15話 超装甲戦士秘聞録
■地球帝国首都惑星 首都ニュー・ブリュッセル 迎賓館 ゲストルーム
「あははは!じいさん、なんで言わなかったのさ!ヴォイド将軍は自分だって!」
「言えるわけないだろぉ!?私が海賊軍に洗脳されて暴れてた姿がヴォイド将軍なんて!」
言えるわけなさすぎる。ジョエルとの2回目の会合があった夜、地球帝国の首都惑星を離れる時が近づいてきた頃合い。夜にアンリとのおしゃべりの時間をとしていたわけだが……そこで出たのは噂のヴォイド将軍。本当になんでこんなことになってしまったんだ!というか誰だよ名乗っているのは!
「経緯が面倒くさいからなぁ~ジョエル達に話すときに省いたってことは正式な報告書には載ってないんだ」
「ネロ筆頭に作戦参加者や当時の海賊軍の人ら、あと教導院の一部マスタークラスかなぁ……知っているのは」
そりゃ喋れるわけがない。バファムト同様に宇宙をどうにでも出来そうな再生者という存在、宇宙超常存在の後継者とやらが……海賊軍に洗脳されて暴れていたのだ。やったことは自警活動とか宇宙のダニ掃除だぜぇ~みたいなことであってもだ!私の正気とか、安全性が全く保障されなくなる!
なので緘口令が……暗黙の了解と共に敷かれていたのだ。
時系列や統合性としては私が34世紀に出現したあたりから台頭し始め……監獄要塞の時に海賊軍の一部を率いて自警活動をしていた。私と同時期に出現した謎の存在ということにされている。されているというか、した。海賊軍出身の兵士達からも自分達が洗脳したようなものなので、流石にまずいなというものもありみんな知らぬ存ぜぬを通してくれたが……
一方でヴォイド将軍は監獄要塞での目撃情報もある。あまりにも堂々とした振る舞いに逮捕者の証言。なんとかムリクリ整理すると、だ。海賊軍の一部と協力して脱出と反乱をした私、そして海賊軍を吸収したヴォイド将軍に元居たアメリアの海賊軍とエメラダ達。
監獄要塞中心部にある遺跡に向かいたい私、海賊軍を率いて真の戦士として君臨していたヴォイド将軍、本来の海賊軍頭領であるアメリア……その勢力図の隙をついてきたギルドの連中。同時期にこのようなことがありえるのか?というのは……そもそも私が出現したことを契機にメチャクチャなことが起きている、という特殊な時代性で説得力を生み出せる。はずだった。
そのため……書きだすとごちゃごちゃとした勢力図や反乱等の事情になり「一見して複雑な状況」となってくれたがため、これで誤魔化せた……誤魔化せていたはずなんだが!デリガット・バフムとの乱戦中に私が倒したよってあたりで決着ついた話だったよね?!
「我々から情報が漏れた、というより逮捕者や逃亡者から情報が出てしまった……というのが一番ありそうですね」
頭を痛そうに聞いているのはエルシー。クラウディアの上司らしい彼女へも当然報告はいっている。けらけら笑いながら……超装甲戦士秘聞録、クオンの描いたバトルストーリーを読んでいるアンリとは表情が正反対だ。ちなみに翻訳は入れたので誰でも読めるようになっている。結構大変だったな……
「問題があるとすれば、再生者様……ナンブさん。あなたの保証がどう、よりも時代の要請と言う部分が大きいかもしれません」
「あの……見つけだして、中身を確認するだけで終わらない?」
エルシーが軽く首を振り肯定する。
最悪なのは、これはヴォイド将軍というのが一種の偶像であるのだと。時代の要請ってなんだよと思うが……エルシーから説明されれば納得してしまう。
ヴォイド将軍は、私の中から生まれたものではあるが……基盤となる方向性は海賊軍から生まれたもの。宇宙に落ちぶれてしまった戦士たち、地球帝国や銀河連邦の拡大政策のせいであぁなってしまった者たちが望むカリスマを持つ英雄像。それと私の気性が合わさってしまい「銀河連邦や地球帝国という巨大な社会構造に反体制的ではあるが、殺しも腐敗や汚職も嫌う。虚空からやってきて、悪を正し、泥に沈んでしまった者たちを率いる……闇のカリスマ強戦士」が生まれてしまった。
時代が希求する存在、それがヴォイド将軍なのだと。この銀河連邦が勢力を広げている中で……その最中に零れ落とされた人々、諦めている人間の前に現れて「私と共に戦え!」と叫ぶダーク・ヒーローみたいな偶像になっているとエルシーが真面目にいっている。それは……いつでもどこでも、現れてくる。この時代が続く限りと。
真面目な話でいいんだよなこれは?私の意識が曖昧な間に生まれた存在が、そこまでになっているの……流石に嫌すぎる!
「エルシーの話から考えると、産業同盟の最高幹部就任は怪しいよなぁ~そっち側になるのは、ありえなくない?」
「いえ乗っ取った、という線もあり得るかもしれません。そういう方向性にし……方針転換することも考えられます」
「産業同盟はヴィルヘルミナ……宰相ね。そっち管轄だからジョエルも探れなかったんでしょ。実態がどうなってるかは僕も知らないし、何ともだね」
「アンリ様の言う様に、本当に産業同盟全てを乗っ取ってしまったのかもしれません。しかしそうであっても、ミュラー宰相が認めることはまずないでしょう。参謀本部に届いたように、現行通りに全て滞りなく行われているのなら……特に変わらないということですから」
め、面倒くさい!この時代が続く限りヴォイド将軍はいつでも現れる!永遠にな!って話になってるじゃないか!なんでだよ私がヴォイド将軍だぞ、やめてくれそんなこと……!一人歩きして勝手に伝説とか作らないでくれよ、本当にさ!
「なら、そうではないと真向から戦う必要が出てくるから……これを作ろうってことなのか!クオンって人はすごい先見性があるね」
「アヴァロンで調整するもありですが、秘密性を考えるなら……監獄要塞の中枢にある工廠が適当でしょうね。アルマでしたか、ヴォイド将軍を作った管理AIに頼むがよさそうです」
「闇のカリスマ強戦士・ヴォイド将軍VS超装甲戦士・マイティ戦士、これの次はそれで決まりじゃん!」
決まりじゃん、じゃないんだよアンリ!勝手に超装甲戦士秘聞録の続きを考えないで!クオンがノって続きそうだよ!あとマイティ・ウォーリアーって何!?光と闇の終わらない戦いなんて、私は望んでいないよ!
「だけど時代が望んでいる限り、生まれてくるもの。それと戦うのも再生者じゃない?止めるなら、それこそこの時代を終わらせるしかないんじゃないの?」
「えぇ~?うん……う~ん……そうなるのかぁ……?やるしか……ないかぁ?」
「あまり本気にしすぎないように、お願いします。相手が時代というもの、対象が大きすぎますから急になにかを成そうとすれば……」
エルシーの諫言は全くその通り。時代を終わらせるということは、もう社会構造から変えないといけない。そんなことを急にやろうとすれば……大きな混乱と、破滅を招く。時代を終わらせるのはいいとして、その終わらせるためにどれだけの生命を対価として払うのか?それは誰も望んでいないだろう。
「つまりこの宇宙には……しばらくはヴォイド将軍がいる、と見て考えて……動かないといけないのかぁ」
「じいさん記録は絶対撮ってくれよな!」
絶対超装甲秘聞録の次の話を楽しみにしているだけじゃないか!んも~いつのまにかエルシーが持ってきた紙に追加で書き始めているし!VSヴォイド将軍を今から書き足しているのか、この子は!熱意のあるうちに始めるタイプか~いい子じゃないかうんうん、書いている内容以外は。これクオンに渡すのぉ?いいけど……
そして話題は移り変わり、今回の訪問はどうだったか?という話に変わっていったのだが……概ね満足していることを伝えるとアンリは自分のことのように喜んでくれている。エルシーも頷いているあたり、だいぶ気を揉ませてしまったようだが……そうした心遣いでだいぶ快適な時間を過ごさせてもらった。
もてなしがすごい!というよりも、本来の目的のために不都合がない配慮をしてもらったということだ。フィオナら筆頭に銀河連邦の惑星再生事業に関する調整、ジョエルら地球帝国で私によいイメージを持ってくれて助け船を出してくれる方々との会合。銀河連邦や地球帝国、再生者という立場から考えて……ここに来なければならない目的のため、滞在する日々が快適に過ごせたか?というもの。当然過ごせた。
ただ1つ心残りがあるとしたら……そうした格別の配慮を手配してくれた、だろう現地球帝国皇帝と面会できなかったことだった。それをアンリに伝えると……なんとも言えない微妙な顔をしながらこちらを見て、お茶を啜っていたが。
「会わないとだめだった?なんか一言ぐらい言ってやりたいとか?」
「いやお礼ぐらい言わないとなぁと思ってたけど……」
「問題ないでしょう。あちらもあなたがどういう人間か知っていますし、感謝していることも我々を通して知っています」
「そうそう、ロメオ分遣隊やウィンタース執政官も同意してるけど、じいさんの護衛には近衛兵団がついていたんだから。言いたいことは全部伝わってるよ」
し、知らなかった!ここ数日そういう人を見た覚えがないんだが!?いや……しかし考えてみれば確かに私の主観で護衛を見なかった、というのは妙だ。フィオナを中心に考えれば一国の最高権力者が外遊をしているのに、護衛がアンジェラやポリらだけで済むはずがない。
外遊先にまでシークレット・サービスがついてくるのが普通だろう。行く時点で私がそれら護衛団を見ることがなかった……ということは、外遊先にいる警護団が引き受けていたことになる。
惑星アレクサンドリアは地球帝国の直轄領でもある、らしいので帝国側から出している。どう交渉があったか、申し出があったかはわからないが……皇帝直轄だろうロイヤル・ガードが出てきてもなんらおかしくはない。
私の出かけた先が軍隊の関わるところで、そう危険性のないところであっても……そうした最大限の護衛をつけてくれていたことは感謝しなければならない。何か不意打ちとあるかもしれないしね……ギルドとかギルドとかギルドとか。寝ているところを毒蛇とかで暗殺しようとしてくるかもしれないし、装甲服きた傭兵が。
「皇帝には今回格別の配慮をいただいたことについて、感謝をお伝えください」
「いやぁそれほどでもな。じいさん有名人なんだから、当然だよ」
「既に伝わっておりますが、改めて伝えておきます」
いやなんでアンリが言うんだか。そう思った私と同じくエルシーがアンリの腕を小突く。この二人は多少雑なことが許される関係なのか、それともなっているのか。ここに来て最初の食事会より崩れているように見えているし、親しいことはいいことだし親しくなっていくこともいいことだろう。
「あぁ~ヴォイド将軍対策にパワー・アーマー改修しないといけないなんてなぁ~ソニア反対するだろうなぁ~」
「教導院の騎士ソニアはヴォイド将軍派なんだ!俺は~超装甲戦士だなぁ~!」
「ソニア、将軍の時に自分が側にいなかったの、アーマーの話をする度に持ち出してくるんだよ~自分が側に仕えていたかったって!」
「教導院の騎士がぁ?将軍のロイヤル・ガードに?無茶苦茶じゃん設定が!」
だよなぁ~!ダーク・ナイトになっちゃうよ~というあたりでその日の夜会トークは終わり。地球帝国の首都惑星セカンド・アースを離れて後日……アンリと適当にしゃべっていた通り。ソニアとクオンで揉めに揉めた後にパワー・アーマーが、正式に改修される運びになったんだが……出来れば改修したくはなかったなぁ!
出番もさぁ!こういうのはないほうがいいんだよ!私がこれ着て戦うんだよ!?おかしいって!




