12話 事務レベルの手続き
■夜 ニューブリュッセル 迎賓館 ゲストルーム
お疲れですか?いいえ、そんなことは?と言う具合に部屋に招いたのはフィオナ・フィンタース。惑星国家アレクサンドリアの最高権力者であり執政官……そしてネロの姉。別に突然の訪問ではなく前々から予定していたこと。
本日開かれていた……地球再生事業に関しての協議について経過を伝えてくれるために空いている時間に会えないか、ということでのだ。まぁ……我々の空いている時間なんて夜しかないんだが。早朝は予定とかの確認作業もあるしさ。
そして彼女は滅茶苦茶リラックスされた寝る前ぐらいの……いや、別に薄着ではないぐらいのちゃんとした格好出来ている。もちろんアルコールの類を持ってだが……勢いはないあたりエレナとは年齢層やお考えが違うよう。お姉さんだなぁ。
「昼間は昼間で大変だったようで、お疲れではないのが不思議なぐらい」
「あれぐらい賑やかな方が好きだよ。みんな一人の私に気を使ってくれたからね」
そう昼間。
アンジェラがクレア少佐やカナタにハルカを連れて食事に行った後のこと。海軍捜査局の一室でパラパラと……クオンが書いていた自作小説「超甲秘聞録」を読んでいたのだが、読んでそこそこのぐらいで他の女性捜査官が声をかけてくれたのだ。
大方アンジェラ達に置いて行かれた私がまぁ~かわいそうなもんで話かけてくれたのだろう。
そういうわけで話始めたのが、今回の経緯について。統合軍と捜査局で協力体制を取る案件がある。その特別捜査班(特捜だ~!)にクレア少佐が、というものでこちらに出向するようだという話をした。もちろんここらへんは話ていいだろうことであるのは……クレア少佐とハイマン提督に聞いている。
先日からクレア少佐主導で方々に出ていたのはその関係だよ、と。
すると手の空いている職員の人らが集まって来て……どういう捜査対象か、内容なのかを聞いてくるのだ。はたまたクレア少佐に同行するだろう職員についてもだ。その内容については、当然捜査局の他部署の方々の協力が必要になるものだろう。ここは秘密主義……とするようなものでもないと判断したがどう話せばいいか。局長であるハイマン提督に連絡してもらったら……昼休憩の最中に大会議室を借り切ってのミーティングが始まった。
ダーク・エルダー、ゼノ・テック、産業同盟やアウター・リムに居そうなブラック・カンパニー。それらへ関わることが多いだろう統合軍と、共同で捜査するために特捜班を作ったことの説明。クレア少佐が選任されたのは惑星ヤマト04での一件があってからの抜擢だという話。
私は関係者として局長と共にミーティングで捜査対象になる事柄の話をしていたのだ。
「この捜査班は対象がかなり特殊なものに限られている。そのため通常の業務範囲を超えるようなものを多々相手にすることが予想されるようなもの……しかしこうした特殊な捜査はあなた方の業務が正常に機能しているからこそ行えるものであり……」
みたいなことをハイマン局長、いやもうメリナに渡されたマイクを持って壇上で話すことになっていたのだ。モノがモノだからこう……説明が難しいんだけどさ。とにかくなんだか「他所の部署での講習か、会合に参加した管理職」みたいなポーズをし続けた。専従捜査官であり班長っぽいクレア少佐いなくていいのかな~と思いながら。
「出向職員の選任についてはこちらで行い、後日通達があります。選ばれずとも現在与えられらた職務を継続していくように」
メリナの〆の言葉の後……遅いランチを彼女と取りながら。そろそろアンジェラを呼ぶかな?って思っていると他の部署の幹部クラスの方々からの挨拶が続く!名刺交換ともいえるデジタルなデータの交換!おぉこういうのがあると連絡が早い……もちろんこれもメリナの紹介付き。本当にクレア少佐いなくていいの?班長なんだよね、特捜の。
そんなこんなで各部署の幹部や捜査官からの話を聞きながら捜査局自体の説明を聞いていたら……お役所が閉まるような時間。時間になってもう帰るしかないってぐらいのところでアンジェラ達が返って来た。クレア少佐はずっと不在だったもので何をやっていたかを知ると顔を真っ青にしていたが……その、メリナからはロメオ分遣隊との調整中という各部署への説明もあったから大丈夫だろう!
「こちらの方は概ね纏まりましたが……本当によろしかったのですか?あなたの故郷でもあるのに」
「私の故郷でもあるけど、地球人類の故郷さ。私がどうというものじゃなよ」
ゆったりとした姿勢で私の対面でくつろぎグラスにアルコールを入れているフィオナ。話の内容といえば彼女の参加していた地球の再生に関して。すんなり合意が纏まったらしく、その後の話をしていく段階に入ったと伝えてくれたのだが……彼女の憂いを帯びた顔と向けてくる瞳はよろしくない。
いやアルコールも入っている金髪美女でネロよりお姉さんの大きい彼女がこの表情で色っぽくて男女しかいない部屋でこれはよろしくない、っていうのではなく……本当にこれでいいのか?と私に訴えてくるものである。
地球が再生されたとして、私はそこへ戻らないし関与もしないというものを前提とし今後進めていくというものがだ。
「政治的には大変複雑な問題です。あなたがそう決めていただけるのは、地球帝国としても非常に安心できるところで助かるものです。ですが、本当に……あなたの生まれた故郷であり世界なんですよ?」
「いやぁこの世界は今に生まれた君たちの時代で世界だよ。私の故郷についてはもういいじゃないか、戻って何をするってものだし。私の戻るところはアレクサンドリア。君たちのいるところだよ」
正直兄をバス停へ迎えに行って、その間に故郷に遊星爆弾落とされた……わけでもないので関心が薄いといえば薄い!それに地球再生に関して言えばフィオナが言う様にかなーり複雑な問題がある。
「現状ただでさえ大変そうじゃないか。他の再生予定の惑星とは、事情が違うところがこうもなるなんて」
「えぇ、地球が2つあることになると……」
再生された場合、地球とレプリカの地球がある!という状態をいうのではない。
再生された地球と……現行で首都惑星として機能しているセカンド・アースが存在したのならば?首都惑星機能を移転するのか?と言う問題が出てくる。この銀河連邦宇宙がある宇宙より遠い太陽系の果ての辺鄙なところにだ。
まぁ移転したとして、じゃぁ今の首都はどうするのか。そこでは連邦とも近く他の惑星との繋がりも以前からある。再生した方は新たに構築していくとしても時間がかかるだろうし。そうなるとセカンド・アースの方が力を維持したまま存在することになるし……地球人類、帝国という勢力が分裂しかねない事態なってしまう。
「現状アレクサンドリアのような旧直轄惑星は、そうなりつつありましたから」
惑星アレクサンドリアは地球文化保管機構という組織を母体にした惑星国家で、より機能を拡充させるために入植させたものだ。そういった1000年ぐらい前に地球を脱出した後の政治機構から地続きの母体が、地球帝国旧直轄の惑星国家。それはいくつかあり、かなり特別な惑星国家だという。
しかし1000年経てば情勢どころか人の心は変わる。
機能と組織が母体である直轄領の中でも、自由領になろうと他惑星国家と外交で暗躍していたり。アレクサンドリアのように1000年前の文化を補完しているところは……陳腐化というのもどうかだが。地球帝国からも価値が薄いと判断されていくと、独立を望むようになりで大変な状況だったらしい。
アレクサンドリアは私のような1000年以上前の生きた化石が出て来たことで、アイデンティティが再び……となり踏み止まってくれたのだとフィオナは話してくれた。
「むしろ始まりをスムーズに出来たことを喜ぼうよ。これからが長そうじゃないか」
「私からすれば、あなたの預かり知らぬ状況で帰還が叶わぬことになった方が……現人類を代表して、いえ……」
「知らぬ存ぜぬでいたいわけじゃない。でもこうしてフィオナと時間を共有出来ている状況の方が、私はうれしいね」
まぁと答えたフィオナはそこで私のいらぬと思っている心配、憂慮を止めてくれた。いやぁまぁそうだよ。帰ったからで何というのもある上に政治的に面倒なところより……こうして美女に囲まれて毎日仕事に何やらと充実してるほうがいい。
夜ぐらいに異性と仕事の結果を話してゆったりしている時間とか、21世紀の私じゃ考えられない事態!う~んアダルトな時間。そう考えていくとやはり、私はみんなの中にいる方がいいんだよなぁ。美女なら猶更、アルコールで頬を染めている美女とかね。
「あなたが目覚めこちらに来てから皆活気づいています。ただ……ロメオ分遣隊、アンジェラ達だけとの時間をもう少し皆にもと思うもので。最近ですと……あのポリ、犬と一緒に寝ていたようですがそのあたりも分別を……こう、犬に何かというわけではないのです。ただその狭い中でのを重視していただきたくない、といいますか」
あぁ、フランソワーズあたりから話が苦情が出たんだろうか。その実態は違うんだが……いや、いいか。フィオナはネロのお姉さんであるし、我々アレクサンドリアの執政官。彼女になら話しても……聞いてもいいだろう。
「いや、それね。アンジェラなんだよ、私のお腹で寝てたの」
は?という言葉が聞こえた気がした。しただけ……しただけ、なんだが。目の前にいるアルコールを嗜む美女の、上気した頬や顔色が一気に冷めたのがわかった。えっ何かやばいところを……ところに触れるようなことを言ってしまったのか?無言で「続けなさい」って具合のフィオナに危険な気配を感じながら……説明を、いや釈明みたいなことを続けてしまう。
「目が覚めたら、なんだよ。お腹が苦しくて……目が覚めたら、なんか……アンジェラが私のお腹をね、枕にしていて。苦しくてね?でもなんか……起きないし……」
そういう文化的習慣やまじないの類でもあるのですか?と聞いた直後……グラスのアルコールを一気に飲み干し、フィオナから深いため息が吐き出された。すごいアルコールくさい溜息が。
「私も寝ます、あなたのお腹を枕にして」
「いや執政官殿それは、私とあなたは男と女で」
「もう夜も遅いですから、明日のために寝ましょうか」
執政官殿!?と声を出すが遅い。アルコールが入っているはずのフィオナの動きは素早く。扉の鍵を閉めて……私を引きずって寝室へ。そこへ私を倒すと、その腹部を枕にして仰向けになったのだ。
「ぐえっ」
「あぁこれは……なんとも具合のいい」
こうなったらもう遅い、アンジェラの時もだったが……重い重くないに関わらず。彼女の頭部で私の腹部を抑えられ、しかも長身の女性がベッドでT字状で横になると……線の力で抑え封じられてしまい。一向に動けなくなり……部屋の照明機能のお陰でそのまま自動で消灯になってしまった。
私としてはいきなりではあるが、フィオナみたいな女性と共に寝るまでいくとはびっくりだし落ち着かない。しかも腹を枕にされている……落ち着かないのだが……昼間ずっと捜査局にいた疲れもある。そして腹部あたりから漂ってくるアルコールの臭い……に紛れてフィオナが使っているだろうボタニカルな洗髪料の匂いも上がってくる。
なんだかまぁ、それらに飲まれていたら……落ち着いてしまったもので。そのまま寝てしまった……翌朝のことだ。
「執政官……今日はその、ずいぶん気力があるといいますか」
「本日も協議を続けていきましょう、この先の地球再生という未来のために」
惑星再生事業で随伴する銀河連邦側の事務官らも驚くぐらい気力生命力共に満ち溢れていたフィオナがいたわけだ。私の部屋に呼びに来た銀河連邦の事務官がフィオナが直で出てくるものも重なり色々ビビっていたがまぁその……わからない、説明の仕方が。それはもうどにもならないもので思い出すのは私は今日の予定。
フランソワーズのところでアーマー・ボウルの体験会なんだけど……このお腹と腰の具合の悪さのままいくのかなぁ?
首と腰やらないといいんだけど。




