13話 アーマー・ボウル・キャンプ
■地球帝国 フォー・テキサス マリーン・キャンプ
アーマー・ボウルとは、エクストリーム・フットボールと野球を足したようなフルコンタクト・スポーツ!
今年も年に一度開かれる皇帝杯の季節がやって来た!私はアーマー・ボウル皇帝杯観戦の前にフランソワーズに招かれて(頼んで、と言う形で)テキサスっぽいところにあるマリーンのキャンプに訪問!
マリーンからは方面軍ごとに精鋭チームが選抜されて出るということで、実際にどういう競技で選手らがいるのか……スター選手とかいるの?というものをフランソワーズは見せてくれた。彼女に付き添われて広大なスタジアムに入り……その巨大さにまず驚いた。作りはベース・ボールを基本としているものの、広いスタジアムに敷き詰められた天然の芝生で作られたフィールド。
選手たちも同じく巨大!彼女らは海兵隊員でもあるので、彼女が来る頃には整列して待機していた。そしてフランソワーズの姿を見て一斉に敬礼する姿。伝え聞いたり、試合の様子を動画でみていた限り……彼女らの姿はエクストリーム・フットボールのユニフォームに近い。ビキニや下着に近い薄着!その女性がフットボールを投げて打って抱えて……また当たっていく競技……そういうものをやる女性らが目の前で並ばれているし、彼女らの肉体にはスポーツのトレーニングや気候というもので……健康な汗が流れ落ちている。
しかしアーマー・ボウルと名前のつくように、いや元のエクストリーム・フットボールも危険ではあるが。こっちは名前の通り危険な方のエクストリーム・スポーツに寄せている。パワー・アーマーのアーマーを着用してブチあたるのだから、それは命がけだ!
ただし危険を通り越して殺し合い……をしているようなものではない。彼女ら34世紀のスペース・マリーンの女性兵士の体格はもちろんある。頑丈であり、これぐらいあれば装備した人間同士で当たっても平気な運動能力に体のつくりをしているのだ。
だから私がアーマーなしの彼女らとフルコンタクトでブチあたることになっても……彼女らの方が加減してくれているし、むしろ私が芝生に転がされているのが今なのだ。
なぜ?
「ほら次!これぐらいでヘバっているような姿をマリーンに見せていいのか!」
「さぁこちらへ!」
フランソワーズの激が飛び、それを合図に私は巨躯で恵まれた体格の女性兵士であり……フットボール選手に向かって突撃していく!身長2mぐらいなのはまだいい、それはもう体の厚みがすんごい相手へ……何も持たずに、しかしどこに当たり向かうかを考え狙いを定めてだ!
そして吹っ飛ばされる。
わかりやすいイメージとしては……ハイスクールでアメフトの入部体験か、試験を受けるときに。先輩選手が持つサンドバッグにタックルしかけに行くのが近いはずだ。だが彼女ら、どころか1人の選手に向かって突撃し……選手のちょっとした動きで吹っ飛ばされている。体の厚みで跳ね返されているといっていい。昔体験したボクシングで触ったサンドバッグどころの重さじゃないんだが?
「そんなんじゃ機械福音教団の騎士に、またキメられてしまうよ!次いけ次!」
もちろん、相手の選手はただ受けるだけではない。1回ずつ交代していく選手らは……ただ受けたり、また私を掴んで持ち上げたり。組み付こうとした私の両手を掴んで押しつぶそうとしたり……また小脇に首を挟んで〆てきたり。とかく各々の得意とするような技をかけてくる。
私の貧相なイメージ能力がよくなかった。アーマー・ボウルはアメフトと野球を足して割った競技ではない。レスリングも追加されている……!見学の時に気づくべきだった……相手の選手と組み合う時に、やけに低い姿勢になるときがあると!
さてなんでこんなことになっているかと言うと、だ。
フランソワーズが飛ばした喝の通り……彼女らの組み合う姿を見てフルコンタクトな格闘技を思い出し。そこから以前エヴァンゲリウムの騎士エステルとの剣に負けた上にパンクラチオンの如くキメられて抑えらたことをつい話してしまったのだ。
するとフランソワーズの形相が代わり。そんなに軽く考えてもいいものか、と見学していたフィールド外で滅茶苦茶詰めて来たのだ。確かにあの時はリィンやソニアが助けに来てくれたが……まぁかなりピンチだったなとは思っている。なのでこれぐらい出来たらな~ぐらいの気持ちの発言だったのだが。
それが大層気に入らなかったのか、地球帝国宇宙海兵隊フランソワーズ・バロウズ提督の一喝で選手が全員……控えまでフィールドに並び整列し。即席ではあるが私を鍛え直すと言い始めたのだ!えっそこまでしなくとも、と他にも訓練方法なんて……と思っても口を挟めない。一緒にいるポリは「しばらく絞られてこい」みたいな顔で……自主的にランニングしているし!
そんなこんなで超近接距離での取っ組み合いや取っつかみ合いになった場合の、なのだろうが。当然選手らは提督の命令と言えども選手でもない人間、トレンディなシティボーイに技かけるなんて……という戸惑いを滲みだしていたのだが。フランソワーズがいきなり制服を脱いでアンダーウェアになり!まず彼女から私をキメにかかったのだ!当然不意打ち!卑怯!
「戦闘時に卑怯もなにもないでしょうが!」
「がああ!ストレートネックが治るぅうう!」
そして私を背中から羽交い絞めにし、持ち上げるフランソワーズのアーツから……今までのが始まった。デカくブ厚い美女へ突撃し、代わる代わる技をかけられたり投げられたり転がされる時間で午前が終わってしまった!2周するぐらい人数いるのはどういうことなんだ!?こういうのが好きな人は好きなんだろうが、私はもう転がりたくないよ!いや……転がされた時のためにやっているんだろうけど!
「ア、アアリガロウ……ポリ……」
疲れ果てて芝生に転がっている私の顔へ向けて、ポリは水道ホースを咥えて向けてくれている。顔どころか靴下までびっしゃびしゃになっているが……この気候での湿気でならすぐに乾くだろう。この後昼飯にして今日は終わりだろうか……と思っていたぐらいにフランソワーズが私を見下ろしてきた。私を羽交い絞めにした時と違い、灼熱色の赤い髪を纏めて運動するぞっていう顔で。
「昼食後には休憩を挟み、技の組合と解除の仕方を学んでもらう!」
「えっ今日は午前一杯じゃ」
「そんな予定は組んでいない!全く母上におば……アメリア様は何を甘やかしていたのか!これぐらいの対処も出来ず何が統合軍総司令官だ!さぁ昼だよ昼!」
マジかよ……あなた達とは体力が違うんですが!?と口に出そうものなら技をかけられそうな剣幕!しかし言うべきことは言わないと……と思っていたらポリに襟首を掴まれて引っ張られ選手の食堂……の前にシャワールーム。体の汗を流し、予備の着替えとジャンプスーツに着替えて昼飯。オレンジ色のさぁ!ツナギで消化能力を考えられたオートミールとかタンパク質の塊食べるのって囚人みたいんなんだけどさぁ!
おまけに私の周囲は選手でミッチリ固められている!護衛ならポリで十分なんだが?パワー・アーマーつけてないし。狭苦しいなんて文句も言えないもんで……公務のように「いつもはどのぐらいの練習量を?」「食事はどうです?」「成績のほうは?」「ワールドカップがあるらしいですが……」という会話で乗り切った。
乗り切ったが、乗り切れるのは口でなんとかなる時だけ。
午後は食後の休憩後に腹ごなしにポリとランニングでウォームアップ。その後にフランソワーズを始まりに……技のかけ方と解除の仕方を肉体で直接学ぶ時間だった。
「地に足がついていない!そんなんじゃすぐに浮かされるよ!」
「ぽんぽん飛ばない!早死にしたいのか!」
「使える関節の方向と使えない関節の方向を直感で理解しな!曲がらない方向には曲がらないし、曲がる方向は体で決める!肘を内にいれろ!」
そうやってボコボコにされ、弱った猫みたいになった後。迎賓館の部屋どころか移動用の車両に乗る間でさえマトモに歩けず。ポリに引っ張ってもらって移動してようやくその日を終えることが出来たのだ。終えることができたから、まぁ明日からまた違う予定もあるが休みを多く入れておくか……ぐらいに考えていたら。
「なぜフランソワーズのところのチームだけなのですか!まさか……開幕まで時間がないのを計って!流石は海兵隊提督!やってくれましたわ!」
朝方ポリの背中に乗って朝食に向かうか……ぐらいのダルさの私を出迎えたのは。昨日の巨大シャチみたいなフランソワーズと対……対?にいそうなヒグマみたいな大きさのエレナ。えっなんでエレナが?私の自室の前に?予定入っていなかったよね?と聞くまでもない。
エレナは海兵隊側のチームに私が見学にいったことを聞きつけ、朝一番……マイナス一番ぐらいのときにやってきていたのだ。すいませんお役所開く時間の前なのですが……あぁエレナもお役所側でしたねハハ。
いや無理なんですよ。体が動かない、間接というよりも体の筋肉がビキビキでしてね……と言えなかった。疲れていて。そのせいでポリに移動を任せるのも、と思ったのだろうか……エレナが私を小脇に抱え上げた。セカンドバッグを抱えるぐらいの手軽さで。
「本日のご予定は空いていると聞いています!では向かいましょう!ネイビーのチーム拠点、リーグの本部NLAへ!」
えっまじでこのまま?とエレナの顔を見ると既に私ではなく出入口のところへ視線は移り……足の方も移動している。ポリに視線だけで助けを求めるが……止めはしない。が、ついていくか……ぐらいの気だるい足取りで並走してくれる。エレナの歩幅が大きいから。
そして私は……皇帝杯開催までの間……日替わりで海兵隊と海軍のチーム、また他の所属のチームへ見学と激励に向かうことになっていった。あっちを、となればこっちもとなるのはわかるが……毎日のように各宇宙方面軍の精鋭チーム相手にフルコンタクト体験は体が持たないって!
皇帝杯当日にはほぼ動けなくなり、ポリどころかアンジェラにより運ばれて移動することになったのだ。
「あっちもこっちもと、いい顔をするからよ」
「しかしねぇ……悪い顔をする理由などないのだから……」
「鼻の下を伸ばしていい顔なんて、笑わせるわ」
たしかに。ごもっともで……




