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オリジン・シード  作者: 草間
ヴォイド・コンバット~虚空戦記~
122/136

2話 レプリカ惑星

■ 惑星バニッシュ・グラウンド ??? 地表


「目が覚めたようだな?」


「ぅあ……何が……どうだったんだったか」


「お前はギルドの戦艦が運び込んだ惑星破壊爆弾、その投下を阻止し……そのまま巡洋艦の残骸を使ってここへ降下したのだ」


 おそらく地面に仰向けになっている……私の真上。そこで誰かが、私を見下ろしながら……丁寧に教えてくれている。おそらく太陽と重なる位置なので詳細はブラックアウト、顔が見えていない。しかしその言葉は超然とし、かつ私を思いやっているようで。手を差し伸べ……立てるかどうか、と聞いてくれる。


 衝撃吸収が間に合ったようではあるが、プリズムが先ほどから危険信号をずっと放っているほどの衝撃が連続していたのかもしれない。私がその手を取り立ち上がると、その影は私へ……覚えていないのも無理はないとも伝え。


「その間にも崩壊していく残骸を飛び移り続けて、ここに到着したのだ。中々の勇気、名前通りの戦士(マイティ)として認めようマイティ」


「それはどうも。しかし誰だか知らないが態々起こしに来てくれるなんて、ありがとう」


「誰だか知らない?困ったな衝撃が中々に強かったようだマイティ。私の姿を忘れてしまったのか?」


 いやーお天道様も燦燦と輝く場所じゃないかここは。北海道あたりのデカいオープン型球場かな?いやどっちかといえばシドニー当たりの……あの、なんかリンゴ切ったのが重なった建物。そうオペラハウスに近い……天井あたりとか内壁の形がそう。でも芝生なんだよなここ……


 と、思っているあたりで……お相手の語りがおかしいことに気づいたが!?えっ?と視線を相手に向けて見ると……そこにはヴォイド将軍その人がいた!黒いスカルなヘルメットに白いドクロの縁取りマーキングを付けた、異形の強戦士!マントの下からも尾を揺らし、副腕をも使って私を持ち上げた相手!


 もう一人のボク!



「ポリィに感謝しておくといい。お前が目覚めるまでずっと傍らにいた」


 おっおう、そうだな?と横を見るとアーマードされてるポリが控えてくれている。しかしヴォイドへはずうっと距離をとって……いや、いつでも飛び掛かりクローをお見舞いできるようなるな位置にいる。やはりポリにはわかるのか……正体が!?誰だ!?


「では一マイティ、お前が目覚めたことでヴォイド・コンバットの参加者全てが揃ったことになる。開催を宣言してもよいかな?」


「あ、あぁもちろんだ。ヴォイド将軍、待たせてすまない」


「いいやそこまで待ったわけではない……()()()()()()()()がな」


 この大会?に並々ならぬ思いがあるらしい……もう一人のボク!ではなくて偽物のヴォイド将軍さん。さておいてヴォイドは私を立たせた後に、高らかに宣言し始める。この銀河超人バトルオリンピックな大会?ヴォイド・コンバットを!


 そろそろ説明が欲しかったんだよ!ヴォイド・コンバットって何!?


「予選の参加者が全て揃ったことを、このヴォイド!確認した!今よりこのヴォイド・コンバットが如何なるものかを説明しよう!」


 説明しよう!ヴォイド・コンバットとは!?


 ザ・マスターが残した聖遺物である聖斧を持つ資格があるものを決める戦い!


 マスター・パワーを操り、聖斧の真の力を引き出せるだろう……その戦士を選ぶ戦いなのだと!これが何か分かった者がこの大会に参加しているだろうし、わからずともその参加資格はある。持ったことで目覚めるかもしれないから、とヴォイドは掲げる。


「聖斧を持つこと。これ即ち、再生者とは違う道を行く者ということに他ならない!」


 聖斧を手に入れ、再生者と共に行くのもいいだろう。だが己が力を見せ手に入れ……これを操ることが出来るのならば。銀河神話の時代にあるエルダーとも戦える力をもつということ。己がこの宇宙で何を成すものとなるか考えればいい。私はそうした戦士を求めている……この宇宙で共に、或いは競い争う戦士として!とヴォイドは高らかに宣言した!


 そんなこと望んでないが私は?再生者としてもだ!


「場所はこのバニッシュ・グラウンドで行う!ここはかつてあった惑星の文明社会を再現再生したものである!」


 ドロイドが空へ投影する巨大スクリーン、そこに写し出される再生されたと言われる文明社会の各地……それはどうみても21世紀の地球ではないだろうか!?スフィンクスとか……ここのオペラハウス球場とか、マンハッタンや万里の長城にクレムリン、タージ・マハール等ワールド・ワイドな観光地が!写ってる!


 うそだろ!?北関東のミニチュア・テーマパークじゃないんだぞ!世界地図も併記されているが配置おかしくないか!?


「残った総勢100名の戦士たちよ!まずは各地へ飛び、戦い、バトルロワイヤル形式で選抜させてもらおう!勝ち残った16名を本選へ進出させる!」


  最終的に本選では2人のグループが4つ、それぞれAブロックとBブロックに出来て別れるのだろう……結構オーソドックスな感じになっているな。というか表示される100人皆個性が強すぎる……艦船をマイクロ・ブラックホールで消し飛ばすような連中と戦うの?この惑星で?まず予選から怪しくなってきたな……ルールで禁止してくれないか?そういう広範囲のは。


「ルールは簡単!条件などない、勝ち残れ!ただぁし!たった1つ覚えておくがいい!」


「このヴォイドの名を冠する戦い、決して卑怯な真似は許されない!今大会で一度でも行えば、宇宙の戦士としての誇りを一生貶めるものとなるだろう!」


 ウワーッ!ルールなんてあったもんじゃない!どうするんだ、こんなヤバそうなメンツの中で……戦えるのか私は!街ごと吹っ飛ばされたら堪ったもんじゃないぞ!?ポリを抱えて逃げるなんて出来る攻撃範囲じゃないかもしれない!


「では予選は3日後!各々指定されたエリアで戦いに備え、英気を養うがいい!」


「ヴェハハハハハ!!!」


■翌日 朝 惑星内 レプリカ・ハコダテ レストラン


「ううん……これは困ったことになったな、ポリ」 

 

「フゥー」


 もうわけがわからない事態から始まっているのだから、今更だろう。ポリは「諦めて落ち着け」とでも言ってる具合で床に座り……私が焼いたビーフステーキを齧っている。塊のままだと食べにくいし、消化に悪いのでしっかり切り分けて綺麗なお皿に乗せているやつだ。


 さて私はというと……予選が始まる前にヴォイド・コンバット運営から、割り当てられたエリアで待つように通達があったのだ。エリアのどこでも好きなところに居てよいし、欲しい物資があれば提供されるという至れり尽くせり。ただし開始まで他の参加者との接触が禁止されてしまったのだ。完全に仲間と分断されてしまった……ポリ以外は。いなかったらどうなったことか。


 途方に暮れていたが……それまで何もせず棒立ちしているわけにはいかない。食事や寝る場所を確保しないと……と探していたら見つけたのがこのレストラン。どうみても私が知っている、21世紀の日本……北海道函館にあった老舗のレストランがあった!


 当然レプリカなので中には人っ子一人いない。21世紀でも行ったことはなく……しかしさいたま辺りの支店は行った覚えが、と思い出すぐらいについつい懐かしさを感じてしまって、ここを休息地に選んでしまったのだ。


 なにがいいって人が使う場所として想定されているし、キッチンも食事するところもある。そんなわけでアーマーを脱いで……運営に頼んだ食料とか生活雑貨を開封。肉類や食料で料理を作って食事をしていたのが昨晩。


「しかし昨晩はなかったけどこれ……大会用の、ものだよなぁ。寝てる間に運搬されてきたのか?」


 ざっと書類を眺めてみると最低でも予選の間はここを休息地とする、という申請書類のようだった。サインの欄には既にポリの肉球スタンプもあり。


 こ、細かい!こういうところ書面に残そうってあたり……結構気にするタイプなんだなヴォイド将軍。そこは私とちょっと違うかも。でも大会運営ならそうことも気に掛けるものか。


 他には大型のモニターがいくつか運び込まれている。そのうちの1つには減っていく数字の羅列……所謂タイマー。予選までの時間残り2日ほどの時間は刻一刻と減っていく。まぁあと2日ぐらいあればなんとでもなろう。


 他には私が参加する予定のエリア、レプリカのマンハッタン島エリアの地図や詳細が伏せられている参加者名簿が上げられていた。そこへの移動手段の申請用紙もある……ポリもいるところだし車とかあれば、だが機動性ならこのヘビーバイク?なんだろうか……等々。


 とかくいたせり尽くせり、な具合。


「他の人たちもこんな具合ならいいんだけど。とにかく予選を勝ち残らないとダメかぁ」


 自分の手元の、朝食としたオムレツを弄りながら思う。レプリカと言えど地球っぽいもので火力の調整具合もよかった。懐かしさから変な気分になってしまうが……そういうのが、なんというかよくない影響を与えないといいのだが。


 この豆から焙煎したコーヒーでさえ不味く淹れてしまったというのに、不味いことが21世紀という過去への懐かしさを引き立ててしまう。上手く淹れられた経験がないことも……郷愁を誘う。


 いやいや、私は地球の再生のためにも戦っているんだから……こういうのをパワーにしないとな。


 でも今回、ヴォイド将軍っていう私の偽物の正体を知るために来てるんだよなぁと思ってしまうと……また溜息が出てしまう。本当に誰なんだ彼は?あの軌道上の戦いもあって完全にマークされてしまったのが困るなぁ。自ら助けに来てくれたのは想定外だったよ、本当に。


「とりあえず予選までに風邪とかひかないように、健康に気をつけないと」


「えぇそれはもう。しっかり食べて、しっかり休みましょう。力を溜める切り替えができるのも戦士の素質ですよ」


 いきなりの出現に、ちょっと驚いたが……ありがたいことに、今の私には夢を通して繋がっているクオンの幻像がいる。超装甲の制作にあたって、通信ハブにするようなものを仕込んでくれたのだろう。


 ポリは確かに力強く心強いパートナーだが……それ以上に超パワーの理解があるサポートがあるというのは今回特に求めたいサポートだった。これは恐らくクオンからのテレパシーみたいなもので、私が幻視している幻でしかないだろうが……それでもクオンが側にいてくれるのはヘンテコな状況で希望の1つになった。


 なにせ聖鉄、エルダーの案件だ。それも……聖遺物みたいな扱いをされている、らしい聖斧のこと。それらについてレーツェンやカナタに詳しく聞こうとすると「いえそれはクオン姉様のほうがご存じでしょうから……」と言われてしまい。


 彼女らとしても「内容が危険だから」で、はぐらかしていた……わけではないだろう。そこらはわかっていたので、まぁ必要な時に教えてくれるか……と悠長に構えていたら完全に聞くタイミングを失っていたのだ。だが彼女らがクオンに説明を任せた、とはこういうことだったか!テレパシーで私に教えてくれるんだな?


 まぁポリには見えていないから、実際に色々情報を共有するのに私を挟む必要が出てしまうが……とポリを見ると。まだ食べている途中の肉を口から落として、クオンがいるところを見ている。何もないところを見ている犬猫みたいでかわいいが。


 それにしてもポリが食事を落とすことなんて珍しい。味付けの調整に失敗したかな?だがそういうのも日常の食事だ、ポリには悪いがこの時間を大事にさせてもらおう。


 私のテーブル対面にいる幻のクオン。21世紀の地球で……こうして美女と一緒に穏やかなモーニングをレストランで取れたらどれだけ幸せか。今回は巫女装束ではなく21世紀的な、しかし落ち着いた……なんていうか2000年代ゲームみたいな若干イモい私服に着替えているクオン。


 特定年代の青少年青春幻想的希望を形にしてくれたような姿のクオン。もはやファンタジーとしかいえないイメージではあるが、こんな美女との穏やかで素敵な時間があるからこそ……ちょっと非日常の戦いにいけるというもの。うぉニット系セーターでお胸が強調されている、でっかいどうハコダテ。


「あの、私は実体です。出来れば私にも朝食をいただきたいのですが。ポリと同じようなものを」


「うぇえ!?ク、クオン!?なんでここに!?あっちゃ!ちゃちゃちゃ!」


 びっくりして立ち上がった揺れでカップのコーヒーが大津波。ズボンに零してしまったところ、御冷の方をかけて冷やしてくれるクオン!なんでここにいるの!?


「話せば長くなるのですが」


 手短に頼むよ!


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