6話 本選の合間に、デカいお誘い
■惑星内 レプリカ・ハコダテ レストラン
「あたたたた……」
「もう、無理をするからですよ。あぁいうのは単純なもので外ではなく中身の問題になってきますから」
「ようやっと凡人に毛が生えた程度では適うわけがないのは明らかなのにな」
そんなことはわかっているんですよ!ヴォイドは自分の偽物だから……もしかしたら私と同じぐらいかな?と思うじゃないか。芝居や小細工が通じる相手だと思うじゃないか。全く通じないどころか、私とは似ても似つかない戦闘スタイル。早い拳の連撃!蹴り込みも鋭く、時間流操作の間はほぼ一方的にやられてしまったのだ。
超装甲は頑丈柔軟なもので、ベコボコにされたわけではないが中身の私は関節とか背中とか腰の曲がり具合にダメージを受けてしまったもので。レストランに入ればすぐ超装甲を脱いで自立モードで動いてもらった後に……こうしてテーブルに倒れこんでしまった。
ポリが補給品の救急箱を取ってきてくれて、そこからクオンが湿布を取り出して貼ってくれている。アンリに言われているようにおじいちゃんだよ、もう。
「それより本選が始まるぞ。最初は……ブラック・ナイトとケンタウルス・ナイト」
「場所はオリュンポス山ですか。乗り物を選ばなかったソニアさんが少々不利かもしれません」
あれは教導院の騎士ソニアなのか?と問うたエステルにクオンが頷き……本選の第一試合が始まった。残った16人がペアで8組、AとBブロックに4組ずつに分かれてトーナメント戦となっているのが本選。
それぞれの試合は1日ぐらいずつ開始に時間が空くようで、この第一試合の後に……第二試合のクリムゾン・ハンターVSオーシャン・アリゲーターとの戦いらしい。なんだこいつら……本当に戦士なんですか?モニターに写っているマッチ表が化け物揃いすぎる。私は第五試合で対戦相手の名前は……カーネイジ・アサシン。大虐殺暗殺者ってなんだよ怖すぎるよ!
エステルとか第四試合なものだから、そら悠長にお茶を飲んでいる時間はあるだろうけどさ!ぐぬぬ、この間に時間流操作のコツを掴まなければ。生半可な学習方法や正道の鍛え方ではとてもじゃないが時間が足りない!なにかちょっと短縮できそうな……あぁいい方法がある!ひらめいた!
「プリズム、時間流操作の対応策とか考えられる?」
「試合をリアルタイムで視聴及び録画していますのでそこから構築できます」
そう、こういうときはAIにお任せ!クオンがちょっと微妙な顔をしているが修行している時間が足らないからもう仕方がないだろう!?エステルは……薄く笑っている。あぁそうか、エステルは機械福音教団の騎士だもんなぁ!そういう学習方法が常だよなぁ!もう何段階もレベルを上げてそうだ。
しかしそうなってくると、とたんに色々考える余裕が出てくる。
戦い以外のことにも、頭が回るようになる。日々の食事や健康に愛や勇気……世界平和……ではなく。今回ここに来た目的だ。ヴォイド将軍は何者か?という調査。対面で聞いても「拳で問うてみろ!」とでも言ってきそうなので、迂回して探さないといけない。
「と、なると。ヴォイド将軍の目的とかを探すなら……この惑星で他と変わって変なところだよな」
「変な所だと?この惑星自体そもそも変だろうに。21世紀の地球を模しているところが変ではないか?」
「こういう時って複製品は人工物だから、隠れて本来の目的のものを何か作っているはずなんだよね。つまり21世紀の違う場所が絶対あるはずなんだよな~」
そういうものか?というエステルに対してクオンはうんうん頷いている。そうそうこれこれ。例えば絵画が鏡映しであったり、本来ないものがあったり。このモニターに映されている、第一試合から見れる風景や……チャンネル回したら見れる範囲で探してみるが。
「あったとしても早々見つかるような場所に、ハッキリわかるようなものでもあるまい」
「それもそうかぁ……人工衛星飛ばすわけにはいかないしなぁ」
本屋に行って世界地図買ってきてもわからなそうだ。なんかこう……本来21世紀にないようなものがあって、そこが本部になっているとかがよくある話なんだよな。ヴォイド将軍がどこまで私の偽物かは知らないが、私ならやるんだけどなぁ~でも細かい性格みたいだしそういうのはないか?
「例えばさぁ中東にはもうないバビロンの空中庭園とか、バベルの塔とかさ!」
世界の七不思議にあるんですよ、ロドス島の巨像とか……アレキサンドリアの大灯台とか。こういうのはゲームで見たから覚えているし、まぁサンプルとしてそういうのがね……とエステルに説明したらそれ以上は何も言わずティータイムに移っている!ぐぬぬ、ありそうな線なんだけどなぁあり得ない人工物のオブジェクト!旧共産圏のみたいなのではなくさぁ。
「いいや君の推測は正しい。ただしその可能性は惑星表面上ではなく、内部にもありえると考えるべきだった」
「おぉ!そりゃそうだ!21世紀を複製再現した惑星なんだから、そこまで人の手が入って当然だよな!」
だよな!うんうんと……頷いていたら、エステルがこちらを奇妙な顔で見ている。あれクオンが助言してくれて……いや、クオンなら私を君とは呼ばない。ヴォイド将軍もだ。ということは……ポリ!?とポリを見たら勢いよく首を横に振っている。ポリがいきなりテレパシーで話しかけて来たのかもと思った、違ったか。じゃぁ誰!?
「残念ながら僕はここを動くことができない。そこで君をこちらに呼びたいのだが、よいだろうか」
「いいけど……他の人は?」
テレパシーの相手は……高く若々しい少女の声だ。なんか10代行くか行かないぐらいの声だな?その声の誘いは他の人にも聞こえているようで……エステルはヴォイド将軍のことに興味がないのかやんわりお断り。クオンは「あなた様が指名されているので」とのこと、確かに呼ばれたのは私だ。
ということで私だけでもいこう、と思ったらポリが背中にゆっくり乗ってくる。一応は背中と腰が痛いを見て加減してくれているのだろうが、何かあっても庇う姿勢なもので……声の主を警戒しているのだろう。警戒することかなぁ?なら態々声をかけて呼ぶことはないが。
「では君にもわかるコトバで伝えよう。時間流操作の応用……空間移動、テレポートだ」
■惑星内殻 レプリカ・アトランティス ベース
私がテレポートにより飛ばされて、移動させられた場所は……軍事基地の敷地ではある。あるが空を見上げれば空は見えず、照明が続くばかり。建物の内部かと思えば、果てが見えない空の奥行を感じる!私を中心にぐるぐるポリが回って警戒しているが、かといって何か出てくるわけでもなし。
「こ、ここは!?軍事基地!?アメリカとかソ連では……ない!?」
「ここは惑星内部空間に作られたファクトリー・ベースのエリア。君の知っている概念でいえば地球空洞説を敢て実体化したものだろう。そこにヴォイドは工場を作ったのさ」
地球空洞説!ポリに説明せねばならないが地球の内部には……あぁいいの?惑星内部に地下作ってるだけだろう?そうだけどさぁ~アガルタっていうのがあってね?あぁいい、はい……おもしろいんだけどなこういうのは。ところで声の主はどこにいるんだろうか?
「すまない、まだ他人の長距離テレポート移動は不慣れなんだ。それに君ならここの光景を見ておいたほうがいいと思ってね。君の視界の左にある建物に入ってくれれば、案内はすべて自動でやってくれるよ」
便利なもんだな……と尻もちついていた腰を上げて。それでも落ちたもんで若干痛む腰を、叩いて歩き出せば……ポリが先導して向かっていく。こんな場所でも流石恐れ知らずのスペース・ウルフドッグ。頼りになるぜ。
そして建物内部に入っていった先、エレベーターを降りた先に私を待ち受けていたのは……巨大な機材が並ぶだけ並ぶエリア。そして巨大なシリンダーのような培養水槽も並んでいる!その一つには……やはり人間!人間を培養とか治療しているやつなんだこれは!
見てわかりやすすぎる……ただし、その内部の人間はまだ赤子のようで。誕生して間もないぐらいなのだろうか?この時代の人間は人工子宮で生まれてくる、と聞いているがこれはちょっと人工子宮っぽくはないな?ポリもなんか、この場所の匂いが苦手のようで鼻を私のズボンに引っ付けている。全体的にバイオテックな雰囲気と空気が漂っているのだ。
「君の考えているものとは若干違うんだ。ここはヴォイドの人造生体サイボーグ試験プラント。ヴォイドとヴォイドの大元たる君……再生者、ケンゴ。君たちを祖とする超戦士を生み出すための計画の中心さ」
「ようこそケンゴ、我らの父にして母。そこにいる赤子が僕だよ」
ウワーッ!赤ちゃんテレパシスト、超能力者が呼んできている!
ちょっとまって、自分を母と父……?いや男の私を父と母にする計画って何!?私は父親と母親2つの性質を併せ持つ人間ではないが!?知らない間に子供が出来ている、困る!?出生届は!?認知は!?
「そのあたりは追々しよう。今はヴォイドの計画について知ってもらいたい!落ち着いて聞いてくれ!」
落ち着ける要素が何1つ無いが!?ポリもびっくりして私と赤ちゃんを何度も見ているしさ!
恋愛とか結婚すっとばして子持ちなってしまったのかぁ~!?
9人の戦鬼と人のいう~




