1話 エントリー開始!
■惑星バニッシュ・グラウンド軌道上
ヴォイド・コンバットの詳細ではあるが……宣言の出た段階では不明なところばかり。わかっているところなんて3つだ。賞品が聖鉄製の武器で聖斧、開催場所は惑星バニッシュ・グラウンドという場所でありその座標。そして……開催者がヴォイド将軍という情報のみ。開催日時すらもよくわかっていない。本来はなんかすごい水とか壺で……開催時期がファンタジックとかミスティックにわかるやつなんでしょうか?
そんなものでまぁ……現地に着けばなんかわかるだろう。ぐらいで出発したものである。当然私含めて正体を明かすものでもなし、海軍の旧式輸送機を拝借して……超装甲の私とエルシー、コンバット・アーマーのソニア。シルバー・サムライのカナタに……恐れ知らずの軍用犬ポリを連れて惑星バニッシュ・グラウンドへ超空間航法で向かったのだ。
向かったのだが、ワープアウトしたその先で我々を待ち受けていたのは……まさしく惑星間戦争のような状況だった!
治安の悪い装飾をした戦闘艦や航空機が飛びかい……旧海軍系列の、しかしダークにカラーリングされた艦船や航空機と交戦しているのだ!惑星の軌道上いっぱいに!
「ギルドの戦闘艦!航空隊も……聖斧を狙ってやってきたのか!?」
「そんなに複雑なものではないでしょう。記録にあるようにヴォイド将軍がギルドの艦船を臨検していたことから報復を狙ってが妥当では?」
操縦席にいる超装甲1号……ことエルシーが冷静に解説してくれる。してくれるが……それは、その私のやっていたことがこの事態を招いているのか?だからってここまで大規模な惑星攻撃部隊が出てくるなんて。そんなに臨検やっていたっけか……覚えがないんだけども。
しかしこんな戦争状態になってしまってたらヴォイド・コンバット?どころではないのではないか。これじゃ惑星に降りることもままならない。しかしここで留まるのも得策ではない……と考えてしまっている私を他所に、操縦者であるエルシーは華麗な操舵で対空砲火や航空機の攻撃をかわしていく。かわしていくからすごいグルグル揺れている。
「さてどうしますか超装甲戦士マイティ、私の操縦ならこのまま惑星に降下できますが」
「そうですマイティ、ですが癪に障るギルドの連中を放置していくのですか?騎士としてはオススメしません」
「えっ私もですか?えぇと……マイティ?私としては……ここが予選、あるいは参加資格を決める場と考えるのもよいかと。ここで生き残れない者に参加資格はない、というような?武士としてはある程度打って出るべきかと」
マイティって私のこと!?また新しい名前が生まれようとしている……どうしよう、ポリとみれば。スペース軍用犬のためのスーツのメット越しではあるが……今回は、お前が決めろというような眼差しが見えた気がする。呆れるわけでもなく、バカみたいなお名前に何か言うわけでもなく。
確かポリは監獄要塞で出会って、ヴォイド将軍をやっていた時もずっと一緒にいてくれた頼もしいスペース・ウルフドッグだ。その彼女からしても今回の一件は思うものはあるのだろう。なら、私が堂々と……それらしいことを決めればいい。考え方をトレースするなら……こういった状況の場合(私から生まれただろう)ヴォイド将軍ならどう考えるかというもの。もしかしたら……トレースしていくことで、いち早く対面することも可能かもしれない。
「よし、打って出よう。4人と1匹なら1隻の軍艦へ一度に乗り込めば制圧は無理にしても無力化は出来るかもしれない」
戦うという意識を改めて自身へ宿すように……超装甲の上から、擬装用に被さっているマントの結び目を引き締めてみんなに伝えると。その、なんか……間があった。間?あれ何か間違えただろうか?ポリを見ると……若干違うんだよなぁっていう細めた目でこちらを見てくる。ニュアンスが違ったかな?
「ご冗談をマイティ。我々は一騎当千の戦士。一人一隻無力化するのにそう時間はかかりません」
「その通り。このブラック・ナイトなら……そうですね、シルバー・サムライ?競ってみますか。先の試合であなたは参加しませんでしたから。この場を借りて競ってみますか、流派を」
「呼び方をコロコロ変えるのをやめてくれませんかブラック・ナイト。しかしいいでしょう、そう言われたら私も引く理由がありません。時間と数、両方で」
えっそういうことなの!?みんなどんだけスーパー・ソルジャーなんだ……と思ったが、それもそうだ。あのアンジェラを筆頭に本当に超つよい人らが私の周りに集まっているんだった。一番頼りないのは、たぶん私だな?ポリ助けて……と見れば、仕方ない付いていってやろうという顔で私の前に控えてくれた。ありがとうポリ。
「ではヴォイドの軍勢が交戦してる中で、攻撃が一番手薄なところへ輸送機を近づけていきます。各々惑星降下する前に大怪我などしないように!」
エルシーの操縦が一層曲芸じみた機動を取ると同時、輸送機の後部ハッチが開く。そして真っ先に出ていくのは……マントを翻し飛んでいくブラックナイト・ソニア。続いてシルバーサムライ・カナタ。そして……ポリが飛び込むところに、私も火器を手に飛んでいく!マントを翻す超戦士が3人と1匹が順次飛んでいけば……私のHUDに写し出されたのは各々の機動。
そして最後には遅れて、輸送機ごとどこかの船に強制揚陸する1号戦士エルシーが見えた!
突入開始!
■ 惑星バニッシュ・グラウンド軌道上 ギルド巡洋艦 艦橋
「エルシー!何が攻撃の一番手薄なところだよ!甲板や側面に向けて滅茶苦茶艦砲がブチこまれているんだけど!?」
「それでも一番薄いところですよ。ポリもいるのに艦橋制圧はまだなんですか?」
「今艦橋の外だよ!まったく!」
とんでもないところに下ろされてしまった。巡洋艦の甲板に降り立ち、走って艦橋へ向かって制圧!する方法を選んだ私だったが……中々にシビアな戦いだった。なにせ先導してくれるポリが装備しているエレクトロ・クローで道を切り開き、私が追従しながら彼女に近づきそうな敵をショック・マグナムで制圧しながら……という行動まではよかった。スピードも重視されて。
しかし!そこかしこからヴォイドの軍勢……軍艦や航空機の攻撃が近くを通るもんだから、それらを回避したりやり過ごす必要も出てくるのだ。搭載AIのプリズムの誘導や警告がなければ、ずっと爆撃と砲撃くらっていたかもしれない。
そんな宇宙爆殺アスレチックを抜けた後、私とポリは艦橋の外にまでたどり着いたもので……プラズマ爆薬を設置。ポリと視線を合わせ、起爆のタイミングを計り……カウントが0になったタイミングで爆破!艦橋の窓をブチやぶり、内部にいたギルドの戦闘員が外に放出されるタイミングでポリと共に突入した!
シャッターが閉まるまでの超短時間でポリはクローで獰猛に飛び掛かり、私はショック・マグナムで混乱の最中にある残りの戦闘員を鎮圧した。もちろん最後にはナビの通り……艦橋から外の通路に続くドア開閉スイッチを破壊して。
「艦橋制圧完了!あとは……あとは……」
放出された戦闘員に向けて念仏を唱えるだけ……とはいかない。この艦船を自爆させたり、なんかこう……砲撃で他の艦船を沈めたりできればいいんだが。プリズムが艦船のシステムにハックをしかけて完了するまで何をするかを考えなければいけないんだが、はてさて。
「掌握完了。次の指示をマイティ」
「プリズムまで。そうだな……あぁ、そうか!通信の、オープン・チャンネルで伝えたいことがある。頼める?」
了解、とプリズムが応えてくれると……この軌道上全てに向けた通信が開かれる。何をやるかといえば、簡単なことだ。ここから何をするにしても今誰がどこにいるか?何をしようとしているか……それがわからなければ余計な危険を広げるだけだ。ソニアやカナタ、エルシーがいる場所はわかるにしても他の参加者まで巻き込むわけにはいかない。なので私はここにいて、何をやっているか伝える必要があるのでは?と思ったわけだ。
「こちらマイティ、艦船の1つのコントロールを一時掌握している。これから他ギルド艦へ攻撃する予定だ、他にも艦船に突入している者がいたら教えてくれ!」
すると、だ。ヴォイドの軍勢からの攻撃はピタッとやみ……その少し後に、艦橋に残されていたモニターに続々と映し出される面々。なんとまず真っ先に顔を出してきたのは……ヴォイド将軍!
そしてブラック・ナイトやシルバー・サムライ、1号を始め……厳つい恐竜の顔とか、獣や超合金製ヘルメットの騎士とか呪詛包帯!?でグルグル巻きのダーク・法師まで出て来た!コワイ!これみんなヴォイド・コンバットの参加者なの!?なんだかよくわからんが、猛烈に嫌な予感がしてくる面々だ!
それらのメンバーがいるだろう艦船の所在がハッキリしたもので、プリズムに向けてそれら以外の艦船へと攻撃指示をすると……一部は爆発。残りはこちらへ向けて攻撃を仕掛けてくる!オープン・チャンネルなもので、居場所を高らかに宣言したようなものだからだよなぁ!
「一番近い艦船にぶつけて、後はエルシーに拾ってもらおう!エルシー!?」
「回収にはすぐ迎えますが、中々ハードになりますよ。あなた今全方位に向けて居場所を発信していますから」
なんで!?と声が出るとプリズムが解説してくれる。オープン・チャンネルで意図を公開したということはそういうことだろうと考えやっていると。ただ他の参加者への誤射を避けたかっただけなのに、ギルドの連中全てに中指突き立てているような状況にしていないか!?全員掛かって来いよって宣言になっている!
そういうことでしょう?じゃないんだよ君も事後承諾派か!
「ヴェハハハハ!マイティ!中々の強者よな!貴様のような戦士がこのヴォイド・コンバットに参加すること……このヴォイド、喜びしかないわ!」
「くそっ知らんところで認められる、おかしい事態だ!」
「アプローチまで60秒を切りました」
エルシーから送られてくる輸送機の機動図、回収ルートに向かわないといけないのに……先ほどからこの巡洋艦に向けて突撃してくる攻撃機や突入部隊の多いこと!このままではいけない、と判断すればポリに視線を向け。ポリも了承してくれたようで、同時に艦橋の側面を爆破して脱出!
そのままアンカーフックを用いて、回収しにきてくれた輸送機へ合流した。出来た。背後には爆発四散していくギルドの巡洋艦が閃光をまき散らしているが……こんなことはこれっきりにしたい。したいが、輸送機を操るエルシーはそうでもないようで。また別の巡洋艦の下に向けて……アンカーフックを振り子のように使われて、私を振り落とす。次の宇宙爆殺アスレチックのコースはここだ、というように。
「くそーっ!あと何周すればいいんだ、このコース!」
「最低2週してください、ソニア達から周回遅れにされてますよ」
うそでしょ!?と声が漏れると……ソニアは反射するガラスを用いてピース作って自撮りしてこちらにアピールしているし。カナタは艦橋ごと切り裂いている映像を見せてくれる。ハイパワーすぎる……他の参加者もすごいし。なんか小型ブラックホールみたいな渦に巡洋艦が半ばから飲み込まれているし、巨大化した獣人みたいな人がへし折っている!
もしかして銀河超戦士オリンピックに参加してしまった?コワイ!帰りたい……!




