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オリジン・シード  作者: 草間
宇宙監獄要塞~スペース・マリーン3378~
26/54

3話 ブービー・トラップ

フフッ昔あったやつだ。気になるものを拾ったらドカンだよ


ネロからです。

■宇宙監獄要塞 外殻部 旧開発区画 放棄エリア ネロ・ウィンタース


「あはははは!見なさいよクラウディア、この慌てっぷり!下から上まで掃除!まるで新兵初日の点検前じゃないひひひひひひ!ひーっ!」


「シットコム見てるんじゃないんですからプリム、そちらの配線図を……執政官補は覗き見に夢中なので」


「海賊ギルドと並ぶ悪名高い海兵隊、帝国の腫物呼ばわりの海賊軍が男1人放り込まれたらこれよこれ、おかしいったらありゃしないじゃない!」


 これが笑うなという方が無理だ。かつて海兵隊では教育を受けた士官であり、海賊軍となってからもその階級を保持。その階級や戦歴に違わない戦闘力をも振り回し宇宙の荒くれ者をやっている連中が、今大慌てて大掃除を始めている姿が……いくつものモニターに映し出されているのだ。こんな滑稽なことがあるだろうか?


 昔帝国のメディア・グループで作られた地球時代のティーン生活を再現したというコンセプトのアホらしいハイスクール・ラブ・ドラマを思い出す慌ただしさだ。子供か?シチュエーション・コメディ、シットコムそのままのようだ。


「21世紀で親がいない間に異性を家に連れ込むため掃除する、外から見るとこんな感じなのねぇ……ひひひひ」


「覗き見しているということを忘れないでください、下品ですよ」


「人聞きが悪いわよクラウディア。これは監視、プリムはどう?接続終わった」


「ネロが覗きに夢中な間にクラウディアと終わらせました。今はモニター配列の選別中ですが?」


 我々3名を除いて全くの人がいないものだから、声を上げて笑ってても問題ないでしょうに。


 ここは宇宙監獄の旧開発区、あの男が到着したところから衛星1つ分離れた区画で放棄されたエリア。人が来るはずもないし、警戒網はプリムがほぼ掌握したようなものだ。そんな安全なエリアで死ぬまでに見ることもないリアル・シットコムを見せられれば汚い声も出るというものだ。執政官補だってこんなものを見れば笑うわ。


「いやーここまでうまくいくとは思わなかったわ。最高、クラウディアは何か飲まない?もう食料開けていいでしょ」


「まったく執政官補は……まず任務でしょう、愉快な状況とはいえ彼は捕まっているんですよ?」


「悪かったわよ。それじゃサブ・コントロール・ルームに設営も終わったし今一度確認しましょ」


 今愉快と言ったわね?アンタもしっかり見てるじゃない


 さて実はあの男……再生者のナンブには言ってないことが多々ある。これは横やりでもあるが……連邦議会の議員や教導院の導師らいはナンブに()()()()()()()()アイツ自身に状況の判断材料を集めさせたいのだ。色々情報をアイツ自身が得た結果何を選ぶのか、それは救世主に相応しい行いなのか。


 これは議会や教導院だけに留まらず、地球帝国側も興味があることだろうし、まぁ……私自身も興味があったことだ。宇宙を再生するという偉業を行えるかどうかという()()()()なのだ。


 銀河や地球帝国、そして我々を救うに値する人間かどうか。言われたまま聞いたままを鵜呑みにして判断するような人間では今後の対応もそう決めていかなければならない……と坊主と議員のお歴々は仰せだが。


 そのため地球帝国海兵隊が抱えている……地球人類型兵士の問題から派生した、海賊軍の問題について実地で見て検討をさせたほうがいいと私が推した。


 海兵隊という戦士が抱える問題、なぜそうなったかを知らなければただの不穏分子狩りにしかならない。そんなスケールの話であれば大なり小なりの()()()使()()()()()()()()()誰にだって出来るものだ。現にそろそろ本腰を入れて粛清のためアルテミス艦隊が動くのではないか……という話もあるぐらい。


 これについてはアンジェラも同意し(意外にも即答だったわ)一人送りこむことについては黙認された。教導院や議員も色々口では言っているが実態としてはこの男を恐れ、様子を見ている。だからこそ試しているのだ。バカらしい、利用するなら利用する腹を決めればいいのに。私は決めたが?


 奇跡を起こす救世主か、ただの凡人か……そういう単純な話にできる。私から見てアイツは救世主には見えない。凡人よ凡人、凡人以下でしょうに。そうでないことを願ってるのよ皆、くだらない。


 まぁここまで送り込まれたらどうなってもどういう形でも解決となる。私からしたらもう楽勝、イージーゲームだ。あとはあの男が遺跡中枢に触れれば終わりの終わり、アイツもそのあたりはわかっているだろうから今回の目標にたどり着くのもいつやるか……というタイミングの問題でしかないでしょう。


 冷静に考えれば、海賊軍など逮捕するまでもない即時排除と撃滅に解体するべきなのだ。この遺跡の防衛機構が働かなければ、帝国海軍の戦力で楽々殲滅できる。


「我々3名も時間をずらして潜入している話はしなかったのは……騙す形になるので心苦しいところでしたよ」


「ソニアはまーじで最後までついていこうとしてたから苦労したわ。連れて行ったらどうなるか恒星の誕生を見るより明らかよ。プリムだってわかってるでしょ」


「エレベーターの時点で血が流れるのは確実ですから、留守番させて正解でした」


 そして言っていないことその2がこれ。


 我々も潜入に成功しているのだ。それもそのはずあぁした()()()()()()()()()()()()()()()()宇宙超常存在(ザ・マスター)由来。それを感じ取れるのは今じゃ再生者ただ1人……というわけではなく、管理端末であるプリムも同じ。


 というわけで帝国海軍の廃棄宇宙艦からアイツが飛んでった後に我々も出撃。プリムの牽引で推進器のいらない宇宙遊泳はまぁ~楽をさせてもらった。アイツが言っていたような感覚はわからなかったが、とかく宇宙に放り出されても不安のない状況というのは滅多に体験できるものではない。


「中心部にいるのはアイツだけど、アイツ一人でなんとかできるわけではないというのはみんな承知の通り。そのため我々が裏で進めていくってわけ。でももうサブ・コントロール・ルームを抑えてしまったわけだから、後はどのタイミングでアイツを外郭の宇宙監獄から中心部に送り込むかよね~」


「そのタイミングを計るのが我々であり、その時が来るまでは時間を持て余すことは確かなのですけど……執政官補の姿勢はいただけません」


「そうはいってもねぇ……暇だしやることないでしょ」


 荷物に入れておいたファイバースティック(スイートなポテト味)を齧りながら複数のモニターを眺めてる姿勢が悪いと?まぁ悪いかもしれないけど暇なんだからしょうがない。


 宇宙監獄の構造はザ・マスターの遺跡を中心に、殻のように建造された拡張増築建設物だ。古いものとはいえその外郭の管制の一部を占拠しただけ……なのだが、こちらにはそこからどうこうできるプリム。それにアイツもいる。


 この監獄がザ・マスターが扱い纏うエネルギーを利用する構造で建造されたものである限り、権限レベルの最上位はもう決まっているのだ。初期のほうで建造には教導院がテック解析のため関わっていたのもある。たどり着いてしまえばこちらが不利な要素など何もないのだ。鍵はこちらにあるのがもう無敵。


「だからアイツが海賊らとどう過ごすかをここで見て、アイツの資質を見極めて今後の方針を……わはははは!みなさいクラウディア!アイツがドッグフード食うところみてドン引きしてるわよ!」


「毎食作ってた生活班長のトモエさんが見たら卒倒しそうですね……」


「全くです。しかしあれがこの環境で最良なのは事実」


 げらげら笑ってしまうが仕方がない。アイツは今の我々の食料事情を考えれば同じ食事をとることが出来ない。消化できないし成分で中毒を起こす可能性がある。そのため管理提供できない場所では調整された糧食か……あぁした動物用ではあるが人間でも食べれるナチュラル・フードに近い食糧を取るしかない。


 それでも我々からしたらドッグフードは本当の本当に飢えた時や緊急時の食料であり、一応海賊で食えている兵隊が食うものではない。それをアイツはなんでか喜んで食っている。なんでかはわからないが、21世紀ではドッグフードがご馳走の類であったかは聞いたことがないのであの男が変なだけなのだろう。目覚めた時はおとなしかったくせに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。21世紀はこんな人間ばかりなのだろうか?獣より扱いにくいのは資質云々よりもっと深刻な問題。


 とにかくそうした()()により連中の行動予定は引っ掻き回されている。


 そう、見事に()()()()()()()()として機能してくれた。


 ザ・マスターの後継者にして銀河の救世主とされている男。アイツが単身海賊軍の拠点である宇宙監獄に向かうことは極秘。あの会議室にいる人間と数名しか知らない作戦内容である。いない間は政治的判断の猶予期間としてスケジュールが押さえられているもので、いくらでも誤魔化せる。居場所など誰も気にならないはずだ。


 それが事前に察知されていたのは()()()()()()()()に他ならない。なんてのはもう想定済み。というよりあの場に内通者がいるのがわかっていたからやったことでもある。ただの答え合わせをしたかっただけ。


 現役海兵隊と海賊軍が繋がっているなんて特に考える必要もない当たり前だろうというもの。それでもお咎めがなかったのは予備戦力として数えられているところもあったり、内部でも同情的な感情があったからだ。ただエメラダの母であるアメリアが頭になってからはやり方が苛烈になってきているもので、粛清のため秒読みとなっていた状況なのだ。


 大方エメラダの娘であり現役司令のフランソワーズあたりが流したのだろう。そうした後がない腐り果てかけている状態であるから、どうにかせねばと()()()()に引っ掛かったのだろうと思わずにはいられない。笑いもでる、そこまでになるならある程度のところでやめておけばよかったのだ。


 どうにもならないからこそ、この状況を好転させるため……アメリアやエメラダの立場を保護されたまま解散させるか逃亡等待遇を変えるため()()()()()()()()()()()()()(すが)ったのだろう。


 だがタイミングが悪い。海兵隊の将軍としても海賊軍としても才覚が異常にあったアメリアは今は不在。留守を任されているエメラダは一応副司令の座にいるものの、アメリアほどの才覚はないと専らの噂であったが……


「噂レベルでも情報は正しかった、ってところね。経歴みてもパッとするような人物には見えなかったし」


「母がアメリア将軍だったのが不幸だったのでしょう。ずっと将官クラスと協議していますが、対応をこれと決めかねていますね」


 アイツに対する判断を誤ったとは言わない。


 しかし受け入れてからの初動が緩やかすぎる。後手後手に回っているのだ。アメリアならこうと決めて直ちに動くだろう。あの傑物ならアイツを引っ張って遺跡中央部に連れていき……権限を引き出させ()()()()()()()を企んだかもしれない。常に迅速に行動し、帝国への忠誠を示してきた人物だ。なればこそ銀河の救世主と目される人間であっても引かずに己を通したかもしれない。


 エメラダは違った。扱いかねた結果、緩やかな融和の路線を取ろうとしているのだ。彼女に対するプロファイリングをリアルタイムで更新しているが……アメリアが利用するように働きかけるのに対し、政治的な要人として扱おうとしているのだ。政治工作の方に舵を切っていると見ていい。実際そうした根回しや他方面へのコンタクトに関しては評価があった記録は残っている。


 実際経歴を見ても14歳から20年近い()()()()()()をほぼ円満に満了している。先代の総司令となった後もだ。そこから期間も開かずに海賊軍入り。アメリアの後継者として海賊軍の副司令の座に収まっているわけではあるが……海賊向きな資質ではないのだろう。


 シットコムとしてみれば退屈な場面だ。動きも少なく、ずっと会議だけしている。場面をアイツとその周囲にしたほうが騒がしい分まだ見れる。


「うわ見なさいクラウディア、海兵隊の連中すごいわよ。自室以外でも武器庫まで掃除を始めたじゃない。ハンガーとか戦時みたいに動き回ってるお笑いよ」


「笑えませんよ……それにしてもここまでうまくいくと考えていたんですか?」


「いやーここまでうまくいくとは思わなかったわ。おかげでやりやすいけど」


 海兵隊というのは人類戦力の中でも中核を担う海軍とは違う。まぁ似たり寄ったりな一部はあるが。


 とかく植民地惑星の管理……治安維持で現地の人間を相手にしたり、原生生物の駆除や調査に真っ先に駆り出されるイヤな役割を()()()()()()()()だ。その待遇も悪ければ恩給も低い。年々生体サイボーグ兵の割合も増えている。現役期間が海軍と同じ程度なのがより悪い。安月給でこき使われて、終わったら維持費用対策でポイだ。多くは傭兵になるか海賊になるかではあるが……アメリアの海賊軍が出来てからは殆ど海賊になる。


 ある世代までは散発的な発生で保険費用もそう高額にはならなかったもので野放しだったが、アメリアのように地球帝国の中でも名家の連中が共に過ごすうちに情が湧き……それでか彼女は引退後に音頭を取り始めたのだ。


 それがもう伝統と化してしまい、今じゃ公然と海兵隊のセカンドキャリアとなり問題化していた。海賊ギルドほど悪辣ではないが、民間企業と組んで賄賂をせびっていたり手薄な植民惑星を襲っては密輸事業に手をまわしている。レアメタルや酒精鉱物を漁っては捌いているならずもの。


 そんなナラズモノ達が今、お散歩の時間となって連れられたアイツを前にして敬礼している。何年振りに着用するのかはわからないが、まるで卸したてのようにピシっと張った制服(サービス・ドレス)を身に着けてだ。アイツはよくわかっていないのか、当然のように敬礼を返している。アイツが見えなくなると兵隊らは笑顔で何やら話しているのだからコメディ以外なんだというのだ。


「まぁ連中からしたらこんな扱いされたらねぇ」


「アメリア副司令の判断は正解かもしれませんよ、()()()()()()()の判断はですが」


 慌ただしくも緩い初動に比べて受け入れると決めた後はうまく機能している。


 これはアイツが望んだことでもあり、こちら(私以外)が求めたことでもあるが……彼女らを知ろうとする姿勢が都合がよかったのかもしれない。とかく()()()()()()()()()()()()()()()()()が下まで降りてきて視察のように身近に来ているのだから、一種の娯楽的な刺激となっているように思える。モニターに映る筋骨持っている海兵隊の女たちが20年ぐらい若返っても見えるのだからおもしろい。士官学校に入る前の教導生活ぐらい若返っていないか?ドラマや報道でしかで見ない異性の一挙一動に心トキメかせている時代?キッツ……


「まぁあの調子で声を出すヤツが閉じ込めて身近においたら()()()()()()()()()()から野放しにしておくにはちょうどいい期間よ、それでも海兵隊はいつまでもつかしらね」


「さぁ……そうすぐ飽きられるとは思いませんが」


「はん、どうだか。いつかは終わる夢よ夢」


 モニターに映るアイツはまぁなんか目につく相手に声をかけ、質問してずーっと会話を求めている。音声を拾えているが聞くに堪えない幼稚なものばかり。初等の教育でそのぐらい教えられるだろうというものばかりを聞いては答えたらまた聞いてを繰り返している。よく飽きないもんだ、特に海兵隊連中はあのうるささで。喋ってない時間のほうが短いんじゃないかしらね。バカみたい。そりゃ海兵隊の連中は異性と一生にあるかどうかもわからない会話時間を持てればあぁも()()()()のかもしれないが。


「うるさいからしばらく監視はいいわ。何か変わったことがあったら起こして、交代しましょ。できればアイツが寝てるときに」


「はいはい、わかりました。執政官補は彼のお声がお嫌いなようで」


 子供の繰り返し聞くような幼稚な言葉と話、耳障りったらありゃしないじゃない。本当にあんなんで海兵隊……海賊軍をちゃんと()()()()()()()のかしらね。先が思いやられるわ。


「知性よ知性、品格と知性が足りないわ。宇宙のどこに|犬のエサ喜んで食う救世主がいるってのよ」


「ここにいますよネロ。ナンブ様こそ救世主なのです」


アホらし。

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