7話 超銀河戦士計画
■惑星内殻 レプリカ・アトランティス ベース
「ケンゴ、思い出してくれ。なぜヴォイドが生まれた?君の中の何が生み出したのかを」
「何って……あの時は私もわからないんだ。なんだか……あの時のことを思い出すと嫌な感じがするし」
ならば、君の記憶を探らせてくれ。それで思い出そうというので……まぁ大丈夫だろうと頼み。かといって若干体験したことないものなので……うっとおしい顔をするポリには悪いが抱き着かせてもらおう。
「海賊軍と同じ海賊行為をする恐怖、戦いへの忌避感。君は本当に戦いに向いていないなぁ」
「パワー・アーマーの機能としての鎮静、そして管理AIによる思考誘導……彼女らが求める強い戦士。リーダーシップを持つ強戦士のイメージを刷り込まれたのか!だがこれは」
「怒り!そうか、君はこの世界への怒りからヴォイドを生み出したのか!」
そう改めて言われると困ってしまう。私は確かにその……この世界に対して思うところはある。しかしだからとってあそこまでの、こう……過激なものを常々思っているわけではない。ヴォイドを常にやれなんて、無理に決まっている。ストレスで禿げちゃうよ、あんな気迫出してたら。
「銀河連邦の拡大政策、常態化する生命の生産、他の生命への無価値化の拡散……それらへの怒り。これでようやくわかった、全て説明できる!」
「ヴォイドはこの宇宙を破壊しようとしている。再生者である君とは真逆だ!」
鏡映しのように、光と闇のように!と緒能力赤ちゃんはテレパシーで伝えてくるが、びっくりだよ!今一理解できない……私から生まれたものとして、光と闇とかそんなことを言われても困る。ヴォイドにはそんな物騒な計画、今すぐやめてほしいんだが?
「宇宙を破壊と言っても、エルダー・バファムトのように真空崩壊を狙っているわけではない。この宇宙にある銀河連邦社会を破壊しようとしているんだ」
そのために、まず根幹に食い込んでいる産業同盟を乗っ取った。
噂ぐらいに言われていたのはそのまんまの話だったのか!?しかしここまでの話の流れがよくわからない。社会崩壊を狙うのならば、産業同盟を粉みじんに砕いたほうがいいのでは?彼らは80年代あくの軍産複合体みたいなもんだろうに、ダークヒーロー・ヴォイドが成敗だ!でいいだろう。
「いいやケンゴ。よく考えてくれ、この宇宙社会の軍事力は大きく分けで3つある。各惑星の防衛機構、君の所に集結している統合軍。そして地球帝国軍の3つ。その他にはいくつかはある……だがそれら兵器を開発設計に生産し量産をできる組織というのは限られてくる」
統合軍や地球帝国の装備殆どは産業同盟で作られたものだ。これは銀河連邦や惑星開拓機構が地球の持つ特権を利用し、軍事能力をアウトソーシングした結果ともいえる。一本化して集中化させたが故に強大な軍事生産能力を得ることが出来た。マンパワーとリソースをそこに集中し、いつでも必要な分だけ軍事力を生産できるようにした……と赤ちゃんは語る。頭いいな?私よりずっと今の社会の仕組みを理解している。
「つまりここを抑えたヴォイドは、この宇宙社会の軍事力の首ねっこを完全に掴んだと言ってもいい!」
「いやでもそれでは話が繋がらなくないかな。社会崩壊を狙っているとしても、軍事力なんて社会に根差したものだろうし。社会がいくつかあるから必要なってくるもので……?」
まずいな?超能力赤ちゃんと知能レベルがかなり開いているもので、あまり合点が得られない!自分の理解能力の低さに悲しくなるが、私から見れば繋げていくと宇宙最強の軍事帝国を作るのは楽そうだが、だからって社会が崩壊するわけでもない。新たな社会が出来るだけではないだろうか?
「そう、そこだ!僕もそこがわからなかった。だが君の記憶をよみ、ヴォイドの誕生を知って理解できた」
「ヴォイドは銀河連邦社会を内側から崩壊させようとしている……宇宙戦争によって!」
そんなそれこそ戦争だなんて、社会と社会のぶつかり合いだ。銀河連邦を内側から内紛で分裂させるつもりであるなら……みみっちい話であるし態々産業同盟を乗っ取る必要はない。銀河連邦の惑星間戦争なら……その、今もできる規模の話ではないか?惑星間小規模紛争を続けさせて、社会を疲弊させるというのならわかるが……それは今とあまり変わらなそうだし。
「ケンゴ!忘れてはいないか、今の銀河連邦と争う別の宇宙社会があることを!」
そんな大規模な戦争をやっている覚えはないんだが。ない……い、いやあった!あったぞ1つ!エステル!機械福音教団、銀河連邦社会を静かに侵略し封じようとしている彼女らがいた!
なんか穏当に別れたものでつい忘れていたが……確かに赤ちゃんのいうように、今銀河連邦社会を脅かす強大な社会存在は彼女らがいる!惑星をワープさせるほどの技術力を持つ彼女らが!
「つなぎ手であるクオンもいるが、宇宙怪獣も別の宇宙社会といっていい!どれも戦争相手としては十分だ!ヴォイドは君の対応につけこんで、銀河連邦社会を内側から崩壊させるため……戦時体制に変えようとしているんだ!」
「い、いや対応って!私はなんかその……取返しのつかないことをしてしまったつもりはないよ!?なんとか最善の手をいつも……」
「それなんだ!君の対応と解決はどれも優しく、穏当なものだった。だが言い換えれば……一部の者からすれば手ぬるく、甘いとしか言えない!」
事態を緩やかに、軟化させはしたものの解決は出来ていない。それはわかるが……それは、その時間をかけてネロとか銀河連邦議会とか銀河民主主義とか立法とか法案で解決していくものであってだね?
「そうだ。だがヴォイドが海賊軍から望まれたように、人々は今すぐ欲したのだ!この事態を解決する英雄を。光の面が君であるなら、ヴォイドは闇!虚空の闇が望まれるほどの事態になっているんだ」
それが銀河連邦議会の、議員であれ……惑星開拓機構の運営者でも海賊軍の人間でも変わらない。今をすぐに変える強大な存在がほしい。ヴォイドはその社会の要請……いや、欲望を逆手にとって産業同盟を乗っ取った。私の対応では埒が明かないだろう?と。
「その戦いのための重要な存在、君の周囲に集まった戦士たちのような存在を欲し……ヴォイドは僕たちを作った」
「僕たち!?複数いるのか……君のような存在を作っているのか、ヴォイドは!」
我らの父であり母であると超能力赤ちゃんは言っていたな?なら他にも彼女?彼?のような存在は……まだ言葉を発せていないだろうが作られている途中。ここか……あるいは他のファクトリー・ベースで生産されているに違いない。現在進行中で……ならば、赤ちゃんはなぜ完成前に危険を犯して私を呼んだ?
「この戦いはマスター・パワーを操る能力のデータを取るための大会なんだ。それで得られたデータを用いて、僕たち超銀河戦士を構築しようとしている。これでもまだインプット前なんだけどね」
聖斧を求めるものを集めて、戦わせてデータを集め……理想の戦士を作るために大会を開いた。ヴォイドの目的はわかった。聖斧はどこまで重要かはわからない。そもそも本物なのか?という疑問は残るが今はそこが重要ではないだろう。なんかただの賞品つき武闘大会ではないのは予想がついていたし!
私が聞きたいのはヴォイドの目的ではなく、赤ちゃんの目的が知りたいのだ。その……もし私がこれはいけないとファクトリー・ベースを破壊し始めたらどうするのだろうか?ヴォイドの尖兵として、銀河連邦崩壊のために作られる戦士だぞ?
私を呼び出したということは、そういう危険性も当然孕んでいるはずだ。
「それはない、まずないとわかっているからケンゴ……君を呼んだんだ」
「我らの父にして母、そしてヴォイドを生み出した者……しかしヴォイドの持たないものをもつ者」
「今の世界で失われつつある愛と慈しみを持ち……非道に怒り、悲しみ、涙する人」
「僕はそれを知るべきだと考えて呼んだ。ヴォイドもそれを承知しているから、この行いを咎めてはいない」
「やめろ、やめてくれ!そんなことを言うのは!聞きたくない!」
こうして目的のために……戦うため生産されてしまった赤ちゃんというでも辛いのに。この子らは、これから生まれてくるだろう彼らは……アンジェラと戦うのかもしれない。いや、私とでさえ戦うことになるだろう。なぜならヴォイドが生み出し、銀河連邦崩壊のため……戦争のために生み出した存在。
だろう、ではない。必ず戦うことになる。
そんな子が、私を父母と呼び私から知るものが……知りたかったものが人の心みたいなものだ。それを持つ相手と戦うことになるし、ヴォイドは戦わせようとしている。そんなこと……それを私に知らせて、君らが知ってどうするというのだ!?
「ケンゴならわかるはずだ。宇宙を救う英雄、戦士であれば戦う力以上にそれが必要なことを」
「だからってそんな……戦うために生まれたとしても、それだけが全てじゃないのは君のように賢いなら!」
「わかるよ。だからわかってしまう、今我々が欲される世界であることも」
反論がしづらい。私の対応が手ぬるいからこうなっている、と責められているわけではないだろう。だがそれほど欲されるような状況が……今常態化している。そのため停滞し、腐っていくように……形だけ保っているような社会を変えたいと彼らも思ってしまったのかもしれない。
私はそんな相手と戦えるのか?いや……戦わなければならない。彼らの、彼女らのやり方が正しくないのであれば……正面から戦わなければならないのだ。銀河連邦社会を崩壊させる、と言う段階になってしまったら……止めなければ混沌で今異常に凄惨な事態になってしまうはずだ。
辛い、戦いになる……ポリを抱きしめる腕につい力が入ってしまったが。ポリは黙って私の頭を抑えて内側に抱き込むようにしてくれる。その沈黙と少しに優しさが今は何よりありがたかった。
なんとも言えなさに涙が出そう……じんわりと思っていたところにポリの唸り声が、喉元から聞こえた!?顔は私でも赤ちゃんっぽいのがいるシリンダーでもない、あらぬ方向を向いている!
「ほぉ、そのウルフドッグは私の気配を感じ取れたのか。流石再生者の連れ合いだけはある」
闇の中から現れたのは……赤黒い装束にメタリックな浪人笠のような被り物をしたシルエット!この姿……本選の参加者で見たことがある!しかも私の対戦相手!名前は……
「カーネイジ・アサシン!まさか君の侵入を許してしまうとは!では君は!」
「奇妙な術を使うようだな、ヴォイドの子は。そうだ想像している通り……私はこの宇宙に散らばったダーク・エルダーの流派のものよ」
「対戦相手であるマイティの行方と聖斧の在りかを探っていたが、これはとんでもないものを見つけてしまったな」
ヴォイド・コンバットの参加者は大なり小なりマスター・パワーを扱える上に……聖鉄の武器を持っているだろうことは予想されていた。ならばその中に……ソニアやカナタのようにエルダーの弟子が紛れ込んでいてもおかしくはない!それがエルダー大戦で敗走し、闇に堕ちたエルダー……ダーク・エルダーであっても!
「このファクトリー、我らが流派に取り込めば……師の望む再興も夢ではないだろう」
まずい、ここには非武装の私とポリに赤ちゃんだけ!
こんな名前からしてもヤバそうな相手と生身で戦えるのか!?
大ピンチじゃないか!!




