表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オリジン・シード  作者: 草間
五章サイドストーリー~ドレスアップ~
117/132

光りを放つ神秘のボディ~クオン~

■惑星ヤマト04 ヤガールの寺院 炊事場


「私はどうでもいいわ」


「あら、それはなぜです?」


「私の方が強いから」


 まぁ、と……自信しかないアンジェラの言葉へ相槌を打つのはクオン。他流試合の翌日の話ではあるが、各々引き上げたり残って色々聞きに……と交流をしている間。クオンと共にいる時間が多かったのはアンジェラ。クオンがこの人の体を手に入れてから何かとフラットな関係を築けているのはアンジェラだった。


 一応レーツェンの指示のもと、カナタやハルカは姉として対応しているものの……やはり地球人類側。どうしても生まれの構成要素の半分を占める宇宙怪獣の要素に怯んでしまい。どこか一歩引いたものがあり……よくはしてくれているものの、という具合がある。ナンブが側にいればそうでもないのだろうが、生憎あれはあれで多忙なもので。こうして一人で自分の食事を用意しているところを、アンジェラが見つけて雑談をしていた。


 話の内容は、その男が着用するパワー・アーマーの外装について。そこに拘っているのはソニアとあなただけよ、という具合に挟まり。結論としてアンジェラにとっては自分が着るものでもないのに何がいいのかわからんという態度。そんな連れない態度ではあるが、クオンは焼き物用の鉄板の上で、鉄の調理器具を弄りながら話を進めていく。


「でもうれしいんですよ。私どうもここの皆さんと食事の好みが合わなくて……アンジェラが食べたいと言ってくれたのが」


「食べれるものなら、とつけていたことは謝る」


 いいんですよ、と返すクオンが作っているもの。それが何かは……匂いで判断することが出来た。生まれや出自など関係ない、作るものが相手を思いやり手を尽くし作っている。その心遣いが相手にあるということ。半分が宇宙怪獣の身である相手に……それを考えられなかったことを、些か恥じたアンジェラではあった。


「さぁどうぞ、冷めないうちにいただきましょう」


「私の好みを読み取れたのも、エルダーとしての特異な能力?」


 えっ?と口から出たクオンに対し……ん?と素の反応が出てしまったアンジェラだったが、それも当然。あまりに出来過ぎている……炊事場の脇にある食事処。そこに並べられているのは……とても寺院には似つかわしくない品々。


 肉がメインで香辛料をふんだんに使った焼き物、まずこれだけで種類がある。肉そのままを……というものや、練って塊にしたもの。煮込んでほぐしたもの。また野菜類のみじん切りを香辛料やハーブで和えたものであったり……それを包むためにある平たいクレープ状のもの。トウモロコシの粉を練って潰したものだ。


 21世紀でいえば所謂()()()()()()料理、トルティーヤとかタコスとかそのあたりをモデルにしたものである。アンジェラは職業柄もあるが、落ち着いて食事できるときは肉と香辛料をメインにするときが多い。同期の友人であるガブリエラの影響は確かにあるが、単純に味が濃く刺激的なものが好きであった。最近はそれに新鮮なフルーツを取ることで贅沢でかつ満足な食事と思っていた。


 それらはこの寺院で作られるようなものではない……わたし好みのものを、言わずとも出してくれた配慮に感謝する。そう伝えようとしたところ、返って来た反応がコレだったものでアンジェラは……困惑してしまった。特に何も考えずにこれを作ったということは……日頃からこんな食生活をしているのだろうか?ここで?少なくとも自分がみたヤガールの食事はこうしたものではなく……米の食事がメインだったと思うが。


「あっお米が欲しかったのですか。今から炒めるとこちらが冷めてしまいますが」


「いや、そういうことではなく……まぁいいわ、いただきましょう」


 えぇ、とクオンは……青みの残る柑橘類を切り分け氷水に差し込み渡し食事が始まる。軍人であるアンジェラならいざ知らず、一応巫女とされているクオンが……このような食事であるとは意外でありアンジェラは一歩遅れて手を付け始めてしまう。それも何もクオンのタコスの巻き方は道に入っておりとにかく早い。作った側から食べていくもので……クオンの方を見ながらも、真似つつ自分のペースで食べていくアンジェラとは差が出来てしまう。


「珍しいですか?私がこのような食事を摂っているのが」


「いえ……ただ、あまり巫女らしくはないと思っただけ」


「あらそれは。ごめんなさいね、私米とか野菜とか魚が苦手で……だって森とか海を食べているみたいじゃないですか」


 前言撤回をしよう、とアンジェラは深く思い直した。生まれや出自など関係ないと思っていたが……こんな素っ頓狂な、スケールの大きい好き嫌いの理由など思いつくはずがない。また同じくして、そういう大雑把そうな相手の好みと自分の好みが似ていることについて……ちょっと考え直したほうがいいとも。


「姉様!あれほど来客がいるときは匂いの強いものはよしてくださいと……!ん、アンジェラもか。これはすまない」


「いえいいのですよカナタ。量もちょうどよくなってきたものですから、炊事場を掃除した後に外へ向かいますから」


「いえアンジェラもとなるならごゆっくり」


「構わないわ。適当に水をいれておけばいいのよね」


 邪魔をしてしまったか?と思い悩むカナタを他所に……アンジェラとクオンで素早く炊事場の掃除を終えて。適当に軽く纏めた昼食を持って二人……寺院の裏、ヤマト04山岳地帯特有の荒れた山肌に向けて歩き始めた。


■惑星ヤマト04 山岳地帯 ヤガールの寺院を見下ろす 山肌 休憩所


「適当に抜ける理由を探していたの?態々?」


「いえ、いつもあぁいう食事なものですから……困らせてしまっていて」


 ならもう少し匂いを抑えたものにすればいいのに……とは言わない。一応作ってもらっている手前はあるからだ。そうこうしているうちに、これまた具合のいい程度に雨よけやテーブルにベンチもある……適当に休める場所が見えて来たもので。そこに腰を落ち着けて残りのものに手を付け始めた二人ではあったが。


「みなさま中々こういうものに興味がないものですから、私が作ったんですよ」


「修行僧の寺院には似つかわしくないわね……観光地にしたいのかしら」


 それもいいですね、と笑うクオンはどうも掴みにくいズレがある……そんな細かいところが気になってしまう。包まれたタコス・ラップ弁当を齧りながら「何か話したいことがあるのではないか?」と聞くタイミングを逃しているのも……そのズレだろうか。そんなことをぼんやり考えていると、赤く燃えるような毛並みの鳥がテーブルへ降りてきて……アンジェラのタコスを集り始めた。


「仲がよろしいんですね、まだそう時間も経っていないのに」


「こういうのには目ざといのよ、すぐに集まってくる」


 仕方ないな、と言う具合にアンジェラは赤い鳥にタコスをくれてやると……鳥は無心でそれを貪り始めている。鳥類本来の生態では、こうした食物を与えるのはよろしくないのだが……この鳥はただの鳥ではない。


 海軍捜査局が捕獲していたゼノ・テックにより作られたスーパー・マテリアル・アニマルのうちの1体。炎の結晶体で出来た巨大怪鳥竜の分身である。一番に早くアンジェラへ懐いたそれは今、彼女に同行して惑星ヤマト04に降り立ち……空を飛び回り仮初といえど自由を謳歌していた。


「巨大な姿は別の技術で作られたものらしいけど、この姿はエルダーの力で作り上げたらしいわ」


「彼がバファムトの権能を用いたのですよね」


 なんだ知っていたのか、とステンレス・マグからライム・ウォーターを口に注ぎながらクオン伺うアンジェラには……図りかねていることがあった。エルダーという宇宙超常存在(ザ・マスター)の直系の存在ともいえる宇宙長命種(エルダー)の存在。今は零落しているらしいが……それであってもこのような力を持っている。いや、あの男の下に渡ったことで再び力を取り戻しているのだろうか?


「一番新しいエルダーと呼ばれているアナタからみて、どうなのコレは」


「わかりません。私も一番新しく生まれたエルダーと言われても、そうした自覚がないもので」


「条件は揃っていたとは聞いたわ。元々長く生きる者に……マスター・パワーだかの許しを得られれば成ると」


「さぁ……なんとも、ただ彼のお陰で私は今あるだけですから」


「そういうことを聞いているんじゃないのよ」


 わかっています、との返事はクオン。変なところで艶のある声を出し……あの男の話をし始めようとするな、というクレームであったが。アンジェラの意図しているところは伝わっているというのに……つい口から出たところをクオンは詫びて、ライム・ウォーターで口を注いだ後に向き直り。


「私も世を考える時間が増えました。果たして再生者の再生とは、銀河連邦と地球……宇宙の再生だけなのかと」


「言っている意味がわからないわ。エルダー大戦がもう一度起きるとでもいいたいの?」


「いえ、それより遥か前かもしれません。エルダーたちには記憶の欠落があります。それが誰によってのものかはわかりませんが……再生とは、銀河の歴史を一巡させるものであるならば」


「その始まりは何であったか、ね……銀河神話が生まれる前とでも?」


「これから再び生まれるのかも」


 仮定の話にそこまで飛躍するなら……とんだお笑い話だわ。と……アンジェラはベンチへ横になり空を見上げる。赤い鳥……仮称ファイアー・バードはそんな主人の様子に目もくれずタコスを食うだけ食ったら飛んで行ってしまった。チリくさい鳴き声を響かせながら、遥か上空へ。


「どうなるかはわかりません。ですがそのようなことが起きてもおかしくないように……今出来る備えは早めにと思いました」


「それが勇者総司令官ビクトリー・コマンダーと並ぶ超装甲戦士?あいつのタブレットに入っていたドラマやアニメに毒され過ぎよ」


「ソニアさんとはちょっと好みがズレてしまっているのが悩みです」


 奇妙な宇宙生物や宇宙怪獣が銀河に来襲するというのならわかる。今の常識で考えても悪夢のような状況……1000年前地球を滅ぼした、宇宙怪獣の群れのようなものが今度は銀河連邦にもやってくる。


 しかしそれを迎撃するのがあの異様にキラメいている装甲のボディを持つパワー・アーマーの戦士や……ダッサいドリル戦艦ロボ。そして勇者総司令官ビクトリー・コマンダーというのか?そっちのほうがアンジェラにとって悪夢だ。この宇宙はあの男と……その幼稚な精神年齢とセンスのお友達のためにあるおもちゃ箱ではないのだから。


「軽く寝るわ、2時間したら起こして」


「えぇ、おやつの時間には」


 そんな悪夢、実現することも夢の世界で見ることも遠慮したい……そうして瞼を下ろしたアンジェラ。2時間後、間食の時間だと起こされたアンジェラを待っていたのは……特に食の好き嫌いのないナンブでさえ絶句する、匂いの強い甘い菓子類だった。あの……リコリスに近い匂いのものや、魚の疑似餌みたいな匂いがするゼリー。子供向け飲み薬に使われていそうなオレンジの香料たっぷりのクッキーであったり。


「友人として忠告するわ、偏食は直したほうがいい」


「あら?友からのならば……受け取っておきますが……?お気に召さなかったので?」


「間食にこれは、この後の時間の余力を地の底間で削られるのよ……」





 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ