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オリジン・シード  作者: 草間
宇宙監獄要塞~スペース・マリーン3378~
33/61

10話 宇宙要塞攻略戦

毎度思うんですけど、宇宙の要塞とかの方位指示でNSEWでわかるもんなんですかね?

「それでアメリア司令、私から1つ訪ねたいことがあるが」


「この場でお答えできることなら」


 二者の勢力が並び立つ。


 一方は旧来の、というよりも元々この宇宙要塞を拠点にしていたアメリアの海賊軍。装備も見たまんま海賊のような装飾と、外套。しかし明らかに軍事用に開発された厳つい鈍色の……黒鉄色の鎧を纏った兵士達が只ならぬ威圧感を放って整列していた。命令があればいつでも攻撃できる、敵対者へ向ける攻撃の気配。


 それらに臆することもなく対峙しているものは宇宙暗黒将軍……だけというわけではない。海賊軍の兵士達だ。彼女らのアーマーは皆真新しく悠然としているのだ。鈍色ではなく青白く輝く……まるで同配色であるザ・マスターの遺跡と連なるものである、と見た目で知らしめるような。鎧だけでも神聖な空気を醸し出しているような……異常な雰囲気の軍勢。


「招かざる客を入れたのはあなたの企てか?」


「何を?」



 そんな相対する彼女らの列から一歩、アメリアの側に出て宇宙暗黒将軍と名乗る男は問う内容はアメリアの想像するものではなかった。


 遺跡の正当な遺跡の所有権を持つ男からの話など限られてくる。


 ならずものへの通達は甘く見ても指揮権の委譲や隷属等、投降等……厳しくいえば自分で海賊行為の責任を取れとか。この場所の放棄してどことなりと消えるかこの場で消えるか。そうした裁きか、或いは忠誠か敵対かのような話ではなかった。同じことを予想してたか、他の兵士も視線は相対者から離すことはないが動揺が走り空気が少し緩む声が聞こえる。


「何が!」


「よし、確認は取れたな。エメラダ副司令」


「はい将軍閣下、ご協力いただき感謝します」


 宇宙暗黒将軍……いや再生者は自分のことをこの監獄要塞に対して招かざる客と言いたいのか、とアメリアの脳裏に過る。だが態々ここで問うことは別。何を聞きたいかが、瞬時に浮かぶのと彼女が返答するのは同じだった。この男に頭を垂れる娘の言葉を聞いた時、それと同時に大きな衝撃が宇宙要塞を襲う。


「攻撃箇所の報告を!」


「NSEWうち3方からです!極点の防御は固めていましたから人員は無事です、しかしこの順番からするとWポートのここへ来るのも」


「総員防御姿勢!アーマー着用!またはスーツを着用しろ!」


 轟音に次ぐ轟音。宇宙暗黒将軍の補佐を務めていた海兵隊員の報告では、ポートに艦船を無理やり突入。4方にあるポートへ順次に行っていき出入口を塞ぐようにねじ込んだのだ。それはここ、アメリア達を迎え入れたポートも例外ではなく、最後の突入場所に選ばれていた。


 隔壁を突き破り突入してきた艦船の艦首が彼女らの目の前にまで迫る!


 本来艦船の対空機銃であるはずの銃口が、対人用としてそこかしこに向けられ発砲されていくのだ!それに加えて海賊軍らしいシルエットのために装飾として付けられていた治安の悪いツノやらトゲが、不意打ち用の暗器の如く射出されたり衝撃でふっとんで周辺に飛び散り物理的な脅威をバラまいていた!


 しこたまそれらの暴力がふりまかれた後、艦首が開き……中から装甲を纏った戦士たちが出てくる。どれも治安の悪い鎧ではあるが、顔の形もまばら。地球人類とはかけ離れて毛も生えて伸ばしっぱなしの飢えた野犬の如きならずもの。


 海賊ギルドの兵士達だ!


「艦隊に艦船を紛れ込ませていたか!それにしてもどこで船を……」


「以前から用意していたと見る他ありませんね。この要塞攻略のため、機会を窺っていたと」


「アメリア総司令、心当たりは」


 海賊軍、海兵隊もやられるばかりではない。すぐに立て直しを図り、障害物を盾に応戦を始める。無論それは遺跡の制御権利がある再生者が許可を出すように一部構造体を変化させたトランスフォーメーションの応用によってだ。負傷者の移送、武器の出現。対応としては悪くない手を打っているが後手にに回ってしまっている。しかも相手はまた次の艦船をも突入させてくる!


「ギルドの連中でここまでやるのは……バラン・アランか!」


「その通り、だが俺だけではないぜアメリア!この遺跡はそれだけ価値があるってことだ!隙を見せたお前が悪い!」


 羽根の如き装甲と四肢を揺らしながら、第二陣の艦艇から降りてきたのはアメリアが要塞に向かう最中で出会った海賊ギルドの戦士団の長。バラン・アラン。細長い肉食の昆虫のような顔……顎と鎧を鳴らして笑う異星人の戦士長はディスク状の機材をアメリアらに向けて放り投げた。シールドを身構える者もいたが、それは手りゅう弾等の爆発物だとしても効果範囲を大きく外れた距離に落ちる。


「ファーファッファ。海賊軍、いや地球人の海兵隊ども。お前たちはやりすぎたのだ。背信者を呼び込み禁忌を犯したのならばこの宇宙で誰もお前たちを庇うものはいない」


「もとより遺跡を占有しているのが気に入らなかったのだ。特に再生者が出現した今それらの確保は急を要する。先の戦いもありようやく意見が纏まった、とデリガット様は申している」


「立派な動機が出来たのだよ。異端者の掃除というな……くくく」


「ギルド幹部のうちここまで徒党を組むとは!厄介な……」


 三者三様、しかしどれも適当な理由をつけてはいるがどれも同じ。攻め込むタイミングは今だが以前からザ・マスターの遺跡を利用している要塞が欲しかったのだと。傭兵部門、軍需製造部門、密輸部門。その三者の中には当然のように先に巨大遺跡構造体で遭遇したデリガット・バフムとその側仕えアンドロイドも存在していた!


「司令、要塞外周に艦艇が続々と出現しています。こちらを包囲するつもりでしょうが数が多く……」


「迎撃機構の稼働はどうした!ここまでの包囲を許すようなことはないはずだが」


「偽装艦艇の侵入と同時に一部が攻撃を受けています。それを見越してか一部のものが迎撃機構に艦艇を衝突させています!」


「ここまで数を揃えているとは、ギルドめ……!ここで全てを手に入れるつもりか!」


「で、どうする宇宙暗黒将軍様は!全員排除するにしても何か方法はあるのか?再生者でしかできない方策があるなら……この状況の打破の可能性が高ければ聞くが!」


「特別なことはなにもないが」

 

 なに、とアメリアが返答する前に宇宙暗黒将軍、ヴォイドは側にいる兵士らとエメラダ副司令に向き直り。手を振り、招き、自分を注目するように指示す。


「外部の迎撃機構は使えないが内部はそうではない。内部の防衛と統制をアメリア総司令に任せて我々は遊撃にでよう」


「海兵隊のやり方が身に付き始めてきたね、海軍連中に妬かれないといいけど」


「ジャネット、一部の人間を纏めてくれ。こちらからポートを順に奪還していく、遊撃に出よう。外部は中枢からの外殻制御で排除を試みる。隔壁を飛ばし直接ぶつけてやれば鬼でも大人しくなる」


「アイサー将軍閣下。全員装備点検、輸送機はだめだ、落とされる。車両でいくよ!」


 ヴォイド、再生者はポリの頭を撫でてから同伴を頼みアメリアとエメラダに向き直る。彼女らを指さし命令を……という仕草であったが、それをやめ。己に指を立ててからまた伝えるような身振りで頼む。


「アメリア司令、現在遺跡と要塞が危機的状況に陥っている。原因は私も関わっていることだ。私が状況を前進させる、兵隊をお借りするがよろしいか」


「こちらにあなたへの指揮権はありません、同じくあなたもこちらへの指揮権はないので援護は出来ませんが」


「問題ない、みんないる。エメラダ副司令がお貸ししてくれた分で十分対応できます、それではこの場を頼みます」


 暗黒宇宙将軍は障害物から出ると副腕でソリッドな盾を取り、構えてジャネットらと共に移動を始める。その最中にも隊列を狙うエネルギー兵器の機銃掃射を、手に持つショック・セイバーで撃ち返し迎撃しながら車両に向かって走り乗り込んでいった。


「アメリア司令、私は……」


「いい、いい。話さないでいい。エメラダ、防御陣形の構築と迎撃行動。ネットワークの再生と通達を。将軍閣下が打ってでる間に立てなおすよ」


 アメリアは長く重い溜息の後にヘヴィマシンガンを構えて迎撃行動として動き始めた。もはや何をどうとも止められないし、事態が流動的。やること自体は変わらないなら誰がやるかになる。少なくとも娘であり副司令であるエメラダにはそれが出来なかった。


 だが出来るものに兵士を預けてやらせるのだから、それはそれで重要なことではないだろうか。選べなかったことは厳しくもいいたくなるが。


「敵は見つけ次第排除、捕虜は取るな!必要がない!」


  異常な事態が異常なまま進展していく。もう戻ることもないのであればこの後はどう身を置くかではあるが。それを考える余裕も材料もまだないアメリアは、この先が閉ざされたものか。あの男が開くものかをも……まだ信じるにたるものも、欠片もないはずではあるのだが。少ない時間に少なくとも垣間見えた兵士達へ思う性分とリーダーシップには期待したいところだった。


 ただ軍人、兵士としての才能のありなしは判断しかねるもので。勢いだけで無謀な突撃を行うのではないかという懸念は残っていたが……今は考えても仕方がないと引き金を引き、銃声を敵へ向けた。その不安や心配はその通りで、アメリアが再生者と呼ばれる男が戦いの才なくその無謀な突撃を先陣切って繰り返していくような戦い方をしていたと知るのは……もう少し後のことであったもので、今余計に考えないのは正解であった。

 

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