エピローグ5
■惑星ヤマト04 ヤガールの寺院 中庭
「それでは双方かまえ……はじめぇぃ!」
教導院のグランドマスター・ヤェドの合図で……セイバーを構え向かい合っていたソニアとクオンが降り描く、光の線と円弧が交差する。一度、二度と交差してから距離を取り……互いに打ち込む機会を伺っている。
ソニアの構えは今まで見たことのない攻撃的な構え、とにかく力強く打ち込む方向性。隙あらば……否、攻撃で隙を作り相手を打ちのめさんとするフォーム。最初に出会った巨大遺跡構造体での時よりも、ずっと攻撃的だ!多を相手にとにかく素早く動くような足運びではなく……強敵に向けて戦う姿勢といったほうがいいか。
一方クオンは……慣れないだろうショック・セイバーを自在に振り回して誘う様に光らせている。棒術が専門ではないのか?と思ったものの……ヤガールの術を習得している巫女。当然と言われればびっくりするしかないが、カナタのように剣術もバッチリらしい。優雅な所作に加えて、ソニアの攻撃を誘うような……挑発的な構え。
それに誘われてか、いや乗ってかソニアが勢いをつけて駆け……手や足等とかくまず何かの切欠を掴まんと届く四肢を狙うものの。クオンは防ぎ、軽く飛び、そして下がりまた近づいてセイバーを打ち込み……打ち合う。
双方を見守る……カナタとハルカを筆頭にヤガールの門弟、そして教導院のマスターとナイトたち。審判にはグランドマスター・ヤェドがついて見守っているところを……レーツェンとリィンが見守っている。私にはこのような集まりが起こるなど到底考えられなかった……そんなものでこのスペース・剣術の他流試合をハラハラしながら見守るしかなかった!
ことの始まりはちょっと変なところから始まってしまう。
■ 惑星アレクサンドリア 第三執務室
「な、ん、で!クオンの案を採用するんですか!」
「いやなんでって言われても……だいぶ具体的になってるしアルマもこれは作れるっていうから」
私が地球帝国首都惑星セカンド・アースから帰還し、第三執務室に入るなり……不平不満を訴えて来たのがソニア。何が不満って自分が案を出す前にクオンのパワー・アーマー改修案が最終決定として通りそうなのが許せないとのことなのだが。
「こういうのはまず他の者に相談してからではりませんか!?そうでなくとも!まずコンペを開催するべきです!」
「これのデザイン・コンペって何をするんでしょうか……」
児童雑誌のデザイン募集キャンペーンじゃないんだからさぁ。出自が出自のものだし、そんな大々的になにかやるわけにはいかない。とにかく正体不明のヴォイド将軍と……たぶん戦うことはあるだろうから、その時の対策としてと考えたもので。
実際起きるかどうかもわからないし、性能さえちゃんとしていれば……なもんでデザイン・コンセプト自体はどうでもいいと思うのだが。そのどうでもよさそうな所で突っかかられても困ってしまう。私だけが着用する者だし。
とっとと改修してこの件は終わりにしたいところだが……ソニアは納得せず、妥協しようともしない。
「ならば私の考えていた!宿敵ヴォイド将軍と戦う勇者総司令官ビクトリー・コマンダーはどうなるんですか!」
知らないよ!?なんだその渋滞しているのは!パワー・アーマーと何が合体しているんだよこれは……またよくわからない仕様説明書を持ってきているし!これは統合軍総司令としての装備じゃないからね!?確かに総司令官と言えばあぁした系列を思い出すが!
「これどっちかといえばアース・ゼノンのパワーアップ案じゃ」
「ヴォイド将軍は55mありません!いえ……するかも、宇宙要塞に現れたのならば、宇宙要塞と合体し……」
やめてくれ、本当に可能性として巨大化したらどうするんだよ!?ヴォイド将軍が……実態がわからないからって適当に言っていいものじゃなくないか!?宇宙要塞デスなんとかが出てきて、その時にアース・ゼノンとグレートな合体しそうなこの、これを……いや考えたくなさすぎる。
というかソニアは別方向で別のこう……ストーリーを考えていたのォ!?
どうしようかこれ……と相談していた監獄要塞中枢、ザ・マスターの兵器工廠管理AIであるアルマはそれらのイラスト(らくがき?)を解析すると「これも可能でしょう」とか言ってくるから余計混乱してくる!ネロやアンジェラ、クラウディアとかエメラダはもう呆れてものも言えない、関わりたないという顔だし!
「ならば剣で決めてみては、ヤガールとの他流試合をしてみましょう」
「リィン!?なんでそんな方向で決めることになるのさ!?」
「いいじゃないですか!どっちが優れた戦闘力を持つか!総司令の副官に相応しいか決めようじゃぁありませんか!」
「これに出す血の気ではなくないか!?それに副司令を決めるもんじゃないでしょこれ!?」
しょうもない会話にインターセプトしてきたリィンも、また胡乱なことを言ってくる!そうしてあれよあれよという間にスペース・剣術他流試合が組まれて……審判を教導院のグランドマスター・ヤェドがとり。マスタークラスの人間も何人か観戦に現れ、門弟やら修行段階の新兵も集まっての剣術大会になってしまった。
いざ始まったら始まったで、まさかクオンがずっと勝ち続けるとは思わなかった。それも今回の開催として同じマスター・パワーを操る者同士の他流試合。操術も重視されるため、武器はなんでも使いこなせなければならないとマスター・ヤェドらからの通達があり。
教導院の騎士らはヤガールの巫女が扱う棒術よりもリーチを短くと考えてか……クオンの武器を自分と同じセイバー(準決勝までは聖鉄で出来た模造の棒)を選んだのだが、初戦では一切不利になることもなく。そこからクオンが操る剣術と剣術を見たいもの達がどんどん対戦してしまったもので、剣術でも比類なき美と技術を見せつけていたのだ。
「あれで書き物の趣味と偏食さえなければ完璧な姉様なのですが……」
カナタも見せられているんだ……書き物。それはわかるが偏食とは一体。クオンは薬膳とか精進料理が好きそうな見た目をしているが、はてさて。
対するソニアも順当に勝ち上がっていったもので、マスタークラスまではいかずともかなりの技量を持っていることが……比較されたことで改めてわかった。わかったがソニアを見直すのがこんな機会で本当によかったのか?勇者総司令官ビクトリー・コマンダーをかけての試合で。
■惑星ヤマト04 ヤガールの寺院 中庭 現在に戻る
「落ち着かれましたか?ナイト・ソニア」
「えぇおかげさまで。散々おちょくられて振り続けていれば嫌でもわかります」
そして今現在の決勝に戻る。ナイト・ソニアとニュー・エルダー法師?クオンとの戦いは実戦形式。しかし武器は聖鉄の棒剣ではなくショック・セイバー。輝ききらめく光の剣が描く円弧が幾重にも重なり続けていた時間が終わり、距離を取るように開いた両者。ソニアは猛攻を仕掛けていた最初とは違い、非常に落ち着きはらった呼吸に戻っていた。
「ごめんなさい、あなたがそこまであの鎧に情熱をかけていたなんて知らず」
「あれはこの時代への反抗の象徴です。あれを皆が望んでいたのですよ、それをあなたは」
「でも彼は望んでいませんよ?超装甲戦士のほうが好ましいのでは?」
どっちもちょっと困るんだけどな?この何?神秘のボディ輝く戦士は?クオンにとってどういう扱いなんだ私は。これを着せたいのぉ?
「知ったような口を!大体何を知っているというのか、つい最近ぽっと出て来たあなたが……!」
「あら……それを言うならば、私は彼が目覚めた時から見ていましたよ。巨大遺跡構造体で目覚めたときから、繋がっていましたから。それであの子らを呼び寄せてしまったようですが」
えっ初耳。いやでも……波があるものの妙な夢見があるのは、確かにあそこで目覚めてからで……夢の中で調整?されてからはそうでもない。曖昧だったが思い出すと……その時期から私と彼女は繋がっており。あの時に私の首筋あたりを探っていたのは彼女だったのか!?あの時からクオンは既に私へ接触を図っていたことになると!?
「こ、この……由来やら何やら、実力者と思って黙って聞いていれば」
「それに今では夢を通してお会いしておりますから、比較的長い時間を過ごしているのではないでしょうか?寝ている間も共に過ごし、言葉を交わし、食事も共にしていますから」
「この女ァ!言わせておけば!」
そんなこと女の子が言っちゃだめだよ!?みたいな言葉が出たと同時に、ソニアはまた力強いフォームに戻り……クオンの持つショック・セイバーを払い上げた!そしてこのショック・セイバーも自分の預かるものだとばかりに……手を伸ばし。空いた手で取り、二刀流となった!ソニアといえば、ここぞという時に二刀流にフォームを変えているものだが……!
隣で見ているリィンもレーツェンも、あぁという顔で見ているのが……わき目に見えてしまった。それとほぼ同時、ソニアが両手のショック・セイバーを握ることになった瞬間だ。
クオンの体が上下反転していた。
正確に言うならば、地に両手をついて、両足を順に蹴り上げて……ソニアの振り上げた両手に持つセイバーの柄を蹴り上げていたのだ。マスター・パワーを少量感じたが、その力を伝導させてさらに跳ね上げて上方へ飛ばす。ソニアが慌ててセイバーを呼ぶのも……遅い。
跳ね上がったらそのまま、クオンはソニアの首を軸に回転。そのまま捻って地に叩きつけてしまった!プロレスの技であるヘッドシザーズ・ホイップに近い!しかしここまで華麗に決まるとは思わなかった!銀河教導院の白銀の騎士ソニア相手に!?
「そこまで!双方離れよ!」
「ぐぅ~~~~~~~~~~!私が!私が先だったのにぃ~~~~~~~~!こんなのあんまりだぁ~~~~~~!」
「ごめんなさいね、別の方向性ですが、私も同じぐらいには想っているのです」
超装甲戦士を?いいのかなぁ、なんかすごい試合だったと思うんだけど……2m近い美女たちの他流試合とプロレスみたいな戦い、その決勝で決まるのがパワー・アーマーのデザインだなんて。
「ちょうどよき頃合いかと思いますが、よろしいでしょうか。師や導師、オヤカタサマに是非ご覧いただきたいものが」
「何!?誰!?うおっ……おおう、はい。どうぞ?」
すっと音もなく現れたのは……ヤガールの戦士。以前この惑星で遭遇して戦ったスペース・ニンジャの人。なんかその……そういう創作物に影響されてしまったのか、私を忍者の棟梁みたいな扱いしている。好きに呼んでもらっていいといったけどさ。
「創世記に聖鉄で作られし武具のうちの1つ、それが見つかりました」
「なんとそれは真か、斧と槍のどちらだ!」
「斧でございます、しかしただならぬ事態になり……こちらを」
レーツェンとリィン、あとニンジャさんだけわかってるような話を隣でされている。いや見て欲しいと言われても何それ!?伝説の武具みたいなものか?と……ニンジャの彼女が取り出したメディア投影装置から映し出されるものを囲んで見てみるのだが。
「私に雄姿を見せて見ろ!銀河の超戦士たちよ!この宇宙の蔓延る理の鎖、食いやぶらんがため集え!」
「この戦いの勝者にはザ・マスターが作りし聖なる斧を授けようではないか!そのものを我が使い手たる超戦士として!認めよう!」
「この惑星に!私が待っている!虚空の闇より生まれし……このヴォイド将軍が!」
「ヴォイド・コンバットの開催を宣言する!」
「ヴェアハハハハハハ!!!!」
先ほどまで悠々としていたクオン、そして悔しさに涙濡れていたソニアでさえ……私と動画を交互に見ている。信じられないようなものを見ている顔で。リィンやらグランドマスター・ヤェドは難しい顔をし。レーツェンやカナタに至っては周囲の皆が事情を知っているようで自分達は知らず……どういうこと!?とあわあわ……こちらを見て答えを待っているが、そんなもの1つしかない。
「知らない!知らないよぉ!私こんなの知らない!」
「まさかヴォイド将軍に聖斧が奪われていたとは……不覚!やはりビクトリー・コマンダーの出番では?」
「ソニアさんは切り替えが早いですね……そこはもう決まりましたので。超装甲戦士が出ますが」
「おやオヤカタサマは聖武具の存在をご存じではない?かつてエルダー大戦の折に失われた武具で4つのうち2つは現存していましたが……」
「そういうことではなくてさぁ~!」
超装甲秘聞録の追加分がもう出来てしまうのかぁ!?なんでこんなに手が早いんだよ!どういうことだ……本当に誰がやっているんだよ、ヴォイド将軍を!
第五章 【地球帝国 アース・エンパイア】
エピローグ5 おわり
第六章 【虚空戦記 ヴォイド・コンバットへ続く】
サイドストーリーちょっと挟みます




