11話 VS輪廻竜ウロボロス
■惑星バニッシュ・グラウンド 真昼 レプリカ・パリ
レプリカされたパリに、豆腐は売っていなかった。
「フーッ……」
そんなくだらないことよりも考えることはあるだろう……とアーマー化しているポリの冷たい溜息。仕方ないじゃないか、私がいきなり第二部……ベスト8?決定の第一試合に決まってしまったのだから。とにかく訓練時間がなかったのだ。
なぜか?そもそも第一試合の間に見に行った超能力赤ちゃん……のところでカーネイジ・アサシンと遭遇してしまい。そこから本選扱いの戦いが始まり終わってしまったもので、インターバルというか休憩時間としては不公平扱いになってしまったのだ。
そこで相手……輪廻竜ウロボロスが良ければ、まずベスト8の第一試合としたい趣旨がヴォイドから発せられ……見事に受理されてしまった。そんなものでレプリカされたフランス・パリのところで輪廻竜ウロボロスと戦うことになったのだが。
録画された戦いを見る限りとんでもない相手だ。
なにせ55m級に巨大化し、レプリカされたロンドンからアイルランド国境ぐらいまで破壊して回ったやつだ!本体は我々と同じ人間のような姿……ヒューマノイド型ではあるが、対戦相手のクロスランサー・ハヤブサとの戦いの最中に変身したのだ!
十字槍が聖鉄だったのだろうが、それを差し込まれた瞬間……それを取り込みながら巨大化!双頭の大蛇竜が出現し辺り一帯を破壊の限りを尽くし勝利としたのだ!なんて恐ろしい相手だろうか。
「敵は聖鉄を取り込み己のものとする、と予想されます。この超装甲がどこまで耐えられるか、通じるかは敵の術が不明ですので予想が不可能です」
プリズムもこう言っているもので、対策としては距離を取りつつ……ショック・マグナムで攻撃していたのだが。相手もそんなことはお見通し。パリの戦後ぐらいから残り古さが混じる街並みをバキバキに破壊しながらやってきている!
輪廻竜ウロボロスは人間体のシルエットは決して異形ではない。ナーガとか……ドラゴニュートとかそういう竜人か亜人のような姿ではなく、あくまでヒューマノイドだ。しかしその腰に巻かれた尾のような金属チェーン……おそらく聖鉄製の鎖を自在に操り、第二の手や腕のように扱ってくるのだ!それも左右の2本!
それは防御能力にも転用できるようで、ショック・マグナムの打撃力も緩和されてしまう!
両手には牙のよう持つダガー!それをチェーンに引っかけて華麗にも振り回し飛ばし、射程範囲延ばし……ダガーを絡ませれば切り裂く刃に。絡まなければ打撃武器に変えていく。
槍遣いであるハヤブサとはレンジ対決の後に、あのような結末となったのだ。時間流の中での戦いと操作合戦の後に……神速ともいえる突きを放った後!差し込まれた槍を吸収し巨大化、押しつぶして勝利した。
私はその斬撃と打撃が織り交ざる暴力の進撃を……プリズムの誘導でなんとか避けていくので精一杯!まず巨大化どうこうの前の話なのだ!
「このまま逃げていても、いずれは私の腹の中」
「お前の装甲は……とても、とても精度が高そうだ。1号とやらよりお前のほうが明らかに……ふふっ実力の劣る戦士。それがよぉく分かった」
「適当に痛めつけて丸のみにしてやろうと思ったが……1号を食うためにも、2号のお前を……消化する時間をかけないといけない。ゆっくりとね」
「ならば……もう巨大化して食ってしまわないと、な!」
ウワーッ!決断が早い!こういう時はもうちょっと技とか武器とかを出してから、いや私が相手に致命傷を与えてから巨大化するものじゃないのか!?未だにアース・ゼノンを呼ぶかどうかも決まっていないのに……今巨大化されてしまったら!何とか阻止できないか?私の持つ聖鉄の武器を相手に渡さなければ……?
「相手は既にある程度の量の聖鉄を体内に収納しています。それを拡張し巨大化のフレームにしているようです」
「そんなのどう戦えばいいっていうんだ!?」
呼ぶしかないのか?アース・ゼノンを、と判断する前に相手は巨大化!パリのエッフェル塔の前で55m級の双頭大蛇竜が爆発と共に出現……いや、55mのサイズとは言い難い!超長い尾を含めれば……エッフェル塔に巻き付き上ることも可能!そのまま尾を引き絞り……エッフェル塔を圧壊させ引きちぎる!
そのまま投擲した元エッフェル塔の残骸が、こちらにブン投げられた!
結果その鉄塊が……他の市街地の建物を破壊しながら向かってくる!私とポリは3階ぐらいの石造りの古いアパートの壁を蹴り、屋上へ飛び上るが……その判断は読まれていた。
ちょうど建物の屋上のラインを薙ぐように……ウロボロスの尾が振り回され、私は吹っ飛ばされてしまったのだ!ポリは私や尾より高く飛んでいたので回避成功!よかったが、私は角度が悪く……思いっきり斜め上方に吹っ飛ばされた!
このままいくと……セーヌ川に川ポチャしちゃう!
「あ、アースゼノンを呼ぶのか……?!」
「いいやそれではダメなんだケンゴ!もっと柔軟に考えてくれ!」
スロー・モーションの世界に聞こえてくるのは……超能力赤ちゃんの声!
赤ちゃんの世話、今はみんながしているんだよな……私が戦う時は本選の合間だろうし?誰か空いている人にと思っていたのだが……結局私が一番最初に戦うことになってしまったものでね。ポリも今着いてきてくれているし。
あぁこれは……超能力とマスター・パワーの関係で時間と空間を超越してどうのって使い方かな?
「私のことはいい!君がこれから戦う相手はこれという対処法などない!」
だからこそ臨機応変、発想の柔軟さが必要なんだと赤ちゃんはテレパシーで語る。そのための想像力の訓練とかをするような時期に入って来たのだと……クオンも言ってくれるが、残念ながらその時間はなく土壇場に放り込まれてしまった。
このゆったりとした思考の時間の中で、答えを出さないといけないが……まず出した案のアース・ゼノンがだめとはどういうことだろうか?
「とりあえず巨大な敵はアース・ゼノンで、というのがよくない!その考えは間違っていないがダーク・エルダーや機械福音教団相手では必ず対策をしてくる。それは君も理解している通り」
そのため……それ以外の手段を用意するべきだ。
それはバファムト戦で骨身にしみている。本当に負けると思ってしまったし、アンジェラがいなければどうなっていたことか。それを理解しているからこそ、私なりに色々考えているが……手段を増やすというのは物理的な制限がある。リソースだ。そりゃいくらでも超変形艦隊を作っていいならさぁ私もアルマに頼むんだが。
「その発想がまず間違っているんだケンゴ!君はエルダーでも、エルダーの弟子でもない。かといってこの宇宙の創世者……宇宙超常存在であるザ・マスターではない」
「君は再生者、リ・マスターなんだ!今あるものに目を向ければいい!」
「そして考えてくれ。虚空から力を呼び込み……時間と空間、質量すらも超越できる力をどう扱うかを!」
また観念的なことを!?考えればなんとか理解は出来そうだけども……クオンも赤ちゃんも中々に具体性を欠いているんだ。これは仕方ない、と私はわかっているのだけどもね。リィンも教えたことのない相手への指導でだいぶ苦労をかけている。
いやだって再生者なんてこの宇宙に現れたことがないわけだし。前例のないものにどう指導していいやらってなってしまのだ。方法は私がいつも手探りで探すしかない。
君の目で確かめてくれ、ではないんだが……そうなってしまっている。
「ですから今こそ移民船を改造したビクトリー・シャトルを呼び出しアース・ゼノンをビクトリー・コマンダーに合体させる時なのです!」
「ソニア!?マスター・パワーを使って私のテレパシーを利用し変なイメージを送らないでくれ!」
「フーッ……ハッ!」
うわっすごいビクトリー・シャトルが変形して獅子に……いやなんでこんなワイヤーフレーム・データを送ってくるんだソニアは!?と驚いていた時だ。思いもよらないところから声が上がる。アーマーの機能なのか、ポリの声が聞こえたが……何かいい案でもあるのだろうか?
「これは……ふふっなるほど。ケンゴ、ポリはとても賢いな!彼女の案を採用するのが一番だろう!」
そんなぁというソニアの声へ被せるように……ポリの鼻で笑うような息遣いが聞こえた。えっ本当に一番最良の案がポリにあるの!?聞こえてこないんだが……あっそうか!おそらく赤ちゃんのほうがテレパシーで繋がっているからわかるのか!?
「ケンゴ、想像してくれ。巨大化した輪廻竜ウロボロスに対抗するため……ポリが巨大化するところ!」
「ポ、ポリが巨大化!?あんなに大きくなるの!?ありえ……あり得ない、いや出来るのか?」
惑星ネザリアでマスター・パワーをポリに……とした時にちょっと大きくなってた気がする。あれはまずソニアやリィンたちが……ネフィリムⅡを装着したエステルたちに立ち向かえるように、と思ったのもあったのだろう。
なぜかポリだけは一回り大きくなっていた。それの応用……なのか?
「そうだ!そしてそこから……ダーク・エルダーの力の影響力が多い相手と戦うためには何が必要か?それを考えればいい」
そうやって君が出来ることを組み立てて……答えを導けばいいのだと語る。これに慣れれば、すぐにでも対抗手段を生み出せるのだと。今あるものを再構築、再生していくのが再生者と思えばいいのだと。
ではポリがあの怪物と戦うにはどうすればいい?アーマーのまま巨大化するべきだろうか?牙と爪は武装されているがそれだけだ。スペース・ウルフ用のスーツを纏っているが……それだけでは足りない。もっとアーマーを足さないと。装甲と、武器を。牙と爪に加えて……尾も、であったり。なんなら口から青白いプラズマの火炎を吐いてもいい!
「いいぞケンゴ、シルエットが想像出来て来たぞ!ではそれを実体化させるため、君の力をどのように与えるかを考えるんだ」
マスター・パワーを授けた時のような掛け声をポリにかけてあげればいいと。力をあなたに、では足りないのだろうか?いや確かに足りなさそうだ……曖昧すぎる。だからもっと具体的に、かつ短く示さなければならない。
イメージの中の巨大化し装甲を纏ったポリと……視線の先でこちらを見ているポリとを見比べる。縮尺がえらいことになるような対比であるが……これをどう大きくするのか、大きくなるのか?
あぁそうか!これはそういうことなんだ!?こう……自分のイメージの中にあるものとすり合わせて、今あるものを変えるイメージにぴったりな言葉を作ればいい!組み合わせればいいんだ!
今の場合……ポリが巨大装甲の、狼犬に変化するような言葉を唱えればいい!
そう理解した途端……スロー・モーションの思考空間は解けた。落下していく私の真上にいたポリに向けて……構えて、唱える!
巨大化し装甲を纏った姿に変わる、再生の言葉を!
「超装獣スペース・ウルフ!」
その瞬間、私のイメージの中のポリの姿と……ポリが一体化!現実のポリは瞬時にその空間から消えるが、すぐに表れてくれる。巨大化した姿となって私の前に、私を頭に乗せるように。
セーヌ川の中から、巨大な水しぶきをあげて……ウロボロスにも負けない、巨大化しマシーンのシルエットになったスペース・ウルフが飛び出し!駆け抜けて来た!
「その犬もか!その犬も聖鉄でよくできている……なんて伝導率!力が満ち溢れているじゃないか!食べ出がありそうだよ!」
「お前の腹を裂くのは私だ輪廻竜ウロボロス!!とポリは言っている!」
巨大なスペース・ウルフの出現により、荒れたセーヌの流れをも沈める咆哮がパリに響く!都市の整備された地面を抉るような……双頭大蛇竜ウロボロスの不協和音を叩き返すように!
「スペースウルフ・ポリ、アタック!!」
崩壊しつつあるパリを舞台に……ウロボロスとウルフドッグの巨大な戦い!第一試合の第二幕が上がったのだ!
笛ふくと出てくる……みたいな……




