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オリジン・シード  作者: 草間
宇宙監獄要塞~スペース・マリーン3378~
32/53

9話 海賊軍総司令アメリア

宇宙要塞の名前がオモチャっぽいのも全てセンスがないからです

■ アメリア海賊軍艦隊 監獄要塞到着 1日前


「これは一体どういうことか、説明はできるのだろうな海賊軍の総司令殿」


 その言葉は詰問の声ではない。


「さてな。そも説明する必要性などあるか?」


「あるさ。背信者を招き入れ、将軍に取り立てるとは」


 その声はアメリア、彼女と同じ種族の人間ではない。


 それは地球人類か、所謂ヒューマノイドかという話ではない。彼女と並ぶように身の丈高くはあるが、体は細いシルエット。しかしところどころから揺らぐ炎のように羽根の如き装甲を流す異星人。ごつく着ぶくれした鈍色に金の彫刻が刻まれたパワー・アーマー、獣皮のマントを流すアメリアとは対照的だ。


 海賊ギルド、通称ギルドの戦士団の1つを率いる団長。


 彼の言葉は明らかに愉快そうな、小馬鹿にした態度を隠そうともしていない。この会合が偶然アメリアの艦隊と接近できたから行っているもので、計画的なものではないこともその舐め腐った態度の源となっていた。上手い具合に忠告する体で、()()()()()()()()()()を笑いに来たのだ。


 海賊軍の中でも一等治安の悪い外見をした戦艦の艦橋上に立つアメリアは、その戯れのためだけに自らを呼び止めた連中を今すぐにでも叩き潰してやりたかったがそうもできない歯がゆさとままならなさにずっと苛立っていた。


 この宇宙ので孤独に戦い続けることはできない。英雄的なふるまいが求められる海賊軍の棟梁(おかしら)であっても、実態はならずもの同士の交渉を担当しなければならないのだ。ある程度の不干渉と寛容がなければ生きてはいけない。アウトローとして生きていくことは難しく、海賊軍もまた宇宙の犯罪シンジケートであるギルドとは緩やかな関係があった。


「背信者を囲うことは結構じゃないか。ギルドでもそういう連中はいる。だがそいつに……ククッ!任せるとは。ずいぶん好き放題させているようじゃないか」


「どこまでが噂なのか、真実なのか。貴様も一応は団長だろう。くだらない話のため呼び止めたわけではあるまい」


「あぁそうだ。なにせ()()()()()()()()()()()()()など聞いたことがない。是非お目にかかりたいと思ってな」


「私も見たことはないし、知らないな」


「ほぉーそれはそれは。では見つけたのならギルドにも知らせてもらいたいものだ。背信者ではなく()()()()()()かもしれん」


 言うだけ言って艦から離れていく戦士団長に一瞥もくれず、アメリアは艦橋へ戻りながらも考えていた。


 背信者は宇宙超常存在(ザ・マスター)を信奉しつつも、教導院と相容れず背を向けて野にいる信奉者連中の総称だ。宗派や解釈、歴史様々な違いや隔たりもあり大小もあるが概ね殆どは活動は先細りしている。銀河連邦全体を見ても主流派ではない連中は排斥と無視の末に干からびていく。


 しかしその連中を、マスターのテック解析目当てに囲う非正規の連中がいる。ギルドもまたそのうちの1つでしかはないがそれもある程度の小さい規模の集団にしかならない。


 それが今、海賊軍の旗と大手を振るって暴れまわっている。歴史上類に見ない勢いでギルドや大小の悪徳限らず狂犬のように暴れまわっているのだ。それが星のように瞬く一瞬の光であっても無視できない勢いで突き進んでいる。


 教導院の騎士でもやらなそうな猛攻、それが出来る背信者ともなればザ・マスターの遺跡を完全に手にしたか……それに近いところまで手に入れることのできたもの。触れてはいけないものに触れている可能性がある。それは……異端者だ。異端者まで行ってしまえば、この銀河のどこにも受け入れるものもいない本当の外道と呼べるだろう。


 海賊軍が自分の知らない間に、そんなものに役職を与えている異常事態。


 アメリアは自分の娘エメラダを副司令に据えるほどに実務と実戦共に信頼はしている。そのため留守を任せていたのだが、その娘がいたというのに歴史上類に見ない異常事態が発生していることがあまりに穏やかではない。今は再生者という代物を掌中に収めている自治独立のまたとない機会だというのに、だ。異端者が掌握しているのならば……再生者の身柄の安全も危うい。海賊軍の危機どころか、銀河の危機に変わり……全ての勢力からの武力介入を受けてもおかしくない。


 この話を聞いてすぐにでもと監獄要塞に戻るつもりではあったのだが、あれに邪魔をされてしまったがために遅れてしまったのが余計に苛立ちと焦りを燻ぶらせる。


「全艦最大船速!要塞へ戻る!」


「アイサー!」



 そしてようやく戻ったアメリアを待っていたのは、エメラダと彼女の隣にいる男の姿。自らのパワー・アーマーを側仕えのように随伴させて出迎えた男だった。


■監獄要塞 艦隊用湾港ポート・エリア


「説明を、エメラダ副司令」


「……見ての通りです。現在この宇宙要塞は大半の機能を彼に掌握されています」


「彼?彼とは?そいつが宇宙暗黒将軍だと?」


 一番あり得ない言葉が出た。海兵隊時代の経歴も真っ当、業務も優秀であり司令として統制業務を十分に遂行できる能力を持つエメラダ。その彼女が基地機能がほぼ掌握されているというのだ。いや実態としては既に全てを占拠されていると暗に伝えているのかもしれない。


 エメラダが彼と呼ぶ男。どうみても地球人類種の男ではあるが、様子があまりにおかしい。我々の知っている地球人の男にしては覇気がありすぎるし、何よりこいつの後ろにいる兵士達だ。どれも海兵隊のパワー・アーマーに近いものだが、新品同然に輝いているではないか。その上このポートでさえ真新しく生まれ変わっている。ここで新品でないものを探すのが難しいほどに。


 これではまるで正規軍の宇宙要塞と何も変わりはしない。それはこの男が何か不可思議な力でやっているのだろう、という嫌な予感の数々を結びつけるのに十分な気配であった。こいつがそもそも何かおかしいのだ。


 ではこいつがセイバー4本を振り回す背信者なのか、いやここまで基地を掌握できるというのならば……不可思議な、なにがしかの力でアクセス権をもぎ取った異端者という狂人かもしれない。


 この男を今すぐにでも排除しなければならない、という直感がアメリアに武力行使の構えを取らせようとした。


 しかし一方でもう1つ直感が、いや……記憶が……情報がその構えを押しとどめていた。


 この顔、は見たことがある。いや……確か要塞を出る前に孫娘であり現海兵隊提督のフランソワーズからの連絡で届いていたはずだ。この男の顔と素性が。


「ようこそアメリア・バロウズ、この宇宙要塞フォートレス・ギャラクタスへ。私が現在ここの総司令官であり宇宙暗黒将軍をやっている……再生者(リ・マスター)だ」


 あぶれ者の背信者でも狂人の異端者でもない。ザ・マスターの正当な後継者であるリ・マスター。かつて青い地球が宇宙に輝いていた時代の化石でもある人間。蘇った男。その地球人の男がこの顔だったはずだ。


 異常者を、異常事態の根源を排除すればいい。


 そのような単純な事態ではないことを、帰還したアメリア達は知ることになった。

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