜ!という反応にはとても見えないバカにした、ポリの頭の小突きを受けてよろめくと……ポリはEポートに繋がるエレベーターとは別方向に走っていってしまった。そっちには何があるのか?もしかして隠された超兵器を作っていたのか?と早歩きでついていけば。
「あ、あぁ!!これかぁ!これなら!!」
■要塞内部 Eポート
「司令!突入してくる連中の対処は出来ていますが、デリガットのペットの対処が難しく!」
「あんなものを飼っていたとは聞いてなかったが、それ以上だよ!そういうものを持ち出してくるなんてさ!」
現在要塞内部の、防衛はアメリアとエメラダで指揮を分担し対処にあたっているわけではあるが……一部に思い通りにならないケースが発生していた。内部の他方面を防衛することを任されたエメラダの指揮は十分機能しているのだが、ここに指揮人員が集まってると見えたかギルドの増員兵は大挙して押し寄せてくる。
その中には密輸部門であるデリガットが飼いならしていた巨大で狂暴な宇宙モンスターも含まれている。宇宙怪獣ほど巨大ではないが、それでも歩くだけで武装していない……装甲していない人間にとっては脅威にしかならないもの。ギルドの襲撃当初に出てきたものは大型火器で対処できていたが、それ以上のものとなってくると車両どころか大型の機動装甲歩兵のような装備が必要になってくるが、それを運搬するルートが確保できない。再生者はどうしたのか?我々を見捨てたのか?それとも通してしまったデリガットの軍勢に敗れたのか?そうした敗色の気配がついに司令クラスであるアメリアらにも染み出てきた時。
Eポートから中枢へ繋がるエレベーター騒がしく、やかましいサイレンを響かせてきた。何かが中枢からこちらへ渡ってくる音。巨大生物ですらそちらを注視せざる負えなくなるが、海兵隊の兵士達も同じ。
もしかしたら通してしまったデリガットら、ギルドの兵士が再びやってくるのかもしれない。再生者を捕まえてという敗北を近くに感じる緊張感。
だがエレベーターが運んできた中身が明らかになると全てが全て、ギルドの兵士も巨大生物も海賊軍も……その場にいる者は皆止まってしまった。いや、固まってしまったという方がふさわしいだろう。戦場に出てきた、あまりに場違いな存在と声色。
「おぉ前らぁの相手はこっちだァ!!!!!うおおおおお!!!」
巨大貨物運搬用の、これまた巨大なパワー・ローダーがエレベーターから出てきたのだ。裏返ってひっくり返った声を出す男……隣に大型の、軍用犬を連れて乗せた……何の武装もしていない、ジャンプスーツを半脱ぎで乗り込んだ男がマイクを通して叫び!ローダーの回転灯をワンワン鳴らして現れたのだ!
見ておいたほうがいいですよ、バッドランズは!




