8話 カーネイジ・アサシン
■惑星内殻 レプリカ・アトランティス ベース
「超戦士マイティの正体が再生者か、これなら説明もつく」
「君を監視し、時間流の変化を辿ってついてきたか!迂闊だった……ここへの侵入を許してしまうなんて!」
「もう遅い!ぬぅん!」
本選の参加者の1人、カーネイジ・アサシンはダーク・エルダーの関係者!彼は対戦相手の正体を探っていたようだが……ヴォイドの目的について聞いていたことになる。その上で、となるとダーク・エルダーの意向でここに来ているに違いない!私と同じく探っていたのだろう……ヴォイドを!
その恐ろしい暗殺者。メタリック浪人笠のようなものを被り黒装束でキメているスペース・メタル・アサシン。彼が手に何も持たずとも構えた途端。私の体が……いや、正確には私の四肢が捻り上げられて操り人形のように折れていく!?見ればポリでさえ……う、浮いている!?フワーッって!
他にも何事か、赤ちゃんは無事かと思って見渡せば。周囲の影から……カーネイジ・アサシンのような姿のシルエットが続々と出てくる!私の四肢を拘束する何かをこちらに向けながら、ポリもどこかの機材に磔にされてしまった!
「我が流派、ヤガールの操術ではなく……流術により貴様の周囲の時間流を操作させてもらった。これで貴様の四肢の時間はそれぞれ別の時間軸に囚われ、まさしくデクノボウ」
言っている原理がさっぱりだが……何やらとてもまずい事態になっている!原理が分からないと拘束解除のしようがない!四肢ぞれぞれの時間流の流れが違う!?どういうことだ!?まさか私が見ているシルエットもそれに関係があるのだろうか?だがこのままだと良い様にされてしまう、何とかしないと……助けて超能力赤ちゃん!
「このままベースごと持ち帰り、再生者も連れて行けば……我らの思うような時代が再び」
「ケンゴ!超装甲だ!それなら時間流の拘束に対抗できる!それに今の君なら呼べばくる!そういうものと考えられる君なら出来るはずだ!」
そういうもの?確かにマスター・パワーと超装甲という聖鉄で出来た装備が繋がっているなら……その装着者である私が呼べば赤ちゃんみたくテレポートで呼び出せるのだろうか?レストランに今絶賛放置中の装備であるが。あれ結構重たいイメージがあるんだけど、私でもテレポートさせられるのかな?
「えぇい、うるさい赤子だ!お前などサンプル程度あればいいのは理解出来ていよう!これ以上妙な真似をするというのなら、この場で」
「超装甲!」
超能力赤ちゃんがまずい!その思った瞬間もう言葉が出ていた。超装甲を呼ぶ、その名前の通りに。イメージなんて、すぐに繋がる。あの神秘の超装甲ボディを己の体に装着するように……転送するイメージが!
そのイメージとマスター・パワーと鎧が繋がったのか。私の体を青白いマスター・パワーの粒子が包み、カーネイジ・アサシンが放った時間流の拘束を解いていく。結んだ操りの糸を解くように。そして時間と空間を裂いてやってきた超装甲が……私の体に四肢の末端から順に装着されて、頭部を完全に覆えば。
「超装甲!マイティ……アーマード!」
アーマード?自分で言っておいてなんだが重装甲だからだろうか?なんかマイティだけどちょっと寂しいな……って常々思っていたもので。このHUDに表示されている文字をそのまま読み上げてしまった。
いやそんなことはどうでもいい。右太腿の装甲を展開し、ホルスターからショック・マグナムを引き抜く!そこからポリを拘束している……流術により編まれた不可視の糸を撃ち抜き、そのままカーネイジ・アサシンに向けて発砲!
2,3発は当たってくれたがそれでもよろめくだけ!やはり近接戦闘ではないと倒せないような相手か!
「ケンゴ!超装甲した君とカーネイジ・アサシンを別の場所に飛ばす!緊急時なので転送場所はわからないが……構わないか!」
「ポリを頼む!私はこいつ、こいつらをなんとかする!」
時間流を操って、のなのか。四方八方からあのシルエットが現れて私に投擲を続けてきている!不可視の糸、或いは可視光の光線!光の矢!それらをショック・マグナムで迎撃し機材に傷つけないようにしているが……なにぶん私と相手との技量差がすさまじくある!今はプリズムが補正してくれているが、このまま続ければ競り負けるのは明白!なるべく戦いに向く場所にお願いしたいが……
「テレポート!」
■惑星バニッシュ・グラウンド レプリカ・ホンコン
「20から21世紀の香港と推定、右から来ます」
「やりにくい!ここまでとは……!市街地で戦うような相手ではないじゃないか!」
香港と言えば100万ドルの夜景と呼ばれるもの。しかしある時期まで開発の途中という状態が多かった、というのは当時のアクション映画を見ていればびっくりして……印象に残っている人が多いのではないだろうか。私もそんな具合で今、テレポートされた先の香港で……バラックの家屋群の上に落とされて転がり。
また相対するカーネイジ・アサシンの猛攻に晒されていた!
とにかく市街地や居住区では視界が悪い!隠れる場所が多い!カーネイジはそこかしこから飛び出して、メタル浪人笠や暗器を投擲してくる!スペース・武侠のようでタチが悪い!ショック・マグナムで対抗できる部分もあれば、カーネイジのいうように流術だかで緩急をつけられた投擲に……タイミングを合わせるのが難しい!
私は7割の迎撃に成功しつつも、3割の手により確実に追い詰められ……海辺近くにまで追い込まれてしまった!流石にこの超装甲のまま海に落ちたら助からない。それにしてもこの流術……厄介だ!技の緩急だけではなく、自身をも時間流に乗せて出現させているためか……まるで時間差の分身を生み出しているように見えてくる!
ショック・マグナムで船の上からの投擲を迎撃しつつ、波を背に飛んでくる光の槍をコールドメタル・スティック(警棒)で迎撃するものの……ついには流術分身体に囲まれてしまう。このままでは池ポチャならぬ海ポチャして封じられてしまう!だが身柄を抑えたいようなことも言ってたし……流石に海へ沈めるのはないか?
いやそんな甘い考えはよくない。根拠のない甘えは敗北に繋がる。
厳しい戦いだが……ここは自分ひとりで何とかするしかない。加速装置を使って決めるにしても、相手の方のやり方にノれるのかがわからない。ハッキリいえば、ヴォイドの時のようにお試しとはならない。私が敗北すれば……あの超能力赤ちゃんにも危険が及ぶ。絶対に失敗は出来ない。
敗北は……許されない!
「敵拘束、来ます。時間流の変化潮流を測定し反映、攻撃順番を想定」
チャンスがあるとしたら……最後に私を拘束しに来た時にカウンターを決めらるか否か。必殺の一撃を放つ時とか、そういう時にこそ隙が出来るはず!そう思って構えていた私に向かってくるのは、多方向からの光の槍と鎖!ついに完全に拘束に来た。
だが全てが全て私へ向けて打ち込まれるのならば……迎撃は容易い!プリズムと連携してどれから撃ち落とすか決めて、その順にショック・マグナムの照準を合わせて引き金を引く!ギリギリのところで来るものはコールドメタル・スティックで弾く!
しかし、全部弾き終わったと思った私に待っていたのは……自分の身さえも気だるく重くなる具合の悪さ。超装甲さえもパワーダウンし、プリズムも警告を鳴らしていく。まさか……バファムトの時と同じくマスター・パワーを吸収されている!?
「否!ほう……バファムトは吸収か!我々の流術は違う、マスター・パワーを霧散させる流れを生み出したに過ぎない」
「対エルダー用の流術よ。再生者、お前のような未熟でありながら十全な資格を持つものにも……覿面に効くだろう!毒としてな!」
「聖鉄との一体感を得られず……重くなってきたのではないか?鎖や槍など不要、その鎧が拘束具となってくれるのさ」
バファムトがエネルギーの吸収なら、カーネイジの流術は……マスター・パワーを散らす毒!?私は迎撃に成功し、活路を見出そうと動いていたが……まんまと相手のやり方にハマってしまったようだ。おかげでまともに超装甲を動かす力も生まれず……体が重く潰されそう!意識が朦朧としてしまうが……なんとか踏み止まらなければならない。
自分の敗北に宇宙の存亡が係っている、というのはちょっとわかりにくい。しかし自分が勝つか負けるかであの赤ちゃんみたいな命の未来が……より悪くなるかもしれない、ということは絶対に避けたい。まだまだ話したいこと、話し合いたいこともある。ここで……カーネイジに、ダーク・エルダーの関係者に敗北するわけにはいかない。
「プリズム!何か手は……手はないのか!手持ちの武器はもうないし、加速装置は」
「落ち着いてくださいリ・マスター。設計者クオンは全てお見通しです。このような時が来ることを予期していました」
予期って何!?何も話は聞いていないんだけど……と驚く私に特に返事もせず。プリズムは淡々と説明する。この超装甲の機能は、私の認知やマスター・パワーの習熟の具合によって解放されるものがあると。その声を聞いたカーネイジは1度、ぴたりと止まったが……今の私の窮地を打開できるもとは思っていないのかどんどん近づいてくる。
「ザ・マスターの力と聖鉄、マスター・パワーの真の力の関係性は時間流操作程度ではありません」
「ごめん、時間がないから短縮して教えて!クオンもだけど観念的なことがわからない!」
「……他の術者は他の次元から聖鉄へ力を呼び込みます。ですがあなたは自分の内から直接呼び込み流すことができる」
「もっと簡単に!出来ることを簡潔に伝えて!」
「防護用のアーマード・フォームを解除、ファイター・フォームに変更します」
その瞬間、超装甲の……カーネイジの毒に浸食されていた部分が剥がれ落ち……青白い爆風と共に弾き飛ばされた!
そしてHUDには……いや。爆風が晴れれば……軽量な身となった超装甲戦士の姿が姿を現す!
HUDにはアーマードからファイターへ、チェンジしている。体へと重くのしかかっていた感覚は消え去り、地に膝をついてしまうようなものもなく。肩どころか全身から荷が下りた軽量な感覚が内から湧いてきて、ゆっくりと立ち上がれた。
「バカな!?お前の装甲素材の聖鉄、外部からの力の流入は阻止されていたはず!」
「内からは別らしい……今度は後れを取らないぞ、カーネイジ・アサシン!」
「やってみるがいい、いくら脱皮しようが何度も貴様に食らわせてやるだけよ!」
「時流法・加速潮流!」
「加速装置……いや、加速をカーネイジに合わせる!プリズム!」
スタート・レディ、とプリズムの声が聞こえれば……カーネイジの操る時流空間の流れに相乗りする形で加速空間に入っていく!そこでは港に打ち付ける波、空気の流れ。鳥の群れもまた……止まり。だがしかし、そこで動くものは確かにいる!時間流操作のできるカーネイジと……それに潜り込むことができる超戦士マイティ、私!
私とカーネイジだけが動く空間。
あれ!?カーネイジ以外にも、同じ暗殺者の集団が隠れていたが!?
時間流操作で出て来た分身体ではない?!
「これは本選ではない!卑怯とは言うまいな!」
「十分卑怯だよ!もういい、全員倒してみせる!プリズム!戦術解析サポートを!」




