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オリジン・シード  作者: 草間
ヴォイド・コンバット~虚空戦記~
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17話 リ・フォーメーション

■レプリカ中国 福建省 南西部 福建土楼


 超能力赤ちゃんによりテレポートした我々。非武装になってしまった私、超装甲戦士エルシーに……赤ちゃんとクオン。ぽんと出て来たのは中国福建省にある世界遺産……ショッピングモールの円筒型なAブロックと言われたらそう、みたいな集合住宅。福建土楼だった。開かれた内部、外部には居住エリアがみっしりのところ。


 無人のその、人気のない観光地となっている集合住宅は……激しい戦闘の痕跡が今も尚爆ぜていた。


 過去形であるのは、時間流の中で戦っているせいか破壊の痕跡という結果だけが我々の目に入ってくるため。


「よく持ちこたえたほう、ではなく単体でここまで可能だったとは」


「我らが母であり父、マリネリラは分与される演算資源をすべて自分に使っている!惑星の運営管理、ファクトリー機能は既に自動化されているからだ!」


 土楼という円筒型の集合住宅、その中心の中庭に我々がいるわけだが……その四方に陥没が生まれる。住居の入り口だろう。扉のあたりにちょうど2mの成人女性1人分の大穴が空く。その後に何かが炸裂した音が4つ、順序よく聞こえた。


 時流加速空間が解除を繰り返しての攻撃か、音速の領域に変わった瞬間があったのか!


 ブラックナイトのアーマーを殆ど剥がされてしまったソニア、巨躯のシルバーサムライ・アーマーを破壊し尽くされたカナタ、ネフィリムⅡを両断されているエルシー……そして呪術めいたソーサーラー・スタッフや帽子にマントを裂かれているダーク・ソーサラー。


「これが統合軍の戦力、現在の銀河連邦の最高戦力か。弱すぎて経験値にもならんな」


 一方でマリネリラは全くの無傷!防具の武装すらしていない……聖遺物とされる聖斧を片手にまさしく戦女神のように立っていた。クラウンブレイドの髪型を解くこともなく、衣類も……呼吸すらも乱れていない。


「お前たちは今更何をしにやってきた?そこの超戦士1号はそれなりにやるようだが大して期待はできんな。それともお前が、生身で戦うか再生者」


 たしかにマスター・パワーの操術を完全に操れるのならばそれで十分だろうが、とマリネリラの弁であるが。聖斧を持ち上げてこちらに向ける目は……そういう妙な真似をするのであれば、可能性があるのならば手加減は一切しないという威圧を放っている。


 私は赤ちゃんを抱えているクオンの前に立ち、手でその威圧感を遮るように構えるが……その私の前に立つのがエルシー。超装甲戦士1号、彼女が立ち塞がる。ふさがってくれた。


「認めよう、お前の戦闘能力はこの中でも一番であろうことは。だがアーマーのスペックがそれではな。それは既に知れている……最大出力も、能力も」


「果たしてそうでしょうか?形も違えば、中身も違う。時も違うとなれば……わかりませんよ」


「おぉ、どうするというのだ。なら見せてもらおうじゃないか、そのデータを私の糧にしよう」


 手品でも見せるのか、と言う具合にマリネリラが滑稽に笑っていると……エルシーの声のトーンは本気のままに。片手を掲げる構えのまま、私があの時に叫んだように……ハイパワーと!声を上げて、その形態を変えていく!アーマードからファイターへ、そしてハイパワーへと羽化していく。


 それらは02号……私が着用していたアーマーの機能をそのままに。しかしフォルムとカラーリングが些か変わってくる。真紅のカラーリングが神秘的に輝きを放つ……背中の羽根のような放熱フィンもそれを照らしている!


「同じハイパワーとやらか。確かに2回目でこなれているようだが……搭載AIのナビゲーションの習熟度合いなどたかがしれよう」


「いいえ、ここからです。そうでしょうナンブ!」


 おうともよ、とはいわないが。あぁ!と叫ぶと……私の意志に応じて超戦士02号マイティのアーマーが転送されてくる。もちろん中身はない、虫っぽいフォルムなだけに抜け殻のように中身が空洞だ。それが脱皮しました見たいな具合で、横たわっているものでマリネリラは鼻で笑ったのだが。


 笑った後にすぐさま顔色が変わる。これから私が何をしようとしているのか、その演算能力で見えたのだろう。聖斧を振りかぶったものの……それと同時にエルシーの超装甲の回し蹴りが柄を打つ。既に間合いの円周が重なっていたことに気づいたマリネリラは舌打ちしながら数歩下がる。


 これで安心して唱えられる。


「ユー……」


「ハブ」


「ザ」


「パワーッ!」


 両手を広げ、片手を振り絞るように捻らせて。エルシーへ向けて掲げれば……マスター・パワーの使用権が与えられた、という解釈なのか。ハイパワーモードの超装甲戦士エルシーの出力がグングンと上がっていく!それの制御も2度目であるから、そしてこれから何をするかも理解している超AIプリズムが完全に制御してくれている!


 そう、これからだ。これからのことがこの戦いの鍵であり一番重要なところ。私がやったときは出力制御をプリムに任せたが……その扱いの、出した時のコントロールとかが不十分だった。つまり出力制御は任せても、自分では操作制御が不完全だった。操術が未熟なせいというのもあるだろう。


 では私もであるが……エルシーはどうだろうか。マスター・パワーの操術は十分なのだろうか?そうとも言えない。それは先ほど確認した通り。つまりあの時足りなかったのは操作制御をするもの。それさえ出来れいれば……ヴォイドから出て来たマリネリラとも継続して戦えていたかもしれない。


 もっとも中身ごと破壊する意志があればそうはならなかったが、そういう目的ではなかったのでそうした前提はないものとする。


 だからイメージすればいいのだ、操作制御するものを。私のイメージを読み取った超能力赤ちゃんがいいアイディアと言ったように。つまるところ魔法の杖が必要なわけであり、超装甲戦士が扱うそれが作れればいい。幸い素材はここにある……超戦士マイティの装甲、聖鉄がある。


「リフォメーション!ソード!」


 超装甲戦士は戦士だ。魔法使いではない……いやダーク・ソーサラーはいるが。クオンもいるが……とにかく戦士だ。なら戦士には杖ではない。剣だ!超戦士に相応しい剣を作り、エルシーが振るえばいい!


 超戦士の装甲の聖鉄が、溶けるように混ざり合い……まさしく液体の超合金と変わり。エルシーの前に集合すれば……質実剛健ともいえる刀身を持つが、長剣の柄や装飾はメタリック・ブルーにブラック。ヒロイックな外見に仕上がっている!


 それを手にしたエルシーが二度三度振り、マリネリラに向けて構えた!


「パワード・セイバー!」


 あれ、そんな名前なの!?こういうのに関してノリがいいな!?と思ったがコレはまさか……アンリに向けてのなのか?好みというか……なんか、好きそうだし今キメておくシーンだと理解してのものを即興で唱えたのか!流石天才的なセンスを持つ戦士だ。ネーミングセンスもわかっているそのもの。


「聖遺物に変わる次世代のコントロール・デバイス・ウェポンか!いいだろう、その性能試してやる!超戦士エルシー!」


「結果は見えている、この時点でお前の敗北が!これは一人では成しえないもの!ヴォイドという願いの殻を捨てたお前では勝てやしない!」


 エルシー、すげぇかっこいいことを言うんだ!?なんだこのノリがわかっているセリフは!私がそんな具合に驚いていると……二人とも時流加速空間に突入し、戦いの世界に入ってしまった!今からどこに追いかければ……と迷っていると赤ちゃんが教えてくれる。


「これは大変なことになった……制御能力を得た人間がここまで戦えるなんて!」


「場所は四川省!玉翠山麓だ!行こう!ソニア達は輸送機に運んでおく!これは急がねばならない!」


■レプリカ中国 四川省 玉翠山麓 黄龍


 まさしく翡翠色が流れていくような……樹海の中に広がる石灰棚の湖沼。その数3000以上。その中に……白の装甲や端切れが足跡のように散らばっている。その先に聖斧を杖のように支えとして膝をつくマリネリラがいた。


「エルシー、まさか貴様が……ここまで戦えるような人間だとは」


「それは違います。この力は彼から与えられ……いえ、託されたもの」


「己が出来ずとも、私に託すことで成し遂げられた結果です」


 クラウンブレイドの髪型が下りて傷痕の新しい顔を私に向けてくるマリネリラ。屈辱と恥辱にまみれて怒りの瞳がこちらを射抜いてくるが……それでも私は彼女の顔を見て頷く。


 確かに私の手は遅いし弱い。再生者とか救世主のような肩書きに負けてしまっている。勝っている時なんて何もないぐらいに……そう思っている感じた人がいるぐらいで。マリネリラの叱責の通りなのが実態であり現実だ。


 しかしそれでも私は1人ではない。信じる相手や、多少ズレていても志を共にする仲間がいる。彼らがいるからこそ……このような場所に戦いがあることを知っても来れるし、いない間とかも色々頼める。1人ではないからこそ、弱いからこそ頼れる。それはマリネリラにとって認められないことではあろうが、私は人類の良いところだと思う。悪いところも内包しているといえばそうだが。


「認めよう再生者、お前がどういう存在かを。認識も改めよう……だが」


 だが。聖斧を杖としていたが力を込めて立ち上がり。こちらを見据えて……聖斧を持たない片手を天に掲げて指を差す。虚空に向けて何かを指し示すように、何も見えないはずなのに何かが来ることを予期して……それを見ろと言わんばかりに。


「間に合いませんでした。今は完全に閉じ切りましたが次元の捩じれから彼らが出てきます」


「彼ら!?彼らって一体……彼女ではなく彼らとは!?」


「銀河連邦が敵性異星体と呼ぶ連中だ。エイリアン・モンスター……宇宙怪獣だよ」


 クオンの言葉に混乱してしまったが、マリネリラの答えでようやく察しがついた。私が起こしてしまったマスター・パワーのハイパワーによる荒れ?により乱れた次元だか時空を目掛けて……宇宙怪獣がやってきたのだ!クオンどうにかならないんですか、退去を促すとか?


「知らない種です!この次元に隣接する亜空間に潜んでいたか、たまたま流れていたか……とにかく来ます!」


「そういうことだ。私は敗北したが……この惑星をくれてやるわけにも、破壊され尽くすわけにはいかん。銀河連邦の非常事態条項を借りて、惑星跳躍までの時間……この惑星を戦いの場として使わせてやる」


「わかりました。あなたは放置できますが、宇宙怪獣は放置はできませんからね」


 結果を見てもあくまで対等であるしこれは取引だが?な雰囲気のマリネリラ……ではあるが。それが気に入らないのか、この場はお前には勝てたからいつでもいいのだが?というエルシーの嫌味がすごい具合に返されて。


 そのお返事にすっごい顔で返したマリネリラはそのまま消えてしまったが。代わりに現れたのは……輸送機で降りて来たソニア達だった。赤ちゃんが呼んだらしいが……一体?負傷しているようだし、退避してもらっていたほうが……いいのではないだろうか?


「何を言っているんだケンゴ!これからタイタン戦なのだから彼女らがいないとどうにもならないだろう!」


 そうだった、ソニアもなんかビクトリー・シャトル?だかですごいの出てたし。カナタも既に転送申請が終了しているようで、今超巨大鎧武者が落ちて来た。どこからでしょうね?エステルもネフィリムⅢを呼び出しているし皆さん準備万端。


 だがみんなボロボロだ。鎧なんて装着していないし、負傷してアーマーをパージして軽装のまま出てきている。ダーク・ソーサラーなんてそういうアーマー的保護鎧がないせいか、本当にぐったりしている。ポリは元気だろうが……あっ今私となんかするのはすごい嫌そう。二日連続はダメか。慣れてはいないしね。


「あと60秒で降下してくるようだ!準備はいいのか!かなり生体兵器に近いようだが」


「いえ、まだ呼び出していないものがありますから少々お待ちを」


 えっもしかしてエルシーも専用の巨大兵器がある!?地球帝国が生み出した戦闘用のやつがあって……エルシーほどのなら専用の装備がされているに違いない。それを呼び出すんだな!?今、ここで!


「時間がないぞ……40、いや加速している!やはり生体ではないな、兵器だ!」


 なんだと!?と見た時には遅かった。この翡翠が広がる石灰棚の景観をまくるように土埃と土砂の嵐が吹き荒れていった。落下の衝撃で起きた暴風……その中心には首をもたげ、雄たけびを上げて……尾と巨大な腕を広げる宇宙怪獣がいた!大口を開けたもので、こちらへ向けて火球でも飛ばすのかと思えば……放射されるようなものではなく、指向性の光線が発射された!


 そのエネルギー光線をカナタのタイタン……大鎧の武者が刀で逸らすが、とんでもない威力だ!これは数で押して勝てる相手なのか!?それにしても生体兵器型の宇宙怪獣なんて、聞いていない!エルシーの専用機があれば違うのか?!エステルのネフィリムⅢもソードで応戦しているが中々のパワーで暴れているのだ。これは今までの戦力では厳しいかもしれない!


 エルシー、はやく!と叫んだ私に……返ってきたエルシーの言葉は。


 私の期待とだいぶ違うものだった。


「アース・ゼノンMod2緊急出動!」


「アース・ゼノン!?えっなんで!?」


 ここでアース・ゼノンを呼ぶ!?しかも私ではなくエルシーが!?そういう権限をいつのまに!?しかもMod2って何!?改修されているのか!全くわからない、誰か説明してくれよぉ!と周囲を見渡すとクオンがこちらを見ていた。完全にしてやられた、という顔で!


「ソニアさんが既に手を回していたなんて……!まさかこちらの方向からのアプローチ!ビクトリー・シャトル、ナイトの時に気づくべきでした!既に完成していると!」


「なんのなんの何!?クオンも何を言っているの!?」


 結果だけ言わないで過程とかちゃんと説明して?と言ったものの誰からも返ってこないし、エルシーは既にアースゼノン……Mod2?に乗り込んでいる。ソニアはビクトリーシャトルに……あっ人型のナイトになってる。誰も何も応えてくれないし、ポリは私を引っ張って輸送機に連れて行こうとしている!


 あぁそうだね……ここだと危ないし、そういうところに気づかなかった。ダーク・ソーサラーもこちらへ、と招き赤ちゃんとクオンらとも共に輸送機に乗り込み離脱……一時避難の距離まで下がる。望遠のカメラや通信であちらの様子は拾えているのだが……?


「ビクトリー・ナイト!アース・ゼノンと合体はよろしいか!バトル・フォーメーションに再度移行!」


「了解!テストはまだですが、決めてみせましょう!」


「ライトニング・レオ!超獣武神合体!獅子鎧王!」


「ネフィリムⅢGen2!ケンタウルス・モード!」


「ビクトリー・コマンダー、パワード・セイバー……インパクト!」


 すごいな、知らない兵器と知らない兵器の合体を見せられている。その上に必殺技で……あっビクトリー・シャトルとアース・ゼノンが合体してビクトリー・コマンダーになるって本気だったんだ。顔も新たにマスクタイプになってるし、ドリルも分かれて展開して装甲になっている。すごい超今風。


 カナタのタイタン……大鎧の武者は雷のライオン、たしか海軍捜査局のリストにあってアンジェラが従えていた?はずだったが。短期間とはいえ何かしらあったのか、借り受けて合体している。ライトニング・レオっていうんだ……そのまんまだな?


 エステルはエステルでネフィリムⅢの……Gen2って何!?バージョンアップした機械天使の巨神が、名前の通り4足になって騎馬となりランスを掲げて構えている!地上用の形態変化を取り入れているのだろうか!?


 その3体となった超装甲の巨人が生体兵器のような宇宙怪獣と死闘を繰り広げている!


未知の脅威と戸惑い恐怖してしまった相手だが……この3人、2体ならなんとかなりそうではないか!?色々力を使い果たした我々は、その戦いを固唾を飲んで見守るしかない。


 勝利のその瞬間まで!


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