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オリジン・シード  作者: 草間
宇宙監獄要塞~スペース・マリーン3378~
25/55

2話 デカい監獄は巨人の国

女性だらけの宇宙海兵隊ですが 女オークでは ないです

■ 宇宙監獄要塞 営倉

「うおおお~~~~~~~~!出せぇ~~~~~~~~!」


「黙れ!大人しくしろ!」


「すいませんつい……やってみたかったもので」


「急に大人しくなるな!心の病気か!?」


 というわけで到着早々に宇宙海賊軍に捕まった私は牢屋にブチこまれてしまったのだった。この場所が全体のどこかはわからないが、元々監獄として作られただけはある。金属格子と電子ロック、洗面台に簡易ベッド。あまりにそれらしすぎてテンションが異様に上がる!あの()()()()()()()()()()()()()()()になってたんだ。観光気分全開では行くなと言われたが、そんな場所につけば気分が滅茶苦茶になる!


 そんなものでブチこまれてすぐ鉄格子を掴み、南米あたりの荒っぽいマフィアの下っ端みたいなチンピラしぐさで騒いだら怒られてしまった。


「牢屋に入れられた経験が新鮮で……一度行った観光地の監獄は入れなかったし、狭かったんですよあそこ」


「そいつは行儀がいい人生だ。さぞお気楽能天気に生きてきたんだろう。そんなんだから宇宙最悪の監獄にノコノコ観光気分で入ってくる。ここは元々一度出たら二度と出れない最悪の死刑囚のための監獄、お前も生きてここを出られるなど思わないことだな」


「くぅ~これこれ!監獄と言ったらこれだよ!今のセリフ考えてたヤツで?やっぱりマニュアル作ってらっしゃる?」


「お前は何をしにきたんだ!遊びに来たのか!?」


 気分がいつも以上に高揚してしまうのも無理がないはずだ。かつて北海道の網走刑務所で観光した時にはできなかった体験を今している。それに日本国以外で有名な監獄でもここまでデジタルで未来な収監を体験したことがない。トイレがないのはトレイに行く必要がないスペース囚人向けの独房なのかもしれない。


「ここトイレはないんです?」


「そこは営倉で兵隊の反省用の独房さ。出な再生者様、面談の準備が出来たとさ」


「軍曹!ようやくですか!本当になんなんですかこの人は、口閉じもしないでずっと喋って喉が渇いたら洗面台から直接飲んでいるのはどこの教育を受けていたのか!こいつは本当に地球人の男ですか?!」


「落ち着け、いいから……ロックを開けて連行している間は大人しくするさ」


 なるほど営倉。だから収監する相手も看守もデカい人間を想定してか、私のように病人のような人間なら頑張れば抜け出せそうな格子の隙間が空いている。抜け出して何をというのもないが。体を横にしたら抜けらないかな?と押し込んだら怒られて押し戻されたので、やっぱり出来るかもしれない。


 さておいて看守から軍曹と呼ばれた彼女……いや彼女らを見るともうデカい。


 アンジェラやネロ達よりもちょっと大きい具合であろうが……服装の上からでも筋肉質な体格がわかる。アンジェラらが鍛えぬいて絞った無駄のない洗練された姿とするなら、彼女ら海賊……海兵隊は鍛えに鍛えて盛り上げたパワーあふれるシルエット。


 彼女らは私を拘束した時のように鉄色の鎧を装着していないが、それでも大きく感じるオーラを放っているのは歴戦の気配から漂うもの……気のせいではないだろう。


 軍曹と呼ばれた女性に指示されて看守が手を電子ロックに当てると、生体か電子だかわからないが認証が出来たのだろう。するりと音もなく格子が上下に引っ込んで解放された。解放されたといっても、そのまま私は両脇を彼女らに掴まれて引きずり出されていくわけだが……そのまま引きずられていく。


 こんなことはもういつもの通りだよ、という具合でほとんど重さを感じないような素振りなのだ。私の手足を拘束しているわけではないし、歩くぐらいはできるので歩かせてほしかったのだが訴えたところ無言のままスルーされてしまった……寂しい。


■中央司令部 司令室


「再生者様をお連れしました」


「ご苦労、そのまま控えるように」


 ここが宇宙海賊のボスのお部屋だって?ずいぶん小綺麗じゃねぇか!


 なんて治安の悪いセリフが出るはずもない。出したらまた怒られそうだし。というか本当に綺麗で整えられている。宇宙海賊要素がほぼなく、むしろ海兵隊の名前と雰囲気が続いているような印象を与えられた。兵隊達のボスの司令部そのもの、基地司令と言った方がいい。整理された大きなデスクにホログラフィックな地図、海兵隊のシンボルマークが掲げられた旗。


 海賊の根城というよりも、海兵隊の基地そのものと見たほうがよいのかもしれない。これは勢力の、情報を事前に仕入れないようにされたのもあるが……かなりイメージと違っていた。印象がほぼまっさらにして彼女らを見ないといけないがために中々のショックだ。あれ、これは私のイメージする宇宙海賊っぽくないとなると……海賊の根城見学という話はウソだったか?


「お初にお目にかかる銀河連邦、そして地球人類の希望である再生者殿。私はエメラダ・バロウズ。副司令をしている。このような初対面になり大変残念だが、さっそく話を伺いたい。ここへはどのような目的でいらっしゃったのかな?」


 そんな自分のイメージを……頭を切り替えないといけない、とゆっくり考えているとその間にも部屋の中に緊張感がずっしりみっしり満ちていく圧。前日のアルコールの如く残っていた観光気分が一気に失せる気持ちだ。酒は飲まないが……


 そう、これが荒くれ者どもならずもの連中がたむろする酒場であったら違ったかもしれない。貧弱マンが何しにきやがったとでも言われればタフガイ気取りでナメたことを言えるかもしれないが……いや言えないか。とにかく今直面している現実は違う。


 目の前のエメラダ副司令を筆頭に隣に控える副官らしき女性ですら……サービス・ドレスと呼ばれる軍隊の礼服を着用しているのだ。私を連れてきた看守と軍曹は戦闘用の待機服ではあるが襟袖を正している。他にもこの場所に詰めている数人もまた同様に軍人であることを示す格好。しかもこの要塞基地の地位は上から数えた方が早いようなオーラを出している。尋問や詰問、迷子へのアテンダントどころか()()()()()()()()()()()という雰囲気すぎる。病気の脱走兵みたいな自分だけ浮いている!


「ご紹介ありがとうございますバロウズ副司令。再生者と呼ばれる南部健吾です。まずどこまでご存じかは知りませんが……」


 圧倒されているのもあるが、聞かれたら答えないわけにもいかない。いくつか思い出しながら彼女らに嘘偽りなく説明するほうがいいと判断し順序立てて説明していく。与えられた話のこと、そして自分の所感をだ。というかここで嘘をつけるような胆力が私にはない。


 与えられた話というのは当然海兵隊上がりの海賊軍が一体何者かの調査。そして帝国からは無力化の依頼が来ていること。単身ここに入り込み、内部から防衛機構を解除すれば帝国海軍の艦隊が派遣されて逮捕にくること。その依頼が帝国側からあったような話をした。


 それに加えて首のあたりで封じている生体アクセスだかの制御のことだ。ここの遺跡には生体関係の技術もあるため、ここで調整できれば宇宙怪獣を呼び寄せることもないだろうと聞かされたことを説明した。個人的にはコトのレベルが高いこちらの方を優先していることも少し、話したわけだが。


 最後に所感として、そもそも無力化とかどうこうできるようなものなのか。私個人がどうこうしていい存在なのか……そもそもよくわかっていないことを伝えた。


 所感と言えばなのだが、私を保護したネロから彼女ら海賊軍に向けられる()()()()()()()()()()()については口にはしなかった。なぜだかわからないが、そういうものを感じてしまったのだ。何かこう……ここにいる彼女らはどうなってもいいような、そんな空気だ。


「なるほどそれでお忍びでこちらに来られたのですか。でしたら一言ご連絡をいただきたかった」


()()()()()()()()()()に来ただけですよ……いえ海賊って怖いから聞いたら全力で妨害されて、来たら来たら血眼になって探されるかなと」


「違いない」


 あっはっはと彼女が豪快な笑い声をあげれば、副官らも笑うもので。先ほどまであった重苦しい空気が解けていくのが感じられた。気のせいではないと思いたい。やはり対話が可能ならするべきで、こんなこっそり侵入するより電話一本かけておくぐらいでよかったのではないだろうか?ネロは色々こうしたことに精通している……政治的な事情に詳しいから、かえって回り道になってしまったのではと考えてしまう。


「お話しされた宇宙怪獣に対する件は捕虜になった時のメモとやらからも承知しています。こちらも協力したいところですが何分連絡がなかったもので……受け入れ態勢がすぐには取れません。そこでどうでしょう、依頼の内容のためにもしばらくここを御覧になってこちらの現状を見ていただくのは」


「それは是非。宇宙海兵隊について間近で見れるというのは!」


「では準備ができる数日間は申し訳ないが営倉を寝床にしていただきます。よろしいですか?世話は軍曹らが担当しましょう」


「いえいえお忙しいところをお願いしているのはこちらですから、是非是非、全て初めての経験で」


 そこからは終始和やかな雰囲気で話が進み、バロウズ副司令はじめ偉いだろう人らを挨拶を交わし。お水をカップ一杯いただいてから看守と軍曹に連れられて営倉に戻ることが出来た。おぉこれはいい、すごいスムーズにコトが進んでいるぞ!対話こそ重要な心の始まり、宇宙に輝くきら星よ!


■営倉


「営倉の格子が閉じられて……降りているのは決まりなんですね」


「そりゃアナタが勝手にどこかに行かないようにですよ。観光みたいなもんと思ってるでしょうが、軍事施設ですから観光気分でウロチョロされたら兵が困ります」


「そりゃそうかぁ。トイレや体を洗う時は同伴をお願いすればいいのかな」


「流石にそれはそうだね。常に私らがお守りしてるからいつでも申し付けてくれりゃいいが、あんまり頻繁でも困るよ」


 まぁ次なんかあるなら飯の時間だろうけど、とボヤくのが軍曹。名前はジャネットと呼ばれていた。切りそろえた黒い短髪と褐色の肌にバンダナのいかにも歴戦の兵隊という具合だ。それに対してまだ荒さが薄い看守はシンシア伍長は彼女より若く感じるし兵隊上がりの海賊という雰囲気とはちょっと違うように感じる。私は彼女らを知り始めたばかりだろうに、聞いていた話とは何か違うのではないだろうか?


「その間ヒマなんだけど……運動とかしてもいいの?まだお腹すいていなくて」


「まぁいいけどあんまり激しいのは出来ないんじゃないか?」


「そもそも運動とかするんですか?その貧相な体で」


「失礼な、一応これでも普段生活する分には困らないぐらいにはやってたんだ。ここじゃ有酸素運動は出来ないだろうから無酸素……筋トレぐらいは出来る広さじゃないか?」


「おぉ、おぉ。じゃぁやってみてくれ。まずプッシュアップからやってみな」


 もちろんそれぐらいやっていた。男たるもの腕立て伏せが出来てナンボというイメージはあるだろう。素人でも動画や海外のトレーナーがやってるのを見て、フォームを確認して鍛えることはできる。中々筋肉はつかなかったが回数はきちんと出来ていた。


 見てろよ、とツナギの上半身の部分を脱いで袖を腰のあたりに巻く。どうだろう、それっぽいはずだ。そのまま両腕を床に置いて、膝をついてから足を延ばし腕立て伏せの姿勢に移行していくが……思ったより()()()()()()()()?腕。


「ここじゃ入植惑星と同じ1G働いているからね、かつての地球で出来てたんなら出来るだろうさ。そーら数えるよ。いーち」


 伏せる。起こす……起こ、起こす。おかしい、1回でここまでガクガクになるようなものか!?1000年ぐらいブランクがあったとしても、筋トレで鍛えていれば筋肉が覚えていてすぐに出来るように戻っていくと聞いたことがあるのに、このガクガク具合は一体なんだろう!?


「おそいよーほーれ……にーっ」


「ひぃーっ」


 2回目が重い!2回でダメになるようなことがあるだろうか?そもそも体を腰まで伸ばして体をまっすぐにすることが出来ない!まるで生まれたての小鹿のように震えてしまい、腕を立てることが出来ない!?呼吸が震えるままに吐いて荒くなっていると見かねたジャネットが溜息の後にシンシアと共に格子をあけて助けてくれた。


「いくら1000年前の人間でもここまで出来ないなんてある?情けなさすぎないか?」


「も、もっと出来てたはずななのに」


「ここにいる間で少しは鍛えたほうがいいですよ……」


 二人に両脇を抱えられてから持ち上げられて、彼女らが足をひっかけて展開させた簡易ベッドに座らせられたことで落ち着くことが出来た。それにしてもあまりの貧弱っぷりに涙が出てくる。シンシアはこちらの顔や胸に手を当てて見て、目を見たり様子を見るあたり衛生兵なのかもしれない。荒っぽさがないのもそういう勤務だからだろうか。私の左腕に巻いているスマートウォッチの表示も切り替えて具合を見てくれている。操作方法も『捕虜になった時のメモ』にあったのだろうか?あれ私が読めない文字だったんだよな…


「心肺機能がだいぶ落ちていますね。脈の上りが早いんですよ、しばらく有酸素運動されてなかったからでは?」


「今日からでも走り込んだほうがよさそうだね。こんなんじゃそこら歩いているだけで怪我しそうで見てられないワ。ここを出歩くなら多少なりとも自分で動けてもらわないと、面倒見切れないよ。ここは幼年学校じゃぁないんだからさぁ」


 ひぃひぃと息をつきながらも、せめてプランクとか姿勢維持だけでも……と頼んだらシンシアに止められてしまったもので断念した。ジャネットは上に連絡してるのか手先……指だけでシンシアに指示をし、私は彼女の指示の通りに体を診てもらっている。


 この時代に目が覚めてから色々あったものの、なんとなく動けているので大丈夫かと思っていたが……全然そうではなかった!ショック!


 地球にいたころはきちんと走って、体を動かすぐらいは出来ていた記憶はあるのにどうだろう。今は腕立ても満足にできない。何より関節や関節に近い筋肉が震えているのがよくわかった。捻ったら手足がそのまま千切れてしまうかもしれない。プリムがあの宇宙服、パワーアシスト機能があると言っていたが相当な補助出力があったのを……今実感することになるとは。


「とにかく落ち着いたら食事をとって休んでから歩行訓練、その後に有酸素運動が出来るように申請しましょう。このままだと転んで大けがが冗談の範疇じゃありませんよ」


「今申請したけど診断所見と一緒だったかからすぐ通ったよ。それと食事が来たけど、これも介助はいるかい」


 そこまではいらんだろ、というジャネットの声色だったが……一方でシンシアの方の顔はマジでいるかもしれないという顔をしているもので。片手で大丈夫であると伝えて、食事をとることに意識を向けたかった。流石にそれはいらない、とにかく腹に収めて栄養にしたい……体を回復させて、再びツヨイ・ニクタイとケンコウ・ナ・シンパイを作り上げたいという意志を通したかった。


「テーブルはここにはないので、適当にベッドへ……軍曹、これ、食事ですか?」


「らしいよ。なんでも指示書の通りらしいから、気にするなだとさ」


「しかしこれは」


「こ、これは!」


 シンシアとジャネットの妙な会話は気になるが、それより目を引いたのは丸っこいドロイドによって運ばれてきたものだ!出された食事だ食事!


 あのシルバーのトレイプレートに置かれた平く焼かれた砂漠色パン!ビタミンらしい錠剤のいくつか、水のパック!そして丸い整形肉!カンヅメ・ミート!いかにもそれらしい軍隊とか囚人とか、世紀末な食事!宇宙っぽさもある!これだよこれ!こういうのが食べたかった!


 こういうといつも綺麗で丁寧な食事を作ってくれているトモエにメチャクチャ怒られそうだが、21世紀人がイメージする宇宙時代っぽい飯というとこうなるのではないか?いかにも未来な宇宙船の配給食って具合がいい!


 先ほどまで呪いのように付きまとっていた情けない気持ちはどこかに吹っ飛んでしまった!自分の中でむくむくと湧いてきた好奇心と観光の気持ち、空腹感からの強い食欲が湧いてくる!


 いただきます、と簡素なスプーンで肉を崩して食べ始める勢いも自分で止められない!う~ん、塩気のない缶詰のサラダチキンって食感!たまらない!


「これは軍用犬配給の()()()()()()ですよ」


なるほどね、そりゃ塩気が薄いわけだ!


私はドッグフード食べたことはありません…

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