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オリジン・シード  作者: 草間
ヴォイド・コンバット~虚空戦記~
120/136

プロローグ6

■巨大遺跡構造体 アーモリー外殻 試験場


 かつて監獄要塞の中枢として不完全なまま利用されていた……宇宙超常存在(ザ・マスター)の遺産、巨大遺跡構造体の1種。メガ・アーモリー・ストラクチャー。そこは本来の資格者であるザ・マスター……その後継者である再生者の私を迎えたことで、現在は機能を十全に復旧させ運用されている。


 平時は回収された元海兵隊であったり元海軍の艦艇を再生(レストア)するために使われているが、これはあくまで統合軍の軍事行使能力を過剰にさせないため。銀河連邦における国際基準から逸脱し、誰も手を出せない軍隊……に見せないためである。あくまで見せないため、ではあるのだが。そうしてパワー・アーマーや艦艇等をレストアした後に動態保存(モスボール)することも行っている。


 私はそこで何をしているか、といえば……あまりそこでは行われない兵器の試験を自ら行っていた。銃も刀剣……ましや戦闘機や艦艇の操作ですらも不慣れな私ではあるが、体を動かすことはそこそこできる。


 そのため以前ここで制作されたパワー・アーマー……ヴォイドのフレーム等を再利用したアーマーのテストをしているのだ。なぜかと言えば、そのヴォイドと戦うため自分が装備しなければならないだろうものであるから。


 試験場は射撃場のように、標的が並んでいるだけのものではなく。軍隊の特殊部隊が突入訓練するためのキルハウスに近い。それでも宇宙で戦うための、三次元的立体機動の訓練を重視しているものだった。安っぽくいうと、宇宙アスレチック・コースだ。


 鏡面のように反射する壁へ目を移せばそこにはクオンがデザイン超装甲戦士そのまま……を、若干ブラッシュアップされたデザイン。彼女の本来の姿か本体のような、虫のような瞳にツノを持つ顔が写し出されていた。ボディといい、この遺跡構造体のように神秘に輝くプリズムのカラーでコーティングされている。


 近くに浮遊しているドローンが、赤青のランプで信号のようにカウントダウンを行い……スタートの合図になれば。私は見た目とは裏腹に軽い、超装甲パワー・アーマーで駆け出していく!歩行音である金属音と、床材の金属音が重なり合う音が続いていく!


 外から見たらどうかはわからないが、体感としては重い鎧を着用している感覚は全くない。あのヴォイド将軍をしていた時はそこまで気にすることがなかったが、このパワー・アーマーに使われている素材がそうさせている。聖鉄の性質というものらしい。伝導体としてマスター・パワーを流して操る以前に……精神感応金属のような働きがあるのだとか。


 ちょっと資質があれば、程度によって装着者の思うままに重量感と重量を調整できる。


 それってどういうことなのだろうか?というのは今回のテストの試験官により、アーマーに押し込めらえて(重力下の)高所から突き落とされた時に理解できた。


「推定降下距離10m」


 それを理解した上での応用。私はコースの次の進路……ナビゲーションを行ってくれているパワー・アーマー搭載AIのプリズム(PR2M)の測定の通りの高さから飛ぶ。つまり次のコースは10m下、そこまで飛び降りるのだ。


 私は突き落とされた初回とは違い、特に恐れもせず飛び降りた!いややっぱちょっと怖い!


 姿勢と整え、十字のように腕を広げ空を切り裂きながら……1G下を自由落下していく。ヘルメットに搭載されているHUDヘッド・アップ・ディスプレイに投影表示された数字がみるみる下がり0、地面に到着!しかしそのビル3階聞ぐらいの高所から落ちても問題なく、足の痺れも……体をバラバラにしそうな衝撃も感じていない!


「衝撃吸収率、問題なし」


 むしろ降下した先の床面がヒビ割れているほど。すごい重さのものが落下したような後が……視界下部に見えた。


 精神感応の応用で重さが、というのはこういうことなのだ。私が重いと思えば重くなり、着地の安定感は……ものすごいものになる!さらに衝撃吸収機構も合わされば……こうして平然と、速やかに迫りくるトレーニング・ドロイド軍団にも対応できる。


 例えばこうして、白兵戦の拳のインパクトの瞬間を重くするように!


 言われて気づいたが、これは惑星ネザリアで機械福音教団の騎士エステルと対峙した時。ショック・セイバーが当たるインパクトの瞬間だけ重くした時のようなものだったのだ。セイバーも、このパワー・アーマーも同じ。そうと理解すれば早く、こうして落ちた後も平然と白兵戦に移行できている!


「ターゲット測定、判定。照準補正に移行」


 そこからまたさらに駆け抜けると市街地を模したゾーンに入っていく。


 そこでは方々から出てくる立体ターゲット……異星の戦士や、モンスター……ドロイド兵を模したものが出現してくるのだ。そのターゲットをどの手段でもいいからダメージ与えろ、というもの。私は右太腿のホルスターからショック・マグナム(ガンらしいがノらないのでこっちで呼んでいる)を取り出し、移動しながら撃ち抜いていく!


 もちろん移動しながらの射撃は高度な技術と経験を必要とするものだ。しかしAIプリズムのサポートのお陰で、素人の私でも正確に素早くターゲットを撃ち抜くことが出来る。路地を移動しながら小型のターゲットを攻撃し、ビルの側面を移動しながら中型のターゲットを撃ち抜いていくような芸当も出来る。


 そして大型の恐竜型ドロイド・ターゲットのみになり……これを撃破して先に進めばゴール!


「後方より射撃を確認」


 えっ!?と驚いたのも束の間。目の前のドロイドの顔のあたりが2度、撃たれて揺らぎ怯み。そこへ向けて……ミリタリーカラーのブラック・グリーンのシルエットが私を追い越して飛ぶ!飛んだらコンバット・ナイフを大型恐竜ドロイドの額に打ち込み、そのまま反転して飛びすさぶ。


 恐竜型ドロイドが倒れた姿を確認することもなく、私の前方を遥か先に駆け抜けては飛んで行ってしまった。


 私がそれに追いつこうと何とか走っていけば、ゴールで待っていた姿は……同じ超装甲戦士。


 ただしカラーリングがプリズムカラーではなく、ミリタリーテイストのもの。それが私のゴールしブザーが鳴ったところを見届けて……語りだすのは。


「まだまだ扱い方に慣れていませんね。このアーマーは何でも出来る特徴、装着者の才能に左右されすぎる。欠点ともなりますが、あなたならもっとうまく使えますよ」


「このアーマー、確かにすごいんですが……短期期間で完全に使いこなしているアナタのほうが驚きですよ」


 ふっと小さい笑い声が聞こえた後に……私を通りすぎて行った超装甲戦士。ヘルメットを取り外し、素顔を露わにするわけだが……出て来た顔はロメオ分遣隊の誰かでもない。ましてや統合軍の誰かでもなく……そんな彼女につい聞いてしまう。


「駐在武官ってこんなに強いんですか?」


「さぁ?私は腕にそれなりの自信がありますが」


 惑星アレクサンドリアに駐在している地球帝国の武官、エルシー。彼女の金の髪と青い瞳が露わになった。彼女が今回の試験官をも務めているのだ。この試験は今日だけで4周目ではあるが、全てのラップで最後に追い抜かれている。スタートするタイミングをズラしてハンデを貰っているのに!


「ヴォイド・コンバットまで期間がありません。せめてもう少しタイムを縮めてもらいませんと。超装甲戦士たるものが同行者の、足手纏いになるような事態は避けていただかないと。アンリ、がっかりしますよ?」


「ぬぅ……もう1周行きます!今度こそスコアを抜けるぐらいには!」


 横に飛んでいるドロイドが掲げるタイム。私とエルシーのしかないが、エルシーのタイムはとんでもなく速い。本当にこの超装甲……いや、ゼノ・テックを使いこなせていないと出せないようなタイム!これ終生残りそうだな……どうやったら追いつけるんだ?本当に戦闘の才能がズバ抜けているようだ。アンジェラ達とは比較できないし、したがらないだろうけども(超装甲を用いてのタイムアタックなのでみんな着たがらない、ダサイから嫌だって)


 さて……なぜ彼女が。地球帝国側武官であるエルシーが、私の装着している超装甲2号のお兄さんである1号を装着しているかを話すと……ちょっと時間を巻き戻る。


■ 惑星アレクサンドリア 執政府 第三執務室


「ヴォイド・コンバットの開催を宣言する!」


「ヴェアハハハハハハ!!!!」


 第三執務室の中央に投影された映像の……ヴォイド将軍の高笑いが響く。執務室に集まっているメンツを招集した人間であるネロはため息……を通り越してゲンナリした顔でこちらを見て言葉を選んだあとに一言。


「で、どうするのよこれ」


「どうするも?こうするもだよ!全く身に覚えがない!どうしたらいいんだよ!」


「ほっといていいんじゃない?実害ないでしょ、再生者様が困るぐらいなら放置で」


 生まれてきてから今が一番やる気がない時期です、みたいな具合のネロ。金髪のサイドテールを揺らして椅子に体を沈め、私はもうどうでもいいわって姿勢をしている。だがそうもいかないんだ、と手を上げて述べてきたのは……エメラダ。元海賊軍の副司令であり、統合軍海兵隊の副司令でもある彼女だ。


「我々ならいざ知らず、末端の元海賊軍の者らからは困惑の声が上がっています。正体を知っている分、あれを偽物だと断じているものが多いですが」


 一方で、あちらの方が()()()()()()()()()()のではないのか?という疑問を抱いてしまっていると。


 私のやっていることは現在の社会と、再生者としての救世主のこう……そういうものの折り合いをつけてやっているわけだ。わけだ、というか銀河連邦の議員の方々や教導院のマスター達にアレクサンドリアの面々からの要請から審議されて……みたいな役職の仕事として機能させている。銀河民主主義に則ってね。


 しかしヴォイド将軍はそこらへんを通さない。独善……とまではいわないが、独断でやることを決めているようだ。こうしたヴォイド将軍の率先して姿を現して何かをしている。噂では産業同盟の最高幹部になって乗っ取ったのか?みたいだったり、統合軍にも加盟しない元軍人や難民を受け入れているようなのだ。


 救世主像が2つある、と言う状況。しかしそれが私の身から出たようなもの……なもので、なんともどう反応すればいいかわからない。再生者の偽物ならわかるんだが、ヴォイド将軍の偽物なんてどういうことなんだ?


「どの道あれの正体を明かす、それ以外ないわ」


「アンジェラの言う通りです!こんな偽物を蔓延らせておくには耐えがたい!即刻乗り込みましょう!」


「このままでは末端の統制が揺らぎます、対処を」


 言い出したアンジェラは「私はパス」としたところでソニアが梯子を外されたかのように二度見するが……乗り込むには変わらないのだからとスルー。エメラダの言う様に放置したら放置したで「普段姿を見せない私ではなく、あっちが本当の再生者である私(?)なのではないか?」と疑念の種を蒔いてしまい……統合軍末端からの離反に繋がりかねないのだ。


「メンバーについて、ナンブはいいとして誰を連れて行くの?ポリは決定として」


「騎士である私だけでも十分。戦力想定が不可能なのでコンバット・アーマーを装着していきますが」


「でしたら私も。この場に呼ばれたのは聖斧に関することもありましょうから」


 ソニアに続いて手を上げたのはカナタ。確かにこのヴォイド将軍が賞品(トロフィー)にしている聖斧とやら、何かは知らない。ザ・マスターが関わっている品であることは間違いない。レーツェンも何か知っているようだし……と、なるとゼノ・テック関連のことになるだろうから海軍捜査局のクレア少佐は……うん報告だけでいいって青い顔をしているな。わかるよ、行きたくないもん私も。


「しかし私の偽物か~こういうのってやっぱり、私のクローンが正体だったりするのかな?」


「そんなことは、ありえません!」


 適当な雑談程度のおしゃべり気分、ではあったのだが……それに対してものすごい剣幕で否定してきたのがクラウディアだった。普段温厚で、私のことを大体慮って事務仕事や配慮をしてくれる彼女が、テーブルに拳を叩きつけて否定してきた。


 なぜクラウディアが!?と彼女の顔へ急いで顔を向けてしまうが。それで彼女がふと冷静に戻る……というようなものでもなく。どうしたことだろうと言葉に詰まってしまったら……やれやれとネロが補足してくれる。ご苦労をおかけします。


「クローンをつくるなら遺伝子情報が必要になる。じゃあアンタの遺伝子情報はどこから漏れた?ってこと。今のところ漏れる要素なんてこの惑星か、軍隊か、遺伝子治療(ジーン・セラピー)のために協定を結んでいる地球帝国研究機関かのどれか?」


 銀河連邦が強く結びついている地球帝国から生まれた軍産複合体……産業同盟。そこが最高幹部にヴォイド将軍を招き入れた、ということならば……地球帝国側が私の遺伝子情報を漏らしたとしか考えられなくなる。つまり疑うなら地球帝国、と言ってしまったようなものなのだ。再生者である人間の遺伝子を遺伝子治療目的以外に使わない、という協定を無視して。


「ごめんクラウディア!なんかこう……ブラックとかダークとかシャドウとかって、クローンが正体っての多いから……そういう疑いを持っているわけではなくて」


「そういう疑念が出るのはあなただけではないでしょう。協定を結んでいるとはいえ実際に使えばどうなるか、興味がないといえばウソと思う人間は多い」


 再生者のクローンを作り出し、ゼノ・テックを掌中に収めマスター・パワーを操る存在を作り出す。可能性としてはあるかもしれない……そんな提案をし、クラウディアを振り向かせたのは彼女の背後にいたエルシー。駐在武官であり彼女の上司だろう人だ。


「ですので我々の疑いを晴らす……正体を探るために私も同行しましょう」


「エルシー様が!?そんな、でしたら私が行きます。あなたが出るほどのことでしょうか!」


「カナタ、今回のヴォイド・コンバットとやらどう見ますか」


 私ですか?と振られたカナタは首を傾げたが……すぐさま「なぜ自分に振られたか」思い至ったのか。すらすらと今回の大会?とやらと……どういう戦いが予想されるかを解説してくれた。わかりやすく。


「聖鉄で作られた聖斧、それをトロフィーとするならばソレが何かわかり扱える者が少なからず参加するはずです」


「マスター・パワーを多少なりとも扱えるもの。最悪の場合はエルダーが出現、そうでなくともカナタやソニアぐらいの使い手が出てくるはず」


 確かにその通りだ。参加者全員が聖鉄が何かを知り、またマスター・パワーを操るような存在ではなくとも。100人参加して、その中でも10……まぁ5人?使えるような人がいれば壮絶な戦いになることは間違いない。ちょっと普通の武闘大会とは違う雰囲気が出ているのか。


 ということは……エルシーも、まさかマスター・パワーを使える……のか!?


「あぁいえ私は覚えがないので。適当な装備をお借りできれば」


「でしたら超装甲戦士用に試作したアーマーが1つあります。そちらがよろしいと思いますが」


 よろしいですか?と聞いてくるのはプリムとアルマ。メガ・コフィン・ストラクチャーの管理AIであるプリムと……メガ・アーモリー・ストラクチャーの管理AIであるアルマ双方からの提案。ヴォイド将軍出現にあたって、他に頼れないものだから……戦うだろう場合に備えて彼女らに相談しアーマーの改修を頼んでいたのだが。


 その彼女らが推薦するとは、どういうことだと思うが……アレに相応しい戦士なのかもしれない。ということで承認し……ヴォイド・コンバットには4名と1匹で参加することが決まったのだ。


 決まったもので、その試作アーマーである1号の性能を遺憾なく発揮しているエルシーにより……開催まで猛特訓が行われているのが今!


■巨大遺跡構造体 アーモリー外殻 試験場


「まだ軽さに気を取られ恐れすぎていますよ、軽さは考えなくていい。とにかく確実に体を動かすことだけを考えて!」


「エルシーの方にはAI搭載されていないんだよね!?」


「はい。彼女の類まれなる戦闘センスと身体能力。まさしく天才的です。このアーマーのコンセプトを完全に理解し、使いこなしてみせています。親であるプリムとアルマから推薦されただけはあります」


 そんなにすごいのか、と搭載AIプリズムの返事に気を取られていたら。1号ことエルシーが鋼材をブン投げてきて私の機動(マニューバ)を力づくで邪魔してくる!


「別のことに気を取られすぎですよ!自分の内ではなく外をみなさい!内からを見ながら、外からもみる!」


「そんな無茶苦茶な!右見ながら左見ろって言うの!?」


「それを出来るようになりなさい!」


 ウワーッ!また鋼材が飛んでくる!今まで訓練をつけてくれていたリィンでもここまでしない!なんかとんでもない相手と一緒にいくことになってしまったぞ……!


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